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  • 2024.02.19

最先端の行動認識AIで社会の安心・安全のインフラを目指す|株式会社アジラ

日本は治安のよい国とはいえ、電車内や繁華街などでの凶悪犯罪が定期的に発生している。2021年には小田急線や京王線電車内で乗客がナイフで刺され、2022年には安倍元総理が銃撃される事件も発生した。その一方で、警備業界の人材不足は深刻だ。

そんな警備業界の課題や「人の手が必要な状況」を最新鋭のAIテクノロジーで解決しているのが株式会社アジラ(以下、アジラ)だ。自社で独自開発した行動認識AIを搭載した防犯プロダクト『AI Security asilla』は、人物の行動を推定しトラブルの予兆があれば検知する、事件・事故を未然に防ぐことを目的とした防犯カメラシステムである。

2022年1月のリリース以来、『AI Security asilla』は日本国内の複合施設や商業施設、病院、教育機関、交通インフラなどに幅広く採用され、導入企業を急速に伸ばしている。2024年1月にはシリーズCラウンドで約4億6000万円(累計12億円)の資金調達を実施し、投資家からも注目を集めている。

同社の成長や高い技術力の背景には何があるのか。今回は、あらゆる空間価値を高める社会インフラとなることを目指し躍進するアジラの執行役員COO尾上氏に、アジラ創立の経緯や行動認識AIの特徴、今後のビジョンなどについて伺った。

【プロフィール】
尾上 剛
大手証券会社で投資銀行部門を含むさまざまな業務に従事後、上場企業やスタートアップにて経営企画部門を統括。2022年8月に株式会社アジラへ参画し、経営企画GMに就任、2023年1月より執行役員COO、2023年3月に取締役COOに就任。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。

創業時から開発してきた行動認識AIを、防犯領域へ

 
ーーまず、貴社が立ち上がった経緯を教えてください。
 
設立は、代表の木村がNTTグループからぐるナビに転職し、データサイエンティストを探していた中で、日本よりも優秀な人材がいるベトナムを訪れたのが始まりでした。そこでグエン・タイン・ハイ(現取締役 Asilla Vietnam CEO)と出会い、当時ブームを迎えていたAIを使ったビジネスを手がけようと考え、独立した経緯があります。当社は今期で10期目を迎え、2022年1月にはAI警備システム『AI Security asilla』をリリースしていますが、創業時はAIシステムの受託開発をメイン事業としていました。
 
ーーその受託開発で得た経験が『AI Security asilla』につながったのでしょうか。
 
はい。当社は人間の行動姿勢を推定して、行動を分析する技術の研究開発をずっと行ってきました。そして、上場を目指していく中で、この培ってきた技術をもっとスケールの大きなビジネスに乗せていくためには、自社プロダクトを持つべきだと考え、『AI Security asilla』につながりました。受託開発ですとエンジニアをどんどん増やしていかなくてはなりませんが、プロダクトを持てばその必要がないので、スケールが早い点も重要でしたね。
 
ーーその中でも防犯の領域に特化しようと考えられたきっかけはありますか?
 
日本は高齢化が進んでいるうえ、世界的に見れば治安のよい国です。とはいえ、凶悪犯罪や大規模な事故も発生します。当社のAIのスキルを用いれば、事件や事故を未然に防ぐことができ、社会貢献できると考えました。これまでの防犯カメラの主な使われ方は行動が起きた後に状況を見返すことで、防犯には直接結びついていませんでした。また、カメラを常時確認する人員が必要な部分も、AIの力で改善できると思ったことがポイントです。

ーーなるほど、貴社のサービスはトラブルを未然に防ぐことに役立つのは画期的ですね。
 
はい。破壊行為などの事件だけではなく、白杖の方や車椅子の方などサポートが必要な方を事前に把握することもできますし、体調不良でふらついてしまっている人を素早く発見することもできます。また、エスカレーターはとても事故の多い現場でその現場でも当社のサービスは活用されています。たとえばご老人の方がエスカレーターのスピード感についていけずに倒れてしまったり、子供が遊んでいて手を挟んでしまったり、そういった事故の予兆を検知できるのが当社のプロダクトの強みです。
 

自社独自の高い技術でプロダクトを日々改良する

 
ーーサービスの特徴である行動認識AIの精度は非常に高いと伺っていますが、世界でも多く研究されている技術なのでしょうか。
 
行動認識AIに重要な姿勢推定のAIは、カーネギーメロン大学がオープンソースで公開しているものなど、いろいろなものがあります。ただ、商用で使うには精度やスピード感などが充分ではありませんでした。他のサービスでは、検知から通知するまで数分かかってしまうケースがあるとも聞いています。その点、当社は自社で姿勢推定のAIをすべて開発しているので、ビジネスに耐えうる性能を持たせられています。
 
ーー自社で技術を独自に開発されているのは大きな強みですね。行動認識AIの仕組みや特徴について、もう少し詳細に伺ってもよいですか?

まず防犯カメラの映像を取得して、「人らしい」ものをAIが理解したら「人らしい」ものに対して頭や肩などの関節点を推定し、線で繋げて棒人間のような形として認識します。これが姿勢推定であり、先ほどお伝えした通り当社は自社独自開発の「アジラ・ポーズ」を使用しています。


この姿勢推定で棒人間化したものを時系列で確認し、各関節がどういう動きをしてるから、結果的にこの人は何をしている、と行動を推定します。 他社の防犯カメラサービスではオブジェクト・ディテクション(物体検知)を取り入れているものは多いですが、姿勢までは推定しません。そうすると、木や動物なども人として誤検知する事態が発生してしまいます。
 
ーーこのような高精度なプロダクトが、商業施設や複合施設だけでなく、駅、病院、発電所など多くの場所で採用されている理由や背景について、尾上さまはどのように感じていますか?
 
一番の理由は、人手不足の解消だと感じます。管理業界や警備業界は、今、採用が厳しく、圧倒的な人手不足にあります。採用できてもご高齢の方が多かったり、今後も多くの人材の流入を見込みにくい厳しい環境です。少ない人数で効果的に警備の質を上げる課題は業界の皆さんがお持ちで、そこに当社のプロダクトが合致したのだと思います。
 
ーー具体的にはどのような点で、少ない人数で警備の質を上げているのでしょうか?
 
まず、カメラを監視する人数はもちろん、巡回の回数や人数を減らすことができる点があります。 これまで、定期的に施設内の巡回をしなければなりませんでしたが、AIが常に行動を検知していれば巡回の頻度は減らすことができます。また、精密な行動認識AIによって警備の質を上げることにも貢献しています。
 
ーープロダクトをさまざまな施設や場所に導入するにあたって、直面した苦労課題、それらを改良した面などはありますか?
 
プロダクトをローンチした当初は、どういう検知が実際に起きるかわからない中で実験的に販売を進めていましたが、誤報が多いとはいわれていましたね。ただ当社は、60名規模のAIエンジニアが在籍しているので、それらの欠点を突貫工事で直して安定した今のプロダクトを作りあげることができました。
 
また、導入施設にもいろいろなジャンルがあり、それぞれに特性や違いもあります。それらの全ての現場に同じプロダクトを導入するので、いかにどのような現場でも品質のよい検知ができるかといった点は、ここ1年はかなり工夫しましたね。
 
ーー導入する環境による差を解決するのはとても難しそうな課題に感じられます。
 
そうですね。一般的には、駅向け、商業施設向け、のように発注のあった施設に合わせてシステムを作って納品するのですが、当社はどの環境でもひとつのプロダクトで応えられることが特徴です。それを実現するためには、「AI同士の会話」が重要になります。プロダクトのシステムの中には姿勢推定をするAIと行動認識をするAIがありますが、このAIを包括的に判断するもうひとつのAIがあり、そのAIの判断によってさまざまな環境に適応できるようになりました。
 
ーーやはり品質改善の点はかなり気を遣われてきたのですね。
 
はい。実際に営業活動を本格的にはじめたのが去年くらいなのですが、去年1年間は、初めて『AI Security asilla』を使うお客さまが多かったので、その期待値に応える点で試行錯誤を繰り返しました。まずは3ヶ月から半年程度、実証実験という形で試しに導入してもらっていますが、今は実証実験がどんどん終了しており、本格導入につながっているケースが増えています。 また、当社のプロダクトはサーバー1台でカメラ50台まで解析できる軽量さも大きな特徴のひとつであり、導入につながっていると思います。
 
ーーその軽量化には驚きました。施設側も負担が少なく導入でき、ハードルが下がりますね。
 
軽量化を実現したAIのアルゴリズムを開発できたのは、技術チームのスキルの高さがあるからこそだと思います。また、競合商品と比較しても、当社のプロダクトは一番安価に導入できます。たとえば警備の方1人あたり月額40万で雇用していたとして、今、当社はプロダクトをひとつ(カメラ50台カバー可能)人件費よりも安価になるような金額でご提供しています。AIに置き換えてもコストをそこまで増やさずに対応でき、人材不足の解消や警備の品質向上につながる、と感じてもらえる価格帯を意識しています。

ーーこのような高品質なプロダクトを安価で提供できている理由は何かありますか?
 
元々、姿勢推定、行動認識のAIの分野を10年前に起業した頃からずっと開発してきたことと、ベトナムで優秀なAIエンジニアを多数抱えている開発体制があるからこそだと思います。今、100名ぐらいの従業員がおりますが、このうち60人がベトナム人のエンジニアです。 この開発力の高さのおかげで精度の改善や新しい機能の追加などを実現できています。
 
ーー今後はどのような新しい機能を追加する予定でしょうか。
 
今年開発する予定の機能としては、不審物や炎、煙などの検知機能があります。また、人の行動だけでなく感情も割り出せる機能も研究しています。当社にはAIエンジニア以外にも、 ヒューマンサイエンスAIリサーチチームがあり、世界各国から脳科学などさまざまな分野の専門家たちが集まっています。彼らは大学などと連携しながら感情分析の研究も進めています。
 
この研究が進めば、たとえば「この人は犯罪を起こしそうな心理状態だ」などの分析もできるようになるかもしれません。それだけではなく、イベントを行ったときに楽しんでいる人がどれくらいいるかなどもわかるようになるなど、セキュリティ以外の領域でも活用できるでしょう。
 
ーーなるほど、そのような機能が実装されればマーケティングの領域にも進出できますね。
 
そうですね。人数のカウントや人ごとの属性の分析はすでにできるようになっており、来館者の動線の分析なども研究しています。実際に昨年、 阪急阪神不動産様と一緒に実証実験も行っていて、開発を進めています。
 
方向性としては、メインは警備で使ってもらいながら、マーケティングにも使えるプロダクトになっていくとよいと思っています。マーケティングに関するAIは、実は競合が多いんです。そのため、圧倒的に勝負しやすい警備領域でトップシェアを取りつつ、並行してマーケティングに関する技術も開発していきたいと考えています。
 

圧倒的な技術を持っているこの会社をもっと大きくしたい


ーーここからは、尾上さまのご経歴と、御社にジョインされたきっかけなどを伺えればと思います。
 
経歴としては証券会社が一番長いです。商品企画もやれば投資銀行部門にもいましたし、ディーラーやトレーダーといったマーケット部門にもおり、多方面の経験をさせていただきました。最後の3年間はM&Aの部門にいて、さまざまな企業の戦略とM&Aの実行のサポートを行っていたのですが、そこで事業会社側に行きたい気持ちが芽生えました。
 
その後、事業会社の経営企画部門でM&Aの実行を担当するなどを経て、初めてのスタートアップ企業に入ったのですが、経営が苦しい期間があり、会社の立て直し、スリム化などを行い、体制整備をやり終えた私自身も退職するにあたって、次の転職先を探していたときにアジラを発見しました。
 
ーーそこで御社のどのような点に惹かれたのでしょうか?
 
圧倒的な技術力を持っているのに、世の中の知名度がまだまだ低いというのが率直な感想でした。ダイヤの原石がこんなとこ落ちている!と思って(笑)。私自身、投資部門もありましたので、そういう目線でもこれは「お買い得な会社があるぞ!」と感じました。
 
ーーまさに投資部門の知見が深い尾上さまだからこそ気づけた魅力ですね!この企業ならもっと大きくできるだろうし、自分も活躍できると感じ、入社を決められたのでしょうか。
 
そうですね。スタートアップの段階でグローバルで通用する技術を持っている会社は日本にそこまで多くないと思っていましたが、その点アジラはテクノロジーは間違いない。このプロダクトが売れないわけがないと思いましたので、あとはビジネスの立ち上げ方次第だと感じました。
 
ーー尾上さまが入社された頃に、営業活動も本格化したのでしょうか。
 
はい。プロダクトをリリースしたのが2022年で、私が入社したのがその年の8月ですが、 入った時は営業の体制はほぼ整備されていませんでしたので、私が営業組織を立ち上げて、若手メンバーに営業の作法を教えたり、営業部門の採用を増やしながら営業組織体制作りに力を入れていきました。一方、経営企画のGMポジションで入社したので、営業もやりますが、ファイナンスも手伝ったり、広報活動にも力を入れたりと、なんでも屋さんといった感じでしたね。
 
ーー現在は尾上さまは取締役をされていますが、御社の組織作りの面などで意識している点はありますか?
 
組織はかなり臨機応変に変更しています。まず、一昨年の8月私の入社時の段階では、営業部隊はほぼなかったので、 まずは営業人員を増やすことを優先して採用し、また外部のサービスを使いながら商談数を増やすことに注力しました。そうすると次第にプロダクトが導入され始めるようになりましたが、導入したお客さまのフォローがなかなか及ばないという課題が発生します。
 
そのため、去年の4月には、新しくカスタマーサクセスのグループを作りました。そのグループは今では当社の大きな強みとなり、お客さまへの丁寧なフォローができる体制になっています。そして営業も大手クライアントに入り込んでいく提案型の営業スタイルに変わってきたので、今度はマーケティンググループの中にインサイドセールスの部隊を立ち上げて新たなリードの獲得はそこで行う体制へと変更しています。このように、会社の成長に合わせて、組織は柔軟に作り替えていっています。
 

自ら成長でき、社会貢献もできる魅力的なフィールド


ーー御社はまさに急成長中の会社なのだと感じました。今は特にどういった部分に力を入れていきたいですか?
 
プロダクトの知名度はこの1年で少しずつ向上してきましたが、会社としてのブランディングが及んでない部分があると感じています。上場を目指しているため、、今後はIRも含めて戦略が必要になってきますので、そのような部門のプロフェッショナルを採用して、取組んでいきたいと考えています。
 
ーー今まで伺っていて、技術力の高さや開発スピード、開発の柔軟さなどは御社の魅力だと思いました。そういった点は今後も押し出していきたい部分でしょうか。
 
おっしゃる通り、当社はテクノロジードリブンの会社です。その技術を活かした当社のプロダクトを通して事件や事故を防ぐ、世の中への貢献度の高いビジネスなので、そういった点はもっとアピールしたいと考えています。
 
当社では「空間価値を高める」という表現をしているのですが、当社の技術で安心・安全を高め、当社のプロダクトが社会のインフラになることを目標にしています。「アジラが導入されていれば安心」と世の中の人に思ってもらえるようなポジションを目指していきたいですね。
 
ーーどんなマインドの人であれば、御社で活躍できるでしょうか。
 
当社は成長意欲の高い社員が多いです。かなりのスピードで私たちは動いているので、 自立的な成長ができる方、率先して自分で動いていけるマインドとバイタリティを持った方が、当社には合うかなと思います。
 
ーー実際にそういった方は御社で成長していると感じますか?
 
そうですね。皆さん目覚ましいスピードで成長しています。新卒で入られた若手社員は特にそう感じますね。大企業に入社して、色々サポート厚く、教えてもらいながらの1年間と、当社で若手にもかかわらず色々任され、自分が主体的に考え動きながら過ごす1年間では後者の方が成長力は高いと感じます。
 
そして、これをもう1年、数年と重ねていくと、将来的にはビジネスマンとして大きな差が生まれるのではないかと思います。また当社では努力してKPIを達成してる社員に対しては、しっかりと評価をする制度もあり、年齢関係なく全員が切磋琢磨出来る環境があることもポイントかもしれません。
 
ーー成長意欲の高い方にとってはとても魅力的な職場ですね!では最後に、御社に興味を持って求人に応募する人へ、メッセージがありましたらお願いします。
 
繰り返しになりますが、ご自身を高められる環境がアジラにはあるので、そういった成長意欲のある方に参加していただきたいと思います。加えて我々の事業自体が世の中のためになる、社会的意義の高いビジネスなこともあり、皆そういった気持ちでジョインしてくれています。社会的意義もあるし、成長できるフィールドもある、 入って後悔する人はいないのではと思うほどよい環境がそろっていますので、ぜひ、ご興味を持った方は応募して頂けたらうれしいです。
 

取材・文:伊藤 鮎

会社名 株式会社アジラ (Asilla, Inc.)
設立日 2015年6月1日
社員数 連結104名(単独44名/2024年2月1日時点)
代表者 代表取締役CEO 木村大介
本社 〒194-0021 東京都町田市中町1丁目4-2
プレゼンテーションオフィス 〒101-0047 東京都千代田区内神田1丁目16-13 大和会館3F
テックオフィス 〒194-0022 東京都町田市森野1丁目11−15 渋谷第一ビル8階
資本金 3,000万円
グループ会社 Asilla Vietnam (100%)
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