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- 2023.04.06
美しい文化を次の世代へ。100年先も愛されるブランドを生み出す事業戦略家の視点 | 株式会社ブライトログ
本質的な価値に光をあてユーザーに届けるためには、どのようなブランディングが必要なのか。その答えを探求しているのが、文化に根ざしたアプローチを得意とするプロデュース組織、株式会社ブライトログだ。取締役/ビジネスデザイナーを務める那木 丈裕氏は次のように語る。
「ブランディングは、過去の実績や現在の行動で『信用』を積み重ねていくことです。その先に未来への『信頼』があり、本質的なブランド力につながると考えています」
日本の文化を未来につなげるため、次の時代を見据えたブランディングに取り組む那木氏。緻密なロジックを持つ事業戦略家だが、彼の歩みは波乱に満ちている。「当たり前」を疑い、ものごとの本質を見極めるブランディングの根源に迫る。
【プロフィール】
那木 丈裕
株式会社ブライトログ 取締役。人材系企業での営業、大手IT企業でのECコンサルタント、マーケティング、広告商品企画を経て、2014年にブライトログを創業。EC、デジタルマーケティング、編集、事業戦略など幅広く担当している。湘南在住。週末のほとんどは海でサーフィンを楽しむ。
マイノリティになることを恐れない
「いつでも全力で“かっこいい”と思える自分でありたい」それが那木氏のモットーである。彼の学生時代の行動に、その特性がよくあらわれている。地元でも屈指の中高一貫校に進学したものの、大学進学を控えた高校3年でドロップアウト。建設業の日雇い現場も経験し、その後高卒認定(旧・大検)を取得している。
「せっかく良い学校に通わせてもらっていたのに親には申し訳ない気持ちでした。今思えば、マイノリティなことにかっこよさを感じていた、中二病のような行動だったと思います。一方で、エスカレーター式で社会に出ることに、疑問を持っていたのも事実です。失敗を繰り返しながら、自分のなかの“かっこいい”を探し求めていたのかもしれません」
両親にさらなる負担をかけないように、大学はストレートで卒業。就職活動中は、編集者や新聞記者に憧れる思いもあったが、彼がそれより魅力的に感じたのは寝る間も惜しんで働くサラリーマンの姿だった。
「結局、一社目で選んだのは営業職でした。高校時代とはかなりのギャップですが、スーツ姿で毎日全力で働いている会社員を見て“かっこいい”と思ったんですよね。でも、仕事のスキルや解像度が低かったので、当時の代表から『おまえは面白採用枠だから』と言われていました(笑)」
周囲からの評価に反して、営業の素質を一気に開花させる那木氏。入社1年目にもかかわらず、人材広告代理店の新入社員100名超の中から準MVPに選出されている。受注を数多く獲得できた背景には、「当たり前」にこだわらないマイノリティ精神があったという。
「行動の『量』にこだわる会社だったので、アプローチ数を増やすことが鉄則でした。でも、それが本当に正しいのか疑わしかったのです。私は基本的に数字を根拠に理詰めで考えて、『質』を高めるようにしていました。例えば、何件電話すると何%ぐらいつながって、そのうち何%がアポになるのか。さらにその後、どれくらいの人が話を聞いてくれて受注に至るのか。全てを数値化して、確率が悪いところのトークスクリプトを用意したり、トークの練習をしたり、愚直に取り組んでいましたね」
全体を見直すことでパフォーマンスを高め、全体の売上に貢献していた那木氏。しかし、当時の職場は営業目標達成へのプレッシャーが厳しく、追い込まれることも多かったそうだ。
「営業数字に厳しい会社だったので、怒られることは日常茶飯事でしたが、そのときに気づいたことがあって。それは『悩むのと反省するのは違う』ということです。どうしよう……明日も怒られる、と悩むのは不安がグルグルまわるだけで答えも終わりもないんです。でも、『反省』で悪いところを見直して『もっとこうすればいい』と気づければ終わります。つまり、悩むことは全く生産性がなくて無駄なので、積極的に『反省』するべきだと思います」
自らのスキルをさらに高めていくため、大手IT企業に転職。在職していた6年間でECコンサルタント、マーケティング、広告商品企画をそれぞれ2年間ずつ経験している。
「ECモールの売上を高めるコンサルタント、広告設計、マーケティング、事業戦略など幅広く携わることで、それぞれの企業担当者の気持ちがわかるようになったと感じています。例えば、モールの出店店舗単位で売上を改善していくことも大切ですが、それらを統括するECモール『事業』についても抜本的に見直していく。そんな視点を持ちながら事業全体の話ができるようになったのが、大きな前進だと感じています」
日本の「いま」をちゃんと残していく
“かっこいい”と思えることに熱中する姿勢は、ブライトログの創業時にもあらわれている。彼が強く心惹かれたのは、大学時代からの友人でありブライトログの創業者・大滝 洋之のビジョンである。
「今ほど明確ではありませんが、当時から5年後、10年後を考えて『こんな未来をつくりたい』『こんな日本にしたい』と本気で語っていました。起業したのはその思いに感化された部分が大きく、私だけならきっと会社を起ち上げていなかったと思います。クライアントに価値を届け、利益を出し、社員に還元し、社会への貢献を考える。どれかだけでも難しいのに、全部を実現していくのは大きな困難を伴います。代表として明確なビジョンを持っていることは、組織で走っていくためにとても重要だと思いますね」
創業当時に事業アイデアを500個ほどひねり出したという。その中から、最初に取り組んだのはスマートフォンアプリの開発事業だった。
「当時はスマートフォン全盛期だったので、社会的なニーズに合わせた事業プランで挑戦することにしました。外部のエンジニアと連携しながら昼夜開発を進めましたが、専門領域の知見が足りず、結局アプリのリリース審査に通らなかったのです。初年度で事業資金の3分の1を失い、幸先の悪いスタートでしたね。でも、その結果自分たちの強みを生かした事業にピボットできています」
個々のデザイン力と機動性を生かし、オウンドメディアの制作事業に着手。取材、スチール撮影、記事執筆・編集までの全てを自社で手がけるようになる。しかし、すぐにはマネタイズできず、キャッシュをすり減らしていく。毎月減っていく会社のキャッシュを見ながら不安でもがく状況だったが、自社で制作したコンテンツが周囲から認められ、記事制作の仕事が次第に増えていく。
「記事制作・編集からスタートして、スチール撮影やデザイン、さらには戦略立案まで事業スコープを広げています。一足飛びに行こうとすると無理が出るので、隣接したケイパビリティを開拓するようにしていました。チームの強みを生かせるように、チームでイメージを共有しながらやれることを段階的に増やしています」
那木氏のマーケティングや事業戦略の経験、代表・大滝氏のデザインワークなどをリンクさせ、組織としてのシナジーを発揮。外部パートナーとも連携しながら、上質なコンテンツを次々と生み出していく。
「当時から大切にしているのは、『いま』の良い日本をより良い形で残していくこと。私たちが恵まれた生活を享受できているのは、先人たちが必死に頑張ってきたからです。せっかく日本が住みやすい国になったのに、私たちの世代が頑張らなかったら次の世代へ迷惑がかかってしまう。次の世代へバトンをつなげられるように、未来に残せるアウトプットを心がけています」
ブランディングは「信頼」をデザインすること
コンテンツやサイト制作をメインに、クライアントのマーケティングや広報・PRもサポートするようになる那木氏。その中で、より上流のブランディングにも関わっていく必要性を感じはじめる。
「コンテンツ制作は、企業や製品の隠れている、もしくは表に出ていない魅力に光を当てること。そして、マーケティングや広報・PRは、光をあてたモノやサービスを多くの人に知ってもらうための手段です。しかし、本質的な価値に光を当ててユーザーに届けても、それ自体に『価値』が少なければ、輝きを持続させることは難しい。さまざまなクライアントと関わるなかでそのような思いが強くなり、ブランディングまで事業を広げていきました」
ブランドの価値は3つの「デザイン」から成り立っているという。
Visual Communication Design(視覚的なコミュニケーション)
Verbal Communication Design(言語コミュニケーション)
Business Design(事業戦略・マーケティング戦略)
「3つのどれかではなく全てが揃っていることが大切です。私たちはブランド力を消費者や顧客が感じる『信頼』だと捉えています。デザイン性、ストーリー、企業の取り組み、社会への提供価値、歴史など過去の実績や行動から『信用』を積み重ねていく。その結果、未来への期待感が醸成され『信頼』を抱くようになるのです」
過去から現在まで「信用」を積み重ね、未来の「信頼」につなげていくことが、ブライトログの考えるブランディングの本質である。
「今まで培ったマーケティングや事業戦略、クリエイティブのケイパビリティも駆使しながら、唯一無二の『信頼』を中長期的な視点でデザインしていくことが、私たちの提供できる価値だと考えています」
「選ばれる理由」をつくるブランディング戦略
ブライトログがブランディングで関わった印象的な事例としてあげられるのが、スマート家電ブランド『PORT』である。クラウドファンディングの支援から、商品パッケージ、LPのデザイン、さらには販路拡大のアドバイスまで幅広く携わっている。
「『PORT』のブランディングにおいて、私は主に戦略部分を担当しています。これまでにtoC事業を行っていない企業だったため、どんな戦略で一般消費者に事業を広げるのか、どのように情報を届けると最大の効果を生み出せるのか、いろいろと頭をひねりました。まだ道半ばなので大きなことは言えませんが、大手の家電量販店でも取り扱ってもらえるようになり、ブランドの価値・認知度が飛躍的に高まっています」
世の中に数多くのブランドが存在するなかで、どのようなブランディングが今求められているのか。那木氏は、あらゆる手段を駆使して「選ばれる理由」を作っていくことが必要だと語る。
「当然ながら価格、機能、品質はユーザー(消費者・顧客企業)から選ばれるための重要ファクターですが、それらは時間とともにコモディティ化していきます。例えば、私たちが子どもの頃を思い返すと、世の中にまだない『必要もの』を作れば売れていたかもしれませんが、現代において『これが必要!』と強く思える商品やサービスは少ないと思います。
数多くの代替品があるなかで、『選ばれるもの』を作らないといけない時代なのです。選ばれる理由には、ビジョンに共感できる、環境にいい、地元に貢献できる、などいろいろな要素がありますが、ブランディングでそれらをまとめ、意思決定の軸を作っていくことが大切だと思っています」
また、那木氏はブランディングには2つの大きな軸があると語る。それは「プレミアム」と「ラグジュアリー」である。
「品質や機能について他者との比較が可能で、そのジャンルのなかでの最上位が『プレミアム』です。例えば、自動車業界でいえばベンツなどは機能性にユーザーがお金を払っているので、『プレミアム』の代表例といえるでしょう。しかし、『ラグジュアリー』はそういった説明がつかない。なぜ多くの人に愛されているのか、なぜ憧れや欲求を駆り立てられるのか、その理由を機能面に要素分解できないのです。
『ラグジュアリー』の代表例として、フェラーリやエルメスなどがあげられます。これらのブランドは、機能・品質面で優れていることを商品PRに使いません。ブランドが持っているストーリーを訴求し、機能の優位性だけでは説明のつかない憧れや夢など感情を喚起させているのです。私たちもいずれはラグジュアリーブランドを生み出せるように、思考を深めていきたいと考えています」
新たな出会いのため、挑戦は続く
デジタルとアナログを横断しながら、文化に根ざしたアプローチを追求しているブライトログ。ブランディングの領域は、どんどん広がっているという。
「最近では、ブランディングと建築設計の橋渡しをすることにも着手しています。まだ設計段階なのですが、唯一無二のストーリーを紡ぎながら、泊まる人だけでなく、地域の方々まで含めた多くのステークホルダーにも末永く愛される1棟貸しの宿を作ろうとしています」
進化を続けるブライトログにおいて、求められているのはどのような人材なのか。
「グラフィックやWebデザインの実務経験がある人、アートディレクションができる人を求めています。ブランディングにおいては、コピーなど言語コミュニケーションに加えてビジュアルデザインなどの視覚コミュニケーションが重要なファクターになっていきます。当社では、デザインだけではなくマーケティングや戦略立案などにも携われるので、ブランディングに関してあらゆる経験をできると思います」
最後に、仕事のなかで大事にしているポリシーについて聞いてみた。
「仕事でつかみ取れることは、『本屋』のようなイメージです。いつも同じ仕事をする。言い換えれば、いつも同じ小さな本屋に行っていてはそこにある一部の本にしか出会えません。しかし、別の本屋、なにかのジャンルに特化した本屋や、さまざまな本が置いてある大型の書店に行くと、今まで知らなかったジャンルを知り、無数の本と出会えます。つまり、過去の経験や『いつものところ』にとらわれて、勝手に自分の可能性を狭めてしまうのはもったいない。
自分の視野を広げるためにも、常に新しい仕事に挑戦することが大切だと思っています。これからも、たくさんの人との出会いを大切にしながら、心の底から“かっこいい”と思えることを追求していきたいですね」
取材・文:VALUE WORKS編集部
会社名 | 株式会社ブライトログ |
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本社所在地 | 東京都渋谷区神宮前6-7-9 ネスト原宿201 |
役員 | 代表取締役:大滝 洋之 取締役:那木 丈裕 |
事業内容 | ブランディング、Web制作、コンテンツ制作、マーケティング、PR |
設立年 | 2014年 |