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  • 2023.02.24

食用バラで人々を美しく、健康に、幸せに。農業界のロールモデルを目指す、女性経営者の挑戦 | ROSE LABO株式会社

無農薬で食用バラの栽培を手がけ、起業から3年で1億円超えの売り上げを達成したROSE LABO(ローズラボ)。現在、埼玉県深谷市にある自社農園で、化粧品やサプリメントの元となるエッセンスの加工販売、バラを使ったジャムや紅茶、美容液など多角的に企画・販売している。

日本の農業は、平均年齢67.8歳という超高齢化が進み、後継者不足、耕作放棄地の拡大など課題が山積みだ。そんな中、代表の田中綾華さんはバラ好きが高じて知識も経験もゼロから出発してバラ園の経営を始めた。素人同然だった彼女だが、持ち前の行動力で生産者が加工・販売までを行う、いわゆる「6次産業」と呼ばれる形態を成功させ、今では農業経営のロールモデルとして講演などにもひっぱりだこである。

彼女の原動力は一体何か。創業当初3000本のバラを枯らせた失敗からビジネスを軌道にのせるまでのサクセスストーリーの中から、スタートアップに必要な心構えを探ってみたい。

【プロフィール】
田中綾華(たなか・あやか)
ROSE LABO株式会社 代表取締役。1993年生まれ、東京都出身。大学中退後、食用バラ農家での修業を経て2015年に独立し、ROSE LABO(ローズラボ)株式会社を設立。「“食べられるバラ”を通して世界中の女性を美しく、健康に、幸せに」を理念に、食用バラの栽培から流通販売、加工食品・化粧品の製造販売を手掛ける6次産業を展開。6次産業農家として、講義、セミナーなども行う。2016年、世界56ヵ国から世界一の学生起業家を決める『GSEA』日本代表。2019年「マイナビ農業アワード」最優秀賞受賞。SNB女性起業家賞受賞。農林水産省 農業女子プロジェクトメンバー。

バラで女性は強く美しくなる


田中さんがバラのビジネスを始めるきっかけは、尊敬する曽祖母の存在だった。夫が早くに亡くなり、鞄と靴を製造販売する会社の経営を引き継いで、社長業のかたわら7人の子育てに追われていた。まだ、働く女性はネガティブに捉えられた時代。プライベートでも仕事でも難問山積にもかかわらず、常に太陽のような笑顔で周囲を明るく照らしていたという。
 
「『なんで、ひいおばあちゃんはそんなに元気なの?』と聞いたときに、彼女は『バラがあると女性は強く美しくなれるのよ』と、お守りのようにバラにまつわるものを身に付けていました。その姿に元気づけられ、いつもバラをそばに置いていましたね」
 
“平凡が一番”と考え、将来の夢や目標もなく、人に合わせてその場をやりすごすような、個性のない子供時代。みんなが大学に行くなら自分も、と指定校推薦で入学し、毎日いかに楽しく過ごすかしか考えていなかった。卒業、就職、結婚と平凡な人生を送るルートしか思い描けない。そんな田中さんを突き動かしたのは、大学1年生の春に参加したゼミの自己紹介。将来の夢や目標を熱く語っている同級生の姿に衝撃を受け、自分の将来について考えるようになった。
 
「どういう人生を歩みたいのか、どうしたら幸せな人生を送れるのか? 自問自答を始めたときに、”.健康寿命の間は、仕事の時間が大半を占める”ことに気づいたんです。それなら、楽しいこと、ワクワクすることを仕事にしたかった。そんなとき、たまたま母親から、”食べられるバラ”があることを聞いて興味を持ちました」
 
「バラの栽培を学ぼう!」と決意した田中さんは、大学を中退してバラ農家で泊り込み修業する選択をした。生まれも育ちも都内の彼女は農業に馴染みがなく知識はゼロだったが、「1秒でも早くプロになりたい」という気持ちだったという。もちろん、家族は大反対。しかし、初めて自分から何かをやりたいという意志を示した娘を応援しよう、と最終的には温かく送り出してくれたそうだ。
 
「ホームページが一番カッコよかった食用専門のバラ農園に、”働きたい”、と突然電話したんです。”.バラを育てたいの、どうぞどうぞ”、といった感じで、意外とすんなりと受け入れていただきました。人手不足だったんですね」

バラ栽培修業2年で農園を購入し独立


しかし、いきなりバラ農園に飛び込んだところで、手取り足取り教えてくれるわけではない。マニュアルも資料もない。見よう見まねで必死に体で叩き込んでいった。
 
「バラを育てることには、やりがいと楽しさを感じましたが、思った以上にたいへんでした。食用バラは、観賞用とまったく育て方が違います。農薬を使わないので、虫と病気が大敵。目視とか経験で予防していくしかないんです。たとえば、アブラムシは黄色に反応するため、黄色の粘着テープをビニールハウス中に張り巡らせたり。それでも、どうしても虫がつくので早期発見するしかありません」
 
まずは、600坪ほどのビニールハウスでバラ栽培を体験した。毎日、”何時に来て”、と言われて行くと、”今日は何をして”、と指示がある。地道に作業を覚えていく毎日だった。
 
「仕事を始めて2年経って、バラを紹介するインスタをやりたいと提案したんです。そうしたら、”.ウチはそんなチャラチャラしたことやらん”、と怒られて。その価値観に共感できなかった。”それなら自分でやります”と、独立することにしました」
 
そこでまず始めたのが、農園の土地探し。農水省が新しく農業を始める人向けに公開している情報を活用し、親族からの借り入れと銀行からの融資で資金を調達。着々と起業準備を進めていった。ビニールハウスを立てる初期費用で必要なのは、3000万円ほど。はじめは、300坪ほどの土地で約3000本のバラを育てた。
 
「いざ、起業するとなると、私には社会人経験がないこともあり、家族がすごく心配して。なにしろ、”見積書”の意味もわからなかった。幸い母に経理の経験があったので、一緒に会社を立ち上げることにしたんです。資金調達などは私が担当し、経営バックオフィスは母に丸投げでした」
 
だが、どんなにがんばっても、初めからバラの栽培がうまくいくはずはない。初年度に育てたバラ3000本は、すべて枯れてしまった。
 
「2年しか栽培の経験がない、というのが致命的でした。基礎知識が足りなかった。それで、『アグリイノベーション大学校』という社会人向け週末開講の農業経営スクールに通い始めました。学校では、農薬の化学的な知識や、農地法などの農業に関する法律など、それまでまったく知らなかったことを学ぶことができて、とても役に立ちました。原価計算の仕方なども丁寧に教えてもらえたので、経営改善にも繋がったと思います。また、その学校で、大分県にある「メルヘンロード」という日本で1番栽培面積が広いバラ農園のレジェンドを紹介してもらえたことが最大の幸運でした。その師匠たちのところに頻繁に通っては学んだことを埼玉の自社農園で生かす、その繰り返しをしばらく続けました。そのおかげでバラの栽培も軌道に乗り始めたんです」

高級路線に方向転換で軌道に乗る


その後、わずか3年間で年間売り上げ1億円突破の快挙を達成する。毎年あらたなバラの活用法を模索していき、食用だけでなく、2年目に加工食品、3年目では化粧品と新規商品の開拓を続けた。当初は、収穫したバラをパックに詰めて、飲食店に飛び込み営業を試みたが、当然ながら断られ続ける日々だった。
 
「”バラを食べてもお腹いっぱいにならないでしょう”、と追い返されました。最初は、とにかく数打とうとしていたのですが、それではまったく効果がないことを痛感して、高級路線に方向転換したんです。そうしたら、ある高級ブランド店で使っていただけることになり、そこから、”あの会社が使っているなら”、と次々と広がっていきました。そのうちSNSでも頻繁に紹介されるようになったんです。”映え”という言葉がトレンドになる頃には、私自身もSNSで発信したり、インスタのDMで営業メールを懸命に送り続けました」
 
しかし、食用バラだけでは、限界があった。売り切れないほどのバラが咲いてしまう。需要と供給がなかなか噛み合わない。多くのバラが余ってしまい、途方にくれた。少しでも無駄にしないために保存しておこうと、冷凍してみたところ、バラの品質は意外と安定していることに気付く。そこでジャムやシロップなど加工食品の開発を思いついた。
 
「農園から近い和菓子屋さんに、大量のバラを持っていき、これでジャムを作ってくれませんか、とお願いしました。そのジャムをファーマーズマーケットや青空市場で朝から晩まで自分で手売り販売しました。そこに大手百貨店バイヤーの方が来て気に入ってくださり、取り扱いをしてくれるようになったんです。だんだん商品が広がっていき、バラのシロップやチョコレートなども開発していきました」
 
すると予想以上の反響があり、ほどなくして増収増益に。”食べられるバラ”を売るだけではなく、作物から加工品を開発して販売する「6次産業」ビジネスを成功させたのだ。
 
「6次産業とは生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)・販売(3次産業)を一貫して取り組むことで、6次産業の「6」は、1次・2次・3次のそれぞれの数字を掛け算したもの。産業の融合を図り、新たな価値を生み出すことを意味しています」 

敏感肌で美容オタクが開発した化粧品


現在、メインとなる商品の一つは、化粧品ラインである。初年度から原材料として化粧品メーカーにバラを販売しており、業界とのパイプあったことから、化粧品の開発にも乗り出した。現在の化粧品のラインナップは29点。2020年11月には、シリーズ累計販売数が10万個を突破。今では百貨店やバラエティショップなど、180店舗以上での常設展開にまで拡大した。
 
実は、田中さんは幼い頃からかなりの敏感肌だった。そのため、化粧品の成分をよく調べる癖がついていた。いわば、美容オタク。その知識と化粧品会社の技術が融合してシリーズが誕生した。
 
「アトピー系で肌のトラブルに悩まされていました。多くの化粧品を試しましたが、肌がヒリヒリしたり、顔が真っ赤に腫れてしまうこともありました。私のような敏感肌の方でも安心して使える化粧品を作りたいと開発したものです」
 
2年の研究を経て、自社栽培の他種バラと比較して、一般的なバラよりもビタミンAが10倍以上、ビタミンCが2倍以上含まれる新品種の「24(トゥエンティフォー)」の開発に成功。「24」から抽出したローズウォーターとローズエキスを高配合し、敏感肌の人でも使えるようなナチュラルコスメが誕生した。
 
「加工食品は香港にて販売を行うなど、すでに輸出にも挑戦中ですが、今後は化粧品の海外展開に力を入れていく予定です。すでに、テストマーケティングは終わっていて、海外での販売経路などを探っている最中です」
 
田中さんは、「農業界のロールモデル」を目指し、講演などを行って農業の魅力と可能性を伝える活動も積極的に行っている。女性農業家が経営者を兼ねる異色の企業として、どのような人材を求めているのだろうか?
 
「作物の世話をするだけが農家の仕事ではありません。大切に育てられた植物は無限の可能性を秘めています。そんな農業にもっと可能性を感じてもらいたい。一緒にこの使命を担ってくれる方と仕事がしたいですね。絶対に欠かせないのは、理念や志に共感を持ってくれる人。情熱を注いでくれる人。製造から企画・販売まで行っているからこそ、あらゆる業務に携われるチャンスがあります」
 
取材・文:山下 美樹子

会社名 ROSE LABO株式会社
設立 2015年9月7日
役員 代表者取締役社 田中綾華
取締役 田中 顕
取締役 荒澤 寿子
社外監査役 植村 亮仁(公認会計士)
社外監査役 塩川 泰子(弁護士)
所在地 深谷本社/〒369-1246 埼玉県深谷市小前田2579-10

東京事業所/〒106-0032 東京都港区六本木5-9-20 六本木イグノポール50
電話番号 03-6277-8755
事業内容 自社農園で栽培した農薬不使用の「食べられるバラ」のオリジナル原料供給

「食べられるバラ」由来の食品 / 化粧品のオーガニックブランド事業
資本金 3億7999万6700円(2023年1月現在、資本準備金含む)

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