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  • 2024.02.06

目指すは、持続可能な循環型社会。環境配慮素材で、ファッション産業をサステナブルに|株式会社Bioworks

環境汚染への対応は、今世界的に注目されている問題のひとつだ。特に世界の環境汚染の原因第2位と言われるアパレル・ファッション業界では石油精製素材による大量生産・大量廃棄が大きな問題となっている。石油精製素材は、西欧ではすでに使用規制の法整備がされるなどの動きが始まっている。一方で、日本での認識や取り組みはまだ限定的だ。

そんな中、環境リスクの改善に貢献する植物由来の「ポリ乳酸」を原料とした繊維などの開発に取り組んでいるスタートアップがある。株式会社Bioworks(以下、Bioworks)である。同社が開発した環境配慮素材『PlaX™』はカーボンニュートラルに貢献する素材として注目を集め、2024年2月には世界最⾼峰の国際テキスタイル⾒本市『Premiere Vision Paris(プルミエール・ビジョン・パリ)25SS』に2度目の出展を果たした。同社の事業は投資家からも注目を集め、2024年1月には4.15億円(累計25億円)の資金調達を実施している。

新しい「豊かさ」を実現することをビジョンに掲げる同社では、今後どのように環境素材の普及を目指していくのだろうか。今回はコーポレート部 人事・採用担当の坂田裕美氏に、繊維開発の経緯や今後の展望などについて話を聞いた。

【プロフィール】
坂田 裕美
ブライダル業界でドレスコーディネーターや広報、人事として10年を過ごし、2021年にBioworksに入社。コーポレート部 人事・採用担当として社内のさまざまなプロジェクトを把握しつつ、すべての面接、採用を担当している。

環境問題への想いから生まれた植物由来の繊維『PlaX™』


ーー貴社の事業内容や開発素材等について教えてください。
 
当社の事業はバイオプラスチックの一種である「ポリ乳酸」という素材を使用した新素材『PlaX™』の開発です。ポリ乳酸はトウモロコシやさとうきびを原料にしている素材で、20年ほど前から世界中で研究開発が進められてきました。これまでポリ乳酸を繊維にすることはできても、染色性や耐熱性といった課題をなかなか解決する事ができず、多方面での利用は諦められてきた素材でした。
 
そんな中、当社の創業者である代表の今井が「環境によいものを作りたい」という想いで立ち上げたのが、ポリ乳酸の研究開発をメイン事業にする当社です。今井はもともとペットボトルなどの製造業に関わっていたのですが、定年退職してから、在職時には叶えられなかったその想いを実現するために当社を設立したと聞いています。
 
ーー『PlaX™』を開発するまでにはかなり時間もかかったのでしょうか。
 
そう聞いています。元々当社では、『PlaX™』でプラスチックの代替品を開発していました。その一方で『PlaX™』の繊維化の研究開発を進め、状態のよい繊維を作れるようになったのが2021年。現在は、アパレル業界・繊維業界への進出に力を入れているフェーズです。
 

環境後進国の日本で、コストと品質の課題をどう乗りえるか


ーーなぜアパレル業界・繊維業界へ進出しようと考えたのでしょうか。
 
アパレル業界は残念ながら多くの環境汚染を引き起こしているんです。今、日本では年間に衣類を平均18着買って、12着捨てられてしまう現状があります。発生するゴミの問題もありますし、石油由来の合成繊維は洗濯すると5ミリ以下のマイクロプラスチックが水に溶け出てしまいます。そういった問題を自分たちの開発する繊維で解決したいと考えています。
 
ーーたしかに環境のことを考えると石油由来の合成繊維を使い続けるのはリスクがありますね。実際に業界に進出してみてぶつかった課題はありますか?
 
まずは品質面ですね。ポリ乳酸を原料とした繊維はもともと熱に弱く50〜60度で溶けてしまうのですが、改良を重ね当社の『PlaX™』繊維は現在120〜130度まで耐えられるようになりました。コスト面でも課題はあります。従来のポリエステル繊維と比べると、価格はまだ4倍、5倍近くしてしまいます。なので、製品のよさはご理解いただけても費用面で採用に至らないことはあります。ただ徐々に、「ものを作る責任」として環境によい素材を選ぶ日本の企業様も増えている印象です。
 
ーー海外と比べて、国内における合成繊維に関する価値観の違いは実感しますか?
 
そうですね。欧州ではすでに石油由来の合成繊維の使用への法規制があるなど、環境問題として捉えられています。そのため、フランスで行われる国際テキスタイル見本市に出展するなど、海外進出にも目を向けています。実際に、今も海外の企業様やブランド様との商談が進み始めました。
 
ーー国際的なテキスタイル見本市でも貴社の製品は厳しい審査の上で評価選出されていらっしゃいましたね。海外進出の一方、日本進出で工夫している点はありますか?
 
抗菌性や防臭性などの機能面に優れていることをアピールすると効果的だと感じています。価格に関しても将来的にはポリ乳酸原料の価格がポリエステルに近づいてくるというお話もしています。今、プラスチック製品の規制が世界的に進む中でポリ乳酸原料の工場が欧米や中国で増えています。加えて、ポリエステルも様々な要因から高騰していくと言われているので、価格差は縮まっていくのではと思います。
 
また、サステナブルな素材を使っていることをアピールポイントにされていらっしゃるブランドさんにはアプローチがしやすいです。たとえば当社の株主であるゴールドウインさんや、先日の展示会で採用を発表いただいたマッシュスタイルラボさんなどは環境問題への志向も高く、取り組みを進めています。
 
ただ、私たちの力だけで「コストはかかりますが環境によい製品を使ってください」と押し売りするのはもちろん無理です。なので、欧州のように行政による規制、ブランドさんに「環境によい素材を使っている」メッセージを消費者 の方に直接届けてもらうことが欠かせません。素材を作る当社とブランド、行政の3者で協力してアパレル業界の意識を変えていきたいです。
 

環境汚染の根本的な解決を目指し、Bioworksへ


ーーここからは坂田さんのキャリアについても伺えればと思います。貴社にジョインされるまでの経歴を教えてください。
 
前職は10年ほどブライダル業界で働いていました。企画からドレスコーディネート、広報、人事まで任せていただき、毎日がとても楽しかったですね。もともと誰かの幸せのために行動することが好きだったので、性に合っていたんです。「人の幸せを自分の幸せのように感じられる」かどうかが、今でも仕事選びの軸になっています。
 
ーーとてもやりがいのあるお仕事だったと思うのですが、そこから転職を考えられたきっかけや、最終的に貴社を選んだのはどのような経緯だったのですか?
 
転職を考えたのは、コロナ禍でブライダル業界も全部ストップしてしまった時期でした。あとはブライダル業界にちょうど10年いて、仕事もひと区切りついていたかったのが大きかったです。ただ、絶対に転職したいというより、なんとなく新しいことをしたいなと考えていたときに当社のことを知りました。
 
もともとマリンスポーツが趣味なのですが、自分たちがしているマスクが海に流れてサンゴに引っかかってしまっている、そういう環境汚染のニュースを見て、衝撃を受けたんです。これは何とかしなくてはいけない、でも自分一人でなにかやっても大きな変化は起きない。もっと根本から変えていきたい使命感に駆られたその翌日に、当社のことを知ったんです。それで、まだ面接すら受けていないのに、「私がジョインするしかない」って(笑)。
 
ーー運命的なタイミングですね!それで人事のポジションで入社されたのですね。貴社での人事では具体的にどのような業務を担当されているのですか?
 
採用をメインで担当しています。人材補充のポジションや新規募集をしたいポジションが出てきたら、募集要項を作ったり実際に面接をしたりしていますね。
 
ーー前職でも人事を担当されていましたが、前職と現職で業務内容は変わりましたか?
 
大きく変わりましたね! 前職は新卒採用がメインだったため、ブライダル関係の専門学校へ企業説明に行ったり、新入社員にビジネスマナーやルールをを教えたりといった活動がメインでした。それに対して現職では、ダイレクトにスカウトを打つ採用がほとんどです。研究職など専門的なポジションの採用も多く、「こういう人たちはどこにいるんだろう?」と探しながらアプローチしていっています。
 
ーー研究職のポジションに合う方を探すのは難しいですか?
 
はい。日本は、繊維の研究開発をずっと海外で行ってたんです。なので「空白の30年」と言われるくらい、繊維の研究職の方は少ないです。ただ、そんな中でも海外でずっと研究をされていた方や、今は海外在住だけれど将来的に日本での就職を考えている方にもお声がけをしています。
 
ーーお話を伺っていると、スカウトする側も専門知識や現場理解が求められるように感じました。そういった苦労や努力はありますか?
 
とてもあります。概要はわかっていても、具体的な知識や専門用語まで話が進んでいくと本当に難しいです。なるべく聞かれたことには答えられるように、現場のいろいろなスタッフから知識をもらっています。スカウトを打つにしても具体的にどんな方を採用したいか明確にしないと適切なターゲティングができません。それに的外れなスカウトをすると面接する現場の社員も、候補者もお互い無駄な時間をとることになってしまいます。より精度の高い採用を実現するためにも、「どんな人材を求めていますか?」と、日々現場の社員と擦り合わせを行っています。
 
ーーそうすることで、入社された人の入社後のギャップも減りそうですね。また、人事の立場として社内の制度づくりや環境づくりで工夫されていることはありますか?
 
社内制度や環境づくりはまさに今着手しているところです。組織図や人事評価制度も近年制定したばかりで、少しずつ色々なことを試しながら改良しています。組織図はあるものの、ほとんどのスタッフがプレイングマネージャーなのでフラットな組織でもあり、お互いに足りない部分があれば助け合う柔軟さのある環境だと感じています。
 

『PlaX™』を通して、新しい「豊かさ」の種を撒く


ーー貴社の今後の中長期的なビジョンをお聞かせください。
 
『PlaX™️』の原料であるポリ乳酸はこれまで耐熱性、耐久性、染色性などの問題で普及しきれていませんでした。そのような課題を当社は独自に解決し、さらに抗菌・防臭などの機能性もプラスされさまざまな可能性をもたせることができています。今後、繊維業界、アパレル業界に限らず、さまざまな業種へのアプローチも期待できると考えています。ブランド会社などと協力しながら、『PlaX™』の特性を活かしてアパレル業界、繊維業界の持続可能性の向上に貢献していきたいです。
 
ーー 描いている未来に向けて、どのようなマインドの方にジョインしてほしいですか?
 
環境問題に興味があり、自分の働きかけで状況を変えていきたいと感じている方ですね。アパレル業界出身の当社のスタッフたちも、自分たちが作ったものが廃棄されていく現状を見て、疑問を持って当社にジョインしてくれました。これまで当たり前とされてきた「豊かさ」を問い直すことで、循環的で持続可能な社会に求められる新しい「豊かさ」を実現する。そんな当社のビジョンに共感してくださる方とぜひご一緒したいです。
 
ーーまさに貴社の企業理念である「新しい”豊かさ”の種を撒く」に共感できる方にはさまざまな挑戦ができそうな環境ですね!では最後に、求人に応募したいと考えている方へのメッセージをお願いします。
 
最初にもお話したとおり、残念ながらアパレル、ファッション業界は世界第2位の環境汚染産業といわれてしまっているのが現状です。当社は『PlaX™』を石油由来の合成繊維の置き換えとして拡大していく事を目指し、ただモノを作るだけではなく、商品の分解・リサイクルの仕組みなども構築し、循環型社会に貢献できるよう努力しています。世の中によいものを広めたい、お客様に喜んでいただきたい、ファッション産業から生まれた環境問題を自ら解決しようというマインドをお持ちの方と、一緒に成長できればと思います!
 
取材・文:伊藤 鮎

会社名 Bioworks株式会社
設立 2015年10月21日
資本金 21億8,785万円(資本準備⾦を含む)
事業内容 改質ポリ乳酸コンパウンド(PlaX™️)および製品の開発・製造・販売
主要株主 株式会社TBM
所在地 本社・研究所 京都府相楽郡精華町光台1-7 けいはんなプラザラボ棟7F
東京オフィス 東京都千代田区有楽町1-2-2 東宝日比谷ビル7F
代表取締役 今井行弘

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