コラム

なぜ御社の求人には応募がこないのか。その理由と対策について2000社以上取材したライターが解説

これまで求人広告やオウンドメディアの編集ライターとして中小企業から大手企業まで、2000社以上の企業を取材してきた。ちゃんと数えてないので正確な数字はわからないが、ざっくり1日平均1件×20日×12ヶ月×10年で計算すると2400社になる。それなりに多くの企業を取材してきたので、「この会社は応募が殺到するだろうな」「この会社は応募が集まらないだろうな」という予測は大体的中する。本記事では採用に苦戦している企業に向けて、応募がこない原因や対策について解説したい。

応募が集まらない理由

これまでの経験から応募がくるかどうかは取材しなくともある程度の予測がつく。不動産の価格相場がエリアや築年数、広さなどで決まるのと同じで、求人も条件によって応募数の大まかな相場が決まるからだ。それを決定する要素は、「業界」「職種」「勤務地」「給与」「休日」「福利厚生」「ワークスタイル」「掲載する広告のサイズやプラン」などである。御社の求人に応募がこない場合、上記にあげた要素が相場より見劣りしている可能性が高い。
 
もちろん、本質的には「会社のビジョン」「一緒に働く仲間」「事業の優位性」などの訴求が大事なのだが、いますぐ転職したい求職者は自分たちの暮らしを守るために、最低限譲れない条件がある。なのでどんなに崇高な理念やビジョンを訴求したところで、全く刺さらないケースも残念ながらある。特に不人気な「業界」「職種」「エリア」で何も戦略を持たずに求人広告を出稿すると大体失敗する。

応募数を増やす「だけ」なら難しくはない


ではどうすればいいのか。求人広告でよくやる手段としてはシンプルに「給与」と「休日」など先ほど紹介した要素を相場以上にし、かつ働きやすさや福利厚生の手厚さをアピールする方法だ。さらに応募のハードルを下げるために「未経験歓迎」「学歴不問」などの文言を記載し、「誰でもOK」のような見せ方にすることが多い。
 
しかし、これには問題がある。前回の記事でも書いたが一定の数は集まるが「本当に求めている人材からの応募」つまり有効応募が減ってしまうのだ。企業側は思ってもいないことや、極端な言い方をすれば「嘘」に近いようなことを書いて応募を集めているので、当然ミスマッチが発生する。運よく採用できたとしても結局、「こんなはずじゃなかった」「聞いていた話と違う」ということになり、早期離職につながる。また「給与」や「休み」を無理に増やしても、採用した社員が早期に戦力化しなかった場合、経営を圧迫することになる。「面接で実態を説明するので求人広告では良いことだけを書いてくれ」という企業も多いが、そんな釣り広告を出す企業に入社したい求職者がどれだけいるだろうか。

広告依存を脱却しよう

そこで提案したいのが広告に頼らずとも応募がくる魅力的で強い組織づくりと採用ブランディングの強化だ。本当に魅力的な会社はengageやAirワーク、SNSなどの無料媒体で「こんな人を募集しています」と告知するだけで応募が殺到する。そのためには単発の広告で付け焼き刃的な魅力を訴求するのではなく、日頃から社員とコミュニケーションを図りエンゲージメント強化に努めたり、自社についてSNSやオウンドメディアで発信したりする必要がある。
 
昨今の若手はITリテラシーが高く、企業の「怪しさ」を見抜くことに長けている。「適当なことを書いて騙してやろう」という企業側の思惑は簡単に見透かされてしまうだろう。そんな時代において、もはや求人媒体だけで採用課題を解決することは難しい。以前は求職者側が選ばれる立場であったが、今は売り手市場で企業が選ばれる側にある。まずこの事実を受け入れ、求職者からモテる努力をする必要があるのだ。

自社の「ファン」をつくるために


マーケティング施策で例えるならば、求人広告は顕在化されたニーズに対してリスティング広告を打つようなイメージだろうか。即効性がありクリック単価を引き上げれば、それなりにCVにつながる。しかし、その見込み顧客は「金額」や「サービスのスペック」に惹かれて問い合わせているので、必ずしも自社の「ファン」というわけではない。
 
求人広告も同じで、「給与」や「休日」の多さなどで応募を集めた場合、求職者は御社の「ファン」ではなく、「給与」や「休日」の多さに惹かれて応募しているだけである。それゆえもし経営が傾き、これまで通りの待遇を用意できなくなれば、簡単に離職につながってしまう。
 
長期的に強い組織をつくるためには待遇面ではなく、御社のビジョン、カルチャー、人の魅力などを伝え、潜在的な候補者を育て、「ファン化」していく必要があるのだ。そのためにも、エンゲージメントの高い組織づくりやその過程を発信していく作業が欠かせない。時間も労力もかかるが、うまく軌道に乗れば広告に頼らない採用を実現でき、採用コストの削減にもつながるはずだ。採用にお困りの経営者や採用担当者の方はぜひ検討してほしい。
 
【筆者プロフィール】
田尻亨太
中学と高校ではバレーボール部に所属。身長がそこまで高くなかったので、大学ではバンド活動をすることに。卒業後、大手求人メディアの制作スタッフになる。その後、老舗の求人広告代理店やスタートアップ、ベンチャー、フリーライターを経て、2020年8月にコンテンツ制作で採用を支援する株式会社VALUE WORKSを創業。新米社長として試行錯誤する日々を過ごしている。趣味は銭湯とビール、たまに島に行くこと。
 
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