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  • 2022.08.31

一人ひとりのナレッジを組織の力に。テレワーク時代の生産性を高めるナレッジ経営・CKOの存在意義

コロナ禍でテレワークが浸透し、柔軟なワークスタイルを実現できる企業が増えた。一方で、個人のノウハウやナレッジが組織に共有が上手くいかず、逆に生産性が下がってしまうケースも多い。

例えば、同じような質問が複数メンバーから寄せられていても、誰に聞くべきかわからなかったり。社内のビジネスチャットで検索しても、知りたい情報にたどり着けなかったり。属人化されたナレッジの共有に課題を感じる企業も多いようだ。

このような課題を解決できるナレッジ共有ツールとして注目されているのが、ナレッジ経営クラウド『Qast(キャスト)』だ。「知恵袋」のように誰もが直観的に質問・回答できる独自のQ&A機能を有し、社内に分散しているナレッジを集約できる。ユーザーは「Wikipedia」で検索するように知りたい情報にアクセスできる便利さから、既に5,000社以上で導入されている。

テレワーク時代の生産性向上に貢献している『Qast』だが、時流に合わせ一朝一夕に生まれたサービスではない。運営しているanyの代表・吉田和史氏が歩んできたのは、紆余曲折の日々だった。

「来月も会社を存続できるかわからない、そう思うことが何度もありました。危機的な状況で心がけていたのは、どうするべきかではなく、どうありたいのか。一人ひとりのナレッジが組織の力に変わる仕組みを、何としても創りたかったのです」

飛躍的な成長を続ける『Qast』を発想した原点はどこにあるのか。彼の会社員時代の苦い体験も振り返りながら、ブレイクスルーのきっかけを紐解いてみたい。

【プロフィール】
吉田和史
any株式会社 代表取締役・CKO(最高知識責任者)
西南学院大学卒業後、IT業界で法人営業、アプリ企画、ディレクターを経験し、2016年にany株式会社を設立。2018年からナレッジ経営クラウド「Qast(キャスト)」の運営を開始し、2021年にはユーザー数が5,000社を突破。ナレッジ経営の概念を世の中に広めるため、CKOに就任している。

没頭したサッカーへの熱量をビジネスに


吉田は学生時代から起業を志していたわけではない。4歳からひたすらサッカーに打ち込み、かつては本気でプロを目指していた。しかし、大学在学中に将来的なキャリアを考えるなかで、自分の生き方に迷いが生まれたという。
 
「Jリーガーの一般的な引退年齢は25〜30歳。その後の生き方を考えたときに、一度きりの人生でサッカーしか知らないのは悔いが残ると思いました。サッカーに変わるくらいのモチベーションで取り組める仕事が、世の中にあるかもしれない。そのような期待感もあって就職活動を始めましたが、最初は自分にどんな仕事が向いているのか全くわかりませんでした」
 
IT業界で働くようになったきっかけは、高校サッカー時代のコーチからもらったアドバイスにある。
 
「IT業界のベンチャーやスタートアップは、個人としても大きく成長できる可能性を秘めていて、20代で業界の第一人者になれる可能性だってある。将来的なキャリアを考える上で、成長できる環境がとても魅力的だと感じました。ITのスキルが社会的に必要とされていることも知り、まずはスキルアップのために飛び込んでみようと思ったのです」
 
20代で出来るだけ多くの経験を積むため、国内最大級のアドネットワークを持つIT企業で法人営業を経験。テレアポに注力しながら、BtoBマーケティングの部署を新たに立ち上げ、顧客獲得へ積極的に取り組んでいる。
 
「当時の社内にはマーケティング部門がなかったものの、自ら進んでインバウンドでのリード獲得に取り組んでいました。他の部署を巻き込み、公式ブログを始めたり、自社セミナーを開催したり。新しいことを始める難しさと、軌道に乗せるまでの大変さを知ることができました」
 
営業やマーケティング以外のことにも挑戦したいと思い、ゲームアプリ開発会社に転職。アプリの企画・開発のディレクション、マーケティング、マネタイズまでを幅広く担当し、多い時には新作アプリを月間20本リリースすることもあったという。
 
「新作アプリのタイトル・コンセプトのプレゼンを、100本ノック、1000本ノックのように毎日行っていました。それらの企画会議を通して、モノを作る過程での着眼点やアイデアの捻り出し方、さらにはデザイナーやエンジニアとのコミュニケーションの取り方など、幅広い事業運営のスキルを身につけることができました。今も新たな施策を考える上で、画期的なアイデアと円滑なコミュニケーションが必要になってくるので、当時の経験が大いに生かされています」

目先の利益より、子どもに誇れるサービスを


入社2年目には、Webメディア事業の部長にも就任している吉田。社長直下で戦略部分に携わりながら、事業を大きくグロースさせていく。なぜ彼は、順調なキャリアのなかで起業という道を選んだのだろうか。
 
「さらなる成長のためにも、メディア事業で今まで経験していないことにゼロから挑戦したい気持ちが芽生えてきたのです。新たな職場を探すのか、社内ベンチャーで新しいことに挑戦するのか。色々と考えましたが、ネームバリューがない中で新規事業を作るのが一番難しく実力がつくと思い、起業を選択しました」
 
2016年にany株式会社を設立。収益基盤を構築するため、自分の強みと経験を活かしたサッカーのWebメディア運営をスタートするが、最初の1年は事業資金がなく、会社の存続危機が何度もあったという。状況を打開するため、翌年には前職で得たノウハウを活かしてマンガアプリをリリースしている。
 
「エンタメコンテンツは浮き沈みが激しいので、大手に対抗しながらサービスや会社を大きくグロースさせるのは非常に難しかったです。当時は一人でアイデアを出し、この仮説が正しいのか、時間の使い方は合っているのか、試行錯誤を日々重ねていました。一定数のユーザーや売上を獲得し、安定した収益はありましたが、第一子を授かったことをきっかけに、人生を掛けて取り組む事業として子どもに誇れるものを作りたいと思うようになりました」
 
今までにない新たなプロダクトを創るため、吉田はそれまでの事業構築の考え方を根本から変える。ニーズが確かな市場に参入するのではなく、市場を自分たちがつくっていく。いわば、0→1の課題解決型サービス、自分にとって心の底から必要だと感じられるサービスを構築しようとしていたのだ。
 
「『Qast(キャスト)』の着想は、今まで自分が体験した苦しい経験や企業内の課題を振り返ったことにあります。自分の実感が伴ったサービスじゃないと、信念を持って取り組めない。そう思ったので、少しでも課題や疑問に感じたことを洗いざらい書き出し、その中から未だに解消されていない切実なテーマとして、『社内のナレッジ共有』に行きつきました」
 
それは吉田が前々職で営業活動に取り組んでいたとき、日々頭を悩ませていた課題だった。顧客の要望を実現するため、システム・機能について担当エンジニアに質問するものの、なかなか答えが返ってこない。経験の⾧いエンジニアからすれば、よくある質問だったので回答することが煩わしかったのだ。
 
「ナレッジが共有されていないことで、時間のロスが組織のあらゆるところで発生しており、この課題を解決できれば組織全体がかなり効率化できるはずだと考えました。これが社内の知恵袋のような機能を実装している『Qast』を開発する原体験となったのです。実際に30社以上の顧客にヒアリングしたところ、現状の社内共有ツールにどの企業も満足していない状況でした。市場は広いのに、業界のスタンダードが構築されていない。『これだ!』と思いましたね」

コロナ禍がブレイクスルーの追い風に


2018年に『Qast』のβ版をリリース。当時は、マーケティング、セールス、カスタマーサクセス、PMなど、開発以外の業務を全て一人で担当しながら、顧客の声を迅速にプロダクトへ反映していった。自らの課題を起点にしたサービスだったため、開発はスピード感を持って進めることができたという。
 
吉田自身がこだわりを持って実現したプロダクトの優位性として、疑問や課題をスムーズに解決する「検索性の高さ」があげられる。
 
「仕事でわからないことがあったとき誰に聞くのか知っているなら、電話やメールで解決できます。問題なのは、誰に聞けばいいのかわからないケース。そんなときにも『Qast』なら、社内版“知恵袋”のようにオープン・クエスチョンで質問を書き込み、それに詳しい社内メンバーが回答してくれます。しかも、それらのQ&Aは社内ナレッジとして溜まっていき、検索のときに関連するタグや同義語が自動表示されます。つまり、知りたい情報のキーワードがわからなくても、必要なナレッジを直感的に探し出せるということです」
 
ユーザーに好評だったβ版を経て、2019年『Qast』を正式リリース。しかし、リリース後には思ったより導入が進まず、事業戦略を大きく変える必要が出てくる。
 
「ターゲットに設定していたIT業界で苦戦し、製造業などそれ以外の非IT企業からの受注が増えていったのです。その事実から、今までナレッジツールを導入したことのない企業の方が、『Qast』を求めていることに気づきました。それまでは、自分が使いたいサービスを追求することが、ユーザーの価値に繋がると信じていました。しかし、『Qast』を成長させるためには、もっと広い視点で訴求することが必要だったのです」
 
顧客とのコミュニケーションを増やし、求められる機能を忠実に反映することを心がけるようになった吉田。『Qast』を組織全体のパフォーマンスを最大化する「ナレッジ経営クラウド」として、リブランディングしていく。個人のノウハウを引き出せるベネフィットをわかりやすく伝えていった結果、サービスは急成長を遂げる。
 
「サービスの見せ方を変えたことに加え、コロナ禍のテレワーク増加が追い風になりました。導入を含めたお客様からの引き合いが、コロナ前に比べると2倍以上に増えています。その背景にあるのは、日常のコミュニケーションの変化です。オフィスで気軽にできていた質問ができなくなったり、新メンバーに対するオンボーディングが上手く進まなかったり。各種のチャットツールでは解決できない課題を『Qast』なら解決できます」

CKO(最高知識責任者)としてナレッジ経営を広めていく


正式リリース3年目でブレイクスルーを果たした『Qast』サービス。事業戦略を磨き込むことで、総額2.3億円の資金調達にも成功。営業やカスタマーサクセスのメンバーを採用し、顧客の伴走支援にも本格的に取り組んでいる。現在5,000社以上に『Qast』が導入されているが、組織にナレッジ経営を浸透させるためには、どんなことが必要なのだろうか。
 
「まず、企業の運用担当者と一緒に具体的な目標を立てることが重要です。『最初の3か月でここまで持っていきましょう』など、四半期や半期ごとの現実的な数値を決めて取り組んでいきます。というのも、全員が一斉に使うことはあり得ないからです。いわゆる『2:6:2の法則』が当てはまることが多く、最初に使い始める2割の方々はSNSなどで情報発信することに慣れていたり、新しいものが好きなグループ。次の6割の方々は『みんなが使っているなら使おうかな』などと考えている、どっちつかずのグループ。そして残りの2割は、絶対に使おうとしないグループです。『Qast』が段階的に浸透するよう、計画を立てて進めていくことが大切です」
 
ナレッジ経営を組織に浸透させるためには、使用するプロダクトにおいてもユーザーのマインドを変えるような機能性が重要だという。例えば『Qast』には、投稿者のモチベーションを高める機能として「スコア機能」が実装されている。投稿したタイミングや、閲覧したユーザーがリアクションボタンを押した時にリアルタイムで数値化され、ランキング形式で表示される仕組みだ。
 
「動機づけになる機能や仕組みがないと、継続的な投稿には結びつきません。Q&A機能を実装しているツールは色々とありますが、実際に現場の人が投稿するまでには時間がかかることが多いようです。『Qast』はナレッジ経営への貢献度をスコア化して、ランキング形式にすることにより、全体の意識を高めることに成功しています。最近では、算出された数値を人事評価の一項目として組み込む企業も出てきています」
 
ナレッジ経営を他社にも広めていくため、吉田は2021年にCKO(最高知識責任者)に就任。CKOは欧米を中心に、Microsoft社など一部の企業で定着しているが、日本ではまだほとんど知られていないのが現状だ。
 
「CKOの役割は、企業に蓄積した様々な知識を整理し、業務フローの整備や特許の活用などの業務拡大をサポートすることです。ナレッジ経営の戦略を立てることが期待されており、プロジェクトメンバーのアサインや、その意識付けなども行います。ナレッジ経営を早期に社内へ浸透させるためには、全体の旗振り役を経営層が担うことが効果的です」

総額4.5億円の資金調達で、ビジョン実現を目指す


anyは業界のスタンダードとなるSaaSを創るため「チームシップが根付いた世の中に」をビジョンに掲げている。
 
「私たちのビジョンを実現するためには、まずany自体がチームシップを実践していくことが大切だと思います。そもそも、チームシップは一人ひとりがチームのために成長することを指しており、組織にとって重要な『チームワーク』の土台になります。つまり、チームシップがあるからこそ、チームワークを最大化できるという考え方です」
 
このビジョンに共感するメンバーが、anyには続々と集まってきている。仲間を大切にしながら、自分の意見を自由に言い合えるオープンな関係性が魅力だ。
 
「これまでの経験でチームシップの大切さを実感したり、これから大事にしていこうとするメンバーが、数多くジョインしています。というのも、私たちの事業は個人が持っているナレッジを組織へ共有していくので、チームを第一に考えるマインドが重要です。ナレッジ経営をお客様に伝えたり、プロダクトの開発に携わったりするときにも、チームシップが必要になってきます」
 
メンバー同士のスムーズな連携で急成長を続けるanyに、今後の展望についても聞いてみた。
 
「企業に不可欠な要素として、ヒト・モノ・カネとよく言われますが、そこに『ナレッジ』が加わるような世の中にしていきたいと考えています。そのために必要なサービスとして、『Qast』を飛躍的に成長させていきたい。さらなる事業拡大の準備を現在進めており、今年の6月には総額4.5億円の資金調達を実施しています。事業成長の選択肢が一気に広がったので、自分の力で事業を伸ばしたい人には絶好のタイミングだと思います。新たなチャレンジをしたい人に、ぜひジョインしてほしいですね」
 

取材・文:平原 健士 撮影:岡田 晃奈

会社名 any株式会社
本社所在地 東京都千代田区神田錦町2-2-1 KANDA SQUARE 11F WeWork内
役員 代表取締役 吉田 和史
事業内容 ナレッジ経営クラウド「Qast」の開発・運営
資本金 122,000,000円(資本準備金含む)
設立年月 2016年10月

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