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- 2024.07.09
世界30か国に日本の高品質な健康支援サービスを提供。海外駐在員の心身をサポートする「SaveExpats」の真価 | 株式会社SaveExpats
駐在員やその家族の健康不安に寄り添い、国を超えたリモート健診、保健指導、メンタル支援などを提供しているのがSaveExpats社である。現地への自己採血キットの宅配により、日本基準の健診検査が可能に。さらに日本人の医師・看護師をつなぐ健康相談サービスを提供することで、現地の生活事情に合わせた最適な保健指導を受けることができる。
創業メンバー全員が海外駐在の経験を持つSaveExpats社は、日本と世界をどのようにつないで事業展開しているのか。同社の代表・岩田 竜馬氏に、創業の原体験となったエピソードや今後のビジョンについて詳しく伺った。
【プロフィール】
株式会社SaveExpats代表取締役CEO
東北大学卒。大学では電力システムの研究を行い、新卒で大手総合エンジニアリング企業へ入社。中東、北極圏、アフリカなど海外へ赴任し、各プロジェクトのエンジニアとして、設計・調達・工程管理・品質管理や各国規制当局との調整業務など担当。帰任後は社内DX推進部門にて、DXに加えてスタートアップとのオープンイノベーションでの協業も推進。
海外駐在員の知られざる「健康不安」
岩田氏が海外駐在員の仕事に心をつかまれたのは、大学院で電力の研究をしていたときのことだった。再生可能エネルギーの知見を生かして電力会社を志望していたが、東日本大震災被災の影響で電力会社の採用が停止。就職先に迷っている中で、大手製造会社のプラント部で働く先輩と再会したことが、彼の人生の転機になっている。
「その先輩はオマーンに駐在していたのですが、たまたま一時帰国して研究室に遊びに来ていました。そのときに海外でプラントを作る、壮大な仕事のやりがいを話してくれたんです。世界中のビジネスパーソンと一緒に、巨大な生産拠点を作り上げる。3〜5年単位でプロジェクトが進行するので、いろいろな国で新たな経験を積むことも。たくさんの人生を経験できるような感覚で、ワクワクしたのを覚えています」
海外におけるプラント建設は、小さな街をつくるような大規模なスケール感である。発電所を建てつつ送電網を張り巡らせ、全体の最適化を図る。それらの一連の業務において、学んできた電力の知識を最大限活かせると感じたという。岩田氏はその後すぐに、大手総合エンジニアリング企業への就職を決意。大きな期待を持って入社した直後、最初に赴任したのは中東・カタールであった。
「仕事自体もハードでしたが、それ以上に大変だったのは言葉の壁ですね。入社時はTOEIC600点ほどで英語が得意ではなかったことに加え、現地の取引先相手はテキサス訛りのアメリカ人。業界特有の専門用語も加わり、最初は全くコミュニケーションが取れませんでした。当然ながら言葉の通じない日本人を現地では誰も相手にしてくれません……。それでも、日々の進捗と問題点を共有して、解決策を提案し続ける。悔しくても歯を食いしばってコミュニケーションを取り続けた結果、1年ほど経ったころには『それはあいつに聞け』と信頼してもらえるようになりました」
岩田氏の努力を見ていたのは取引先だけではない。一緒に働く海外駐在員の先輩や上司たちも岩田氏の様子を気に掛けており、何かあったときにはサポートできるように準備していたという。「自分がやらないと後がない」という厳しい環境で責任感が芽生えた岩田氏。最終的にはTOEIC900点を超えるほど英語が上達していたという。
岩田氏はその後インドネシア、中国、ロシアの北極圏、アルジェリアなどで⾧期駐在を経験。各セクションのリーダーやプロジェクトマネジメントのポジションを担っていたという。
「現場には時々、国営石油会社の社長幹部が突然あらわれることもありました。現場で働く作業員は3万人を超えるのに、そういったリーダーは一人ひとりの作業員の名前や家族のことをしっかり覚えている。みんなから愛されており、朝礼の挨拶はロックコンサートのように盛り上がります(笑)。圧倒的なリーダーシップに度肝を抜かれましたね」
エキサイティングな経験ができる一方で、海外駐在員の業務には健康面で課題も多い。岩田氏も自身の健康とパフォーマンスの維持が難しいと感じることもあったという。
「海外駐在員の約半数は、先進国以外で勤務しています。特に建設業や製造業などは、新興国の都市から離れたエリアに駐在するケースも多いので、安心できる水準の医療機関へ行くことが難しいんです。病院まで半日以上かかったり、日本の病院以上に待ち時間が長かったりするので、忙しい業務の中での通院が難しいのが実情です」
また、日本で健康診断を受けたとしても、日本滞在期間中に治療や処方が間に合わずそのまま現地に戻り、治療を中断する海外駐在員も多いそうだ。
「検査の結果は数週間ほどかかるので、現地に戻ってから結果が手元に届きます。そこで数値が悪化していれば現地の病院で再検査が必要になります。何とか現地の医療機関に通院できたとしても、各国で医療の判断基準が異なるため、日本では『所見あり』と出ていても、海外では『正常範囲内』と診断され治療や処方が行われていることもあります。また、海外で再検査をしたとしても分析方法や単位などが異なるので、日本での健診結果との比較ができません。海外で適切な医療サービスを受けるのは、想像以上に難しいのです」
上司と同僚を失ったことが創業のきっかけに
駐在中の小さな異変が、ときには命取りになってしまうことがある。岩田氏は駐在先で、上司や同僚を心不全などで亡くしている。
「駐在員に対して企業としてやれることは全部やっていると思います。しかし、日本のように頻度高くフォローアップを行うことは難しい。例えば、日本では健康診断で悪い数値が出たときに健康診断に行くように何度も連絡が届きますが、そのようなフォローが海外では義務化されていません。医療サービスがもっと身近に寄り添っていたら、悲劇を回避できたかもしれないと思うことが何度もありました」
そのような状況を解決しようと岩田氏が起業を意識し始めたのは、新型コロナウイルスの影響で日本に強制帰国したときのことだった。社内におけるDX関連の新規事業を担当するようになり、自身でも起業について考えるようになる。
「経済産業省のイノベーター育成プログラムに参加したとき、自分にとって何としても解決したい課題が何なのか考える機会がありました。そのときに、自分が海外駐在員として感じてきた課題に真っ正面から向き合うことに。悲劇を繰り返さないために、海外駐在員とその家族にとって最適なカタチを模索しました。課題を掘り下げようと大勢の駐在員やご家族の方々にヒアリングをさせていただく中で、課題解決の方法が少しずつ明確になり、具体的な事業内容を決めていきました」
長年所属していた大手総合エンジニアリング企業からの出向起業※というかたちで2022年にSaveExpatsを創業。「Expats」は「駐在員とその家族」を意味しており、世界で働く全てのExpats(駐在員とその家族)と派遣元の企業を支えることをミッションに掲げている。
※出向起業……⼤企業等に所属する⼈材が自ら会社を設立し、フルタイムで経営者として新規事業創造に向けた実務に従事。条件を満たした企業に対して、経済産業省が事業開発に係る費用の一部を補助している。
「本人が症状を自覚する段階では、既に重病を患っていることも多いのでその前の段階で何とかしたいと思いました。そこで考えたのは自己採血キットにより、日本基準の健診検査を受けられるサービス『SaveExpatsヘルスケア』です。わずか指先2滴の自己採血で結果が出るので、海外駐在員は都合の良いタイミングで採血して検査キットを日本に返送するだけ。その後、一週間以内にアプリで結果を見ることができます」
健診検査後の海外での通院負担を考慮して、『SaveExpatsヘルスケア』では日本人の医師や保健師をつなぐ医療サービスも提供している。
「現地にも日本人の医師はいますが、都市部に偏っているのが実情です。いたとしても全ての症状に対応できるわけではなく、専門外であれば別の医師を紹介してもらうことに。その結果、日本国内のように安心感のある医療者に看てもらうのが難しくなります。それらの課題を解決するために、検査結果にもとづいて日本人の医師や保健師をオンラインでつなぐ健康相談サービスを開発・提供しています。日本語で詳しい症状を伝えられるので安心感が高まり、待ち時間もありません」
日販アイ・ピー・エス社との連携で30か国以上に提供
創業後にSaveExpatsはどのように医療機関とのネットワークを築いていったのだろうか。医療サービスの提供にあたっては準備期間が長くかかることも多いので、SaveExpatsがスピーディーに医療事業を起ち上げられた経緯について聞いてみた。
「創業メンバーに医師はいなかったので、経産省のプログラムの中で出会ったドクターにジョインしていただき、医療者とのつながりをリファラルで広げていきました。新たに、大手メーカー等で産業保険師として長年赴任者支援を経験されてきた方や、海外駐在帯同で海外にいらっしゃる方を迎えられたことも事業成長に大きく寄与していると思います。そういった方々に現地の医療機関とのネットワークを広げていただき、現在は30か国以上で『SaveExpatsヘルスケア』を提供しています」
『SaveExpatsヘルスケア』の提供エリアが世界中に広がっている背景として、800社以上の海外進出企業・機関・団体との取引実績を持つ日販アイ・ピー・エス社との業務提携が大きく影響している。
「日販アイ・ピー・エスさんが提供している海外駐在員向けの福利厚生サービス『CLUB JAPAN』はサービス開始から40年以上ということもあり、多くの海外勤務者様に支持されています。業務提携前のお客様との商談でもよく名前が出てきていました。『CLUB JAPAN』のサービスを利用すれば、海外にいながら健康的な日本食品や生活雑貨、医薬品、進研ゼミを取り寄せたり、『SaveExpatsヘルスケア』を利用できたりするので、海外駐在員にとってなくてはならないサービスになっていると思います」
駐在員に向けた支援のなかで、特に引き合いが多いのはどのようなケースなのだろうか。『SaveExpatsヘルスケア』のニーズは、駐在員が働いている場所や人員配置と密接につながっているという。
「『SaveExpatsヘルスケア』は世界中の『営業拠点』と『製造・物流拠点』で特に導入が進んでいます。『営業拠点』に駐在しているのは主に商社のみなさんで、エリアとしては先進国の大都市に拠点を構えていることが多いです。一方で『製造・物流拠点』は日系企業の工業団地や運輸倉庫などで働いている駐在員の方々によく利用されていますね。配置されている人数も、拠点の種類によって一定の傾向があります。製造拠点の場合は集中的に人員が配置されており、100名以上をサポートすることも。一方で物流拠点(倉庫)の場合は2〜3名ずつですが、世界中に拠点があるのでニーズはどんどん広がっていきます」
各国の医療水準の向上にも貢献していく
大手企業で働く海外駐在員を中心に導入が進んでいる『SaveExpatsヘルスケア』だが、今後の展望についてはどのように考えているのだろうか。
「最初のステップとして、海外で働いている日本人の方々やその家族の『身体』をケアするサービスを行ってきましたが、現在は『心』のケアにも注力しています。駐在員が体を壊す前には必ずメンタル的な問題があって、成果を出すために働き過ぎていることもあるからです。それらの課題を解決するため、駐在員と日本の心理士や心療内科・精神科医とのつながりを今まで以上につくっていきます」
またその先のビジョンとして、海外駐在員だけにとどまらず中低所得国の医療に貢献していくことも視野に入れているという。
「例えば、私が過去に駐在していたインドネシアでは、首都ジャカルタで高い水準の医療を提供できているものの、都市部から少し離れたところでは非常に混雑している公立の病院ばかりでした。経済的な発展に伴い、感染症よりも生活習慣病の患者や死者が多くなってしまい、医療提供側のリソースがパンク寸前に。我々が提供している『SaveExpatsヘルスケア』の仕組みを世界中に届けることで、現地医療者のリソースを圧迫せず医療レベルの向上に貢献していきたいと考えています」
「国を問わず、どこに暮らしても、安心して働ける世界」の実現をビジョンに掲げるSaveExpatsが今求めているのはどんな人材なのだろうか。
「目指している将来像はぶれませんが、やっていくことは社会情勢や人々のニーズに合わせてどんどん変わっていくと思います。その中では一つの価値観にとらわれず、それぞれの国に合わせたコミュニケーションを設計していくことが必要です。さまざまな出会いを『学び』に変えながら、自分の成長を楽しめる方とぜひ一緒に働きたいですね」
取材・文:VALUE WORKS編集部
会社名 | 株式会社SaveExpats |
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本社所在地 | 東京都渋谷区東1-1-38-404 |
役員 | 代表取締役社長 岩田 竜馬 |
事業内容 | 海外駐在員・家族のための自己採血キットによる郵送検査サービス ”SaveExpats”を提供 |
資本金 | 4620万円(資本準備金含む) |
設立年月 | 2022年4月 |