コラム

【初めて営業リーダーになる方へ】今すぐ実践できるマネジメント方法

突然、営業リーダーを任されて「若手メンバーをどうやってマネジメントしよう…」と頭を抱える人もいるのではないだろうか。責任あるポジションを任されることは光栄なことだろう。

しかし多くの場合、営業リーダーといってもプレイングリーダーであることがほとんどで、マネジメントのノウハウについてインプットする時間も十分にとれるわけではない。

通常の個人目標に加え、メンバー育成、チームやメンバー個人の目標管理、メンバーのモチベーション管理など、役割と責任が増え大きなプレッシャーを感じるケースも多い。本記事ではそんな初級営業リーダーに向けて、初心者が今すぐ取り組めるマネジメントのポイントを紹介していく。

そもそもマネジメントってなに?


営業リーダーになって最初にぶつかる壁はマネジメントだ。プレーヤーとして優秀だった人材が必ずしも優秀なリーダーになれるわけではない。自分が成果を出してきた方法が必ずしもメンバー個人にフィットするとは限らないからだ。また、マネジメントとは単にメンバーに指示を出し、タスク管理をするだけではない。マネジメントとは一般的に、チームや組織内のメンバーをリーダーシップやコーチングなどの手法を用いて適切に指導・管理することを指す。その目的は、メンバーの能力を最大限に引き出し、組織やチームの目標を達成することだ。特に昨今はチームの生産性や成果に良い影響を与えるためだけではなく、メンバーの離職を防ぐことを目的とした1人ひとりのモチベーション管理も重要視されている。個々のタイプや特徴に合わせて適切な指導やフィードバックを提供することで、チーム全体の能力向上にもつなげることができるのだ。


メンバーマネジメントの具体的な方法は?


マネジメントの概要についてはなんとなくご理解いただけただろうか。ここからは、具体的なマネジメントの方法について掘り下げていこう。
 

チームやメンバーの目標管理

会社が営業リーダーに期待しているのは、主にチームやメンバーの目標達成だ。では具体的にどうすればいいのか。ここからは目標設定やその達成に向けたアクション、スケジュール管理などの方法について解説していく。
 

その1:目標設定をしよう

チームの長期的な目標を設定し、その達成に向けた中期的な目標や短期的な目標を設定する。目標設定の方法がわからない場合は、目標達成のためによく使われている法則『SMARTの原則』(具体的、測定可能、達成可能、現実的、時間的制約)に従って考えてみると良いだろう。
 

その2:タスクを割り当てよう

目標達成に受けたタスクをメンバーに割り当て、各メンバーが自分の責任範囲内でタスクを達成できるようにサポートする。この時、メンバーの能力や経験を考慮し、タスクの優先順位や期限に基づいて適切な割り当てを行うことが大切になる。
 

その3:目標達成に向けた進行管理をしよう

目標を達成するためにプランニングした各メンバーのタスクやスケジュール、リソース、予算について進捗状況をモニタリングしていく。特に複数のメンバーを管理する場合は、効率的なモニタリング手法として、さまざまな管理ツールを使用しながら管理することをオススメする。
 
タスク管理ツール例
■Trello(トレロ)
カードを使った直感的なタスク管理ができるツールで無料版もあり。
■Asana(アサナ)
チーム全体でのタスク管理に適していてプロジェクト管理やカレンダー表示の機能あり。
■JIRA(ジラ)
ソフトウェア開発などに特化したタスク管理ツールで、カスタマイズ性が高い。
 
売上管理ツール例
■Salesforce(セールスフォース)
クラウド型のCRMツールで、セールスプロセスの管理や分析ができる。
■HubSpot(ハブスポット)
マーケティングやセールス、カスタマーサポートなどの機能を一元化して管理が可能。
■Zoho CRM(ゾーホー)
低コストでセールスやマーケティング、カスタマーサポートなどを一元管理ができる。
 
その他の便利ツール
■Googleスプレッドシート
タスクや売上管理に使われる表計算ソフトで、複数人での共同編集が可能。
■Slack
チームコミュニケーションを効率化でき、タスクや売上管理の情報共有にも使用できる。
 

その4:リスク管理をしよう

進行状況のモニタリングを通じて、目標達成に影響を与える可能性が高いリスクを識別し、予防策や対処策を策定する。達成に向けて追加のリソース(人材、資金、設備、技術、情報など)確保が必要だと判断した場合は、早急に調整・調達を行う。達成というゴールを迎えるためには、このような対処策の判断や実行のタイミングが重要となる。
 

パフォーマンス評価やフィードバックの提供

パフォーマンスの評価とは、メンバーが決めていた目標に対しどれだけ達成したか、どんな成果を生み出したかを公正に評価することだ。ただ「頑張ったね!」と言葉を伝えるのではなく、半年に1回や3ヶ月に1回など定期的に面談を設け、評価シートやスキルツリーなどを用いて評価を行う。評価の結果をもとに、昇進や昇給、ボーナスなどの処遇が決まるため、メンバーとしっかりすり合わせをしておくことが肝心だ。また、昇進や昇給、ボーナスの結果については必ずフィードバックが必要となる。その際に、何が評価されその結果に至ったのか、どんな観点で取り組むとさらに評価が上がったのか、企業側から今後期待していることなど、次回目標設定時に向けてメンバーの軸となるように、明確なフィードバックを行うことで、メンバーの成長にもつながり、リーダーとの信頼関係構築の一助にもなる。
 

メンバーの成長をサポート

メンバーの成長をサポートすることもリーダーの大切な役割だ。目標に対する進行状況を確認した上で達成の妨げとなる課題を洗い出し、解決に向けたアドバイスをしていこう。営業職であれば、顧客への提案や受注に際する課題が多いため、事前の商談を想定したロープレの実施や、営業同行などが有効だ。
 
また、時にはチャレンジングな役割を任せるのも効果的だ。一段階難易度が高い業務を任せていくことで、さらなる成長を促すことができる。しかし、メンバーの中にはそうしたチャレンジングな業務を好む者もいれば、石橋を叩いてわたるような慎重派の者もいるはずなので、個人の適性や本人の希望に合わせて判断することが大切だ。
 

エンゲージメントの高いチームをつくる

企業によって異なるケースはあるものの、営業会社であれば個人の目標達成と、所属するチームの目標達成の2軸で評価をすることがほとんどだ。その場合、個人のマネジメントだけではなく、チームビルディング(=チーム内のメンバーが協力し合って目標を達成するために、お互いの信頼関係やコミュニケーション能力を向上させること)のための取り組みを実施することも重要になる。例えば…

役割と責任を与える

各メンバーにメインの業務とは別で、チーム活動を行ううえでの役割と責任を割り当てる。そうすることで、それぞれが自分の役割に責任を持ち、目標達成に向けて協力して高い成果を生み出せるように促す。

 

定期的なコミュニケーションの場をつくる

チームメンバー同士のコミュニケーションを円滑にするために、積極的に情報共有を行い、チーム全体の方向性や問題解決に向けた戦略を共有していこう。また、チームメンバー同士でのフィードバックを定期的に行うことも効果的だ。互いの改善点を共有することで、チーム全体の成長にもつなげることができる。

 
これらの要素をバランスよく取り入れ、チーム一体となって目標達成に向けて取り組むことが、エンゲージメントの高い組織をつくる鍵となる。


今すぐできる!筆者が実践したマネジメント方法


ここからは実際に筆者が営業リーダー時代に意識して取り組んだマネジメント8ヶ条を紹介したいと思う。
 

個人の得意を伸ばすマネジメント

社会人になってから苦手を克服するために時間や労力をさくことは無駄だと考えていたので、「得意を伸ばすマネジメント」を意識した。苦手や不得意の克服を目標にしてしまうと、仕事が嫌になったり、できない自分に自信を失って退職していく。そんな同期や後輩を何人も見てきたからだ。「せっかくやるなら楽しく取り組めることを」そんな方針を掲げ、チーム発足時にそれぞれのメンバーの業務上での得意なこと、好きなことをヒアリングし、ヒアリング結果に基づいた得意を伸ばす目標を設定した。
 

行動計画シートの作成・共有

得意を伸ばすための大枠の目標を決めた後、それをどう目標達成に向けて落とし込んでいくか、担当顧客1社ごとに過去の実績を確認し、ヨミ出しを行った。この時に意識したことは、「ヨミが出ない顧客に話を集中させないこと」だ。過去の実績にばかり囚われて、数字の大きい顧客に対してなぜヨミが少ないのか、これを詰める上司に私自身何度も遭遇した。しかし、ハッキリいってその詰める時間が無駄である。こちらとて高い数字でヨミ出しをしたいが、出ないものは出ないのだ。ならば切り替えて、どの顧客を伸ばしたいと考えているのかを一緒に考えていくほうがよっぽど建設的だ。メンバーがなるべくワクワクした気持ちで会話できるように、話を進めていくことを意識しよう。そうして作成した行動計画シートは全員が揃う場で共有。チームとして、誰がどんな顧客をもっていて、どんな取り組みをしていくのか、個社名が出た時に担当と何に注力するのかを共通認識としてもたせた。
 

週1回の面談

新人であろうと、ベテランであろうと週1回の面談を徹底した。とはいえかっちりとした雰囲気ではなく、あくまでフラットに。週の数字進捗を確認し、個人の目標達成に向けての残額確認を一緒に行い、各個社への提案のアドバイスを行った。ここでも大切なことは、メンバーに納得感があることだ。一方的に企業側の都合を押し付けるのではなく、きちんと腑に落ちているか、落ちていないのならばどこなのか。必要に応じて無理やり納得させるのではなく、自分の上長となる拠点長やマネージャーに相談し、時には便宜を図ることも必要だ。そうすることで、その後の信頼へと結びつけることができる。
 

日報へのコメント

営業なので外出していることも多く、当時所属していた営業部署では、その日のトピックスを拠点内全社員が閲覧できるチャットツール上で報告をさせていた。内容としては、当週の数字ヨミと、その日どの顧客に何を提案して結果はどうだったか、というようなナレッジ共有である。各リーダーが自分が管理するチームの分を集約し、チームトピックスとして共有をしていた。大体は集約した内容をコピペして報告として送るリーダーが大半だったが、私は各個人のトピックスに対して、全員が見えるそのチャット上で私からのコメントをつけた。内容としてはあげてくれたトピックスに対して誉めたり、普段どんなことを頑張っているか細かくコメントとして記載した。そうすることで、メンバーは多くの社員から見られる場で、認められているような気持ちを味わえるからだ。これは上司からも「良い方法だね」と言葉をもらえ、上司も早速真似していた。
 

相談ごとには絶対に手を止める

メンバーから「相談したい」と話しかけられても、手を止めずに耳だけ聞いて答えるリーダーも多いのではないだろうか。しかしそれだと、特に年下のメンバーは「忙しそう」「質問しづらい」と萎縮してしまう。どんなに切羽詰まって忙しい時でも必ず手を止め、身体を向けて顔をみて話を聞く。当たり前のことだが、ついおろそかにしてしまいがちだ。こうした小さな取り組み1つひとつがメンバーからの信頼を得ることにつながるのだ。これは実際に私が新卒1年目に育成担当からしてもらっていたことで、どんなにヤバい時でも必ず手を止めて話を聞いてくれた先輩(育成担当)には今でも感謝している。
 

メンバーの業務をサポート

私自身は求人広告の営業だったので、毎週金曜日に入稿締切があった。当時は派遣会社を担当していたこともあり、毎週原稿本数が100本以上と、地獄のような量を抱えていたが、メンバーの入稿サポートは必ず行っていた。サポートを行うにあたり、毎週木曜日には全て自分の入稿分を終わらせ、金曜日はメンバーの入稿サポートのために完全に空けておく。急遽入った掲載依頼に顔を真っ青にしたメンバーに代わり、原稿作成や入稿前チェックなどをサポート。時間の許す限り、メンバーの数字構築のため、声をかけあいながら奔走した。自分のためにリーダーが動いてくれる、これはリーダーへの信頼はもちろん、安心感の獲得にもつながった。
 

チームでオリジナルイベントの実施

イベントといっても大きなものではない。例えばバレンタインやハロウィンなど、季節ごとのイベントに合わせてお菓子を買い、ひと工夫して渡すなど、普段からチームで過ごすことを楽しめるように意識した。会社の業績が悪く、インセンティブがほとんど出ない月には、私からのインセンティブとして、お金ではないが形に残るものを考え、プレゼントしたりもした。ただ、なんとなくダラダラと日々を過ごすのではなく、そうした少しの心遣いがチームの雰囲気を和ませ、一体感につながる。自分のできる範囲でチームが明るくなる施策を考えることをオススメする。
 
以上が8ヶ条だが、これを実行したことでチーム賞を受賞した。当時入社5年未満のメンバーのみで、私を含めて4名という少人数だったが、全社内で最も目標達成率が高かったことで壇上に上がることができた。この8ヶ条はメンバーの適性やタイプを考えて私自身が編み出したものなので、全てのケースに当てはまるわけではないかもしれない。ただ、結果につながったのは、しっかりとメンバーを見極め、実行しきったことだと考えている。


マネジメント力をつけて生産性の高いチームをつくろう


初めて営業リーダーを任されてプレッシャーを感じる人も多いだろう。しかし、本記事で紹介したポイントを押さえておけば、効率的で生産性の高い営業チームへと成長していくことができるはずだ。リーダーという管理職に立つことで、これまで見えていなかった経営者視点での思考力を手に入れることもできる。筆者自身も、自分が管理する側にまわって感じたこと、考えたこと、取り組んだことを顧客に紹介することで、理解力のある営業として顧客から評価を得ることができた。だからこそ、これから新たにリーダー職にチャレンジする方には、ぜひその機会を存分に楽しみ、ワクワクしながら取り組んでほしいと思う。そこで身につけたマネジメントスキルは、きっと何年経ってもあらゆるシーンで活かすことができるはずだ。
 
【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。
 
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