コラム

業務改善命令はパワハラか?判断方法と、対処法について

先日5年ぶりに会った友人から「会社を訴えることにした」と驚きの一言が。これはただ事ではないと思い詳しく聞いてみると、昨年から勤めていた会社で上層部とのコミュニケーションが上手くいっておらず、意見を聞いてもらえないまま意気揚々と業務改善命令書を突きつけられたそうです。

「もう会社も辞める。あまりに理不尽。パワハラとして弁護士に依頼して労働基準監督署に訴える」と涙を流す彼女を慰めながら、社会人歴8年目になるにも関わらず聞き馴染みのない「業務改善命令」という言葉に、「本当にパワハラといえるのか?」「正式に業務改善命令を受けた場合、どのように対処したら良いのか?」と疑問を感じました。

そこで「業務改善命令を受けることはパワハラになるのか」「両者の違いと判断する際のポイントは何か」「もし実際に改善命令を受けた時の対処法はあるのか」について記事化しました。「業務改善命令なんて聞いたことがない」、「実際に命令を受けたがこの後どうしたら良いかわからない」という方はぜひ参考にしてください。

業務改善命令とは


業績や業務遂行能力が不適切だと判断した従業員へ、会社から正式に改善を求める通知のことを指します。通知には具体的な改善期限や改善方針などが記され、従業員に差し渡されます。社員の働き方や意識改革を促すため、重要な通知とされています。

パワハラとは


パワーハラスメント、通称パワハラとは、職場での人間関係におけるハラスメントを指します。上司による部下への労働上の指導が必要以上に行なわれ、心身に健康被害を与える行為を指します。

業務改善命令とパワハラの違いってなに?


業務改善命令=パワハラと認識されがちですが、業務改善命令を受けることが必ずしもパワハラにつながるわけではありません。では、業務改善命令とパワハラはどう違うのでしょうか。

ポイント1:明確な目的があるかの違い

業務改善命令は、生産性の向上や労働者のスキルアップ、職場全体の業績向上を目的としています。一方でパワハラは、明確な目的が存在しないまま従業員を威嚇したり、無理な要求をすることが多いです。

ポイント2:目的に対するアクションやサポートの提示があるかの違い

生産性の向上や業績向上が目的だからこそ、業務改善命令には具体的な改善アクションや達成するための支援について提示されるものです。しかしパワハラをしたいだけに業務改善命令を出している場合、要求が曖昧で達成不可能な目標が提示されることがほとんどで、達成へのサポートも特に提供されることはありません。

ポイント3:生み出す結果の違い

適切な内容の業務改善命令の場合、明確な目的と達成に向けたアクションにより労働者のスキルアップや作業効率の向上といった具体的な成果につながります。一方ただのパワハラだった場合、作業効率の低下、心的ストレスの増加、健康被害につながる可能性があります。

ポイント4:人間関係に与える影響の違い

業務改善命令が適切に行われた場合、業務に対する姿勢の変化や成果がもたらされることで、従業員間の協調性やチームワークが向上することがあります。しかしパワハラだった場合、逆に人間関係の悪化や職場全体の雰囲気が悪化する原因となる可能性があります。

ポイント5:法的な位置づけの違い

業務改善命令は、従業員の成長や職場環境の改善を行うために会社がもつ権限の一部とされています。一方でパワハラは、労働基準法によって禁じられており、重大な違反となり得ます。

業務改善命令がパワハラかどうかの判断基準


上述したように、適切な内容で行われる業務改善命令はパワハラには該当しませんが、不適切な内容の場合、パワハラに該当する可能性があります。とはいえ何が適切で不適切なのか判断することは容易ではありません。そこでもし業務改善命令を受けた場合は、以下の判断基準を参考にパワハラかどうかを判断すると良いでしょう。

基準1:侮辱的な言葉や態度を含んでいないか

業務改善命令は、指導の内容やその表現方法に侮辱的な言葉や態度を含んでいないか確認しましょう。たとえ厳しい指導であっても、その根底には専門的な知識や事態改善の為の意図から来るものでなければなりません。逆に、言葉尻を捉えて不快な感情を引き出すような発言や、罵詈雑言が含まれている場合は、それがパワハラである可能性が高まります。目的が相手を傷つけること、追い込むことにあるのなら、それは正当な業務改善命令とは言えません。

基準2:感情的な指導がされていないか

指導内容が感情によって動かされていないかも見極める必要があります。怒りや不満などの感情が先行していると、結果としてパワハラにつながる可能性があります。また、感情的になると冷静な判断力も奪われます。叱責により精神的に追い詰められていると感じた場合は、パワハラに該当すると判断して良いでしょう。

基準3:指導の目的と達成のための方法が明確化されているか

指導の目的とそれを達成するための方法が具体的かどうかチェックしてみてください。明確なゴール設定や具体策が存在し、従業員がきちんと理解できている状態であれば業務改善命令としても成功といえます。しかしその逆の場合は、パワハラの可能性があります。業務改善命令であれば必ず具体的な改善策が提示され、それを達成するためのサポートや手段も提供されるべきです。

基準4:自身のメンタルヘルスが考慮されているか

業務改善命令とはいえ、それが従業員のメンタルヘルスを無視したものであれば、パワハラとなり得ます。企業は従業員1人ひとりの心身の状態を考慮に入れ、負担とならないよう配慮することが必要です。仕事に対する意欲、やる気を削ぐような形ではなく、むしろモチベーションアップにつながるような内容や実態になっているかを確認しましょう。

基準5:フィードバックの頻度と内容

頻繁にネガティブなフィードバックのみ行割れる場合も、パワハラにつながる可能性があります。業務改善命令の一環として、ポジティブなフィードバックも適宜行われているか、絶えず改善点を見つけ出すのではなく、適切な評価や必要なアドバイスを的確に与えられているかを注視してください。

業務改善命令を受けた際の5つのステップ


業務改善命令が適切に行われた場合、会社からの指示にはどのように対応したらよいのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

ステップ1:何が問題なのか理解する

まずは、業務改善命令の中に含まれる具体的な問題点について理解しましょう。個別のワークフローの問題なのか、全体的なパフォーマンスに影響を与えているのか、または特定のスキルや知識が欠けているのかを把握します。

ステップ2:意図を正確に把握する

次に、会社からの業務改善命令の意図を把握します。意図の把握は、指摘された問題にどのように取り組むべきかを理解するために不可欠です。自ら進んで上司や担当者と対話をすることで、改善のための取り組みを明確化しましょう。

ステップ3:改善計画を作成する

問題と意図を把握した後は、具体的な改善計画を作成します。どの問題に最初に取り組むべきか、どのように改善するか、そして改善をどのくらいの時間で達成できるかを明確にすることが求められます。

ステップ4:フィードバックを求める

自分が立てた計画に対して、上司や同僚にフィードバックを求め、必要であれば改善計画を再評価・修正しましょう。他者の見解を得ることは、視点を広げ、何か重要な点を見落としていないかを確認するのに役立ちます。

ステップ5:実行と評価

計画を実行し、予定された改善が達成されたら、得られた結果について評価を行います。評価を通じて、業務改善が成功したかどうかを確認するだけでなく、今後の改善のためのヒントなども上司や同僚からアドバイスをもらうと良いでしょう。

本当にパワハラだったらどうするか?


業務改善命令がどう見ても適切な内容ではなく、パワハラだった場合。命令を受けた従業員はどのように対応するのが良いのでしょうか。

対処法1:事実確認を行う

まず一番に大切なのは冷静に事実関係を確認することです。具体的な命令や改善事項、それに対する自分の感情・反応、会社の反応など、事実を整理しましょう。時と場合によっては、第三者の意見を求めるのも有効です。冷静な判断が重要となるため、事実確認は怠らないようにしましょう。

対処法2:規則や法律を理解する

会社や社会にはパワハラ防止に関するさまざまな規則や法律が存在します。自社の就業規則、ハラスメント防止策、労働基準法などを理解し、あなたが受けた命令がパワハラと該当するかどうか確認しましょう。パワハラの定義は曖昧で、多様な形が存在するため、冷静な判断をするためにも規則や法律を理解しておくことが大切です。

対処法3:会社や上司とのコミュニケーションを取る

感じた不快感や疑問をそのままにするのではなく、具体的な不満や問題点を明らかにし、会社や上司との対話を試みてみてください。ただし、自身がパワハラを受けていると主張する際には、具体的な事実と規則や法律に基づいた根拠を示すことが求められます。また、可能であれば関連する資料や証拠を用意すると、自身の主張を裏付けるのに役立ちます。

対処法4:第三者の介入を求める

会社や上司と対話を試みた上で解決しない場合や、対話すること自体が難しい場合には、経済産業省が推奨する「調査」や「相談」の活用を検討してみてください。第三者として社内外の専門機関や専門家に相談することで客観的な判断を得ることができ、具体的な解決策を導き出すことができます。

対処法5:法的措置を考える

あなたがパワハラを受けていると明確に感じ、会社側に改善が見られない場合、法的な措置を考慮することも必要です。地域の労働相談窓口や労働基準監督署に相談をしたり、必要に応じて専門の弁護士を雇うことも考慮に入れましょう。

業務改善命令の真実を見極め、権利を守るために行動しよう


業務改善命令は、それ自体は労働者の成長を促すためのものです。しかし、その手法や伝え方、そして伝える内容次第で、パワハラにつながる可能性もあります。本記事で紹介した違いや判断基準などを元に、改善命令とパワハラの境界線をしっかりと理解し、自身のスキルアップや労働環境の改善を実現していきましょう。筆者も本記事の執筆を通じて学んだことを参考に、早く友人が平穏なワークライフを送れるようサポートしたい思います。
 

【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。X(Twitter)
 

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