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  • 2024.05.10

誰よりも人々を信用する。エンベデッド・ファイナンスで新たな“信用のカタチ”をデザインするアコム社内起業家の挑戦 | GeNiE株式会社

2029年には国内市場(収益)が3.5兆円程度まで拡大すると言われているエンベデッド・ファイナンス(組み込み型金融)。非金融企業が自社サービスに金融サービスを組み込んで提供することを指しており、日本でも決済機能を備えたアプリが急増している。金融サービス(支払い、貸付、保険など)をシームレスに提供することで、金融商品に対する心理的ハードルを下げられるのが大きな特徴だ。

レンディング(貸付)領域のエンベデッド・ファイナンス市場の先駆者として、2022年に設立されたのがGeNiE社である。代表の齊藤 雄一郎氏は同領域にいち早く着目し、2016年にアコム社でイノベーション企画室を設立。同事業を社内で提案し、6年の歳月を経てアコムの社内起業家としてGeNiEを創業している。

「新たな“信用のカタチ”をデザインする」をミッションに掲げるGeNiE社は、消費者金融の世界をどのように変えていくのか。生活者の日常に寄り添う金融を目指してきた齊藤氏のキャリアや、提供している先進的なソリューションから紐解いていく。

【プロフィール】
齊藤 雄一郎
GeNiE株式会社 代表取締役社長
2005年成城大学卒業。2022年3月慶応義塾大学大学院経営管理研究科修士課程(Executive MBA)修了、経営学修士号を取得。大学卒業後、アコム株式会社に新卒入社。支店勤務を経て経営企画部へ。以降、企画部門を中心に全社戦略の立案やマーケティング業務に従事。2016年、フィンテックが日本で注目され始めた頃、テクノロジー活用を推進すべく、イノベーション企画室を立ち上げ。デジタル領域におけるサービス企画・立案、新規事業開発などに取り組む。マーケティング部門の責任者を経て、2022年4月、アコムの社内起業家としてGeNiE株式会社を設立。

生活者の日常に寄り添う金融を目指して


両親が銀行員ということもあり、幼少期から金融業界を身近に感じていた齊藤氏。その一方で、銀行や消費者金融の在り方に違和感を感じることもあったという。
 
「各社が提供している金融商品に大きな差はなく、ブランド力や企業規模で選ばれる業界だと感じていました。つまり、企業として一定以上の信頼性が担保されていれば、特定の金融機関にこだわるケースは少ないのではないかと。大切なのは金融商品の先にある目的を果たせることで、生活者の日常に金融が寄り添うことが金融機能のあるべき姿だと思っていました」
 
当時の思いは、シームレスな金融体験を提供できる現在のエンベデッド・ファイナンスに通じるものがあるのかもしれない。大学卒業後にはアコム社に入社。消費者金融のリーディングカンパニーのなかで、金融業界をより良く変えていきたいと考えていた。
 
「アコムは業界に先駆けていろいろな取り組みを進めていました。例えば、1993年に提供開始した自動契約機『むじんくん』により、それまで心理的ハードルが高かった対面での契約を機械化し、誰の目も気にせず24時間いつでもお金を借りられるようになりました。そもそも、普通に生活しているなかで、どの金融機関でお金を借りるかという発想は人々の頭にありません。日々の生活動線上に『むじんくん』を設置することで、困ったときスムーズにアコムへ借入を申し込むことができる。この発想の転換がマーケットに潜在していたニーズを顕在化させ、業界全体を発展させることにもつながっています」
 
支店勤務を経験した後、本社の経営企画部に配属された齊藤は、全社戦略の立案や会社計画の策定・管理に携わるようになる。
 
「5年ほどの在籍期間のなかで、会社の組織がどのような役割で配置されているのか、経営陣はどのように考えているのかなど、会社全体を俯瞰(ふかん)していきました。事業的には、店舗での顧客獲得がデジタルに移行していくようなタイミングであり、市場全体でも激動の期間だったといえるでしょう」
 
齊藤氏が全社戦略の立案を担当していた時期は、消費者金融に訪れた「冬の時代」に重なる。当時、社会問題になっていた多重債務問題を解決するため、2010年に貸金業法の抜本的な改正が完全施行。年収の3分の1を超える借入が禁止されるなど、新たな規制への対応に各社が追われることになる。その状況はアコム社も例外ではない。
 
「店舗の統廃合や人員削減により、社内で希望退職者を募るようなことも担当していました。心苦しく感じる一方で、企業の生存戦略として何が最も大事なのかという議論をよくしていたので、事業の本質を見つめる貴重な経験にもなったと思っています」
 
生活者が困ったとき、アコム社を一番最初に思い出してもらえる「第一想起」獲得を目指して広告施策に注力。経費削減が叫ばれる状況でも、その方針はぶれることがなかった。
 
「どんな人たちがどのような思いで事業をやっているのか、それが金融の世界では非常に大事だと考えています。提供しているサービス自体に、各社で大きな差がないからです。生活者のお困りごとを解決するため、一貫したメッセージで伝えていくことが重要なのです。試行錯誤を続けた結果、市場調査でうれしい結果も。生活者のみなさんに『お金で最初に思いつくこと』を質問すると、『消費者金融』よりも『アコム』を先に想起していただけるようになったのです」

「冬の時代」を超えてイノベーションを創出


齊藤氏がエンベデッド・ファイナンスの構想を抱くようになったのは、フィンテックが日本で注目されはじめた2016年のこと。当時は「エンベデッド」の言葉すらまだ使われていない状況なので、かなり先進的な考え方である。
 
「『金融は機能化されていく』というキーワードで提案書なども作りましたが、当時はまだ『冬の時代』が続いており新規事業へ投資するのは時期尚早という判断でした。そこで2016年から取り組み始めたのは、最新テクノロジーを駆使した業務効率化です。イノベーション企画室を立ち上げ、デジタル領域におけるサービス企画・立案をスタートしました」
 
AI・ロボットを日々の業務に取り入れることで、与信モデルの高度化や顧客アプローチの最適化が可能に。AI全盛の現代に先駆けた、先進的な取り組みだといえるだろう。
 
その後、マーケティング部門の責任者を経て、エンベデッド・ファイナンスへ本格的に取り組むため、2022年にGeNiE社を設立。アコムの社内起業家としての設立だったが、この決断は金融業界やアコム社にとっても大きな意味を持っている。
 
「エンベデッド・ファイナンスの推進や市場への浸透は、他業種が金融サービスを抱えることになるので、市場環境の激化が考えられます。つまり、潜在顧客の奪い合いになる可能性もあるわけです。しかし、アコムは消費者金融のリーディングカンパニーとして、業界全体をより良い方向に舵取りしていきたいという思いを持っていました。『冬の時代』がようやく終わり、投資の機運が高まってきたタイミングで、他社に先駆けてエンベデッド・ファイナンスに取り組むことを決めたのです」
 
エンベデッド・ファイナンスには、事業者だけではなく生活者にとっても大きなメリットがある。消費者金融の世界では、半数以上の借入申込を断らざるを得ないのが現状だが、エンベデッド・ファイナンスのデータを活用して多角的に人を見極めることができれば、貸付可能な人を大きく増やせるという。
 
「私たちが目指すフィンテックは、これまで信用力の証明ができずにお金が借りられなかった人のためにデータを役立てることです。例えば、プライバシーポリシーを考慮しながら非金融サービスの中で得られたデータも駆使することで、一人ひとりの信用力の解像度が高まり、与信枠の増加や金利優遇を実現できます。社名のGeNiE(ジーニー)にも、『アラジンと魔法のランプ』に登場するランプの精のように、人々の夢や願いを叶える存在になりたいという思いを込めています」

コンサルティング事業との連携でさらなる価値を

設立後、エンベデッド・ファイナンス用の基幹システム構築に取り組んできたGeNiE社だが、開発会社とのマッチングは一筋縄ではいかなかったという。
 
「業界を変えようとする志の高いスタートアップとタッグを組み、新たなシステム開発に向けた話し合いを進めていきましたが、方針の違いにより最終合意には至りませんでした。というのも、私たちとしては限りなく信頼性の高い状態でシステムをローンチしたいと思ってたものの、スタートアップとしてはアジャイルにスピード感を優先したい。企業としての在り方の違いもあり、他の開発会社を新たに探すことになりました」
 
開発会社とのマッチングに成功し、着実な開発過程を経て6月にローンチ予定のサービスには、数社が提携先として内定している。具体的なユースケースとしては、どのような業界が多いのだろうか。
 
「特にニーズが高いのは、多くのエンドユーザーを抱えている小売業や賃貸仲介業です。金融サービスとのシームレスな接続により新たな収益を得て、さらなる事業成長に投資していくという活用方法を目指しています。その際、自社のサービスに金融サービスを組み込むことで、ユーザーの詳細な情報を得ることも可能に。金融商品の契約においては、お客様の勤務先や家族構成などをお伺いすることもあるので、それらの情報を事業者様へフィードバックすることもできます」

その他にも、人材業界においてはジョブマッチング系の事業者からの引き合いが多いという。
 
「フリーランスの方々が求職サイトのプラットフォームなどで仕事を探す場面を想像していただくと分かりやすい思いますが、金融業界から見るとフリーランスは自営業のような扱いになります。金融サービスを申し込むときに与信審査が通りづらいこともありますが、その際にエンベデッド・ファイナンスだからこそ活用できる情報もあるわけです。バックボーンや過去の実績などを反映できるので、従来の審査では見極められなかった部分も見えてきます」
 
エンベデッド・ファイナンスをメイン事業に展開しているGeNiE社だが、その他にも金融領域のコンサルティング事業にも強みを持っている。
 
「アコムグループのローン・クレジットカード事業で培ったノウハウを活かして、レンダー企業向けに業務支援サービスを提供しています。マーケティング、ルール整備、オペレーション構築など幅広い業務領域で支援していますが、その中で特に大きな価値を感じてくださっているのは『与信』の分野です。今まで融資額の見極めなどを社内で行ってこなかった事業者様にとっては、非常にわかりにくい分野なのでアコムで培ってきた知見を十分に発揮できる分野だと思います」

債権管理の分野でも、アコム社におけるノウハウが発揮されている。例えば、回収体制の構築支援も行ったメルペイ社においては、人材をアコム社から派遣し、アコムグループとして顧客を支援した。
 
「メルペイさんに対するコンサルティングでは、延滞30日以内の回収率が過去最高になっただけではなく、債権管理のプロセスを整理し、早期回収に向けた体制を構築するなど、短期間で結果を出すことができました。専門知識とスキルによって、メルペイ社内の派遣社員にも影響を与え、回収業務のみならず、組織全体の成果向上にもつながったという評価もいただきました」
 
全国50以上の銀行と保証提携しているアコムグループの知見により、確かな信用力を創出するコンサルティング事業は、エンベデッド・ファイナンスとも密接な関係にあるという。
 
「私たちのゴールは、金融サービスを組み込むことではありません。その事業会社様が上手く金融サービスを導入・運営できることを目指しています。そのため、金融サービスを組み込んでからも、私たちが持っているノウハウでしっかりと事業を支えていきたいと考えています」

大企業の「安定感」とスタートアップの「成長力」

レンディングは、厳格な法律や細かな規制への対応が必要になるため、サービス提供側の参入障壁が非常に高い。それに加えてアコムグループの信頼性をバックグラウンドに持つGeNiE社は、確かな競合優位性を築いているといえるだろう。
 
「金融機関の基幹システムは重厚長大で、特定のサービスへ容易に組み込めるような代物ではありません。アコムは大規模な投資と人的コストをかけて開発してきた実績があるので、他社と比較したときの優位性は確立できていると感じてます。一方で、エンベデッド・ファイナンスの国内市場規模は3.5兆円程度まで拡大すると言われていることもあり、当社の事業規模も飛躍的に伸びていくと考えています」
 
さまざまな業界において活用が期待されているエンベデッド・ファイナンスだが、今後の事業展開についてはどのように考えているのだろうか。最後に齊藤氏に聞いてみた。
 
「中長期的には 50社、100社と提携先を増やしていくことで、新たな金融体験のスタンダードを作っていきたい。GeNiEという社名の最後の『E』には、Empowerment(エンパワーメント/付与)の意味を込めており、個人へ信用力を付与していきたいと考えています。最適な与信により、必要なものを欲しいときに購入でき、行きたい場所に最適なタイミングで訪れられる。そんな世界を実現したいので、成長マインドを持つ方にぜひジョインしていただきたいと思います。新たな挑戦にはリスクがつきものですが、当社にはアコムグループとしての安定感があります。スタートアップの楽しみを感じながら、安心して事業に取り組める環境が整っています」
 
取材・文:VALUE WORKS編集部

会社名 GeNiE株式会社
本社所在地 東京都中央区八丁堀四丁目3番5号 京橋宝町PREX
役員 代表取締役社長 齊藤 雄一郎
主要事業 エンベデッド・ファイナンス事業
資本金 5億円(資本準備金含む)
設立年月 2022年4月

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