コラム

ご機嫌取りを卒業しよう。元トップセールスが語る、顧客の信頼を得る方法

私は以前、ある先物取引の会社でトップセールスだった。しかし、将来性への不安や商品の押し売り的な営業に嫌気がさし、求人広告の代理店に転職した。最初は契約を取ることに必死で、あらゆる提案をしていたが、その結果採用が上手くいかず、新規顧客獲得の営業活動を延々とやらなければならなくなった。

そこで私は、担当者に嫌われたり怒られたりすることを恐れず、彼らと共に成功する方法を模索した。その結果、お互いに信頼関係を築き、採用目標を達成することができた。業界に関わらず、重要なことは「お客様から信用してもらうこと」である。あなたがもし営業で伸び悩み、現状を打開するヒントを探っているのなら、ぜひ私の体験を参考にしてほしい。

とにかく契約が欲しかった新人時代

先物取引の営業職として一定の成績を残すことができていた私は、業界の将来への不安と自社商品の押し売り的な営業に嫌気がさし転職を決意する。そこで総合代理店として求人広告の世界へ転職することとなり、新しい業界への挑戦に燃えていた。マイナビ転職やエン転職などの代理店事業なので、メーカーのように自社商品がなく、競合他社と全く同じ商品を扱うこととなる。
 

私はとにかく契約が欲しかった。Aという媒体で採用できなかった企業様には、「絶対Bがオススメです」と提案し、Bでうまくいかなかった企業様には、「絶対Aがオススメです」と提案していた。予算がない企業様には、「とにかくCが安いのでCでいきましょう」と提案し、サービスでアレとコレをつけて「このくらい値引きをします」とお得感をアピールしていた。
 

この記事を読んでいる人からすると、馬鹿な営業だと感じるかもしれない。ただ、求人広告業界のリアルでは、こういった営業が蔓延していることも事実だ。実際、こういう営業で契約はそこそこ取ることができる。しかし当然ながら企業側は採用がうまくいかず、リピートに繋がらない。なので新規の顧客を獲得するための営業活動を延々とやり続けなければならない。体力的にも精神的にもきつい日々が続く。なにかやり方を変えるしかない。そう考え一度足を止めた。
 

本気をぶつけてもらい、ご機嫌取りを卒業する

以前私はこのような記事を書いた。 
色々な営業を経験し、トップセールスだったこともあるが、後に大きな挫折を経験。紆余曲折を経てライターへと転向するのだが、その過程で見つけることができた成功事例をお伝えできればと思う。
 

新規の顧客しか獲得できなかった私は試行錯誤を繰り返し、本当に企業の採用を成功させるためには何が必要かを考えた。私がたどり着いた答えは”企業の担当者にも頑張ってもらう”ということだった。
 

それまでの私は、担当者にいかに気に入ってもらえるか、いかに担当者の負担を減らし、いかに商品の魅力を伝えることができるか、を中心に商談をおこなってきた。それではその時契約をもらえたとしても、採用がうまくいかずリピートに繋がらない。
 

求人業界ではよく『企業の人事になったつもりで考えろ』と言われる。しかし、どの媒体が一番効果が出るか、どのタイミングにどの企画で出すのが良いか。それらを考えるだけで本当に企業の人事と同じ気持ちになれただろうか。
 

人事担当者たちは私たちとは別の数字目標に追われ、いかにして採用目標を達成するか、そのためにどう応募者を集めるか、どれだけ企業の魅力を伝えることができるか、もっと本気で考えている。
 

私はその本気をぶつけてもらうことにした。今までは担当者の負担を減らすためにスカウトメールの代行業務を進んで提案していたが、全て担当者にやってもらい、忙しい中で取材にかける時間も今までの倍近くいただいた。予算の少ない企業様に対しても、応募を集めるために予算を遥かに超えた提案をして、担当者は上司に怒られ、私はその上司を説得するための企画書を作成する。
 

結果として、無事採用目標を達成することができ、応募者数や求人記事の閲覧数、スカウトメールの開封率など全て好調の結果となった。
 

その後すぐに契約数が増えることはなかったが、企業の担当者に嫌われたり怒られたりすることを恐れずに、私が出した方法の一つはリピートへと繋がり、私自身にとっても体力的精神的な負担が減ることとなった。
 

トップセールスたちが行う”奇抜”な営業

長年営業をしていくなかで、何人もの想像を超えたトップセールスを見てきた。私は同行をさせてもらい、彼らの営業を間近に見ることができた。その人たちにしかできないこともあったが、中には誰にでも真似できることもあったので、ここにいくつか紹介させていただこうと思う。
 

桁外れに規模の大きな話をする

求人広告の金額は様々だが、ほとんどの場合が数十万円である。これをAとBを比べてどうだ、こっちはキャンペーンがあるから何万円値引きで、という話をしに行くわけだが、同行したトップセールスYの営業は規模が違った。
 

「御社の売上は●億円ですよね」ここから始まった。いきなり規模の大きい話をするなーと思ったが、それだけではなかった。「業界の市場規模が●兆円で、現在の御社のシェアが~」と続く。
 

もちろんこの話をするためには業界やその企業についての知識や、話し方にも相当気を配っていたことだろうと思うが、ほぼ経営コンサルタントに近い内容だったその商談の最後には求人広告の複数回分まとめ買いの数百万円がいとも簡単に動いた。
 

隠れたニーズを引き出す

支店で一番の成績を誇っていたKに同行させてもらうことができた。経理職で経験者がなかなか採用できないとの課題を抱えた企業だった。
 

結論から言おう。この商談で経理職を含む4職種募集の契約が決まった。経理職募集での商談だったが、深掘りに次ぐ深掘りで、問題は経理以外にもあるんじゃないかということになった。最終的には担当者は会社の組織図を取り出し、足りないポジションや外注すべき箇所など、提案は多岐にわたった。
 

お客様が求めていたもの以外の隠れたニーズを、雑談や事業内容、業績の話などから広げていき可視化していく。もちろん売上にも繋がるが、それ以上に企業にとってもメリットの大きな商談だった。
 

押しの営業が予想の遥か上

これは先物取引会社の頃に上司に依頼をして同行した際のことだが、とにかく押しの営業が凄い。これは再現性のかなり低いものなので、参考にはならないかもしれない。
 

よく営業のセミナーなどで『押しの営業と引きの営業のバランスが大事』『肝心なところでは強く押す』などと聞くことがあるが、この上司は次元が違う。
 

お客様と挨拶を済ませるなり、すぐに本題に入る。それもなぜこの商品がいいのか、なぜお客様にはこの商品がいいのか、どういう運用をしていけばいいのか、を延々と一方的に話し続ける。私はとなりで時計を確認することができたので正確に覚えている。30分以上ひたすらに押しの営業をしていた。その間お客様は相槌以外の言葉を発する隙もなかった。
 

結果、そのお客様から5000万円をお預かりすることになり、何億円もの取引をしていただくことになる。ヒアリングやニーズなどといった言葉は、この営業には必要なかった。通常の人間であれば、これ以上はダメだ、怒られる、というストッパーが働くものだが、正直にいうとどこか壊れているんじゃないかと考えている。
 

ただ、話している内容に嘘偽りはなく、本当にお客様のことを思っての提案だということはフォローしておく。これが結果として、お客様から見て任せてもいいと判断してもらうことに繋がった。
 

どの業界でも根本は変わらない

要約してしまうと大切なことは「お客様から信用してもらう」ことの一言に尽きる。なんともシンプルな言葉となってしまうわけだが、その方法は様々で営業の人柄や採用担当者によってもバラバラだ。求人業界に限らず、他の業界でも根本は同じだと考えている。
 

もちろん私もコレという答えを見つけることができたわけではないが、私の体験を含めたいくつかの事例の中で、ひとつでも何かのヒントとなるものが見つけられたのならとても嬉しく思う。
 

<筆者プロフィール>
寺島弘光(てらしま ひろみつ)
商品先物取引のトップセールスとして3年間勤務後、通信業界や求人業界の営業を経て、30歳を超えて大きな挫折を経験。現在求人広告をはじめとしたライターとして、新たな道を歩み始める。大阪人ながらに年間パスポートを保有していたほどのディズニー好き。趣味はバスケットボールで、自分でクラブチームを作るほど。推しは大阪エヴェッサ。千葉への移住計画を胸に、一児の父親として育児・ライティングともに一から勉強中。
 
自分に合った転職先をお探しの方はこちらをクリック!