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  • 2023.06.20

既存の枠組みを超えた「挑戦」を当たり前に。エンジニア出身のCEOが実現する、インテントセールスの新たな世界 | 株式会社Sales Marker

各業界でDX化が進められているものの、営業現場は依然としてアナログな手法に頼っていることが多い。人材不足が深刻化している現状を考えると、少人数で効率よく顧客を獲得する営業DXは急務だといえるだろう。

現場の労働力不足を解消するDXツールとして注目されているのが「『Sales Marker(セールスマーカー)』」だ。496万件の企業データベースと興味関心データ(インテントデータ)を活用することにより、成約確度の高いターゲティングが可能に。営業活動の無駄を省き、「自社サービスを、今欲しい企業」だけにアプローチすることができる。

『Sales Marker』を提供する株式会社Sales Markerには、業界をリードする大手企業出身のメンバーが多数在籍。2023年5月には経営層4名(小笠原、荻原、陳、渡邉)が30歳以下のアジアを代表する起業家「Forbes 30 Under 30 Asia」にそろって選出されている。

2021年の創業から破竹の勢いで成長を続ける株式会社Sales Markerは、どのような経緯で画期的なプロダクト開発に至ったのか。エンジニア出身のCEO 小笠原 羽恭氏のキャリアを紐解きながら、新時代の営業手法に迫る。


【プロフィール】
小笠原 羽恭
株式会社Sales Marker 代表取締役CEO
新卒で大手シンクタンクに入社し、エンジニアとしてシステム開発や新規事業開発に従事。その後、大手コンサルティングファームに移り、コンサルタントとして新規事業戦略立案・営業戦略立案など様々なプロジェクトに携わる。2021年株式会社Sales Marker(旧CrossBorder株式会社)を4人で共同創業し、代表を務める。日本初のセールスインテリジェンス『Sales Marker』を提供。

起業の出発点はエンジニアとしての課題解決

小笠原氏がプロダクト開発に興味を持つようになったきっかけは、小学校の頃にさかのぼる。SEとして働いていた父親の影響もあり、IT領域で社会の役に立ちたいと考えていた。

「ITエンジニアになりたいと思い、小学生の頃からプログラミングでパソコンをいじっていました。それと同時に、社会課題を解決したいという思いがあり、地球温暖化について書いた作文が入賞したことも。その後の大学では、コンピュータ・サイエンスを学べる学部に入り、一年次からソフトウェア工学関連の研究室に所属しています。夜まで図書館で、同期と難しい授業の課題やプログラミングに取り組んでいました。二年次には、PwCコンサルティングが開催するハッカソンにも挑戦し、準優勝を獲得しています」
 
勢いそのままに、エンジニアとして大手シンクタンクに新卒入社。通信会社の既存システム関連の仕事を担当しながら、次第に新規サービスのシステム開発にも携わるようになる。
 
「ブロックチェーン技術への関心が高かったので、日本初のプラットフォームを構築するプロジェクトに手をあげました。そこで、プラットフォームの研究開発に関わるジョイントベンチャーの設立など、貴重な経験を積むことができました。2年目には、上司が推進していた新規プロジェクトにもアサインしてもらい、新たな事業をつくっていく楽しさを感じましたね」
 
より多くの新規事業に携わりたいという思いが強くなり、大手コンサルティングファームに転職。ビジネスサイドの知識を身につけながら、コンサルタントとして新規事業戦略の立案にも携わるようにもなる。
 
「主に担当していたのは、1兆円規模の売上を持つ大手企業です。新規事業における全体の戦略立案はもちろん、営業戦略の立案も進めていました。そのなかで課題に感じていたのは、マーケティングに活用するデータの精度です。従来のターゲティング手法では、属性データとして、売上、従業員数、業界などのセグメントに応じて進めていくのが一般的だと思います。しかし、そのやり方では相手側のニーズが全く反映されません。それに、ニーズの分析をアナログで行う場合、数か月かかることもあります。その間にプレイヤーや相手のニーズが刻一刻と変化していくので、リアルタイムで相手のニーズを分析できる仕組みがあればいいのに、と考えていました」
 
当時の課題は現在の『Sales Marker』にそのまま反映されている。しかし、そのプロダクトアイデアを着想し、実用化するまでには紆余曲折の道のりがある。
 
「まず、起業のきっかけでいうと、エンジニア時代から続けていたハッカソンへの参加が大きかったと思います。インターンのときから仲の良かった現在の取締役である陳や渡邉と一緒に、土日を利用してデリバリーアプリ“Smart Delivery”を開発しました。その結果、2020年に三菱商事とHERE Technologiesがプラチナスポンサーを務めている『アジアハッカソン』で3冠を獲得し、出資のお話をいただいたのです。埼玉県で実証実験を行うなど、マネタイズを目指して取り組んだのですが、大量の資金と配達員、レストランの登録が必要だとわかりまして。当時はまだみんな会社に所属していたので、兼業でマネタイズ化するのは難しいという結論に至りました」
 
アプリの実用化には至らなかったものの、陳氏と渡邉氏とのシナジーを実感。現在COOを務める荻原氏とも、先輩経営者が開催していた交流会で出会って意気投合し、翌月にはビジネスコンテストに一緒にエントリーするようになる。

「元々知り合いの4人ですが、得意領域や専門性が異なるので、それぞれの強みを生かして面白い事業ができると思いました。私はビジネスサイドでは新規事業開発、エンジニアサイドではマネジメント、クラウド、フロント・バックエンドと、全体を見渡してバランスをとることが得意です。陳はバックエンドとビックデータ解析、渡邉はフロントエンドの開発、荻原は法人営業と事業開発に強みを持っています。『一緒に起業しよう』ではなく、もっとラフに『日常生活の中で感じる課題を解決するアプリをつくろう』という感じで、私から誘いましたね」

技術力と社会課題の解決だけでは、マネタイズできない

小笠原氏が次に着手したのが、現在も社内で運用している次世代型ビジネスニュースプラットフォーム『Glance(グランス)』である。日本企業のイノベーション、新規事業創出、海外への投資機会の獲得のために、アメリカや中国の最先端イノベーション事例や有力プレーヤーを深く理解することができる。
 
「技術力と社会課題の解決だけでは、マネタイズできるサービスは作れないと感じたので、自分が課題に感じていることをペインポイントとして『Glance』を開発しました。以前ブロックチェーンのプラットフォームを開発するときに世界の事例を調べて気づいたのですが、海外と日本の情報には大きな格差があります。情報の格差を減らすことにより、日本のDXが今まで以上に進んだり、最先端の技術がどんどん国内に流れたりして、日本のビジネスシーンがより良く変わっていくと思いました」

『Glance』の特徴として、豊富な海外ビジネス情報にアクセスできることがあげられる。また、NLP※を利用したAIタグ付けを実装しているため、手軽に自分にあった記事を探すことができる。1タップで高品質な翻訳を実現できるのも、使いやすいポイントだ。

2021年7月に「テクノロジーでビジネスの境界を越える」というミッションを掲げ株式会社Sales Markerを創業。『Glance』で事業成長を図るも、当時のVCの反応は渋いものだったという。
※NLP……大量のテキストデータをAIが分析する技術。
 
「15社くらいのVCとセッションするなかで、『提供する情報の領域が広すぎる』というフィードバックをいただきました。顧客となる各企業のニーズに対してピンポイントに刺していくためには、もっとサービスの領域を絞るべきだったのです。社内で議論を進めるなかで突破口になったのは、セールス出身の萩原や私が当時課題に感じていた、従来型の営業手法への疑問です。売上、従業員数、業界などの属性データでは相手のニーズを把握できないという課題から、『ニーズが発生している瞬間に営業できる』というプロダクトアイデアを着想。セールスなら誰もが欲しいと思えるコンセプトだったので、ディスカッションは大いに盛り上がりましたね」
 
営業現場のビジネスパーソンにもインタビューを重ね、類似サービスや市場規模なども入念にリサーチ。プロダクト開発では、小笠原氏、陳氏、渡邉氏が一丸となって『Sales Marker』をかたちにしていく。
 
「着想したのが2021年の大晦日で、そこから資料に落とし込み、急ぎでプロトタイプを作りました。2月上旬には本格的な提案に進めたので、開発期間は1か月ほどです。スピード感を持って取り組めた背景として、ハッカソンに何度も参加していたことが大きいと思います。ハッカソンは基本的に1日でプロダクトを作って、プレゼンして競い合います。私たちはそれに慣れているので、短期間でのリリースは全く問題ありませんでした」
 
プロダクト開発と同時に、VCとのセッションも本格化。市場で勝ち抜くための戦略、競合優位性、MRR※をどのように遷移させていくのかなど、さまざまなフィードバックを得たという。2月末にはVCからの資金調達を実施し、3月に『Sales Marker』をリリース。ここから株式会社Sales Markerの快進撃が始まることになる。

商談化率10倍、受注獲得コストを1/3まで削減

リリース後の1年3ヶ月で『Sales Marker』は150社に導入。商談化率10倍、受注獲得コストを1/3まで削減するなど、目覚ましい効果をあげる企業も少なくない。その背景として『Sales Marker』で活用できるインテントデータの存在がある。
 
「インテントデータは、特定の対象企業あるいは担当者が、今どのような課題やニーズを持っているのか、どのようなソリューションの購入を検討しているのか、などの興味・関心を分析したデータです。『Sales Marker』では、1日50億レコードを超えるWeb上行動履歴データを解析し、データベースに存在する企業の興味・関心を分析しています。つまり、『Sales Marker』を活用すれば、『自社のサービスがほしい企業』を特定することができるのです」
 
ハウスリストの既存コンタクトが、いつ、どんなキーワードで検索していたのかも可視化できるので、相手のニーズを推測しながら適切なアプローチを進められる。インサイドセールスにとっては、特に需要の高いサービスだといえるだろう。
 
「既存コンタクトだけではなく、アウトバウンド営業にも『Sales Marker』は活用できます。当社は496万件の企業データベースを持っており、国税庁の法人データともAPI連携しているため、毎日最新のデータに自動更新。資金調達、採用情報、オフィス移転などの最新情報がリアルタイムで分かるので、競合他社よりいち早くアプローチすることができます」

スタートアップからエンタープライズまで、幅広い企業規模・業界で活用される『Sales Marker』だが、そのなかでも特に導入が進んでいる業種・業界がいくつかあるという。
 
「B2B企業での導入が比較的多く、人材系や営業コンサルティングの会社、ホリゾンタルSaaSを提供している会社に支持されています。共通点としては『ターゲットの優先度付けが難しい』サービスを提供していること。従来の属性データでは潜在顧客のニーズを捉えられませんが、『Sales Marker』のインテントデータを活用すれば、効率よくアプローチすることができます」
 
商談後の受注率も高く、一度紹介すると感動して導入に至るケースが多い。営業領域の画期的なサービスとして、口コミで広がり続けている。それに伴い、アサインするメンバーも増えている。
 
「現在57人ほどの規模(2023年6月現在)になっており、社内の部門は大きく3つに分かれています。人事や採用、経理、総務を担当する『コーポレート部門』、UI/UXのデザインとバックエンド・フロントエンド、インフラ領域などを担う『開発部門』、そしてセールスやマーケティングを行う『ビジネス部門』。経営陣は横断的に携わっていますが、制度の拡充も進めながら働きやすい環境を整えていきたいと思っています」

セールスの自動化で実現できる新たな世界

新時代の営業手法により、さまざまな業界で注目されている株式会社Sales Marker。未来に向けてどのようなビジョンを描いているのだろうか。
 
「私たちがインテントデータを提供するだけではなく、自動で営業ができるような世界を目指していきたいと考えています。セールス領域とマーケティングのデータをつなぐだけではなく、そこに自動化の仕組みを加えていくことで、Sales Markerがセールスとマーケティングのハブとなっていく。いろいろなプレーヤーが出てきたとしても、競合ではなく共存していくようなイメージです」
 
Sales Marker社は、AIによる自動営業を既にプロダクトへ実装しつつある。それはChatGPTを組み合わせた次世代の営業スタイルだ。
 
「従来の営業手法では、ターゲットを決めた段階でセールスが動く必要がありますが、営業の自動化が進めば工数を劇的に削減できます。アプローチ先を選択した段階でAIが情報を自動入手し、ChatGPTがパーソナライズした文面を作成。メールの自動送信と組み合わせれば、自動的にアポを取れるようになります。つまり、セールスが商談している間にも、新たな商談を生みだせるということです」
 
セールスオートメーションで実現できるのは、営業活動の効率化にとどまらない。営業のペインポイントをなくすことにもつながるという。
 
「私たちがインテントセールスを実現したい目的の一つに、営業がつらくて辞めてしまう人をなくしたいという想いがあります。アウトバウンド営業では、断られることが多いため、精神的に追い込まれてしまうケースも少なくありません。そのようなセールスのつらさをなくして、顧客と営業の両者が気持ちよく商談できる世界観を目指していきたいと思っています」
 
最後にSales Marker社が求めている人材について聞いてみた。
 
「私たちは『既存の枠組みを超えた挑戦ができる世界』を目指しているので、従来の概念にとらわれず世の中を変えていきたい方と一緒に働きたいと思っています。社内で活躍しているメンバーたちも、現状のシステムや手法に疑問を抱いたりしながら、パラダイムシフトを起こそうと挑戦を続けています。新たなテクノロジーを活用し、より良い世界をつくりたい方のジョインをお待ちしています」
 
取材・文:VALUE WORKS編集部

会社名 株式会社Sales Marker(セールスメーカー)
本社所在地 東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー 23F
役員 代表取締役:小笠原 羽恭
事業内容 セールスインテリジェンス『Sales Marker』の開発・運用
資本金 1億円
設立年月 2021年7月29日
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