コラム

生理前の不安「PMDD」とは?診断基準や対処・治療方法を解説

生理前になると、体調が悪くなるだけではなく、精神的にも不安定になってしまう……。そんな経験のある女性も多いのではないでしょうか。この精神的不調は放置しておくと日常生活に大きな影響を及ぼすほど重症化する場合もあります。この症状をPMDD(月経前不快気分障害)と呼びます。

PMDDはなかなか周囲の理解も得られず、仕事やプライベートでも人間関係を悪化させてしまうこともありますが、正しい知識や対処法を身につけることで改善する事が可能です。そこでこの記事では、PMDDについて理解を深め、効果的な対処法や専門家への相談方法について詳しく解説していきます。ぜひこの記事を参考に少しでも気持ちを軽くしてください。

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生理前の気分障害「PMDD」とは


PMDDは月経開始の約1〜2週間前から現れる様々な症状を指します。主な症状としては、気分の落ち込み、イライラ、不安感の増大などの精神的な不調があります。身体的症状が大きく出る人もいれば精神的症状が強く出る人もいます。また、筆者は身体的症状から始まり、徐々に精神的症状も出てくるタイプでした。
 
生理前の不安症状の原因は、主にホルモンバランスの変化に関連しています。月経周期に伴ってエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が変動することで、セロトニンなどの神経伝達物質のバランスが崩れ、気分や感情の変化が引き起こされると考えられています。またストレスとの関連性も指摘されており、仕事や人間関係などによるストレスがPMDDを悪化させる要因となり得ます。

PMDDの主な診断基準


PMDDは具体的には月経前症候群(PMS)の重症型とされ、生理前の精神的不調が非常に強く現れ日常生活に大きな支障をきたす状態を指します。PMDDの診断基準には以下のような点が含まれています。
 
1. 月経開始の1〜2週間前から、気分の落ち込み、不安、イライラ、怒りっぽさなどの症状が現れる。
2. 症状は月経開始とともに急速に改善する。
3. 症状が日常生活や仕事、人間関係に大きな影響を及ぼす。
4. 症状は毎月の月経周期で繰り返し現れる。
 
ここで注意しなければならないのは、PMDDはうつ病や不安障害などの他の精神疾患とは異なるということです。PMDDの症状は月経周期に伴って現れて消失するのに対し、うつ病や不安障害の症状は持続的であることが多いです。治療や対処の方法も異なるので、自分の気分の落ち込みは何が原因なのかきちんと探りましょう。

自分で行える対処・改善方法


生理前の精神的不調の対処・改善には、セルフケアが重要な役割を果たします。まずは下記のポイントを参考に対処してみてください。

ストレス管理の工夫

生理前の不安症状を和らげる上でストレスの軽減は欠かせません。瞑想や深呼吸、マインドフルネスなどのリラクゼーション技法を取り入れることで、ストレスを軽減し心の安定を図ることができます。また、散歩やヨガ、ストレッチなどの軽い運動を心がけて規則正しい睡眠習慣を身につけましょう。
 
また、生理の期間に合わせて仕事のスケジュールを調整し、できるだけ大きな負荷のかかる仕事は避けるなどの工夫もできるかと思います。

食事面の工夫

生理前の期間はホルモンバランスが崩れがちなので、食欲にも波が出ます。ですが、できるだけバランスの取れた食事を意識しましょう。カフェインやアルコール、糖分の過剰摂取は生理前の不安症状を悪化させる可能性があるため、控えめにすることをおすすめします。代わりに果物や野菜・全粒穀物・マグネシウムを多く含む食品を積極的に取り入れ、体調を整えましょう。

周囲とのコミュニケーションの工夫

パートナーや家族に自分の状態を説明して理解と協力を求めることで、サポート体制を整えることも重要です。周囲も事前に説明してもらえることで、急な様子の変化にも驚くことなく対応することができるでしょう。
 
また職場では上司や同僚に対して、できればPMDDの症状を伝えておけるとベストです。仕事仲間に不快な思いをさせることも減りますし、心身の調子が悪くなった際には相談しやすい環境を整えておけると安心できるでしょう。たとえば筆者は自分の話せる範囲で上司に生理前の不調について伝えて、PMDDの症状が酷いときにはひとりで黙々と行える作業をメインにするよう工夫していました。

PMDDの治療方法


PMDDが深刻な場合には治療を受けることをおすすめします。治療方法は薬物療法と心理療法の両方が用いられることが多いです。

薬物療法

薬物治療ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が第一選択肢となります。SSRIはセロトニンの再取り込みを阻害することで、脳内のセロトニン濃度を高め気分の安定化を図ります。ただし、SSRIには副作用があるため医師との相談の上で慎重に使用する必要があります。
 
またホルモン療法も選択肢の一つです。経口避妊薬などのホルモン剤を使用することで月経周期を調整し、PMDDの症状を軽減することが可能です。しかしホルモン療法にも副作用のリスクがあるため、医師とよく相談した上で、個人に合った治療法を選択することが重要です。なお筆者は婦人科にかかり、経口避妊薬での治療を選択し症状がだいぶ改善されました。

心理療法

心理療法では認知行動療法(CBT)が効果的とされています。CBTでは否定的な思考パターンや行動を識別し、それらを変容させていくことで気分の改善を目指します。また、カウンセリングを通じて自分の感情を言語化し、自己理解を深めることも重要です。専門家との対話を通じてPMDDに対する適切な対処法を学び、自信を取り戻していくことができるでしょう。

専門家への相談方法

PMDDは専門家への相談によって、適切な診断と治療を受けることができます。症状が重症化し日常生活に大きな影響を及ぼすようになった場合は、速やかに専門家への相談を検討しましょう。特に2週間以上継続する気分の落ち込みや、自殺念慮などの深刻な症状がある場合は早急な受診が必要です。また月経周期に伴う症状の変化を記録しておくことで、医師との相談がスムーズに進みます。
 
専門家を選ぶ際は、PMDDの診断と治療に精通しているかどうかが重要なポイントになります。婦人科であっても、PMSやPMDDの治療に対応していないクリニックは多くあります。近隣のクリニックや病院、カウンセリングセンターなどを調べ、実績や専門性を確認しましょう。
 
また、予約がなかなか取れない、病院に行く元気がない場合はオンライン相談や遠隔診療の選択肢も最近は増えています。利便性は高いですが、簡便な審査で終わってしまう、体調に合った薬が処方されるかわからないなどのデメリットもあります。生理前の不調は腫瘍などの症状が原因になっていることも多いので、筆者としては一度婦人科で診察を受けることが重要だと感じています。

適切な治療や対処で心穏やかに過ごそう


PMDDは多くの女性が経験する悩みですが、まだ社会的な認知度が低く理解されにくい面があるかもしれません。しかし、「これはPMDDかも?」と感じたら、一人で抱え込まず周囲の人や専門家に相談しましょう。
 
特に社会人の女性は仕事との兼ね合いが難しいこともあるかと思います。ですが上司や同僚たちと相互理解を深めることで、ストレスを減らしながら働くこともできるでしょう。この記事を参考に、PMDDに適切に対処しながら毎月心穏やかに過ごせることを願っています!

【筆者プロフィール】
伊藤鮎
2023年VALUE WORKS入社の編集・ライター。前職は約10年間書籍編集者として勤務。趣味はHIPHOPとメタルコアとKPOPと料理とお酒。
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