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- 2023.06.06
営業の声は、お客様の声。社会基盤の水準までサービスを深化させる、リーガルメディアの挑戦 | 株式会社アシロ
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それらの課題を解決するべく取り組んでいるのがアシロ社だ。法律・弁護士業界とインターネットを結びつけた「リーガルメディアサイト」を2012年に立ち上げ、ニーズに適した専門家との出会いをサポート。法律事務所の経営や顧客獲得にも寄り添いながら、弁護士の転職支援を行うHR事業を開始するなど、新規事業も積極的に進めている。
2021年にはコロナ禍の悪影響をはねのけ、東証マザーズ(現グロース)に上場。逆境に負けず成長を続けられる秘訣は、一体どこにあるのだろうか。その答えは、代表の中山 博登氏が創業当時から大切にしている「倫理観」にあるという。周囲に流されず顧客とユーザーのために突き進んできた、中山氏とアシロ社の歴史に迫る。
【プロフィール】
中山 博登
株式会社アシロ 代表取締役社長
1983年京都府生まれ。大学(法学部)卒業後、人材紹介サービス会社やメディア運営企業で営業職を経験。2009年にアシロを創業し、リーガルメディア関連事業を中心に展開。地域や相談内容を指定して、弁護士・法律相談所を検索できる「ベンナビ」や弁護士専門の転職サイト「NO-LIMIT」、管理部門特化の転職支援サービス「BEET AGENT」などを運営。コロナ禍においても事業を拡大し、2021年7月に東証マザーズ(現グロース)上場を果たしている。
経営者から学んだ「人」としての付加価値
中山氏のキャリアは人材業界の営業職からスタートしている。その選択には、団塊世代の事業家だった父親の存在が大きく影響しているという。
「父親は昼夜を問わず働いている昔ながらのビジネスマンで、家にいても固定電話に向かっていつも仕事の話をしていました。自分が営業職を選んだのは、コミュニケーション能力に優れた父親の背中を見ていたからなのかもしれません。あらゆる業界とつながりのある人材業界で経験を積み、いずれは自分も商売をやりたいと思っていたのです」
最前線で多くのことを学ぶため、創業から数年のベンチャーに入社。そのなかで「逆算思考」と「コミットメント」の徹底を学んだという。
「当時その会社で派遣事業を手がけていたので、たびたび数百人規模のイベントスタッフを短期間で動員していました。例えば、3日間のイベントでアルバイトを300人ずつ動員しなければいけないとき、1週間前なのにまだ80人ほど欠員していることがあったのです。そうなると、残り7日間で毎日電話をして1日15人を決めなければいけません。1人決めるのに30アポ(電話)必要だと計算すると、15人×30件=500件の電話をする。そのようにやるべきことを決め、徹底的に実践していましたね」
自分のスキルをさらに高めるため、メディア事業を展開するベンチャーへ転職。経営者のインタビューで構成された広告雑誌を担当するようになる。
「記事広告で構成されたフリーペーパーなので、広告主となる経営者に日々会い続ける必要がありました。在籍期間の3年間で溜まった社長の名刺の数は、3,500枚以上。毎日新たな経営者と会ってさまざまな視点に触れられたことが、貴重な財産になっています」
忙しい経営者たちのアポを取り続けるだけでも難しいことだが、それだけでは売上につながらない。彼はどのように商談の決定率を高めていたのだろうか。
「経営者の視点は鋭いので、生半可な提案では聞いてくれません。決定率を高めるために重要なのは、会う前の『下調べ』です。ホームページを見たときに会社の概要はわかると思いますが、求人内容やオフィスの立地や面積も必ず確認します。そして、売上や利益の見通しをつけておく。例えば、錦糸町駅から徒歩7分、30坪、従業員数20人の会社だとしたら、この時点で売上・利益は大体わかるんですよね。そのフェーズの社長が抱えている悩みはもちろん、服装まで大体想像がつきます。このケースならおそらく、錦糸町から秋葉原に移転して70坪のオフィスを構えたいはずです。あとはその仮説を検証しながら、どうすれば達成できるのかを考えて話し合うだけです」
つまり、彼が販売していたのは広告記事ではなく、顧客となる経営者に寄り添ったコンサルティング・サービスである。ビジネス課題を解決するためのアイデアが付加価値となり、多くの社長に支持されていたのだ。
「記事広告だけでは売れないので、さまざまなアプローチをしていましたね。その会社の経営課題を抽出して、その経営課題に対して記事をどういうふうに当てていくのか日々考えていました。根本的に抱えている経営課題は、記事だけではどうしても解決できないので、他社の事例や競合優位性など戦略を含めた提案もしていました。営業マンとしてではなく、『人』としての付加価値が求められる仕事だったと思います」
企業存続の危機のなかで見つけた、起死回生のビジネス
元々起業を考えていた中山氏だったが、実行に移したきっかけは父親とのやり取りにある。
「久しぶりに帰省したとき、父親から給料のことを単刀直入に聞かれたんです。私が当時の年収を答えると、『どんだけ要領が悪いんや』『人に使われ過ぎるのは良くないぞ』と言われました。それを聞いたときに、自分でビジネスを作って見返したいと思ったのと同時に、『これは起業に向けてのゴーサインだ』と勝手に受け取りまして(笑)。将来のために覚悟を決めて起業しました」
十分に準備もしないまま2009年に起業しているものの、今までの経験から不安はほとんど感じていなかったという。
「顧客の課題にしっかり寄り添いながら、適切な解決策を提案していけば、絶対に上手くいくと確信していました。というのも広告記事を販売していたときに、メインの課題だけではなくお客様から寄せられるニーズにも応えていたからです。例えば、車を買いたい、節税したい、お金を借りたいなど。それらの課題を解決するために、人と人をつなぐのがビジネスの基本だと思います」
起業時に行っていた事業は、成果報酬型の営業代行と各種のコンサルティング業務である。リーマンショック直後ということもあり、コスト削減のコンサルティングのニーズが高まっていた。
「不景気で厳しい状況ではありましたが、『これ以上落ちることはない』『あとは上がっていくだけ』と自分に言い聞かせ、新たなビジネスチャンスを探していました。さまざまなメディアの営業をサポートするなかで、相続に関するネット系メディアの代理店をスタートし、当時の売上に大きく貢献していました」
しかし、このメディアは運営会社の上場に伴って急きょ売却されることに。代理店契約を結ぼうとするが叶わず、それまでの顧客を全て返却することになる。
「このときは本当に困りましたね。ただ、救いだったのは売却先の企業が相続税をメインに扱いたかったこと。税理士が主なクライアントになるため、私たちのクライアントに多い弁護士とはバッティングしませんでした。そのため、売却先の会社に確認をとりながら、弁護士に特化したメディアを我々でつくることにしたのです」
2012年に「離婚弁護士ナビ」、2013年に「交通事故弁護士ナビ」と「相続弁護士ナビ」をローンチ。はたして、顧客の反応はどうだったのか。
「営業と一緒に弁護士事務所をまわり、新たに当社のサイトに掲載してもらえるようにお話しました。その結果、ほとんどのお客様が新たに開設したサイトも利用したいと快諾してくださったのです。このときにつくったサイトが、現在のリーガルメディアにつながっています」
利益がゼロでも、業界を変えるため誠実に取り組む
自社メディアを立ち上げても、開設当初は当然ながらユーザーの自然流入はゼロに等しい状況である。厳しい制約のなかで、中山氏はどのように自社メディアをグロースさせていったのだろうか。
「私たちを信頼して広告費を支払ってくださったお客様に、絶対満足していただきたいと思い、売り上げのほとんどの部分をGoogleのリスティング広告にかけていました。つまり、最初の頃は1円も儲からず私たちの利益はゼロの状態だったのです。それでも誠実にお客様へコミットし、満足してもらうことが、当時の弁護士領域には必要だと思っていました」
弁護士領域の広告が解禁されたのは2000年のこと。広告に対する弁護士のリテラシーが十分ではなかったため、そこにつけこむ悪質な業者が、数多く存在していたという。
「長期リース契約を結んだのに保守対応もせず、数十万円でつくれるHPを数百万円で売っていたり、先に預け金(デポジット)だけもらってそのまま音信不通になったり、とにかくひどいものでした。そういった状況を変えるためにも、私たちがしっかりと倫理観を持って弁護士の役に立つ広告配信を続けていく必要があると思ったんです。それと同時に一般ユーザーの視点でも、弁護士をすぐに探せるサービスにしたいと考えていました」
顧客とユーザーの利益を最優先に広告配信を続けた結果、3〜4か月後に少しずつトラフィックが出てくるようになる。その背景には、広告代理店に頼らず自社で進めてきた広告運用のスタイルが大きく影響している。
「代理店を使わないメリットは大きく2つあります。1つ目は、代理店手数料が発生せず、広告費を最大限活用できること。利益率の高さにつながるため重要です。2つ目は、お客様のフィードバックを直接受けられること。代理店に任せているとお客様から直接怒られる機会がないので、真剣に改善しようという気持ちがどうしても薄れてしまいます。一方、直販でお客様の困っている姿を目にしていると、広告運用を真剣に学ぼうとする気持ちが生まれるので、自然とパフォーマンスが高まっていきます」
「ベンナビ」(当時の「弁護士ナビ」)の成功を横展開しながら、新規事業を次々と開発していくアシロ社。サイトを立ち上げるきっかけの多くは、お客様から寄せられるニーズや課題感にあったという。
「営業が現場でお客様からニーズもらい、それを反映したサイトを次々立ち上げていました。例えば、ある見込み客が離婚に関するサイトに関心がなかったとしても、労働問題に力を入れていることがあります。そのときにある営業マンは、『労働問題の商品がなかったから売れなかった』と言いたくなるかもしれません。この営業の言葉は決して言い訳ではありません。私は『営業の声=お客様の声』だと思っているので、それを次の新規事業に活かしていきます」
「ベンナビ」の他にも、HR領域においては弁護士専門の転職サイト「NO-LIMIT」、管理部門特化の転職支援サービス「BEET AGENT」なども展開。個人ユーザー向けの保険サイトも展開するなど、一見バラバラに見える各事業だが、「顧客体験」という視点で見ると見事に連動している。
「例えば、あるユーザーが労働問題を解決しようとして法律相談を利用したとき、その後の転職まで支援してもらった方がうれしいのではないか。そんな思いで始めたのが、『キャリズム』という転職メディアです。一方で、転職するのが弁護士であれば、『NO-LIMIT』で新たな事務所を探せますし、法務部門に転職するなら『BEET AGENT』を使えます。つまり、一人のユーザーが抱えている派生的なお悩みを解決できるさまざまなメディアを運営しているので、LTV(顧客生涯価値)を最大化できるのです。顧客獲得のチャネルが多角的になるので、出稿金額の高い広告枠で他社と戦う必要がなくなり、顧客獲得の単価を抑えられます」
世界中の誰よりも深く、目の前の人を幸せにしたい
2021年に東証マザーズ(現グロース)上場を果たしているアシロ社だが、その準備は驚くほど順調だったという。
「予実管理がしっかりしていることに加え、創業当時からホワイトな環境だったことも影響しているかもしれません。新規事業が次々立ち上がっていたときにも、基本は7時までの退社で、遅くとも8時までには全員帰宅するよう指示していました。今は当社がリーガルメディアを運営していることもあり、全社でホワイトな環境への意識は非常に高いと思います」
上場後の2022年には新オフィスへ移転。各会議室には、中山氏が大切にしてほしい指針がそれぞれの部屋の名前として設定されている。「燃え盛れ」「愛をこめて」「やるか、やりきるか」などインパクトのある会議室名ばかりだ。
「クレドカードが昔流行しましたが、当社にとってはそれが会議室だったんです。仕事だけではなく、生きる上で大事にした方がいい言葉を選びました。7つの部屋の名前を決めきるまでに、半年くらいかかりましたね。言霊じゃないですけど、実際に口に出すことで日々の取り組み方が変わっていくと信じています。社員の人生が1ミリでも豊かになってくれたらうれしいですね」
社員一人ひとりの成長を大切にしながら取り組んでいる中山氏に、今後のビジョンについても聞いてみた。
「私たちが目の前のお客様を幸せにすることで、そのお客様が他の誰かを幸せにする。それが積み重なることで、社会がより良い方向へ変わっていくと信じています。アシロという社名は、世界最深地点で生存が確認された深海魚の名前(ヨミノアシロ)が由来になっています。『世界中の誰よりも深くユーザーとお客様を幸せにしたい』という創業当時からの思いを大切に、どこまでも大きく成長していきたいと思います」
取材・文:VALUE WORKS編集部
会社名 | 株式会社アシロ |
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本社所在地 | 東京都新宿区西新宿6-3-1 新宿アイランドウイング4F |
役員 | 代表取締役:中山 博登 取締役CFO:川村 悟士 |
事業内容 | リーガルメディア関連事業 HR事業 保険事業 |
資本金 | 6億800万円(2023年4月末現在) |
設立年月 | 2016年4月(創業2009年11月) |