コラム

うっかりブラック企業に入社してしまったが、「しばらく頑張ろう」と覚悟を決めた方へ

ブラック企業で頑張ることは致死性のリスクを伴うため決して推奨できない。しかし、何らかの事情でそう簡単に転職できない人がいることも事実である。もう10年以上前になるが、私自身も一度ブラック企業に入社してしまい、しぶしぶ一定期間は過酷な環境で生き抜く覚悟を決めた一人だ。

入社2日目に辞表を出そうとしたが、そもそも辞表を受け取ってもらえなかったからだ。その後、何度も辞表の提出を試みたが、受理されなかった。結局、正式に退職できたのは、入社して3年以上の月日が経ってからである。退職できた時は、映画『ショーシャンクの空に』の主人公が脱獄に成功して歓喜しているシーンと自分を重ねた。

本記事では何らかの理由ですぐに身動きが取れない方に、筆者の体験談も交えながらブラック企業を一定期間サバイブする方法を解説したい。念押しになるが、ブラック企業はそもそも回避すべきだし、仮に入社してしまっても即退社が正解である。あくまでいろんな事情でそうもいかない方に向けた記事であることはご理解いただきたい。

思考を停止せよ。必要なものは気合いと根性、体力のみ


ブラック企業は軍隊であり、独裁国家であり、宗教団体だ。上官、総書記、教祖様の命令は絶対である。世間一般の倫理観や道徳など、一切通用しない。正しいのは、社長や幹部の方針だけである。それがどんなに社会的道義から外れていたとしてもだ。「顧客のため」「メンバーのため」であっても自分の言動が会社の方針とズレていた場合、懲罰を受ける。ドラマやアニメの世界にいるかのようなツッコミどころ満載な日常なので、いちいち疑問を感じていたらとても身が持たない。
 
求められていることは命令に従い、任務を遂行することのみである。感情を殺し、思考のスイッチを切り、マシーンになりきった方が精神的な負担は少ない。ただし任務遂行にあたっては気合い、根性、体力が必須だ。学生時代、体育会系だった方は多少免疫があるはずだが、それでも部活とは違うしんどさがあるので決して無理はしないでほしい。

返事は、「はい」一択


ブラック企業に一般常識は通用しない。普通に考えて達成不可能なミッションを課せられる日常がデフォルトである。ブラック企業に入社して間もない人は、「いやいや、そんなの無理に決まってるじゃないですか」と思ったことをそのまま口にしてしまいがちだ。しかし、そこは「はい」一択である。なぜ無理なのか論理的に説明したところで、「できない理由より、できる理由を考えろ」と一蹴され、意欲がない反逆者の烙印を押されるだけである。
 
幹部たちにも「あの新入社員はやる気がない」と認識され、風当たりが強くなり、余計に心を病んでしまうリスクがある。できないとわかっていてもやる。これがブラック企業で生き抜くための最低条件だ。当然、無理ゲーとわかっていても、ミッションを達成できなければガン詰めされる。しかし、「できません」とつっぱねた場合、さらに強力なパワハラを受けることになるだろう。被害を最小限に抑えるためにも、「はい、やります」以外の言葉は口にするべきではない。

飲み会や喫煙所での愚痴は筒抜けと心得よ


ブラック企業は監視社会で、一般的な会社以上に幹部は部下から情報を吸い上げている。定量的な成果はもちろんだが、それ以上に忠誠心の高さが評価基準になっているため、情報提供者は謎に優遇されがちだ。その結果、『進撃の巨人』で幼い頃のジークが両親を売ったときのように、ブラック上司の部下たちも同僚を売り飛ばすのだ。幹部たちは、誰が、いつ、どんな言葉を発していたのか、社内のどこで何が起こっているのか、大体把握している。例えば、会社の飲み会や喫煙所での些細な愚痴も、全部筒抜けになっているのだ。
 
表面的に忠誠を誓っているように見せるだけでは、対策として十分とはいえない。会社関連の人間と一緒にいる時は、相手が信頼している同期だったとしても決して本音を口にしてはいけない。どうしても愚痴りたくなったら、仕事には全く関係のない地元や学生時代の友人と飲んでいる時に吐き出そう。しかし一緒に飲んでいる相手は不快な気持ちになるので、おすすめはしない。そもそもブラック企業に勤めている間はプライベートなどないので、飲みにいく気力も時間もないはずだ。仕事以外の時間は少しでも体力を回復させるために、ひたすら寝るが正解である。

暗黙のルールをいち早く察知せよ


私が所属していたブラック企業には暗黙のルールがいくつも存在した。当時、会社には大きく2つの派閥があり、それぞれのトップ同士が対立していた。メンバークラスからするとそんなことは知ったことではなかったし、最初は誰がどちらの派閥側の人間か把握していなかった。特に気にすることなく私は満遍なく幅広い人たちと交流していた。
 
しかし、ある日部長から呼び出され「お前、◯◯と親しいらしいな」と言われ、「はい」と答えたところ、謎の説教がはじまった。それからしばらくしてから私が仲良くしていた相手は部長と対立する派閥に属している人間だったことを知った。部長と敵対する派閥の人間とは仲良くしてはいけないという暗黙のルールが存在していたのだ。実際、他部署やグループ会社の人間と飲みに行って、説教されている同僚も珍しくなかった。これはほんの一例で、他にも似たような謎ルールがいくつもあった。
 
こうしたルールについては面接時に説明があったわけではなく、入社してから地雷を踏んではじめて気づくことになる。一通りの地雷を踏み終わるまでに私は1年以上かかったと思う。どこにどんな地雷が埋まっているのか誰も教えてくれないし、自分で被曝しない限り気づくことはできない。しかし、ブラック企業にはこうした地雷が多く埋まっていることを事前に知っているだけでも、多少心の準備ができるはずだ。

部長、社長、さらには大口顧客と関係を築け


個人的にはこれがブラック企業をサバイブする上で最も有効な方法だと思う。それは直属の上司よりもさらに階級が上の部長や社長、もっといえば大口顧客と関係を築くことだ。繰り返しになるがブラック企業は軍隊で、上官の命令は絶対である。直属の上司とはいえ、さらにその上の上司に逆らうことはできない。自分の上司よりも役職が上の部長以上から信頼を得ることができれば、自分以上部長未満の社内の人間は迂闊に自分にパワハラや無茶振りができなくなる。
 
ブラック企業にはヤクザ社会的な側面もあるので、義理人情に厚い人が多い。部長以上も忠誠心を示せば自分のお気に入りは手厚く守る傾向にある。私は会社で一番の大口顧客の担当者に気に入られたおかげで部長からの信頼を得ることに成功し、なんとか3年間生き延びることができた。ただいずれにせよ圧倒的な成果を出さなければ、ブラック企業で快適に過ごすことは困難だろう。

命より大切なものはない


ここまでブラック企業をサバイブする方法を解説してきたつもりだが、まとめると「歯を食いしばって耐えろ」の一言に尽きるので、申し訳ない気持ちだ。しかし、どうしてもきつい場合は自分の命を守るためにも、無断欠勤して携帯の電源を切ってしまおう。実際に当時、私の部下だった人間はこれを実行し、脱出に成功した。命さえあれば何度でもやり直しができる。
 
当時の同僚や上司たちの中には、ハードワークや過度なストレス、連日の飲み会などの影響から大病やうつ病を患う人がいた。本当に命を落とした人も何人か知っている。それに20代・30代にして薄毛になっている男性社員もちらほらいた。ブラック企業に長く勤めていいことなど何もない。今すぐ辞めることはできないかもしれないが、何かあってからでは取り返しがつかない。なるべく早めに見切りをつけて、心身ともに健やかに働ける会社に転職できることを願っている。
 
【筆者プロフィール】
田尻亨太
中学と高校ではバレーボール部に所属。身長がそこまで高くなかったので、大学ではバンド活動をすることに。卒業後、大手求人メディアの制作スタッフになる。その後、老舗の求人広告代理店やスタートアップ、ベンチャー、フリーライターを経て、2020年8月にコンテンツ制作で採用を支援する株式会社VALUE WORKSを創業。新米社長として試行錯誤する日々を過ごしている。趣味は銭湯とビール、たまに島に行くこと。
 
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