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  • 2023.04.12

本当の課題を見極める。アフターコロナの卸売業界を支える受発注サービスの進化 | 株式会社タノム

配膳ロボットやモバイルオーダーシステムなど、DX化が急速に進む飲食業界。しかし、その裏側の食品流通業に目を移すと、卸業者との受発注に電話やFAXが使われているなど、アナログな業務が変わっていない。受発注に関わるトラブルも起きやすく、担当者の工数を圧迫する一つの要因となっている。

卸業者の課題に寄り添い、徹底したヒアリングで生み出されたのが、販促・受発注をスマートフォンで行えるサービス『TANOMU(タノム)』だ。今まで手作業で行っていた業務を自動化できるのはもちろん、取引先にLINE・メールで新商品や特価品を案内し、販売機会を増やすこともできる。

「ただ言われたものをつくるだけでは、全く使ってもらえません。課題の本質を理解して、できるだけシンプルに誰でも使えるプロダクトとして磨き込むことを心がけています」

そう語るのは『TANOMU』の開発・運営を担っている株式会社タノムの代表取締役・川野 秀哉氏だ。シンプルで使いやすいUX/UIで導入店舗数は10万を突破。コロナ以降、成長スピードがさらに加速しているが、ここまでの道のりは険しいものだった。卸売業のDX化に挑む彼の歩みを振り返りながら、彼の熱き想いの原点に迫る。

【プロフィール】
川野 秀哉
株式会社タノム 代表取締役。総合商社を経て、レストラン店舗の企画・運営会社に入社。中国・香港における現地法人の設立や海外初号店の立ち上げを担当したのち、タノムを創業。食材流通に携わった経験などから、卸業者と飲食店をつなぐ受発注SaaS『TANOMU』を着想。代表取締役として会社を牽引しながら、『TANOMU』のプロダクト設計から顧客開拓まで幅広くカバーしている。

たくさんの人が「食」でつながる世界へ


学生時代から「食」をテーマに事業展開したいと考えていた川野氏。その原点は、アメリカで育った幼少期の体験にある。
 
「寿司や天ぷらなどはアメリカでも知られてはいました。しかし、日本食として知られているというよりは、寿司と天ぷらがピンポイントで知られている状態に近く、ほとんどの日本食は認知がありませんでした。当然、ポジティブなイメージを持たれてもいません。むしろ得体が知れないというようなイメージにすら近い。今でこそラーメンや牛丼・お好み焼きなど、現地の方が高いお金を払って食べられていますが、当時は日本人の駐在員が接待で使うような特殊な店舗ばかりでした。
 
当時の食文化では、海外から日本へ輸入されたものは色々とありましたが、日本が輸出に成功し、根付いたと言えるものはなかったのです。私は日本食が世界一だと思っていたので、その体験はその後のキャリアに影響しています。豪華な食事だけでなく、様々なシーンやジャンルの日本食を海外の多くの人に食べてもらいたいという思いが芽生えました」
 
ライセンスビジネスや輸出などを手掛ける商社であればその思いがかなえられるはず、と大学卒業後に大手総合商社へ入社。その後、『日本食の普及』に関わる事業へさらに本格的に携わるため、海外出店を目指す外食チェーンに転職している。
 
「海外法人の立ち上げや現地のオペレーション構築など、現場とコミュニケーションを密に取りながら事業推進していました。実際に働いている人たちの仕事を見ないと本当に困っていることがわからないので、当時から『まず現場を見る』ことをモットーにしています」
 
営業ノウハウや店舗オペレーションの構築など多くのことを学び、2017年にタノムの前身となる株式会社CHEFY(シェフィー)を設立。「特別な日にご馳走を食べたい」という方をターゲットにした高級路線のミールキットサービス『Chefy』をリリースしている。
 
「レストランのレシピと必要な食材をセットで取り寄せられるサービスです。テクノロジーが『食』の世界に導入され始め、世界中でミールキットのサービスが盛り上がっていました。一方の日本ではまだミールキットがほとんどなく、『Chefy』は新たな分野への挑戦でした。事業コンセプトはシンプルで、子育てで忙しい両親に喜んでもらいたいなと。日々バタバタしている家庭でも『Chefy』で簡単にご馳走をつくることで、より良い暮らしになると思ったのです」
 
サービス提供当初は順調にユーザー数を伸ばしていったが、次第に超えられない壁が見えてくる。大手参入による競争激化、配送費や原材料の高騰、リピート率の低迷など、さまざまな課題が噴出したのだ。創業メンバー・株主と悩み抜いた結果、2018年に事業撤退を決断している。
 
「熱い想いを持って始めた事業ということもあり、共同創業者や株主と何度も議論しました。私自身にとっても苦渋の決断でした。今振り返れば、大切なことをそこで学んでいます。とことんユーザーの声を聞き、現場に寄り添ったモノづくりを目指すことが重要だということです」

現場に張りついて実感した「本当の課題」

『Chefy』の事業撤退で心身ともに憔悴しきっていた川野氏。次のビジネスモデルが見つからないまま、お世話になった食材卸問屋に取引終了のお詫び行脚を続けていた。
 
「今後仕入れができないことと、何かお手伝いできることはないか、という2点を皆さんにお伝えしていました。ときには深夜の2時から築地市場に張りついて、実際の仕事を見させてもらったこともあります。10社以上をまわって気づいたのは、朝までノンストップで続く作業のなかで、業務効率化を落ち着いて考える時間は全くないということです。それと同時に、紙を使った業務の習慣が根強く残っていることも分かりました。その課題が『TANOMU』の出発点になっています」

紙を使った卸業者の実際のメモ

現場の大変さを肌で感じたことにより、とにかくシンプルで使いやすい受発注ツールを考えるようになった川野氏。実際にヒアリングした中小規模の卸業者において、PCを日常的に使っている担当者はほとんどいなかったことや、卸の現場にPCは即さないという背景から、多くの人が利用しているスマートフォンにフォーカス。仕事の習慣をできるだけ変えずモバイルで簡単に受発注できるように、『TANOMU』を設計している。
 
「最初は開発スピードを重視し、最低限の機能でお客さんに使ってもらったのですが、厳しい言葉もたくさんいただきました。自信を持って実装した機能が現場のオペレーションとかみ合わず、『これにお金は払えない』と言われて落胆したこともあります。
 
それでも救いだったのは、『川野さんのことはずっと応援したい。だからとことん付き合うし、良いサービスができたら広めることも応援する』と言っていただいたことです。まずはたった一人、この人を幸せにできるプロダクトを作ろうと決めました。そこから数ヶ月にわたり改善を重ねていった結果、卸業者の皆さんや現場の人から『これは便利だね』と言っていただくことが増えていったのです」

当時から川野氏が心がけているのは、ユーザーヒアリングで発された言葉をそのままプロダクトに反映しないこと。現場における真のボトルネックを分析し、本当に必要な機能だけを実装するようにしている。
 
「リクエスト通りに作っても使ってもらえず形骸化することがほとんどです。むしろ操作が複雑になりサービスそのものから離れてしまうリスクすらあります。大切なのは、なぜその機能が必要なのかということ。根本的な課題を日々のコミュニケーションで引き出さないと、使いづらいサービスになってしまいます。
 
それに、便利な機能をたくさん実装したとしても、必要以上の機能は忙しい卸業者の業務効率化につながりません。それよりも、慌ただしい現場や帰りの電車でシンプルな機能をすぐに使えることが重要です」

コロナ禍で激変した飲食業界のニーズ

『TANOMU』のサービスを広めていくためには、「受注者」である卸業者だけではなく、「発注者」となる飲食店側でも導入を進めていく必要がある。小規模の飲食店などに導入を勧めるのはかなりの苦労が伴うように感じるが、卸業者たちが飲食店に『TANOMU』を勧めてくれることが多いという。
 
「導入していただいた卸業者の皆さんが、自らの業務を効率化したいという思いから、取引先の店舗に導入を勧めてくださっています。飲食店側の利用料は無料で簡単に導入できることもあり、卸業者1社あたり50〜100の飲食店で新たに導入していただいています。店舗の現場からも『楽になった』『簡単』という声をいただくことも多く、うれしい限りですね」

サービス開始からわずか半年で、数千店舗で使われるまでに成長。コロナ禍でさらに導入が加速し、2021年には導入店舗数5万を突破している。
 
「コロナ禍に大きく伸びた背景には、卸売業界や飲食店における働き方の変化があります。対面での接触を避ける流れが世の中で主流になり、FAXを見に行くために会社に行ったり、取引先に対面で営業ができなくなったりという変化に課題を感じる卸業者が増えました。
 
店舗側でも、特に飲食店では時短営業や休業しているところも多く、新商品の案内を対面では受けたくない、受けられないという思いがありました。両者の課題を解決できる業務効率化のツールとして、『TANOMU』を活用していただいているような状況です」
 
コロナ禍に導入が進んだ要因として、人員が減り、筋肉質な体制にならざるを得なかった卸業者の事情も大きく影響しているそうだ。
 
「今までは事業を拡大するために人がいて、労働集約型で売上を高めていく仕組みが一般的だったと思いますが、コロナ禍で商売が突然止まってしまったタイミングで、卸業者の多くは人件費を削減する選択を強いられていました。人員カットという苦渋の決断に踏み切ったのち、コロナ感染対策の緊急対応が収束してくると社会活動の復調で売り上げが猛烈に伸び、今度は人員不足に陥っています。こうした背景のため、少ない人員で仕事が回る体制作りに取り組もうとする事業者が増えたのが、大きな変化ですね」
 
最近高まっているニーズは、業務効率化にとどまらない。『TANOMU』を販売促進に利用する卸業者がどんどん増えている。
 
「『TANOMU』を活用すれば、卸業者が取引先の飲食店に対してLINEやメールを使って、新商品や特価品を案内することができます。タイムリーな情報発信で販売機会を増やし、売れ残りを削減できるというわけです。『TANOMU』を活用している卸業者のなかには、賞味期限間近のハムをたった3分で完売できたケースもあります」

理想ではなく、現場に寄り添いながらDXを進める

卸業者の業務を一気にDX化することは不可能に近い。そのことを川野氏はわかっているからこそ、現場の習慣をできるだけ変えず、段階的にデジタル化していくことを心がけている。
 
「理想は大切ですが、頭でっかちに変えようとすると現場に混乱が生じます。例えば、既に前向きに取り組もうとしている担当者の方に他社の成功事例を先に見せると、その方はDXで全てを一気に変えたいと思ってしまうのです。しかし、組織が大きかったりすると社内の温度感が一定ではないので、特定の部署・人員だけでデジタル化に取り組んでもなかなか前に進みません。そういうときには、顧客企業の中のキーマンを見つけて、しっかり背中を押しながらもひとつずつ着実にオンボーディングすることが大切になってきます」
 
最近では小規模の卸業者や飲食店だけではなく、大手での導入も進んでいる。導入店舗数も増加を続けている上、食品卸での採択だけでなく様々な業界に広がりをみせる『TANOMU』。だが川野氏のなかでは流通のDX化がまだまだ進んでいないという。
 
「当社以外のシステムを活用しているケースなども見聞きすると、受発注のデータがデジタルに変わっただけで、やっていることはアナログだったりするんですよ。例えば、LINEやメールなどのオンラインで発注が来たとき、見た目はデジタル化されています。ですが、そのあとで入力し直したり電話で事務員さんに連絡したり、今までと業務の中身が変わっていないことが多々あります。そういった課題についても、現場とのコミュニケーションを重ねながらさらに改善していけたらと思います」
 
食品流通の真のDX化を実現するために、タノム社のなかで今求められているのがインサイドセールスの存在だ。
 
「どんなにデジタル化が進んでいったとしても、店舗と流通事業者の間をつなぐ卸業者はなくてはならない存在です。彼らの課題に寄り添うのが、インサイドセールスの重要な役割です。当社のセールスの裁量は大きいので、ときにはカスタマーサクセスにも携わりながら、顧客の成長に対して一気通貫でコミットできます」
 
実際にタノム社で活躍しているのは、どんなメンバーが多いのだろうか。共通するマインドセットについて聞いてみた。
 
「タノムの社員に総じて言えるのが、お客様の課題に直面したとき『何とかしたい』と感じるメンバーが多いこと。市場環境や営業の数字にこだわることなく、課題解決を最優先に取り組んでいます。職場環境は基本的にリモートなので、北海道、秋田、福岡、鹿児島などあらゆる地域からジョインしています。営業メンバーやエンジニアも、課題解決にコミットしながら自由なかたちで働いていますね」

あらゆる業界の「受発注」課題を解決していく


川野氏が『TANOMU』を通して実現しようとしているのは、食品流通業界にとどまらない。さまざまな業界でホリゾンタルに使ってもらえるサービスを目指している。
 
「飲食業界に限らず他の業界でも、受発注の課題を解決するために『TANOMU』を活用するケースが増えています。例えば、理・美容業界や生花業界、さらにはペットフード業者、包装資材の卸業者まで、さまざまな卸業者で導入が進んでいます。今後は社会を俯瞰(ふかん)する広い視点を持ちつつ、『食』の業界もまだまだ広いので『受発注といえばTANOMU』といわれるくらいサービスを成長させたいです」
 
最後に、タノムでどのような仕事のやりがいを感じられるのか、率直な思いを聞いてみた。
 
「IT化が進んでいる業界の場合、課題が明確で解決できる範囲が狭いことも少なくありません。その点、『卸』の業界はこれから本格的にDX化が始まるようなステージなので、悩みを抱えている方がとにかく多いのです。誰かが困っているのを放っておけない方に、ぜひジョインしてほしいですね。現場で喜びを共有しながら、お客様と一緒に成長できると思います」
 
取材・文:VALUE WORKS編集部

会社名 株式会社タノム
本社所在地 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-6-7 トーエイ・ハイツ 1A
役員 代表取締役:川野 秀哉
事業内容 Webサービスの運営・開発事業
資本金 1億円
設立年月 2010年4月(事業開始:2017年5月)

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