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  • 2023.03.30

煩雑な電話応答を安価に解決。電話DXで、「働くことは、楽しい」 を常識に変える | 株式会社IVRy

美味しいラーメンを食べてもらいたい。それなのに電話が頻繁に鳴る。ラーメンを作る手を止め、その都度電話に出る。しかし、重要な電話は全体の1割ほど。そのために、無駄な9割の電話に出なければならない。ラーメン店のような小規模店舗経営者にとって、営業電話は出ずに、お得意様の予約の電話だけに出ることができれば、作業効率は確実に上がる。そんなサービスを作れないか。

従来大企業を中心に使われてきた「IVR」と呼ばれる自動音声応答システムはあるが、イニシャルコストで数十万、月々のランニングコストが数万円もかかる。そこで電話自動応答サービスを、月3000円程度から導入できるよう設計したのが、"1日100円、最短5分で導入可能"な自動電話応答サービス「IVRy(アイブリー)」である。

サービスを提供開始してから、2年経たずのうちに3億円の資金調達も実施し、今や勢いが止まらない成長株。工学部の大学院を卒業後、ビジネスを学びたいと、リクルートに入社。エンジニアとしてのバックグラウンドを活かして、IVRyを起こした奥西亮賀氏に、成功するサービスの着想点や、起業するためのスキルの身につけ方などを教えてもらった。


【プロフィール】
奥西 亮賀(おくにし・りょうが)
株式会社IVRy(アイブリー)代表取締役1991年生まれ。2015年、同志社大学大学院理工学研究科情報工学専攻(博士課程・前期)修了。同年、株式会社リクルートホールディングス(現:株式会社リクルート)に新卒入社。保険事業のUI/UXディレクタ〜プロダクトマネージャー、EC事業のプロダクトマネージャーとして、新規事業の立ち上げ〜グロース戦略の策定および実行を担当。その後、2019年3月に株式会社IVRy(旧Peoplytics)を創業し、2020年11月電話自動応答サービス「IVRy(アイブリー)」を正式リリース。

プログラミングで何かを成し遂げたい


研究者になりたい、と思っていたわけではないが、理工学部で博士課程にまで進んだ奥西氏。大学院の研究室で、今で言うAIの走りの最適化問題の研究に取り組んできた。情報工学でプログラミングやソフトウェア開発の実力をつけたいと考えての選択である。プログラミングで何かを成し遂げたい、それが目的だった。
 
「本格的に勉強を始めたのは、大学院1年生の頃ですね。ソフトウェアエンジニアとして何でも作れるようにはなりたいな、と。大学4年生から研究室に入るのですが、最初は、『サーバーってなんですか?』というレベル。そこから本当にヤバいと思い、大学院1年生の時には、1日15時間はプログラミングを勉強する数ヶ月もありました」
 
当時は、学生がiOSやAndroidのアプリ開発をすることがはやっていた。観光名所を検索できるアプリや、集合写真を撮る時に、全員がカメラを見たタイミングでシャッターが切れるようなアプリなどを開発。”あったら便利”、と思えるシステムを、仲間と案を出し合って試行錯誤しながら形にしていく。”0から1を作るワクワク感”に魅了された。
 
「京都の大学に通っていたので、金閣寺と銀閣寺に行きたいとしたら、どう回るのが効率的かをレコメンドするような観光アプリを考案し、目的と時間だけ入れたら適切なルートを教えてくれるサービスを作ったんです。当時、学生向けのビジネスコンテストに出したら、『これでどうやってお金を稼ぐつもり?』と聞かれて。エンジニア畑だったので、売り方はビジネスのプロである専門家たちに考えてもらえると思っていたんです」

新サービスは10作れば1当たる


自分でビジネスのデザインやマーケティングまでできないとアプリを作っても使ってもらえない。ビジネスを学ぶ必要性を痛感した。就職して新規事業のプロジェクトに携わるか、起業して自ら作り出すか。どちらも考えたが、いずれにしろ、ビジネス全体をデザインするスキルが必須だった。その点、厳しく鍛えてもらえそうだと、リクルートに入社する。自分が結果を出せる領域があれば、やりたいことをやらせてくれるのがリクルートの風土。プロダクトマネージャーとして企業間のアライアンスを組むなど、幅広くビジネスに関わることができた。
 
「エンジニアとしての採用ですが、UI/UXなどビジネスのプロダクトマネジメントを希望したら、携われる部署に配属してもらえました。ディレクターとして新規事業、主に保険比較サイトやECサイトの立ち上げ、Webサイトの設計といったさまざまな業務に取り組むことができたんです。保険領域のサービス開発に取り組んでいた時、4つほどのサービス開発に携わり、そのうち1つのサービスが大成功。その体験を経て、”新サービスは10作って1当たればラッキー”という教訓を得ました」
 
ただ「作るだけ」だった学生時代とは違い、学びの多い時間だった。Webマーケティング、SEO対策、UI/UX、ファイナンス、セールスと、多様な職種を体験し、チームの一員として取り組める環境は理想的だった。リクルートで経験したことが100%起業に役立ったと奥西氏は振り返る。
 
「もともとサイトを作っていたので”自分でも作れるし、ビジネス戦略や事業モデルも考えられる”、プロダクトを作る側とビジネスを考える中間のような役割を担っていたんです。そのおかげで、お金を生むスキルなど、かなり実践を積むことができましたね」

失敗から生まれた新プロダクト


リクルートには、4年在籍し、2019年の3月にPeoplytics(ピープリティクス)を創業。最初は、Webメディア系のアイデアが多く、軌道にのるまで2 、3年を見込まなければならなかった。それなら、リスクマネージメントがしやすいSaaSやtoB向けサービスのほうが早く結果が出せるのではないか、と方向転換に踏み切った。
 
「Web系で、がんばっていればもしかして当たったかも、というサービスもありました。その日の天気に合わせた服装をコーディネートしてくれるメディアなどは、テレビに取材していただいたり、トラフィックも増えていたのですが、どうしても利益が出るまでに時間がかかる、と注力を断念した事業の一つです」
 
そのころは、リクルートで学んだ「サービスを10作って1当てる」戦略をとり、2019年末から、”1か月に1個ペースで新サービスを作っては試す”、を繰り返していた。そして、ついに7個目、2019年7月にIVRyのサービスをリリースしたところ、1か月で大きな反響を得る。
 
法人の電話をもっとコントローラブルにしたほうが世の中のためになるのではないか、と法人の電話サービス、「電話自動応答システム」を着想した。電話がかかってきた時に、音声ガイダンスが流れて応答してくれるシステムで、人手不足や業務負担を軽減できる。そのアイデアも自らの失敗から学んだものだ。
 
「会社の代表電話の番号を個人の電話にしていたのですが、営業電話が頻繁にかかってくるんです。無視していたところ、銀行の融資を受ける際の本人確認の電話が何度もかかってきていたのに無視していたんです。結局、本人確認が取れない、と融資を断られてしまいました。その経験から、法人にとって電話は重要であると身に染みてわかりました」

コロナ禍で殺到した問い合わせ


当初、IVRyのサービス のWeb広告にかけたのはわずか数万円。それでも、「今すぐ使いたい」という問い合わせを多数受けた。決定的だったのは、2021年5月、新型コロナウイルスワクチンの接種のために電話が殺到した医療機関からの大きなニーズだった。そのタイミングで「IVRy一本にサービスを絞ろう」と決めた。
 
「クライアントさんは病院、飲食店、宿泊業、温浴施設、害獣駆除など幅広いんです。今は、toB向けの中小企業に使ってもらうサービスをメインに作っているのですが、複雑なマニュアルを読んでやってくださいと言っても無理。スマホは扱えるし、LINEも使える、そのぐらいのレベルのエンドユーザー向けのサービスに着目しました。設定も簡単で導入は最短5分、早ければ、ホームページの反映まで15分程度で終わらせることも可能です」
 
現在、累積アカウント数5,000件を突破。47都道府県利用、25業種以上で利用累積着電件数500万件という実績を上げている。最近では、ビジネスホテル「東横INN」の全304店舗に「IVRy」を導入した。東横インはIVRyを活用することで、予約や問い合わせ電話への一部対応を自動化。深夜の時間帯や、チェックインが集中するタイミングなど、少人数でのオペレーションが中心となる時間帯に、電話の取りこぼしを削減することに成功した。
 
「対応したいけど、どうしても出られなかった電話だけに自動音声で応答する。お客さまからすると、何もわからないよりは、自動でも対応してくれるほうがありがたいですよね」

リファラル採用の活用でコストカット


起業時の社員はゼロ。当初は、リクルートの時の知り合いや大学の友人などに声をかけて、共感してくれる仲間を募った。フルタイムの業務委託のスタッフとビジネスコンセプトを考え、フリーのエンジニアやデザイナーに相談しながら進めていった。会社が順調に推移するにしたがって、自社の社員に人材の紹介を受ける、リファラル採用を活用した。エージェントを使ったり、媒体などにコストを使わずにすむからだ。
 
「最初の20人ぐらいまでは、人となりも知っていて、信頼できる人と進めたほうが軌道に乗せやすい。1番効率が良く、リスクが少ない採用方法を選びました」
 
2021年12月にはシリーズAでフェムトパートナーズ、プレイドから3億円を調達し、現在はよりスケールさせていくためにさまざまな施策を打っている。
 
「そのタイミングで上場を目指して、従業員を増員していこうと、あらためて採用を強化し始めたところです。今は、正社員と業務委託が半々ですが、業務委託、プロパー関係なく、相手をリスペクトしてきちんとコミニケーションしよう、という考え方が社内に浸透しています」
 
リファラル採用も継続しながら、さらに月に1度さまざまな人が集まるオープンデーを開催。増え続けるニーズに応えるために、現在はセールス、Webマーケターの採用を強化しているそうだ。
 
「プロダクト開発が得意な会社として、今後、今あるアセットを軸に、新しい商品も作っていきたいと考えています。一番大切にしていることは、自分たちが作るプロダクトが、世の中でちゃんと役に立つこと。WebやAIの力で、人間の負担を減らしていけるようなプロダクトをこれからも目指していきたいですね」
 
会社として掲げているバリューはWork is Fun。そもそも自動応答システムを思いついたのも、煩雑な電話応対をなくして接客などに集中してほしいからだった。クライアントにも楽しんで仕事をしてもらえることが最大の目標だ。
 
「会社を作ったのは、メンバーと楽しく仕事をしながら、社会に価値提供することが目的でした。自分たちも楽しみながら世の中に役立つものを作りたい。同時に、前向きに仕事に取り組みながらキャリアの最大化も目指したいですね。社内には、ボルダリングウォールを設置してあり、仕事の合間にもクライミングできるんです。そういう余白がないと仕事の時間が楽しくない。このバランスをうまく取りながら仕事ができる人材を全職種で募集中です」
 
取材・文 山下美樹子

会社名 株式会社IVRy(アイブリー)|旧株式会社Peoplytics(ピープリティクス)
代表取締役 奥西 亮賀(Ryoga Okunishi)
事業内容 クラウド型電話自動応答(IVR)サービス(IVRy)の運営
許認可 届出電気通信事業者(A-02-18014)
電話番号 050-3204-4610
住所 〒111-0041 東京都台東区元浅草3-7-1 住友不動産上野御徒町ビル4F
設立年月 2019年3月
取引先事例 株式会社博報堂、株式会社リクルート、株式会社東横イン、株式会社ホテル京阪、アルヒ株式会社 etc
取引銀行 みずほ銀行、西武信用金庫、新生銀行 etc

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