コラム

休職のときに給付される「傷病手当金」の仕組みとトラブルを減らす申請方法

怪我や病気などで業務を行えなくなったとき、一定期間休職をする人もいるでしょう。筆者も、前職の仕事のストレスで心身の調子を崩し、3ヶ月間の休職をしました。ある程度のまとまった期間、仕事を離れて療養できるのはありがたいことですが、どうしても気になるのは収入面。仕事を休むということは、その期間、お給料は発生しないの!?と不安になるかもしれません。
 
そこでこのコラムでは、休職時に給付される「傷病手当金」の仕組みを解説します。この傷病手当金、仕組みをわかっていないと申請にも手間取ったり、なかなか支給されないなどの面倒な事態になることも……。休職するか悩んでいる人や、傷病手当金の仕組みについて知りたい人は、ぜひお読みください!

休職中に支給される「傷病手当金」とは

休職中に支給される手当について、まずは勤務先の職務規定を確認しましょう。企業によっては独自の休職手当制度を用意しているところもあるかもしれません。その場合は、その手当の受給方法を担当部署の人に確認してみてください。
 
ですが、中小企業などは休職期間は勤務先からは給料や手当は支払われず、休職者は「傷病手当金」というものを受給するように指示するケースがほとんどでしょう。私が以前勤めていた企業もそうでした。この傷病手当金は、加入している健康保険組合や健康保険協会から支払われるものです。
 
具体的には、
・業務外の理由による療養のため業務を続けるのが困難になった場合、業務ができなくなった日から起算して3日経過した日から、業務に関わることができない期間、給付される
※業務上で発生した怪我などは労災保険の対象となる
 
・同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から起算して1年6ヶ月を超えない期間、給付される
 
・1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額(休業した日単位で支給)が支給される
※国共済、地共済、私学共済等は条件が異なる場合あり
 
といった制度になっています(参考:厚生労働省保険局「傷病手当金について」)。
 
給付される最長期間は「1年6ヶ月」、支払いされる金額は「1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額」という点は、特に重要な点なので認識しておきましょう。
なお、企業によっては、診断書や、主治医からの休職を勧める意見書などが必要な場合もあります。そうでなくても、休職をしたいと企業に相談する場合は、自らの不調を伝えるだけでなく、できるだけ主治医からの意見などの客観的な理由や、通院の状況なども伝えられると、休職決定までスムーズに進むでしょう。

傷病手当金の申請の流れと仕組み

では、実際に休職するとなったとき、どのように傷病手当金を受給するか説明します。重要なことは、基本的に傷病手当金の受領は勤務先の会社に代理をしてもらい、勤務先の会社から自分に給付金が振り込まれる、という仕組みであることです。

上記の流れに沿って、手順を解説していきます。
 
①所属している健保の傷病手当金支給請求書をダウンロードします。書類は全部で4枚あることが多く、そのうち、休職者(自分)が記入するのは2枚です。まずは書類を持って、主治医に傷病手当金請求書の主治医の記載部分を記載してもらうように頼みます。その際、「発症時期」や「病状の具体的な説明」など、自分が記入する部分についても、どのような内容を書けばよいか確認しておきましょう。
 
②主治医に記入してもらった書類を受け取り、自分が記載する必要がある部分を誤りがないように埋めていきます。多くの健保では記入例を公開しているので、それらを確認しながら漏れのないように記入します。
 
③主治医と自分が記入する部分が埋まったら、4枚全ての書類(そのうちの1枚は勤務先の会社が記載するものなので何も記入する必要はありません)を勤務先に送付します。
 
④勤務先は書類を受け取ったら内容を確認し、問題なければ社労士に書類を送ります。
 
⑤社労士は内容を確認の上、必要部分を記入し、健保へ書類を送付します。
 
⑥健保は書類を受け取ったら、内容を確認し、支給額と振込日を決定します。なお、初回の申請の際には給付に値するかどうかの審査が入ります。審査は1ヶ月〜2ヶ月かかることもあることを覚えておきましょう。支給が決定すると、健保は所定の支給日に、勤務先の会社へ手当金の振込と、手当金支給の通知書の送付を行います。
 
⑦勤務先の会社は手当金支給の通知書を受け取り、手当金の振込を確認したら、休職者へ手当金の振込を行います。
 
以上が、傷病手当金の給付の流れです。給付に至るまで、非常に多くの人や組織が関係することがよくわかりますね。なお、こういった説明は、企業によっては休職に入る前にきちんと説明してくれることもありますが、中小企業などの場合、人事や総務などの業務に割ける人員がいないことも多く、こういった説明がされないこともあるでしょう。そのためにも、自分で上記の仕組みを理解しておくことが重要です。

傷病手当金をトラブルなく受給するポイント

ここまで、傷病手当金給付の仕組みを解説してきました。仕組みだけでもなかなか複雑ですが、さまざまな人や組織を介するため、傷病手当金がなかなか給付されない、ということもよくあります。ここでは、傷病手当金をトラブルなく支給してもらうためのポイントを紹介します。
 
・申請の期間を考える
傷病手当金は、1ヶ月以上であれば申請が可能です。そのため、休職を終えてからまとめて申請する人もいますし、1ヶ月ごとに申請する人もいます。まとめて申請するメリットは、上記の煩雑な手続きを1度で終わらせることができることです。また、医師に申請書を記入してもらう際に手数料が発生するので、その手数料を抑えることもできます。その一方、休職期間中は基本的には収入がないというデメリットもあります。
 
1ヶ月ごとの申請をするメリットは、初回の審査さえ通れば、以降は月に1度、給付がある点です。その一方、毎月書類を用意し、手続きを取る必要や、そのための費用も発生するデメリットがあります。
 
・初回の申請には承認までに時間がかかることを理解する
上記でも少し触れましたが、傷病手当金の初回申請時には、不正な申請ではないか、健保で審査を行います。この審査は、健保に書類が届いてからおおよそ1ヶ月〜2ヶ月間かかります。この期間を踏まえ、書類は早めに準備し、主治医への受診のタイミングを考えておくと、無駄な時間を省くことができるでしょう。
 
なお、初回の審査以降は、多くの健保では、申請書類が届いたタイミングに合わせ、毎月10日、20日、月末、など所定の日程に手当金を勤務先の会社に振り込みます。
 
・傷病手当給付金の受給対象か再確認する
傷病手当金は、休職中も勤務先から給与を支給されている場合や、障害厚生年金・障害手当金を受給している場合などは、支給の対象とならなかったり、支給されてもそれらとの差額のみの支給などとなる場合があります。また、労災保険による休業補償給付を受給している場合も同様です。自分がどのような手当金や補償金などを給付されているかは改めて確認しておきましょう。

お金の安心は心の安心!スムーズに傷病手当金を受給しよう

休職中はゆっくりと休めるものの、これまで支給されていた給与がなくなることは不安です。そのための制度として用意されているのが傷病手当金です。休職するほど心身が疲れていると、上記のような煩雑な仕組みを理解することも難しいかもしれません。ですが主治医に相談するなどして、できるだけ早めに手続きを取るようにしたほうが、お金の不安もなくなり、より休養に専念することができるでしょう。
 
また、自分はきちんと書類を提出したのに一向に音沙汰がないという場合は、躊躇せず、勤務先の会社や健保に確認しましょう。億劫に感じるかもしれませんが、傷病手当金の申請作業が後回しにされて放置されている場合もあります(筆者は実際に数週間放置されていました)。確認することで、どこで処理が詰まっているかわかり、手続きを早めてくれることもあります。これからのキャリアを考える余裕を持つためにも、傷病手当金を正しく利用して、ストレスなく休養できるようにしましょう!

 
【筆者プロフィール】
伊藤鮎
2023年VALUE WORKS入社の編集・ライター。前職は約10年間書籍編集者として勤務。趣味はHIPHOPとメタルコアとKPOPと料理とお酒。最近魚の三枚おろしができるようになりました!
 
\自分に合った転職先をお探しの方はこちらをクリック!/