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  • 2024.03.08

ブランドの概念はない。ファッション共感型アプリで、サステナブルなファッションビジネスを | 株式会社bodaijyu

OEMメーカーとして長年にわたりアパレルブランドの製造を手がけてきた株式会社bodaijyu。2024年2月には培ってきた製造ノウハウを活かし、ファッション共感型アプリ『tomeme(トゥーミーム)』をローンチした。『tomeme』は「必要なものを必要なだけ作り必要な人に届ける」をコンセプトに、洋服をつくりたいクリエイターとその想いに共感するユーザーをつなぐプラットフォーム。商品作りへの想いや制作過程などをクリエイターが公開し、その内容に共感したユーザーの「いいね」「ほしい」などの反応数に応じて、生産量を決めていく画期的なサービスだ。

『tomeme』にはブランドという概念がなく、長年ブランドやファション産業が抱えてきた大量生産・大量廃棄などの問題にも一石を投じるプロダクトである。今回は、同社COOの波多野氏に5年間の構想期間を経てサービスをローンチした苦労や経緯、ものづくりに対する想い、将来的なビジネスモデルの展開のビジョンなどについて伺った。

【プロフィール】 波多野 拓人
株式会社bodaijyu 最高執行責任者 COO。大学卒業後、服飾の専門学校へ通い、アパレルについて学ぶ。卒業後、OEMメーカーを経て、現職。現在は株式会社bodaijyuでアパレルブランド向けに法人営業を担当。アパレルOEMとしての営業/生産管理を担当するかたわら、ブランド概念ではなく個人単位でコミュニティ型企画生産販売を可能にするプラットフォーム『tomeme』をローンチ。

ブランドのオルタナティブとして「点」にフォーカス


ーー今回リリースされた『tomeme』の概要について教えていただいてもよろしいでしょうか。
 
『tomeme』は、サービスのインターフェース上でクリエイターの方がアパレルをプロデュースし、ユーザーと交流をしながら、ほしいものをほしい人に届けるサービスです。クリエイターの方がプロデュースされたアパレルを、当社で生産・販売・配送まですべて担うことができるのが大きなポイントとなっています。
 
ーー『tomeme』を立ち上げられた背景には、これまで波多野さまがアパレルOEMの営業・生産管理などを担当されていて感じた課題点もあるのですか?
 
はい、私は『tomeme』の事業と並行してアパレルのOME事業を担当していますが、そこで培ったものづくりのノウハウを活かして、全く違うサービスを開発しようと思っていました。ブランドを成立させるには、アイデンティティーや世界観を体現していく必要があります。そのためには、複数のスタイルを用意し、アクセサリー類まですべてトータルでコーディネートしたものを各シーズンごとに見せていく、つまり「面」で見せることが求められます。
 
けれど、それらを商品化した際に必ずしもすべてが売れるわけではないですし、一方で必ず売れ筋になるものは原価率をなるべく下げてブランドとしてはトータルで利益が出る形にしているとは思います。しかし、アパレル業界全体がそういうことをしていたら環境問題にもつながります。「ではアパレル業界にとって本当の意味でのサステナブルってなんなんだろう?」と考えたときに、 「全部が全部ブランドビジネスである必要はないよな」と思いついたのがスタートです。
 
ーーなるほど。必ずしもすべてがブランドビジネスである必要はない、と感じたのがきっかけだったのですね。
 
はい。ブランドが乱立している現代において、オルタナティブ的な立ち位置のビジネスがあってもよいと感じました。ブランドではなくても、「これをつくりたい」と思う人がいて、それを「ほしい」と思う人がいて、 その思いを最短距離でつなぐスタイルがあってもよいのではないかと思ったのです。
 
『tomeme』は、「面」で作っていくブランドとは真逆の、「点」にフォーカスしています。クリエイターさん自身にもストーリーがあって、たとえばバストが大きいことが逆に悩みだったクリエイターさんが、 それをポジティブに捉えて悩みを解決するアパレルを作ろう、といった形です。さまざまな課題やアイデアに対して、「こういう商品があったら自分も着たいし、同じような課題を抱えているユーザーさんにも共感してもらえるだろう」といった発想が元になっています。
 
必ずしもクリエイターさんが作る各商品がすべてリンクしている必要はないし、春物を作ったら次に夏物を作らなくてはいけないなどの制限もありません。その時々の状況に合わせて商品を提案することができます。必要としてる人に必要なだけ届けることがコンセプトの真ん中にあるので、その際、必ずしも従来のようなブランドを形作る必要はないと考えています。
 
ーーたしかに、従来のブランドビジネスに対するオルタナティブな視点ですね!
 
ただ、私自身ブランドが大好きですし、そこに真っ向から勝負を挑むビジネスではなくて、共存できるビジネスだと思っています。既存のブランドビジネスがあるからこそ、私たちはその各ブランドの間にある小さい穴を埋めていく役割を体現できると思っています。
 

想いに共感してくれるエンジニアの助けを借り、資金面の課題を解決

ーー『tomeme』は商品の生産・梱包・配送まですべてを担うとのことですが、構想からローンチまで5年かかったと伺っています。資金面や技術面の課題や苦労はやはりありましたか?
 
最初のハードルは資金面でした。生産から顧客に届けるところまで一貫して担うシステムをゼロからつくろうと思うと、とてもつもない費用がかかります。小さな規模の会社のためその部分でなかなか実行に移すのは難しく、最初の3年間は「ブランドとは何なのか」などの構想をひたすら練り上げていく期間でしたね。
 
ーーなるほど、やはり資金面は相当苦労されたのですね。
 
はい。ただ5年前、構想した当初に資金面をクリアできてサービスをローンチできていたとしても、個人がプロデュースした服を買う行為が当時はまだあまりメジャーではなかったと思うんです。ローンチまでに時間がかかったことによって、結果的にこの5年間で物がよければ個人からでも服を買う流れがだんだんと民主化されてきてよいタイミングになったと思います。
 
それで、個人のクリエイターから服を買う流れができてきて、これからも増え続けるだろうと確信を持てたタイミングで、構想していた『tomeme』を形にしようとなりました。ハードルだった開発に関しては、当社の代表が知り合いのエンジニアたちに掛け合い、サービスの構想やゼロベースで開発することに意義や面白みを感じてくれた人に協力してもらうことができました。
 
ーー『tomeme』のサービス面の作り込みで、特に工夫した点や苦労した点があれば教えてください。
 
『tomeme』のクリエイタービジネスは、必要なアイテムの企画を必要な時に立ち上げて、必要な人に届ける流れです。この企画が立ち上がってから実際に商品化されて販売されるまでのスキームをどこまでユーザーへオープンにして見せるかは悩みました。アプリのインターフェース上でどのように見せれば消費者にとって受け入れやすいんだろうと考えて、紆余曲折があって今の形に至りました。

ーーたしかにどのようにアイテムができるか見られるのは消費者も興味深く感じそうですね。
 
はい。アイテムをつくっている段階から見せたかったので、クリエイターがこういうことに悩んでいる、とか、 みなさんどっちがよいと思いますか、とか発信するのもアリだと思うんです。けれど全てを見せてしまうデメリットもあります。アパレル商品は企画してから実際に販売に至るまで多くの事務的作業があるので、その全てを見せると消費者はややこしく感じると思います。なので、どの部分を見せてどの部分を見せないかの取捨選択はかなり議論しました。
 
ーー消費者の購買意欲や熱意が落ちないように見せる部分を考えるのは工夫のしがいがありそうです。
 
そうですね。今回ローンチしたタイミングのUIが100点満点だとは当然思っていません。これからアップデートをしていきながら変わっていくと思います。今のタイミングでは、親しみやすさを考えてSNS的要素を強めにした方が見やすいと思いそのようなUIにしていますが、今後の展開によってはSNSの要素を徐々に減らしていく方向も有り得ます。アイテムが完成していくストーリーを、効果的にシンプルに伝えられる方法を模索していきたいです。
 
ーーローンチ間もないですが、クリエイターやユーザーからの反応はいかがですか?
 
まだローンチしたばかりなので、把握しきれてない部分とか、私たちが思った以上にところまで届けられてない部分はあります。ただ『tomeme』に参加してくれているクリエイターさんにファンから届く声は少しずつ聞けています。やはりその方が服を作るのを待ち望んでいたという声は多いですね。また、クリエイターさんが、他社から商品化を打診される場合は大抵ブランド化を前提としたお話なんです。ブランド化となると、やってみたいけれど大変そうだなと思っている人も多いです。その点『tomeme』はもう少し気軽に挑戦できると魅力的に思ってくれている人も多いようです。
 

販売よりも、「つくる」ことに興味があった


ーー波多野さんのキャリアについてもお伺いしたいです。大学を卒業されて就職も決まったものの、服飾専門学校に入学されてアパレルのものづくりを学ばれたと伺っています。改めてこれまでの経歴を伺ってもよろしいですか?
 
もともと「好きなことを仕事にしたい」と考えていたので大学卒業後はアパレル業界で就職先を探していました。最終的に大手アパレルブランドに内定したのですが、売上を追求する風土が強く、自分には合わないと感じてしまい……。どちらかというと、洋服をつくることそのものに興味があることに気づき、就職を辞めて服飾専門学校に入学しました。
 
ーーその後、アパレルのOEM企業に入社されたとのことですが、そこで貴社の代表の石原さまと出会われたと伺っています。
 
はい。私が専門学校卒業したてでアパレルのOEM企業の面接を受けたのですが、その時に面接をしてもらったのが今の当社代表の石原でした。石原の下でOEMの業務を通して服作り全般を学んだことが大きな経験となっています。ただ、その企業でブランドビジネスを進めたこともあるのですが、結局そのブランドは辞めてしまったこともあり、ブランドビジネスの難しさも痛感しましたね。それが『tomeme』の構想につながった部分もあると思います。
 
ーーOEMの業務では具体的にはどのようなことを担当されていたのですか?
 
OEMメーカーのほとんどは大企業ではないので、業務が縦割で細分化されておらず、自分で営業から生産管理、事務処理、貿易の手続きなどもすべて行う形でした。ものづくり側である工場と、お客さまであるブランド側との間に立つポジションだったので、どちらに対しても営業としてバランスを取る面も求められましたし、さまざまな管理や手続きなど、あらゆる工程のスキルは一通り身につきました。
 
ーー1人ですべての工程を担当するのは、『tomeme』の一気通貫型のサービスと重なる部分がありますね。それらの職種を経て現在貴社のCOOをされていますが、組織の作り方などで意識している点はありますか?
 
1人1人がスキルを持って、その個人の集合体が結果として組織の形になるというフラットなイメージを意識しています。そういった考えに協調してくれる人をどんどんつなげていって、大きな塊になっていくのが理想です。インフルエンサーかつ、デザインからパターンを引くことまですべてできる完全自走型の人がいればそれはそれでぜひジョインしてほしいですが、そういった方にはなかなか出会えません。
 
デザインできてパターンは引ける人、ファンマーケティングを活かして商品を売ることができる人が2人1組でチームになれば結果は出せます。このようなチームを増やしていけるとよいと考えています。実際、事業を大きくしていくときにボトルネックになるのがものづくり側の人手です。クリエイターさんが増えれば増えるほど、ものづくりができる人数も必要になります。いかにその人材を確保していけるかに、事業展開がかかっていると思っています。
 

ジャンルレスに「製造サステナブル」な世界を拡張したい


ーー今後の展開としては、どのような挑戦や展望を考えていらっしゃいますか?
 
短期的な目標は、『tomeme』の認知拡大です。今は各クリエイターさんについているファンがその服を買うために『tomeme』を利用する動線ですけれど、クリエイターさんが増え購入できる商品の選択肢も増えれば、まず『tomeme』にアクセスして、知らないクリエイターさんの商品にも出会うきっかけが生まれる流れを作りたいです。
 
中期的な目標はリアルの場を設けることです。クリエイターさんがプロデュースしている商品のサンプル品を実際に試着できる場をつくりたいと思っています。たとえば明治通り沿いの路面の1階を店舗兼事務所みたいに借り切って、1階を試着スペースにして解放する手もありますし、ファッション商業施設でポップアップを展開し、全国を回っていく手もあると考えています。タッチポイントとして、実物に触れてもらえる場を設けることで、リアルで触れた人の声が拡散していくのが大事だと思います。
 
長期的な目標でいうと、服だけでなく、アクセサリーや靴、カバンなどと広げていきながら、最終的にはアパレルというジャンルの縛りも外して展開する構想もあります。『tomeme』ならではの、作る過程を見せて、どのぐらいほしいっていう人がいるか、「ほしい」ボタンを推してもらって受注予測につなげて、なるべく在庫は積み上げず、必要なだけ届けるという製造サステイナブルな仕組みを他のジャンルにも持ち込めないか考えています。
 
インテリアや農業、さまざまな形があると思いますが、どのジャンルであれ川上も川下もない、クリエイターとユーザーがフラットにリンクして一緒にものづくりをする概念をつくりたいと考えています。
 
ーー製造サステイナブルというのはこれからの時代に必要な考えですね。
 
そうですね。『tomeme』で買った商品を二次流通させたいと考えたとき、外部のフリマサービスなどを使うのではなく、『tomeme』内で商品が循環する仕組みを作りたいと思っています。そこにポイント制の仕組みも組み込むと、たとえばあるクリエイターさんの商品を買ったり売ったりするとポイントが貯まり、そのポイントは次にクリエイターさんが企画した商品を買うときに使うことができる。となればそこで循環が生まれます。私たちのような小さな企業が工夫できるのは、つくりすぎないということと、いかにしてそのアイテムが次の人に渡っていくか、という点だと思っています。
 
ーー今回、この記事を読んで貴社にジョインしたいと感じる人も多いかと思いますが、貴社で働くにあたって、どんなマインドやスキルを持っている人が合うと感じますか?
 
一番は自分でものづくりをして売ってみたいと思っている人ですね。スキルとしてはパタンナーなら3Dを扱えることが必須になります。またパターンは引けなくてもデザインして売ることに自信がある人。そしてそれを楽しいと思える人と仕事をしたいと思います。
 
ーーありがとうございます。では、貴社にジョインしたい人にメッセージがあればぜひお願いします。
 
ものづくりのスキルをお持ちで、かつそれを楽しめる人にぜひジョインしていただきたいと感じています。また、当社は副業もOKとしているので、『tomeme』では各クリエイターさんの下支えとしてものづくりの裏方を担ってもらいつつ、同時並行で自分自身も好きなものを作って売っていくことも大丈夫です。ものづくりが好きな人には縛られない形にしていますし、社員クリエイターみたいな形で収入形態を作ることもできます。そういったメリットもありますので、興味をお持ちの方はぜひ応募していただければと思います!
 

取材・文:伊藤 鮎

会社名 株式会社bodaijyu
業種 商業(卸売業、小売業)
本社所在地 東京都渋谷区渋谷1-23-20 松本ビル6階
電話番号 03-6805-2765
代表者名 石原雄三
資本金 30万円
設立 2012年07月
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