AI化でなくなる仕事、なくならない仕事は?新時代に求められるスキルと、未来の展望
その影響はSNSでも顕著に現れ、Twitterのタイムラインにも「ChatGPTでこんなことをしてみた!」といった活用例が頻繁に見受けられるようになった。また、MicrosoftやGoogleなど大手テック企業も、『ChatGPT』への対抗措置を模索。自社の検索エンジンへのChatGPT実装や、新たなAI対話型チャットサービスの開発などの動きを見せている。今後も『ChatGPT』をはじめとする生成AIは注目され続けていくことだろう。
一方で、「AIに自分の仕事を奪われてしまうのではないか」と不安を抱える人たちも増えている。ChatGPTの普及をきっかけに連日多くの新しいサービスが登場しているのも、不安を煽る要因のひとつだろう。特にこれから転職を考えている第二新卒者は、転職先として希望する業界や仕事が、将来的にAIの影響を受けないか、考える人もいると思う。
そこで、本記事では生成AIの誕生によって社会や働き方はどう変化していくかについて解説。AIに代替されてしまう職業、AIに取って代わられない仕事は何かを明らかにし、進化する未来に向けてわたしたちに必要な対策は何があるのかを紹介していく。
AIの進化による仕事の変化
上述したように、AIの進歩は労働市場に多くの変革を引き起こそうとしている。そうした変革により、労働力の自動化と効率化が促進され、特にルーティンワークが中心の分野では多くの職種が機械に置き換えられていくことが予想される。
しかし、すべてが自動化の波に飲まれるわけではない。なぜなら、AIにも得意な領域と不得意な領域があるからだ。具体的には、繰り返しの作業やパターン認識には優れているが、創造的な思考や複雑な人間の感情を理解し対応する能力はまだまだ不十分だといえる。そうした能力が必要とされる分野では、AIは補助的な役割として活用されていくことになるだろう。
さらに、AIの発展は新たな職業を生む可能性も考えられる。例えば、AI技術の導入と管理を行う専門家や、AIが解釈できない複雑な問題を解決するコンサルタントなど。今後、AIと人間が共存し、互いの強みを活かす新たな労働環境の構築も重要になる。
AIに代替される可能性がある仕事は?
では、AIによって影響を受けやすい職業とはなにか。主に以下があげられる。
商品の紹介や在庫の管理、顧客の購入履歴に基づいた商品の推奨など、AIや自動化の技術により代替される可能性がある。また、オンラインショッピングの増加に伴い、顧客の購入傾向の分析、パーソナライズされた商品推奨、自動決済システムやチャットボットの進化による人間の介入を必要としない販売プロセスがすでに可能になりはじめている。
スクリプトに基づく応対や、FAQに基づいた問い合わせの解決など、繰り返し性が高く、決まったフレームワークの中で行われる作業はAIが得意とする領域だ。特に自然言語処理能力を持つAIは人間の会話を理解し、適切なレスポンスを提供する能力もある。そのため、一部のコールセンター業務はAIによって効率化、または代替される可能性が高い。
大量のデータを正確に入力する作業や、定形文書の作成、スケジュール管理などはAIが得意とする領域なため、AIに代替されやすい職種としてあげられる。また、AIは高速かつエラーなくこれらの作業を行うことが可能で、時間やコストを削減するための効率化手段として活用されるようになるだろう。
規則に基づく定型的な作業が多く、データ処理能力が必要とされるため、財務・経理職もAIにより自動化されやすい職業といえる。しかし、専門的な知識や経験に基づく判断が必要な業務も存在するため、完全な代替は難しい面もある。
商品の陳列や在庫管理、レジでの会計など、定型的で繰り返しの作業となるため、コンビニ・スーパーの業務も自動化されていくだろう。特に、レジ作業は自動決済システムやセルフレジなどはすでにAI化が進んでおり、コンビニは無人店舗なども出てきている。また、AIは24時間稼働でき、人手が不足する時間帯でも店舗運営を支えることができるため、今後ますますAI化が進んでいくことが予測される。
単調で繰り返しの作業が多い製造業の作業員もAIやロボット技術によって自動化されやすい職種だ。主な業務となる部品の組み立てや品質検査などは、プログラムされたAIやロボットによって高速かつ正確に行うことが可能となる。さらに、AIは人間が苦手とする長時間の連続作業や危険な環境での作業も可能で、企業側からすると人件費を減らすメリットを得られる。
定められたルートとスケジュールに従って車両を運行する運転手の業務も、AIによってプログラムすることが可能だ。また、AIによる自動運転によって人間の運転ミスによる事故の減少や、高齢者や障がい者の移動支援、効率的な交通管理など、社会的課題解決に大きな貢献も期待することができる。
設備やエリアの監視、異常の報告、場合によっては対応が求められる警備員の仕事も、監視カメラとAIを組み合わせたシステムにより自動化することが可能だ。AIは顔認識や物体検出技術を用いて、人間の目が見逃す可能性のある異常を検出することもできる。また、AIは24時間連続で働くことが可能であり、人間の警備員が対応できない時間帯や環境でも有効に働くことができる。
AIに代替されにくい仕事は?
しかし、すべての仕事がAIに置き換わるわけではない。高度な創造性、深い人間理解、そして微妙な感情表現が必要な職業は、AIによる代替は難しいだろう。そんなAIに取って代わられない仕事とはなにか、主に以下があげられる。
法人営業は、個々の顧客のニーズを理解し、信頼関係を築くための高い対人スキルと説得力が求められる。また、営業戦略の立案や交渉などでは、独自の洞察力や直感が重要となる。さらに、新規の顧客や市場に対するアプローチには、人間の創造性と柔軟性が必要となるため、課題解決型の法人営業はAIによって代替されにくい職業といえる。
社員の感情やニーズを理解し、組織の人間関係を管理する役割は、AIにとって難しい人間特有のスキルが必要となる。また、戦略的な人材マネジメントや組織のカルチャー構築も人事の重要な役割となるため、企業や組織特有の文脈を理解し、適切に対応する能力が求められる。これらの要素はAIの現行技術では補完することが難しい。
新商品のアイデア出しや、ブランドストーリーの作成、キャンペーン戦略の立案などは、人間の創造性、直感、感性が重要となるため、現時点のAIの技術では模倣することが難しい領域となる。また、消費者との深い関わりを持つマーケティングの業務では、人間の感情やニーズを理解し、それに対応するための高度な対人スキルが求められる。これらはAIがまだ十分に補完できない部分となる。
美容師・理容師の職業は、技術と対人スキルが組み合わさった独特な仕事だ。顧客の要望を理解し、その人に最適なスタイルを提案・実現するための対話力や感性は、現在のAI技術では再現が難しい。また、髪の質感や状態、顔の形状などを直接触れて感じることで調整を行うための高度な手技も求められる。これらの要素が、美容師・理容師がAIに代替されにくい理由として考えられる。
コンサルタントの主要な役割は、クライアントのビジネス課題を理解し、戦略的なアドバイスやソリューションを提供することだ。これには、深い業界知識、戦略的思考、優れた対人スキル、そして個々のクライアントの文化や価値観を理解する能力が求められる。また、複雑なビジネス問題を解決するためには、経験に基づく洞察や直感も必要となる。これらはAIが再現することが難しい要素で、コンサルタントが持つ重要なスキルの一つだ。
建築・土木技術士の仕事は高度な専門知識と経験に基づく洞察が求められ、全体のプロジェクト管理や問題解決の能力が重要だ。さらに、地域の地形や気候、法規制、建物の使用目的や住民のニーズを考慮した設計が必要となる。これらは現在のAIでは十分に代替できないため、建築・土木技術士はAIに代替されにくい職業といえる。
看護師・介護士の職業は、人間の感情やニーズに対する深い理解と対人スキルが必要だ。患者や利用者とのコミュニケーション、細やかなケア、そして時には心のケアも求められる。また、臨床現場では瞬時の判断と対応が必要な場面も多く、これらは現在のAIでは十分に代替できない部分となる。
教師や保育士の職業は、教育・育成の過程で人間の感情や成長に深く関わるため、高い対人スキルと感受性が求められる。学生や子供たちの個々のニーズを理解し、適切な指導やケアを提供する能力は、現在のAIでは補えない能力だ。また、教育の現場では、教える内容だけでなく、学び方を指導し、思考力や人間性を育む役割も重要となるため、AIでの代替は難しいと考えられる。
法律の知識を活用して具体的なケースに対する解釈や判断を行い、顧客の利益を最大限に守るという高度な専門性と人間の判断力が求められる。また、法廷での説得力や対人スキル、倫理観も重要な要素となるため、これらの能力は、現在のAIの技術では十分には代替できない。さらに、法律は地域や文化、歴史に深く根ざしたものであり、その全てを理解し適用することはAIにとって難しいため、弁護士はAIに代替されにくい職業といえる。
公務員の業務は、法令の適用、地域の特性把握、対人サービスなど人間の感情や判断力を必要とするものが多く、これらは現在のAIでは対応することが難しい。また、公務員の業務は法律で規定されており、AIによる代替は法的な問題も含むため複雑となる。さらに、政策策定や公共サービス提供など、人々の生活に直接影響を及ぼす業務において、AIが完全に人間の役割を代替することは現状では困難だといえる。
定型的なデータ処理やルーチンワーク、データ分析などはAIが高速に、かつ正確に処理することが可能となる。しかしながら、人間ならではの創造性やコミュニケーションが必要となる業務は、まだまだAIに代替される未来は遠く、人間の手で行っていくことが必要となる。
AI時代に求められるスキル
現段階では、業務においてAIと人間の共存が最も効率的な手段となる。しかし、今後もAIが進化し続ける中で、わたしたち人間は完全にAIに代替されないために、どのように対抗していくべきなのか。AIに代替されないためには、以下のような特定のスキルと対策を身につけておく必要がある。
AIは多くのタスクを代替可能ですが、人間特有の対人スキルを完全に模倣することは難しい。そこでわたしたち人間に必要となるのが「対人スキル」だ。具体的には、他者の感情や視点を理解し、対応する「共感力」、情報を分析し、問題解決のための創造的なアイデアを提案する「クリティカシンキングスキル」、目標に向けたチームの動きを調整し、モチベーションを高める「リーダーシップ」が求められる。
新しいアイデアや解決策を生み出す能力で、AIによる代替が難しいスキルの一つ。AIは既存のデータやパターンに基づいて予測や結論を導き出すことが得意だが、未知の領域で独自の視点や発想を展開する能力は人間特有の能力となる。この創造性は芸術、デザイン、科学、ビジネス戦略など、多くの領域で価値を生み出す。創造性を身につけるためには、多様な知識を広く深く学び、異なる視点を持つ人々と交流することで新たな視点を得ることが重要だ。また、失敗から学び、常に挑戦し続ける姿勢も欠かせない。
多面的で予測困難な問題に対処するための能力で、これもAIの補完が難しい人間特有のスキルだ。AIは明確なパターンやルールに基づいた問題を効率的に解決することができるが、複数の要素が相互に影響し合い、非線形な結果をもたらす複雑な問題では、人間の柔軟な思考と判断力が求められる。具体的には、問題の本質を見抜く「洞察力」、異なる情報を組み合わせて新たな解を見つける「統合的思考力」、問題の変化に対応して戦略を調整する「適応力」があげられる。これらのスキルを磨くには、幅広い知識を身につけ、異なる視点から物事を見る訓練、そして何よりも問題解決に対する好奇心と積極性が必要となる。
変化に適応し、新しい状況や課題に対応する「柔軟性」も欠かせない。これはAIにとっては困難なスキルで、人間の強みとなる。AIはプログラムされたタスクを効率的に遂行しますが、未経験の状況や予期しない問題には対応が難しい。柔軟性には「思考の柔軟性」、「行動の柔軟性」、「情緒の柔軟性」の3つの側面がある。思考の柔軟性は新しい視点やアイデアを受け入れる能力、行動の柔軟性は状況に応じて行動を変える能力、情緒の柔軟性は感情をコントロールし、ストレスに対処する能力だ。これらを身につけるためには、自分の考え方や行動を客観的に見つめ直す自己反省、新しい経験を積極的に追求する好奇心、そして困難や失敗から学び成長するレジリエンスが必要となる。
AIの機能、限界、そして可能性を理解し、それを有効に利用するためのAIに関する知識をもつことも大切だ。AIは急速に進化し、多くの領域で活用されていますが、その全ての活動を置き換えるわけではない。AIの強みと弱みを理解することで、AIを効果的に組み込み、対人スキルや創造性など人間の特性を最大限に活かすことができるようになる。具体的には、AIの基本的な概念、機械学習の方法、AIの倫理的な問題、そしてAIがどのように業務に適用できるかについての理解が求められる。そしてさらに、最新の技術動向を追う習慣も重要だ。これらの知識を身につけるためには、本やオンラインコースを利用したり、専門家やコミュニティから学ぶなどの方法が考えられる。
一つの分野に深い知識とスキルを持つとともに、様々な分野についての基本的な理解を持つことも重要だ。専門スキルを身につけられる力は、つまり一つの領域で高度な能力を持ち、深く掘り下げることができること。これは人間がAIに取って代わられにくい領域で、業界や職種は問わず今後重宝される力だ。幅広い知識においても、さまざまな分野の基本的な知識を持つことで、異なる視点やアイデアを持ち込み、柔軟な思考や創造的なアイデアを生み出すことが可能になる。これらの組み合わせが、AIの時代における求められる人間のスキルとなる。専門的な知識を深めつつ、他分野の知識も広げ、創造的かつ複雑な問題解決に取り組むことが重要だ。
AIの進歩がもたらす可能性と未来の展望
多くの人が危惧しているように、AIの進化は多くの職業に影響を及ぼす。しかしながら、完全に代替される職業はまだ少なく、人間特有のスキルが求められる職種は今後も人間の手で行っていく必要がある。その際には、一部の業務をAIを活用して効率化させることで、工数削減や精度の高い仕事を実現することができる。AIの進化に怯えるのではなく、自らの専門性を高めながら、AIと共存する道を探ることこそが、今後のわたしたちにとって必要なのだ。
【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。
自分に合った転職先をお探しの方はこちらをクリック!
IT業界への転職を検討されている方はこちらをクリック!