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  • 2021.10.26

リサイクル業界に求められるのは「クリエイティビティ」。 赤字から年商70億円に成長させた4代目社長の経営革命

今まで営まれてきた生産、消費、廃棄という一方通行の経済モデルが頭打ちになりつつある今、資源を循環的に利用する「サーキュラーエコノミー」への転換が推進されている。従来廃棄されていたゴミの中から、新たな資源を採用することも可能になっていく。

サーキュラーエコノミーを実現するため、2018年5月に設立されたのがトライシクル株式会社(サイクラーズグループ)だ。AI技術を用いた世界初のB2B サーキュラーエコノミー対応プラットフォームアプリ「ReSACO(リサコ)」の開発に着手し、翌年に正式リリース。2020年9月には23,000坪の土地に「ReSACOリサイクルセンター」も完成させている。

さらに同年にはホールディング体制に移行し、サイクラーズ株式会社を設立。その傘下に各事業会社を置く体制でリサイクルのビジネスを展開し、中核の東港金属株式会社の年商は70.3億円にものぼる(2019年12月)。

代表を務める福田氏は、循環型経済で重要な役割を担うサイクラーズグループをどのように築き上げたのか。そこには、28歳で父から受け継いだ“赤字”のリサイクル事業と、経営改善のために奔走する苦難の日々があった。

【プロフィール】
福田 隆
サイクラーズ株式会社/トライシクル株式会社 代表取締役。
大学卒業後、ベアリング大手のミネベア株式会社(現ミネベアミツミ株式会社)、外資コンピューター企業のEMCジャパン株式会社(現DELL-EMC株式会社)で営業の経験と実績を積む。その後、家業を継ぐため資源リサイクル業の東港金属株式会社に入社。前社⾧(父親)の急逝に伴い、東港金属株式会社の 4 代目社⾧に就任して事業を拡大。サーキュラーエコノミー(循環型の経済システム)を実現するため、2018年にトライシクル株式会社を設立。2020年にはホールディング体制に移行し、サイクラーズ株式会社を設立している。趣味はロードバイク。

話し下手の新卒時代に気付いた「営業のコツ」

福田氏のファーストキャリアは、ベアリング業界の大手・ミネベア株式会社でスタートしている。1996年に営業職で入社した福田氏は、研修期間が終わってすぐに大手企業の担当へ配属されたという。
 

「当時の社内には、若手にどんどん経験を積ませる文化があったんです。仕事の裁量が大きかったのでやりがいがありましたね。ただ、営業ではなかなか要領が掴めず、社内とお客さんの両方から怒られたりしていましたけど(苦笑)」
 

人とのコミュニケーションに苦手意識のあった福田氏は、顧客への営業トークに悪戦苦闘。試行錯誤の日々を過ごしていたが、ある時ブレイクスルーとなる「営業のコツ」に気付く。
 

「気付いたことはすごく単純で、お客さんから頼まれた事を必ず最後までやりきることです。それぐらいのことなんですけど、意外とそれをみんなできていないことが分かって。社内調整がつかないと、そこで諦めてしまうことが多いんです。予算やスケジュールなど色々な事情があると思いますが、私の場合はお客さんと約束したことを絶対に最後までやりきることを実践しました。話下手が改善されたわけじゃないんですけど、そこから少しずつ仕事が取れるようになりましたね」
 

売上に貢献する中で周囲の評価が高まり、ついには社内の表彰を受けるほどに。仕事のやりがいと楽しさを感じながら、どんどん営業にのめり込んでいく。
 

「製造工場もあったので、オペレーションやオーダーの仕方、営業とのコミュニケーションなどを学ぶことができました。実際の製造現場を目の当たりにできたことは、現在の経営にも活きていると思います」

 
その後、自分の力を試すために外資コンピューター企業のEMCジャパンへ転職。人材の入れ替わりが激しい中で、自らの営業スキルに磨きをかけていった。

 
「実力主義の外資企業で戸惑うことも多かったのですが、そこで面白かったのは、営業スキルや営業活動を属人化させることなく、科学的に分析していたことですね。営業手法がシステムとして確立されていたので、とても勉強になりました。営業の方法はそこでしっかりと教えてもらった感じですね」
 

父親が営む赤字のリサイクル会社へ

福田氏にとって最初の転機が訪れたのは、EMCジャパンに入社してちょうど一年が経とうとしている頃だった。
 

「リサイクル会社を営んでいる父から、『いつになったら戻ってくるんだ。跡取りがいないと、設備投資もできないじゃないか』という話をされたんです。家業を継いで欲しいという空気は前々から感じていたのですが、具体的な時期は決めていなくて。2社で営業の経験を十分積むこともできたので、そろそろかなと思い退職を決めました」
 

2002年の2月、創業100年目を迎える東港金属株式会社に入社。3代目社長の父親のもと、新規顧客の開拓に取り組むこととなった。そこで直面したのは、営業活動に対する意識の低さだった。
 

「そもそも社内で営業をほとんどしていないので、真面目に取り組んだらもう少しお客さんを取れるのではないかと感じていました。とにかく動こうと思い、安いスクーターを買ってガンガン飛び込み営業をやりました。一週目でたしか50件ぐらい飛び込み営業をして、4社がお取り引きになったんです。飛び込みで8%ぐらい契約が取れていたので、他の業界に比べてすごく恵まれていると思いましたね」
 

高い成約率の背景には、当時のリサイクル業界の状況があったそうだ。他の業界に比べると発展が遅れており、同業他社でも営業活動はほとんど行われていなかったそうだ。
 

「業界でインターネットがまだ普及してないですし、ホームページが無いところも多かったと思います。そういう時代ですから、他社のことを調べる方法がないんですよね。でもみんな『コストがこれでいいのか?』とか『取引している会社が横柄で困っている』という風に、課題を感じているわけです。そこに営業で伺ったので喜ばれたのだと思います」
 

順調に数字を伸ばしていく福田氏だったが、入社から7か月目に思いも寄らない不幸に直面する。それは3代目社長を務める父親の急逝ーー。
 

「驚きや悲しさと同じくらい『残った会社を何とかしなきゃ』という使命感が強かったと記憶しています。社長をやろうとする人がいなかったので、中間管理職などを全部すっ飛ばして『それなら私がやります』と手を挙げました。ただ、現状把握すら十分にできていなかったので、経営面での不安はかなりありましたね」
 

28歳の新社長・福田氏が実践した経営改革

葬儀後に福田氏が目にしたのは、目を覆いたくなるほどの赤字金額だった。福田氏は惨状を何とかするため、今まで培ったスキルを活かして営業部門の強化に取り組みはじめる。
 

「入社後の経験から新規営業で成果が出ることは分かっていたので、まずはみんなで営業に専念することにしました。今までは営業担当が現場作業との兼任でやっていましたが、それを営業のみの専業にしたんです。新規営業はもちろん、既存の顧客にもどんどんあたっていきましたね」
 

福田氏は工場のレイアウト変更にも着手。顧客を第一に考えての最適化・効率化だった。
 

「当時はオフィス(本社事務所)が工場のド真ん中にあって、お客さんが入りにくかったんです。これを無くそうということで、社長就任の翌年には事務所を取り壊し、レイアウトを変更しました。工場の作業にとっても、かなり非効率な配置だったんです。各設備のレイアウトを変えていくと、どんどん仕事が回って生産性が上がっていきましたね」
 

就任時に赤字だった経営の数字は、翌年には早速黒字に。しかし、社内の仕組みを色々と変えたことで、役員の入れ替わりなど組織の“成長痛”が起こってしまう。
 

「社内の合意形成には苦労しました。ただ当時の苦しい状況で、現代のようなミッションやビジョンを伝えても、なかなか理解してもらえないと思いました。それよりも重要だと考えていたのは、『成功体験』を一緒に積み上げていくことです。顧客の課題に粘り強く取り組むことで売上が高まり、待遇の改善につながることを伝え、『この方法で良かったんだ』と感じてもらえるようにみんなで進んでいきましたね」
 

福田氏の経営理念の基になったのは、ある野球解説者の言葉だった。連敗が続き最下位に低迷しているチームに対して、どのように立て直していくべきなのかアドバイスしていた言葉を鮮明に覚えているという。
 

「苦しい時には色々なことをやろうとするんだけど、それよりもまず身近なところから改善することが大事なんだと。例えば、打ったらとにかく一塁まで全力で走る、相手のピッチャーになるべく多くの球数を投げさせる。一人ひとりが意識して、できるところから取り組んでいくと、だんだんチームの雰囲気が変わって勝てるチームに成長していく。その話が昔から好きで、当時の状況にあてはまっていたと思います。まずは身の回りのできるところから、1個ずつやっていこうという感じでした」
 

着実な経営改善が実り、毎月の取扱量は倍々のペースで増加。売上もそれに伴って急激に伸び、完全な黒字経営に転換していった。
 

福田氏はそれに満足することなく、積極的に他社の工場を見学するなど、リサイクルの質を高めるための努力を続けていく。国内では北海道から沖縄まで、海外ではリサイクル大国のフィンランドやスウェーデンなど、最先端の技術や情報を取り入れることに余念がなかった。
 

「他のリサイクル事業者を社長就任時から見学させてもらうなかで、大型工場を開設する必要性を感じていました。取扱量が増えてきたこともあり、リサイクル工場の候補地を本格的に探し始めたのですが、なかなか受け入れてくれる工業団地が少なくて…。分厚い資料を作って事業者の皆さんに説明するなど、場所探しはかなり大変でしたね」
 

建設地を探すことに苦労しながらも、千葉県富津市に最適な場所を見つけ出す福田氏。すぐに着工し、2007年には敷地面積12,600坪の大型リサイクル工場が完成している。
 

この時に完成した千葉工場には現在、廃棄物から資源を抽出するヨーロッパ式の最新テクノロジーを導入。金属などを回収した後のゴミの中に含まれる、目に見えないほど微細な金属を回収することも可能だ。新たなリサイクルラインで、今後さらなる活用が見込まれている。
 

経済危機を乗り越え、サーキュラーエコノミーを推進

2008年に工場を稼働させたものの、すぐにリーマン・ショックの相場下落が経営に悪影響を及ぼす。その後に本格化するギリシャ危機のダメージはさらに大きかったそうだ。
 

「私の厄年にあたる2015年前後は、特に苦しい時期でしたね。市場でのシェアを高めるために、仕入価格を上げたりしていたのですが、ギリシャ危機で相場がジリジリと下がってくるような時期だったんです。その時に安値受注などをしていたので、黒字になっているものの利益が出づらいというか…。その状況を打破するため、今までよりも詳しく数字を分析するようになりました」
 

シェアや固定費を取るためだけに進めていた収益力の低い案件は極力カット。価格の改定も必要になってくるため、顧客に対して丁寧に説明しながら、経営改善を進めていった。
 

「2016年のトランプ大統領就任に伴う“トランプ相場”で、株価をはじめとした色々な価格が一気に上がったんですよ。その時に経営改善の効果が大きく出始めました。顧客との価格調整もある程度目処がついていたので、その後はどんどん利益が上がるようになっていきましたね」
 

会社の利益率と売上が高まったことで、以前から取り組もうとしていた新規プロジェクト「リサイクルのIT化」に着手できることに。サーキュラーエコノミーの推進に向けて、本格的に取り組んでいく。
 

「私たちの工場には、まだまだ使えるようなものがたくさん入ってきていました。『もったいない』という想いはずっとありましたし、もっと有効活用できないかと考えていました。そのため、2016年にメルカリのリユース・サービスが始まったときには『先を越された』と悔しさを感じましたね。資源を有効活用するために、私たちがもっと早くやるべきことだと思いました」
 

2018年にトライシクル株式会社を設立し、リサイクルにAIの技術を導入。画像認識機能(AI)を活用した業務用のフリマアプリ「ReSACO(リサコ)」をリリースしている。使い方はとても簡単で、ユーザーが手放したいものを撮影すれば、その写真に似た物がいくらで取引されているのか、すぐに知ることができる。
 

「以前は業界紙に取り上げていただくことが多かったのですが、今はB to Bの新たなフリマ事業ということで一般メディアにも取り上げていただくようになりました。皆さんが思っているよりも、リサイクル業界は面白いと思います。シェアリング、リメイク、リペアなどを活用し、それでも使えないものは技術力を駆使してもう一度生まれ変わることもできる。創意工夫のマインドがあれば、もっと自由にリサイクルを楽しめると思います」
 

リサイクルには「クリエイティビティ」が必要

2020年には23,000坪の土地に「ReSACOリサイクルセンター」が完成。これにより回収した不用品を一拠点に集積させ、大規模で高度なサーキュラーエコノミーを実現することが可能になった。本工場にはすぐにリメイクできる場所も完備されている。
 

「サーキュラーエコノミーを実現するためには、『クリエイティビティ』が必要なんです。例えば、今まで普通に捨てられていた椅子は、そのままリサイクルに出しても売れないことがあり、デザインを変えることが求められます。あるいは分解して部分ごとに活用することも。他にも、電動工具なら中のモーターだけを取ればその部品は売れることがあります。今までリサイクルできなかったものを、再利用できるように想像力を働かせることが大事だと思います」
 

2022年には美術大学出身の社員が入社するという。クリエイティビティの素養を持つ人材など、色々なスキルを持つメンバーが多く集まることで、業界全体が大きく変わっていくことは間違いない。最後に、今後の展望についても聞いてみた。
 

「リサイクル事業としての技術力を上げるために、製造業を見習わなきゃいけないと感じています。今までは廃棄処理をするというと、埋め立てをするために廃棄物を小さくするとか、燃やすために選別をするとか、いわゆる『処理する』という感覚だったと思います。これからはそうじゃなくて、廃棄物や再生資源を使って新たな商品を『製造する』という意識で、サーキュラーエコノミーを推進していく必要があります」
 

現場を支える技術力に加え、クリエイティブな発想力や、メーカー的な品質管理技術など、今まで以上にさまざまな能力が求められているリサイクル業界。これからの循環型経済を支えていくのは、あなたの中にあるスキルや知見かもしれない。
 

文:平原健士、撮影:鈴木智哉

会社名 トライシクル株式会社
所在地 東京都品川区南大井6丁目17番17号 U biz大森 4階
役員 代表取締役 : 福田 隆
事業内容 インターネットサービスの開発、運営、販売。ソフトウェア開発、販売、企業間でのリユース、リサイクル、廃棄までの取引を行うプラットフォームサービスを提供します。
1.インターネットサービスの開発と販売
2.インターネットサイトの運営
3.ソフト開発と販売
4.中古品の販売、加工
5.動画配信、メールマガジンの配信
6.リサイクル製品の販売
7.リサイクル設備機器の開発と販売
8.不動産賃貸
9.上記各号に付随する一切の事業
資本金 1000万円
設立年月 2018年5月22日
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