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  • 2021.12.21

「最後まで責任を持つ」職人から経営者になった男の信念 | 株式会社ホクヨウ

人材不足が続く建設業界において、深刻化している離職率の高さ。労働環境や職場の人間関係など様々な理由で、若い世代の職人が定着しにくくなっている。

そんな中、従業員の人間性を重視したコミュニケーションと面倒見の良さで抜群の定着率を誇る建設会社がある。マンションの大規模修繕工事など、幅広い事業を展開している株式会社ホクヨウだ。「エコ塗装」などの新しい技術も取り入れながら、時代に合ったソリューションを提供している。

19歳で青森から単身上京してきた代表の千葉篤史氏は、職人として一から技術を習得し、28歳で同社を設立。建設業界にありながら残業は月20時間、年間休日は120日間など、職人が働きやすい環境を実現している。資格取得のサポートも充実しており、生涯仕事に困らない確かな「技術」を身につけることが可能だ。

有能な職人を数多く育ててきた千葉氏の中にはどんなポリシーがあるのか。これまでのキャリアを紐解きながら、創業の想いやハードシングス、今後の展望について伺っていく。

【プロフィール】
千葉 篤史
株式会社ホクヨウ 代表取締役。青森県で営んでいた父親の塗装業を高校在学中から手伝い始め18歳で独立。19歳で上京し、東京郊外の建築塗装会社に入社。住み込みで働きながら技術を習得する。23歳で独立し、職人の仲間と共に塗装業の共同会社を設立。その後、事業拡大のために28歳で株式会社ホクヨウを設立する。マンション大規模修繕工事をはじめとして、建築塗装工事、防水工事から断熱材吹付工事、住宅リノベーション工事まで、建物に関するあらゆる工事を請け負う。職人としての経験から、職人にとって働きやすい環境を第一に考えている。

青森で塗装業の仕事をスタート。わずか18歳で独立へ動き出す

千葉氏の職人としてのキャリアは、故郷の青森県で始まっている。父親が営んでいた塗装業を手伝うようになったのは、まだ高校生の頃だった。
 

「塗装業に興味があったというよりは、ビジネスに興味があったんです。学校に通っている頃から、少しでも早く仕事がしたいと思っていました。その背景としては、父親の影響が大きいかもしれません。靴屋、着物屋、自動車販売、住宅販売など、色々なビジネスを経験して最終的に塗装業に落ち着いていました。自分も早く独立してお金を稼げるようになるため、学校へ行くより手に職をつけたいと思っていました」
 

17歳で高校を中退し、職人として働くようになった千葉氏。父親のもとで塗装業の技術を習得していく。その後、自ら独立して生計を立てるため18歳で独立。
 

「今でもそうなんですけど、成長して新たな事業を生み出したいという欲求が止まらないんです。何をやっていても現状で満足できず、無意識的に新たなチャンスを探っています。そのため、父親の会社を継ぐという発想はなく、もっと厳しい環境で自分の力を試してみたいと思いました。今考えると無謀な挑戦だったなと思いますが、昔から自信だけはあるんです(笑)」
 

独立後に順調に仕事を増やす千葉氏だったが、その成長意欲はさらに加速していく。東京で働くことを決断したのは、19歳になった時だった。
 

「どうしても東京に行きたい気持ちがあって、一から再出発する気持ちで上京しました。今みたいにスマホやネットが無い時代なので、電車の乗り方など右も左も分かりませんでした(苦笑)。職場はもちろん、住むところもなかったので、住み込みで働かせてもらえるところを探していて。唯一手を差し伸べてくれたのが、東京郊外にあった建築会社です」
 

カバン一つで東京へ進出。言葉と仕事の違いに圧倒される

地元の青森で塗装業を営んでいたこともあり、自らの技術に自信を持っていた千葉氏だったが、それは上京早々に打ち砕かれる。
 

「最初にまず言葉ですね。青森弁で喋ると『なんだこいつは』みたいな目で見られますから(苦笑)。現場でも『青森からカバン1個で出てきた田舎もの』という見られ方をされますし。それに、田舎とは仕事のやり方が全く違います。青森でやっていた頃は個人間の付き合いが多く、一戸建ての塗装を依頼されることが大半だったんです。しかし、上京してからは建物のスケールが一気に大きくなり、ビルやマンションを担当するようになりました。青森でやっていた仕事とあまりに違うので、最初は圧倒されましたね」
 

今まで覚えた技術が全く通用せず、再びゼロからのスタートに。しかし、自らの成長のため仕事を投げ出そうとはしなかった。
 

「その会社では4年ほど修行させてもらいました。あらゆることを経験しようと思って積極的に色々な現場に行きましたね。ただそのなかで、独立への想いは常にありましたね。というのも、お客さんから仕事をもらう以上、全てのことに自分が責任を取れる状態じゃないと気が済まないんです。青森で仕事を始めた時からそうなので、経営者にしかなれない性格なのかもしれません」
 

職人の仲間と一緒に独立したのは23歳の時。共同経営で塗装業の会社を営むようになる。
 

「ようやく独立できたこともあり、全身全力でお客様への『誠意』を忘れないように取り組んでいました。職人として本当に自分が納得してお客様にも納得してもらわないと、気持ちが悪くてお金をもらえないんです。そのために仕事の精度を高めていく作業を今もずっと続けています」
 

当時受注していたのは一戸建てやアパートなどの案件が多く、塗装業を主に営んでいたそうだ。そこでも持ち前の成長意欲で事業拡大を進めていく。
 

「塗装以外のことも勉強すれば、防水やタイル、さらには足場など色々な仕事につながっていくわけじゃないですか。その作業をあまりやろうとしない人が多いんです。自分はあくまでも塗装屋なんだと。私は知らないことを勉強しながら、もっと新しい仕事にも取り組んでいきたいと考えていました」
 

28歳でホクヨウを設立。食いつなぐのに精一杯だった

事業をさらに拡大していくため、28歳で株式会社ホクヨウを設立。代表取締役として会社の全責任を取る立場になるが、そのスタートは決して順風満帆ではなかった。
 

「創業当時はボロボロの軽自動車1台に乗って『何でもやりますから』と色々な仕事を手伝っていました。食べていくのが精一杯で、それこそ明日のガソリン代が無いとか、アパートの電気がつかないとか(笑)。小規模の仕事を毎日毎日、数人の仲間と一緒にやっていましたね」
 

人材リソースが不足していた当時は、知人を辿りながら必要な専門家を確保することもあったとのこと。
 

「例えば、現場監督が足りない場合でも、知り合いのその先や、仲間の兄弟や、飲み屋の客など色々なつながりで探っていけば、見つからない人材はいないと思うんです。創業当時の大きな仕事では、そんな風に専門家を探していました」

千葉氏の中には、逆境を乗り越える時に重視している仕事のスタンスがある。それは、分からないことを分かるまで徹底的に調べること。
 

「新たな仕事に取り組むとき、分からないことは当然あります。でもそこで投げ出してしまったら、自分も会社も成長が止まってしまいます。仲間が分からないことは私も分からないことが多いんですけど、とにかく調べて勉強すればいいんです。新たに加わった若手の場合でもそうです。仕事が分からなくて困っている時には『どうすれば分かるのか』というスタンスで、私や仲間が教育するようにしています」
 

忖度なしで、最後の最後まで責任を持つ

事業拡大に取り組むなかで大きな転機になったのは、ある設計士との出会いだった。依頼された案件に取り組む中で信頼を積み重ね、大規模修繕工事の仕事を紹介してもらえるようになる。
 

「当時はボロボロの自動車と服でしたが、誠実さや真面目さなど、いわば“ズルくない”部分を感じてもらえたのかなと思います。何かあったら、最後の最後まで私が全責任を取ることは常に考えているので。そういう責任感を評価して頂けたのなら嬉しいですね」
 

千葉氏の責任感は、従業員との関係性においても遺憾無く発揮されている。人材の定着が難しい建設業界において、ホクヨウ社を離れる職人は限りなく少ない。
 

「責任感はおそらく人の10倍くらい強くて、社員に対してはもちろんのこと、その先の外注業者に対しても責任を持つようにしています。さすがに『パチンコで負けたから金を貸して欲しい』というのは論外ですけど(笑)。きちんと頑張っている人を見捨てたことは一度もないはずです。私についてきてくれる人は、『最後の最後までこの人は裏切らない』という雰囲気を感じてくれているのかなと思います。自分で言うのもなんですけど」
 

大規模修繕工事の案件を数多く受注し、右肩上がりの成長を続けているホクヨウ社だが顧客への忖度は一切しない。
 

「お客様の利益になることについては、意向が異なっていたとしても『この方法のほうがいいです』と、はっきり伝えるようにしています。そのことで一時的に雰囲気が悪くなったとしても、将来的にはお客様に喜んでいただき、信頼を得ることができます」
 

忖度なしの意見を伝えるまでには、綿密な情報収集が欠かせないとのこと。千葉氏は自分の理論が正しいかどうかを、あらゆる角度で検証していく。
 

「提案する内容に少しでも“粗さ”が残っていると、説得力が全くなくなってしまいます。自分の発言とお客様の選択が正しかったと後から言えるよう、常に努力しています。『私の間違いでした』とならないように、しっかりと準備することが大切だと思いますね」
 

顧客と職人の利益を増やしていきたい

近年では不動産リノベーション事業にも取り組んでいるホクヨウ社だが、今後の展望についてはどのように考えているのだろうか。
 

「今後はお客様との直接取引をどれだけ増やしていけるのかがポイントになってきます。直接取引は大手の建設会社などを経由しないので余計なマージンが発生せず、お客様や職人たちの利益につながります。弊社は公共工事もやっているので、直接取引を東京都内でどんどん増やしていきたいですね」
 

また、千葉氏は職人たちの給料が上がっていない業界全体の現状を何とかしたいと考えているそうだ。
 

「欧米では職人の給料が年々上がっているにもかかわらず、日本では30〜40年前から変わっていません。頑張ったことや技術を習得したことが収入に反映されないと、職人たちのモチベーションが上がらないと思います。近年では職人マイスター制度※なども出てきて、少しずつ技術が評価される世界に変わってきましたが、それをさらに推進していくことが重要です」

※マイスター制度……改修・修繕の技能を証明する認定制度。職人の技術に対する評価を高め、地位の向上を図ることを目的としている。
 

最後に、ホクヨウ社が求めている人物像について伺ってみると「成長したい人」という回答が返ってきた。
 

「どの世界でもそうですが、自分のやっている仕事に興味を持てる人と持てない人がいます。私の人生を振り返ってみても、興味を持っているから色々なことを勉強して今まで何とかやってこれたわけです。その背景に何があるかというと、やはり成長への意欲が大切なのではないかと。『何かをできるようになりたい』と思う気持ちさえあれば、今までの過去や経験なんてどうでもいいじゃないですか。未経験者はもちろんのこと、公務員や学校の先生など、どんな職業の方でも大歓迎です。私もカバン一つで上京して職人になりましたが、手に職をつけて挑戦を続けていけば、大きく成功できる可能性があります。建設業はとても夢のある仕事だと思いますね」
 

文:平原 健士、撮影:鈴木 智哉、取材:田尻亨太

会社名 株式会社ホクヨウ
本社所在地 東京都東久留米市八幡町2-10-2 ホクヨウビル3階
事業所所在地 【埼玉事業所】  埼玉県川口市戸塚東3-28-14 Front field 2-B
【北日本営業所】 青森県八戸市八太郎5-12-9
役員 代表取締役 : 千葉 篤史
事業内容 マンション大規模修繕工事/建築塗装工事/防水工事
仮設工事/各種注入工事/左官工事/シーリング工事
タイル工事/内装工事/セラミック吹付工事/断熱材吹付工事アルミエクステリア工事/光触媒工事/金物板金工事/住宅リノベーション工事
資本金 5,000万円
設立年月 2007年7月

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