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- 2021.06.22
「できることは全部やる」新たなパン経済圏づくりに向けた、パンスク事業責任者の奮闘 | 株式会社パンフォーユー
同社は全国の美味しいパンを家庭に届ける、個人向けサブスクリプション「パンスク」を運営。独自技術で焼き立ての美味しいパンをそのまま冷凍して全国のユーザーに届けられる。サブスクサービスなので提携しているパン屋は売上の見通しを立てることができ、安定した収入を確保できる。冷凍パンで食品ロスの心配がないので、営業中の空き時間にパンを焼くことも可能だ。この斬新なビジネスモデルは多方面で話題に。一般ユーザーの新規会員登録では、整理券が発行されるほどの大反響ぶりだ。
この画期的な事業を一から立ち上げたのが、パンスク事業責任者の包氏である。リリース前から各地のパン屋へ足繁く通い、ニーズを徹底的にヒアリング。美味しいパン作りに専念してもらえるよう、SaaS「パンフォーユーモット」を自ら開発し、提携したパン屋に提供している。パン市場にDXをもたらした新事業の源泉は何なのか、包氏に話を伺った。
【プロフィール】
包 直也
株式会社パンフォーユー パンスク事業責任者。1987年3⽉⽣まれ。
初期のチームラボ株式会社の出⾝で、前職はAI(⼈⼯知能)マーケティングベンチャー企業株式会社WACULのCTO。 もともとパンが好きで30 代はパンに関わる仕事をしたいと思い、2019年1月に株式会社パンフォーユーに入社。 個⼈向けのパンスク事業を⼀から⽴ち上げ、現在は事業責任者を務める。
エンジニアとしての出発点はチームラボ
包氏のキャリアは、エンジニアからスタートしている。東京工業専門学校で本格的にプログラミングを学び、チームラボに新卒入社。検索エンジンやWebサービスの開発に従事し、仕事に必要なエンジニアリングの基礎を習得した。
「元々エンジニアになりたくて、就職をチームラボにしたようなイメージです。開発で携わった検索エンジンは直接ユーザーに触れる部分なので、受託でシステムを作るのとは少し違った面白さがありました。何かを作って世の中に発信することが初めてだったこともあり、自身の成長を実感する楽しさもありましたね」
チームラボでの経験を活かし、仲間のエンジニアたちと一緒に起業。ハードワークを重ねてプロダクトをいくつか生み出すが、社会の需要とマッチせず会社を軌道にのせることができなかった。
「会社が解散してからは、経済難で生きていくのも辛かったですね。エンジニアだけの会社で、マーケティングやビジネスのことを全く分からない状態でやっていたのが原因だと思います。もっとビジネスができる人と一緒にモノを作らないと駄目なんだと気付かされました」
そんな時に出会ったのが、前職の株式会社WACULだ。マーケティングベンチャーの同社において、最初はフリーランスの立場で業務に携わり、事業規模の拡大とともに、社員のエンジニアとして働くようになる。経営陣の優れたビジネス観もあり、会社はどんどん成長していった。
「20代はWACULにフルコミットするようなかたちで、エンジニアのチームを作る楽しさや、リリースしたプロダクトが世の中で使われていることに嬉しさを感じていましたね。会社の規模も大きくなり、最終的にはCTO(最高技術責任者)として働いていました」
転職の決め手は、冷凍パンを実際に食べたこと
CTOとして部下を抱え忙しい毎日を過ごす包氏だったが、内面には新たな挑戦心が芽生えていた。それは、自分が本当に作りたいプロダクトを作るということ。自分の大好きなことで、沢山の人を幸せにできるようなプロダクトを作りたいと考えていた。
「昔からとにかくパンが好きなんですよ。パン業界で何かできることはないかと思ってWebで検索していたら、パンフォーユーを見つけまして。こんな会社があるんだなと思って、代表の矢野にすぐ連絡を取りました。当時は2〜3人の少数精鋭だったんですけど、代表と話して人柄でまず信頼できそうだと感じまして。会話の中で、パンの魅力を広く発信できるtoC事業(現在のパンスク)を一緒にやりたいということで意気投合しました」
入社の決め手となったのは、パンフォーユーが提供している冷凍パンを自ら取り寄せて実際に食べてみたことだ。
「お店からパンを買ってきて食べるよりも、冷凍パンの方が美味しい※というのは衝撃でしたね。今まで冷凍パンの美味しさを知らなかったので、その分驚きは大きかったと思います」
※一般社団法人日本食品分析センターの調査でも、パンフォーユーの冷凍パンは焼成のあとに1日常温で置いたパンよりも品質が高いことが実証されている。
2019年にエンジニアとして入社した包氏だったが、そこから8〜9ヶ月間は自社のtoBサービス(パンフォーユーオフィス)を広めるための営業活動に従事。イベントで事業説明したり、EXPO出展の準備などに取り組んだ。今までの開発業務と全く異なる部分も多いが、苦しさを感じることはなかったのだろうか。
「パンが好きだったから、楽しんでやっていました。自分がパンスク事業をやるために、まずは会社もお金を稼がないといけなかったので。それまでに足元を固めて、次にto Cの事業をやろうと考えていました。色々なことを経験できたのは、今の自分の糧になっていると思います」
パンフォーユーのサービスを伝える中で、包氏は大きな課題に直面する事になる。それは冷凍パンに対する世間の偏見だ。
「パンが好きな人でも、私のように冷凍パンの美味しさを知らないことが多いので、価値を伝えることにすごく苦労しましたね。というか、今も苦労しています(笑)。その解決策として、当時はコロナ前だったので、オフィスで冷凍パンの『試食会』を開催していました。食べた人からは『冷凍パンってこんなに美味しいとは思わなかった』という感想を沢山いただきました。褒めていただいて嬉しい反面、今後の課題にも感じていましたね」
美味しいパンを流通させるため、出来ることを全部やる
包氏がパンスク事業へ本格的に着手できたのは、入社から9ヶ月が経った頃だった。3ヶ月後のリリースに向けて提携してくれるパン屋を探すことになったが、そこには新規事業ならではの苦労が−−。
「そもそもパンフォーユーという会社自体を知っている人がいない状況だったので、パン屋さんからの信用を得ることが大変でした。パン屋さん1軒ずつ足を運んで『こういう新しいことをやろうと思っているんですけど』と説明にまわっていました。平均すると毎日5軒以上のパン屋さんに行きましたね。飛び込みでパンを買ってから近くの駐車場で食べて、気に入ったらすぐ説明しに行くみたいな。大抵は渋い反応でした(笑)」
また、それぞれのパン屋でヒアリングするうちに気付かされた課題も。それはオンライン販売に対する抵抗感だ。
「よく言われたのは、誰が食べているか分からないのは嫌だ、という内容ですね。通販の経験がない人はもちろん、経験のあるパン屋さんでも、消費者の顔が見えないことをデメリットに感じることが多いんです。でもたしかに、地元でパン屋をやっていたら、通販と違って食べる人の顔がわかるじゃないですか。そういう部分はきっと、パン屋さんがやりがいを感じるポイントなんだろうなと気付かされましたね。その課題もITの仕組みで何とかしたいと思いました」
この課題を解決するために、メッセージ機能をパンスクに実装。この改善により「クロワッサンが特に美味しかったよ!」「旅行ができるようになったらぜひお店にお伺いしたいです」など自由なメッセージを、ユーザーからパン屋に送ることができるようになった。
「パン屋さんにとっては、パン好きの人たちが集まっているパンスクで感想のコメントをもらえるので、オンラインでただ購入されるよりも価値を感じていただけると思います。皆さん、メッセージを積極的に読んでいただいているようで、『常に携帯でチェックしてます』という方もいらっしゃいますね」
他にも、パン屋の業務に寄り添った独自のサポートも。包氏が開発したSaaS「パンフォーユーモット」で、パンを焼くこと以外の作業を効率化。また、発送の手間を省くため、伝票、資材、さらには商品の裏側に貼る食品表示ラベルまで用意している。
「食品表示ラベルは通販で必須なのですが、対面販売だけのお店では作った経験がないことも多いんです。そのため、パン屋さんにレシピを聞いて代わりに作るようにしています。また、配送業者とシステム連携をしていて、あらかじめ私たちが指示した伝票を発行して、それを毎朝持って行ってもらうようにしています。パン屋さんの美味しいパンを流通させるためには出来ることを全部やる、そういう想いで取り組みましたね」
ITを強化して、幸せなユーザー体験を増やしたい
様々な課題をクリアして2020年にパンスクをリリース。当時4店舗だった提携先のパン屋は、ユーザーの増加に伴って現在30店舗まで拡大している。最近ではパンフォーユーの会社名が、少しずつではあるがパン屋で認知されるようになってきたとのこと。それでも、より良いプロダクトを目指す包氏のシステム改善は、変わらず続いている。
「リリースされてからも色々とプロダクトの改善は続けていて、大きな機能でいうと昨年『リピ買い』と『プレゼント』ができるようになりました。せっかく美味しいパン屋さんと出会っても、それで終わりは残念なので。また、パンスクは本質的な価値としてパンを届けるサービスなので、どのような商品が好評なのか日々検証を続けていますね」
おいしいパンが食べたいと願うユーザー層から高い支持を集めているパンスク。顧客満足度は80%を超えているが、包氏はその現状に満足していない。彼には事業スタート時から思い描いているビジョンがあるそうだ。
「私がパンスク事業を始めたモチベーションとして、もっと多くの人にパンの本当の美味しさに気付いて欲しいという想いがあったんです。パンスクを知ったから、パンの美味しさに気付くことが出来て生活が豊かになるみたいな。それって、パンで幸せな人を増やしているじゃないですか。そういうポテンシャルをパンスク事業で感じているので、そういう体験をもっと増やしていきたいですね」
新たな市場を開拓することに意欲を燃やす包氏。パンスク事業が育ってきたことで、今後はパンフォーユー全体のモチベーションを高めることにも注力していきたいそうだ。
「パンスクやパンフォーユーモットなどのプロダクトが、パンフォーユーの基盤になるイメージが明確に出来てきました。これからはもっと事業スピードを加速させて、システム化を進めるべきだと感じています。私たちのプロダクトは、ただECをやっているだけじゃなくて、パン屋さんとのやり取りなど裏側の仕組みも含めてすごくシャープに作っているところがあります。それをさらに磨き上げて普及させるためには、ITの部分をさらに推し進めていくことが必要なんです」
事業とプロダクトに、メンバー全員の想いを集約
パンフォーユーでは新たなプロダクトのリリース前に、必ず社内で体験会を開くようにしている。社員や関係者が実際に操作しながら自由にフィードバックするが、その効果は機能面の改善にとどまらない。
「メンバーごとにカスタマーサポート、広報、マーケティングなど色々な役割や立場があって色々な目線でプロダクトを見ると思うのですが、それらの考えを出来るだけ取り入れたプロダクトにすることが大切だと考えています。つまり、メンバーの想いをプロダクトに集約させるということです。社内の意思を統一することで、自信を持って新しいプロダクトを世の中に送り出せるのではないかと思います」
他にも社内では、パンスクに対して自由に意見を出し合える検討会を毎週開催。メンバー全員がプロダクトやサービス事業に、いつでも意見を反映できる体制を整えている。仕事のやりがいや、働きやすさにもこだわっているパンフォーユー。最後に包氏は、一緒に働きたい新たなメンバーへの想いを語ってくれた。
「パンが好きじゃなくてもいいんですけど、パンが好きで事業をやっていることに共感してくれると嬉しいですね。私たちはパンを提供している会社なので、人間が食で感じる美味しさや楽しさをバリューにしています。そういった感情的な部分をいかにITの仕組みで実現するのか、それがパンフォーユーの核です。その根底にある『美味しいっていいよね』みたいなノリが伝わらないと、そもそもの会話が成り立たないような気がしています。私たちはITでロジカルにパンへの愛を語っているつもりなので(笑)。もしパンが好きなら、美味しいパンがめちゃくちゃ食べられるので最高の職場だと思います」
パンフォーユーの事業やプロダクトには、パンをこよなく愛するメンバーたちの熱い想いとこだわりが反映されている。ユーザーとパン屋の素敵な出会いを生み出し続けるパンスクの理念に共感した方は、ぜひこの事業へ参画してほしい。
取材・文:平原 健士、撮影:岡田 晃奈
会社名 | 株式会社パンフォーユー |
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本社所在地 | 群馬県桐生市本町5-368-9 |
東京支店 | 東京都千代田区麹町5-3-23 |
役員 | 代表取締役 :⽮野 健太 取締役:西森 雅直、山口 翔 |
事業内容 | ◆個⼈向けパン宅配サービス「パンスク」の企画・運営 ◆法⼈向けパンサービス「パンフォーユーオフィス」の企画・運営 ◆冷凍パンを活⽤したパン屋開業⽀援サービス ◆「ゴーストベーカリー事業」の企画・運営 ◆パンの OEM プラットフォーム「パンフォーユーBiz」の企画・運営 |
資本金 | 2億5237万3947円 |
設立日 | 2017年1月 |