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- 2023.03.22
SES業界に新風を吹き込む。本気でエンジニアファーストを目指す、ある経営者の決意 | Filanza株式会社
SES企業の営業として多くのエンジニアと仕事をしてきた白川氏も、彼らに対しての扱いが不当である点が多々あることを感じ、安心して仕事を受けられるシステム構築を目指して起業。クライアントの要望に沿って、必要な期間だけ経験豊富なIT人材をアサインするFilanza株式会社を起ち上げた。IT関連のプロジェクトが急増する昨今、SES業界の抱える課題を解決し、新たな道を切り開こうとする白川氏にSESの未来を見据えたビジネスモデルを語ってもらった。
【プロフィール】
白川祐一(しらかわ・ゆういち)
Filanza株式会社(フィランザ)代表取締役。1歳から中学3年生まで水泳・小学4年生から野球の軟式クラブチームに所属し新人戦全国1位に輝く。スパルタ指導で鍛えられ、苦境に立たされた時のメンタルの強さに自信を持つ。大学卒業後、地元神奈川の信用金庫に就職し、融資3年・営業7年担当後、IT業界へ進出。SES企業にて営業職を3年経験したのち、2022年10月にFilanza株式会社を創業。
「金融に未来はない」とIT業界へ転身
美容室を経営している母親の姿を見て育ち、子供の頃からすでに経営に興味を持っていた。将来の夢は会社を興すこと。だが、何をやりたいかがなかなか見つからなかった。大学卒業時、就職にあたっては、ビジネスに必要なことを包括的に学べる銀行を選んだ。なかでも、取引相手が中小企業メインの信用金庫に行けば起業のヒントを探せるのではないか、そう考えて、地元の信用金庫に就職した。
「銀行では、融資・預金・保険とオールラウンドに担当させてもらえたおかげで、ビジネスのノウハウはひと通り学べました。しかし、肝心の起業したい業種を見つける目的は果たせませんでした。興味を持てる職種、将来性ある事業など、数百社のお客様を見てきましたが、ピンと来る業種が全くなかったんです。金融業界にも絶望していました。競合が激しく、今日は預金を集める、住宅ローンは一切やらない、と決めたかと思うと、次の日には、預金より住宅ローンに絞ると、他行の施策発表により毎日のように方針が変わる。さらには、ほかの金融機関に先駆けて定期預金金利を何%か上乗したりする。そのつけは5年後にくるだろう、と悲観的になりました」
融資3年・営業7年の経験を積むなか、クライアントからの信頼と営業スキルも得て社内で営業成績1位を表彰されるほど順調な銀行マン生活を送っていたが、将来の展望もなく、行き当たりばったりの策を打つ銀行に不信感を持った。ノルマが重くのしかかり、社員同士の成果の奪い合いも激しい。金融には未来がないと感じた。起業を視野にしてはいても、まだまだ学ぶスキルが多々ある。異業種での経験の必要性を感じて転職を決めた。それが人材業だった。
「もともと人とコミュニケーションをとることが好きなので、転職サイトの営業を志望しました。法人の決算書が読めることを武器に、たとえば、法人に提案できるアドバイザーのような仕事を目指そうと思ったんです。いずれ人材派遣などの業種で起業することを視野に、経験を積める企業を探しました。最後の支店に勤務していた時、SES事業関連のクライアントに出会い、さまざまな商談をするうちにIT業界に対する将来性を感じたんです。ビジネスのノウハウを学ぶためにSESの業界に飛び込みました」
SES事業に将来性を見出し起業
SESとは、クライアントの必要な期間だけ、経験豊富なIT人材をアサインする技術支援サービスを提供する事業である。近年、インターネットが普及したことでIT業界では、業務委託という仕事の受注契約が広がっている。システム開発を行いたい企業が、”ITエンジニアを雇いたい”、と考えた際に、エンジニアを抱える企業に依頼をして、ITエンジニアをシステム担当者が属する会社に派遣。この派遣された技術者の労働を提供してもらうのが、SESと呼ばれる契約形態だ。
「簡単に言えば、IT関連の仕事とエンジニアをマッチングさせることです。社員エンジニアの経歴に興味がある企業と面談し、お互い納得して仕事をしていきたい、と決まれば、半年とか1年スパンでその企業のプロジェクトに参画することになります。前社は正社員のエンジニアを330名ほど抱えており、そのうち約30名のエンジニアを担当、営業から新人のメンタルケアまで奔走していました」
初めて就いた職が金融機関ということもあり、コンプライアンス・人付き合い・社会人としての常識等、厳しく教育されてきた。しかし、SESの業界では、ビジネスマナーに欠ける営業が多いと感じることが多々あった。また、エンジニアに対しての扱いが適切ではない、と思うケースにも頻繁に遭遇した。
「次第に違和感が強くなり、それなら自分自身で楽しく働ける会社を創ろうと決意しました。ITの仕事は、少なくともこの先30年は増加の一途を辿るはず。ノウハウもわかったし、スキルもあるとなれば起業するしかない。前社では学ぶことも多く、なにより自分のクライアントを多数持つことができたことで、起業してもある程度数字を出せる自信がありました」
一般の転職サイトでは、こんな仕事がある、と登録した人に紹介する。その仕事に決まれば、またその人が転職活動を登録しない限りそこで両者のかかわりは終了する。しかし、SES業界では、長い付き合いの始まりとなる。
「派遣したエンジニアの現場が終わったら次の案件を探す、という独特の文化があるんですね。そこに未来を感じて事業をスタートさせることにしました。エンジニアさんの声を最重要視しており、定期面談で社員が日頃考えていることを吸いあげ改善したり、常にエンジニアにとっていい環境作りを考えてルール作りをしています。とはいえ全ての人が環境にマッチするとは限らず、仕事に合う、合わないは必ず出てきます。そのような場合は必ず一人ひとり相談に乗り、解決策を一緒に考えていきます」
グレーなITエンジニアの契約を改善したい
現在、派遣するエンジニアは前社からのつながりで信頼関係が構築されている。若手エンジニアから経験豊富なエンジニアまで幅広い人材の提供を可能とし、対応できる領域もシステム開発系・インフラ・ヘルプデスクのエンジニアまで多種多彩な人材をそろえている。
「1月は全国に繋がっている企業85社ほどに営業をかけました。3月末で終了する案件が多数あるため、4月からの開始案件情報を入手し、マッチするエンジニアを次々とアサインしているところです。SES事業は東京だけで今、1000社以上あるのではないかと思うのですが、今は玉石混交で業界自体も変えていかなければと考えています」
たとえば、会社都合で行きたくない案件に無理やりアサインしたり、現場で頑張っているのに給料が低かったり、サービス残業をしてまで週報の提出を必須にしたり。エンジニアを不当に扱うSES企業もまだ多いそうだ。
「弊社では、仕事に⾒合った報酬を得られるように⾼い⽔準で還元していく⽅針で、インセンティブなども給与に反映していく仕組みを完備しています。IT業界への働き手をきちんと教育することも必要です。なにより、エンジニアが気持ちよく働けるようなルール作りをしていかなくてはいけない。将来的には、業界の協会を作るなどを視野に入れながら、エンジニアの労働環境の改善を進めていきたいですね」
下請け構造になっているため、報酬が低い、指揮命令権の所在があやふやになりやすいなど、SESが「グレー」と言われることもある。そうした業界の問題を改善していきたいと意欲を見せる白川氏が求める人材はどのような条件を満たしていればいいのだろうか。
「エンジニアファーストの会社にしていきたい、その想いに共感できることが第一です。のびのびと力を発揮しながらキャリアを伸ばしていくことができるように、『楽しく働ける環境を作りたい』をミッションに掲げています。ポジティブに楽しく仕事ができる方、コミュニケーションを大切にできる方、エンジニアの仕事がとにかく好きでスキルアップしたい方。1年以上のITエンジニアとしての実務経験がらあれば、開発・インフラ・ヘルプデスクなど問いません。ポテンシャルを重視します。実務経験が浅い方であっても、ぜひ積極的に飛び込んできてください」
取材・文:山下 美樹子
会社名 | Filanza株式会社 |
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代表取締役 | 白川 祐一 |
資本金 | 300万円 |
設立年月日 | 2022年10月7日 |
所在地 | 東京都渋谷区神宮前6-23-4 桑野ビル2階 |