コラム

キツイ?ブラック?経験者が解説する求人広告代理店の実態

転職活動をしていく中で、様々な業種を目にする。全く想像もつかない業界もあれば、なんとなく予想のつく業界もある。ここでは、大手求人広告代理店に勤めていた筆者が、『求人広告業界』について、その実態について紹介していく。人材業界の人間にとっては常識の内容だが、未だに誤解して入社する人もいるので、そういったことのないように、ぜひ参考にしてほしい。

『求人広告代理店』という名前に騙されがち

『求人広告代理店』という名前を見てどういうイメージを想像するだろうか。知っている人は知っているが、『広告代理店』という表記から、かなりクリエイティブな仕事を想像する人もいる。
 

しかし実態はというと、ゴリゴリの営業会社である。1にテレアポ、2にテレアポ、3、4がなくて5にテレアポ。一日100件~200件のテレアポをする。アポイントに繋がれば商談からの追客。社内ではノルマを課され、週や月ごとに常に数字に追われる日々が続く。
 

求人広告企業の中にも、実際に画像作成などを行う部署もあるが、よく求人などで見るのはほとんどが営業職だ。それも『営業』という言葉を使わずに『採用コンサルタント』などの言葉に置き換えられていることがかなり多い。
 

制作部署であったとしても、恐らく想像しているであろうクリエイティブな内容とはほど遠い。型にはまった制作で、ひたすら作業に追われている人を何人も見てきた。
 

入社前とのギャップからか、この業界は退職者がかなり多い。中途採用で年間50~60名採用して一年後には2~3人しか残っていないこともよくある。支店によっては入社2年も経てばベテランで、上から数えた方が早い、なんてこともある。
 

入社してくるのは20代の若い人間ばかりだ。社会経験が長いとこの業界についての知識もあり、勘違いをして入社するというこがなくなるからだ。結果この業界では社員の平均年齢が20代であることが多い。
 

これは求人広告会社に限らないが、ある程度の人数がいる企業で平均年齢が20代のところは要注意だ。長期的に人が育たず、退職者が多く、その分採用の人数も増やし、人の入れ替わりが激しいことが多い。

似たり寄ったりな求人広告の内容

クリエイティブな内容と誤解されることがあると述べたが、大抵は求人票の内容を見れば勘違いに気づくことができる。しかし、タチが悪い企業だと、ここの内容もあえて誤解させるような表記をしていることもある。
 

こういった求人広告の内容を作ることこそ、求人広告会社の本業である。ひたすら営業を行い、契約を取れた企業の求人広告を、いずれかの広告媒体へどれくらいの大きさでどういう表記をして募集するか。
 

より良い人材を、より多い募集を集めることができれば、求人広告会社への評価に繋がるため、求人広告の内容は良いことばかり書かれる。さすがに嘘は書けないため、悪い部分に関しては記載しない。表記に制限などもある。
 

必然的にどこの原稿も似たり寄ったりな内容になってしまいがちだ。クリエイティブな要素などほとんど入ってこない。

色んな企業の採用担当や社長に会える良い面

いろいろと業界について悪いことも書いたが、もちろん良いところもある。それは営業相手が社長や人事の役職者だったりすることだ。
 

営業をしていくなかで、契約が取れたり、契約が取れなくても長期的に情報共有をしていれば、営業先と仲良くなることはよくある。その相手が企業によっては社長であったり、人事担当者だったりする。
 

会社というのは、定年退職や寿退職、転職などで、何もしていなくても人は辞めていく。しかし何もしなくて人が採用できるということはない。つまり多くの企業が常に何かしらの形で採用に動いている。
 

そういう状況で会社の代表などと商談を重ねることで、経営方針や市場状況など様々な情報交換ができる。一般企業の社員であれば、自社の役員と話をする機会があっても、これほど多くの企業の上層部と意見交換をする機会はそうそうないだろう。
 

コネクションを持つこともだが、経営するうえでの考え方などを学べることも多い。そういったところは、他の業界にはないメリットと言える。

社外人事部としての役割

上記で挙げた例以外にも、良い経験をしたと思うこともある。それは色々な企業に対して『社外の人事部』としての提案を行うことができたことだ。
 

先に述べておくが、あくまで人事部の採用業務の中の一部を手伝う、ということだ。多くの中小企業が採用について、自社内での情報しか持っておらず、他の企業がどういった採用を行っているのかという情報を持っていない。良い例もあれば悪い例もある。
 

求人広告会社の営業は、それこそ何百社と情報共有をしてきている。それらの知見を活かし、どのようにしてこの企業の採用を成功させるか、という考えで仕事ができる。
 

それはさながら『社外人事部』としての役割を果たすため、色々な提案を行う。このように考えて仕事をしている営業がどれだけいるかは知らないし、企業の人事部はそのようには思っていないだろう。しかし、個人のやりがいとしては前向きな思考である。
 

この事だけを考えれば、先に述べた『採用コンサルタント』という表記もあながち間違いではないかもしれない。ただ、必ず注意してほしいのが、こういったやりがいを持ってできる仕事というのは本当にごく一部にすぎず、入社間もない営業の仕事はひたすらテレアポである。何度も言おう、ゴリゴリの営業会社であることは間違いない。

今後の求人業界

求人広告会社を始め、求人業界には様々な会社が存在する。人材紹介や人材派遣がよく知られる例だろう。その人材業界について、今後どのような変化を遂げていくのだろうか。
 

昔に比べ、求人広告自体の効果が薄くなったと言われる。少子高齢化による働き手の減少もその原因だと言われるが、それだけではない。求人広告以外の採用手法が台頭してきたことが大きな原因だ。
 

近年メジャーになりつつあるダイレクトリクルーティングや、WantedlyなどのSNS系と言われたりもする広告媒体がその代表的な例だ。他にもTwitterなどのSNSを利用して採用活動をする企業も増えてきている。
 

また企業自体が運営するオウンドメディアや、昔でいう縁故採用のリファラル採用なども近年その重要性に注目が集まっている。
 

こうした新しい採用手法の台頭により、求人広告業界のあり方も変化していくのではないだろうか。しかし、未だに大手転職メディアには、かなりの掲載社数や会員数がいることも事実で、中には優良企業が掲載されていたり、優秀な人材が登録されていたりすることも多い。求人広告が主要な採用手法の1つであることは今後もしばらくは変わらないだろう。

しっかりとした企業分析・業界分析を

求人広告業界の人間であれば当然知っている内容だったが、他業界からの転職を考えていた人にとって、この内容で初めて実態を知ってもらえたのであれば幸いだ。
 

求人広告業界に限らず、求人票に書かれている内容を鵜吞みにせず、企業分析や業界分析にしっかりと時間を費やして転職活動を行ってほしい。
 

また、今回悪い印象を与えてしまったかもしれないが、決してそういうわけではない。合っている人には合っている仕事で、実際に長年勤めて非常にやりがいを持って働いている人も大勢いる。
 

ただ、求人票の内容から実際の仕事内容を誤解したまま転職活動を進めている人がいれば、それはかなり危険な行為となるので、しっかりと実際の仕事内容を知ったうえで進めていってほしい。
 

<筆者プロフィール>
寺島弘光(てらしま ひろみつ)
商品先物取引のトップセールスとして3年間勤務後、通信業界や求人業界の営業を経て、30歳を超えて大きな挫折を経験。現在求人広告をはじめとしたライターとして、新たな道を歩み始める。大阪人ながらに年間パスポートを保有していたほどのディズニー好き。趣味はバスケットボールで、自分でクラブチームを作るほど。推しは大阪エヴェッサ。千葉への移住計画を胸に、一児の父親として育児・ライティングともに一から勉強中。