コラム

【企業分析に必須】決算書の読み方を分かりやすく解説

転職活動には欠かせない企業分析。従業員2万人企業の元経理である筆者が、より深く企業分析をおこなうために必要な“決算書の読み方”を解説していく。決算書といえば膨大な量で、難しいことばかり書いてあると誤解されがちだがそんなことはない。見るべき箇所と意味さえ理解すれば、小学生でも理解できてしまう。これさえ読めば、あなたは転職活動において充分過ぎる企業分析ができているだろう。

決算書を読むにあたって


前提として上場していることが条件となる。稀に規模の大きい未上場会社でホームページ内に決算書を載せていることがあるが、レアケースなので期待はしない方がいい。
 

決算書のある場所は、ホームページ内のIR情報(投資家向け情報)のページにある場合が多い。このページには決算書以外にも、投資家向けに今後の企業方針などが記載されていることも多いので、まず最初に確認することをお勧めする。
 

ホームページ内に決算書がない場合には、金融庁のEDINETを利用する。ここでは全ての上場会社、一部の非上場会社の決算書が公開されている。トップページ左側の「書類検索」を押して企業名を入力するだけで検索できる。
 

色々な情報が出てくるが、その中で「有価証券報告書」が一番わかりやすいだろう。他にも「四半期報告書」など様々な種類があるが「有価証券報告書」が一番まとまっており、有益な情報が記載されている。
 

そして一番重要なことを先に書いておく。それは『比較すること』だ。まずは知りたい企業の今年度の決算書を見る。それを前年度・前々年度や同業他社と比較して読むことが一番大切だ。
 

ひとつの決算書だけでは、その数字が多いのか少ないのか、他と比べてどうなのかが全くわからない。それぞれを並べて比較することで初めて、どう成長してきたのか、同業他社と比べてどうなのかが理解できる。
 

それを念頭に置いたうえで、続きを読んでいってほしい。それでは決算書の中身について、読むべきところを解説していこう。
 

最初に見るところ

いよいよ決算書を読んでいこう。まずは「企業の概況」。これはホームページなどにある会社概要と同じで、事業内容や従業員数、沿革などが記載されている。ホームページよりも詳しく書かれているので、最初に目を通しておく。収益や資産などのまとめも記載されているが、ここは一旦飛ばして問題はない。
 

次に、「事業の状況」の中の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」という資料。ここには経営戦略や、今後の課題などが数字ではなく文章で記載されている。面接対策にはもってこいだが、それ以前に企業選びの際にも重要となる。
 

そもそもどういう戦略をもって営業しているのか、どういう課題と向き合っているのか。求人広告などは募集を集めるために良いことばかり記載されがちだが、ここの情報に関しては株主向けに正確な情報を記載しなければ、虚偽の報告をしたということで重大な罪となるため、正確な情報が事細かく記載されている。
 

貸借対照表(バランスシート・B/S)

さてここからは実際に数字を見ていこう。何も知らなければ、ただ数字が並んでいるのを見て多いのか少ないのか、どこが何の数字を表しているのか、だからなんなのか、全く理解できないと思う。見るべきところだけ絞って、読み方を解説していこう。
 

B/S(貸借対照表)・P/L(損益計算書)という言葉を聞いたことがある人も多いと思う。それぞれ、会社にどれだけの資産や負債があるか、どれだけ収益・費用が出ているか、を表している。これらにキャッシュフロー計算書(後に解説する)を加えて財務諸表と呼ぶが、その前に“連結”とついているのは子会社なども含めた総合的な数字となる。どちらを見るかは、その時に知りたい内容による。
 

B/Sは資産の部・負債の部・純資産の部の3つに分けられる。資産の部には、現預金や土地、建物、備品などの今ある資産。負債の部には借入金などの返すべき負債。純資産の部には資本金や、今まで出た利益のうち何かのために積み立てているお金などがそれぞれ記載されている。
 

『負債』という名前から、金額が多いと悪いイメージを持たれがちだが、決してそんなことはない。例えば銀行の借入などもそうだが、その企業に今後お金を返す力があると判断された証拠にもなる。
 

一番大切なのはバランスだ。資産の部(今ある全資産)はどうやって調達したか、つまり負債の部(借り入れによる調達)と純資産の部(企業の利益などから調達)に分けられるため、資産の部=負債の部+純資産の部の式が成り立つ。ここが理解し難い場合はこの式だけ覚えていれば問題ない。
 

負債の部の金額が大きくても、純資産の部の金額も大きければ、借り入れだけに頼っているということにはならないので、不安要素にはならない。どれくらいの割合が適切なのかは業種によって変わってくることもあるので、冒頭に述べたように、同業他社と比較をするのが一番大切となる。
 

さらに深いところまで見るのであれば、負債の部の中の流動負債と固定負債を見てみるとより良い。流動負債とは、一年以内に返済の必要がある負債で、支払手形や短期借入金などがある。固定負債とは、複数年に渡り返済していく長期借入金や社債などがある。
 

細かい内容まで理解する必要はないが、流動負債が多いと返すべき利息や元金に追われ、資産が貯め難く、自転車操業に陥る可能性が高い。反対に固定負債は、新規設備導入などによる長期借入金などのケースが多く、積極的に投資をしている証拠となるので、企業評価が下がることはあまりない。
 

ここまで読み解くことができればB/Sについてはかなり詳しいと言えるが、難しいと途中で諦めることになってしまうので、まずはざっくりとでも理解しようとすることから始めよう。
 

損益計算書(P/L)

次に損益計算書について。ここには『収益』『費用』『利益』が記載されており、それぞれ『どれだけ売上を出したか』『どれだけ費用がかかったか』『結局いくら儲かったか』が数字で表されている。
 

ここは細かく見ていくと、損益分岐点といって黒字化させる基準を発見したり、ある分野で損をしないよう撤退の早期判断を促すことができるが、個人的な意見として、それは経営陣に必要なことで企業分析の際にはそこまで見る必要はないと考えている。なのでここではざっくりと、収益・費用・利益のバランスを見ていれば大丈夫だろう。
 

「結局は利益が一番大事だろう」とその金額だけを見比べると、それは単に企業規模で会社を選ぶことになり、企業分析とは言えない。仮に利益がそこそこであったとしても、費用が高くない、つまり収益(売上高)のほとんどが利益となっている場合は、今後の成長性を考えるとかなり魅力的なビジネスモデルとなる。
 

反対に収益がどれだけ高くても、費用の割合が多い場合は効率の悪い経営を行っており、景気が悪くなった際のリスクが高いことになる。巷でよく『売上高●●億円!』などの表記を見ることがあるが、これがいかに無意味な表現かが分かる。
 

繰り返すが比較することが最も重要である。過去や同業他社と比べて、収益に対する費用の割合が高いのか、改善されていっているのか、それぞれの数字の伸び率がどうなのか。
 

ここを分析することで、企業の成長性や将来に対するリスクなどを把握することができる。
 

キャッシュフロー計算書(C/F)

貸借対照表や損益計算書と比べ、見落とされがちなキャッシュフロー計算書だが、個人的には企業分析において一番重要な資料だと考えている。
 

ここには一定期間(ほとんどの場合一年間)におけるお金の流れが記載されている。大きく3つに分けることができ、営業活動によるCF・財務活動によるCF・投資活動によるCFの3つだ。
 

営業CFは仕入れや製造でいくらお金を使い、販売することでいくら売り上げたか、つまり本業でいくらお金を稼ぐことができたか、を表している。言うまでもなくここの数字はプラスであればあるほど良い。
 

投資CFは設備投資などにどれだけ出費をしたかが記載されている。基本的にはマイナスになることがほとんどだが、土地や建物の売却などでプラスになることもある。ここの数字は将来に向けた出費となるので、マイナスが大きいほど将来への投資を積極的に行っていることと、そこに資金を回せる余力があることを表している。
 

反対にここがプラスになっている場合は、何かしらで損失を出してしまい、それを補填するため・現金を生み出すために固定資産などを売却してプラスになるケースがある。損益計算書などで利益が出ている時でも、その理由がここにある場合もあるので注意が必要だ。投資CFがプラスの場合は注意深く内容を見るべきだ。
 

財務CFは資金調達によるお金の流れを表しており、借入金の返済などを行っている場合はマイナスになり、設備投資をするために新たに借入れを行った場合はプラスとなる。ここはプラスやマイナスで良し悪しの判断は特になく、借入れなどから投資活動の動きを見ることができる。
 

キャッシュフロー計算書ではお金の動きから財政状況を、特にその中でも投資CFでは企業の将来性を予測することができる重要な資料となる。
 

最後に

かなりの量がある決算書の中でも、読むべき箇所とその内容を解説してきた。何度も繰り返すが、一番必要なのは比較をすることである。
 

企業がどういった成長を辿り、今後どうなることが予想されるのか、同業他社と比べどういう経営状況なのかを理解することは、適切な企業分析を行ううえで必須である。
 

またこれらの内容を読み解くことができれば、企業に入った後でも経営陣と同じ目線で会社を見ることができ、より大きな視野を持って日々の仕事に取り組むことができると考える。
 

適切な企業分析をするために、この内容が少しでも役に立てば幸いだ。
 

<筆者プロフィール>
寺島弘光(てらしま ひろみつ)
商品先物取引のトップセールスとして3年間勤務後、通信業界や求人業界の営業を経て、30歳を超えて大きな挫折を経験。現在求人広告をはじめとしたライターとして、新たな道を歩み始める。大阪人ながらに年間パスポートを保有していたほどのディズニー好き。趣味はバスケットボールで、自分でクラブチームを作るほど。推しは大阪エヴェッサ。千葉への移住計画を胸に、一児の父親として育児・ライティングともに一から勉強中。