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  • 2021.04.21

13年間、グローバル採用にこだわり続けた男が見つけた答え。マッチングプラットフォームで、業界を根本から変える | unbound株式会社

昨今、日本の深刻な社会問題となっている労働人口の減少。解決に向け、外国人労働者の受入やテクノロジーを駆使したDXが注目を集めているが、現実は遅々として進まない。筆者は、求人広告の制作で多くの会社を見ているが、旧態依然としたままの日系企業が多いことも事実である。

グローバル採用に黎明期から携わってきた原健樹は、変わらない現実を長年見つめてきた。しかし、決してあきらめているわけではない。2021年1月にはunboundを創業し、これまでの業界の常識を覆して、社会にも影響を与えかねないチャレンジに臨もうとしている。日本人の採用に比べ、圧倒的に市場規模の小さい海外人材の採用に、なぜ原はこだわり続けるのか。「高尚な理由なんてないですよ」と笑う42歳の“熱”を探った。

【プロフィール】

原健樹
unbound株式会社 代表取締役。1978年10月生まれ。求人広告の代理店で中途採用のトップセールスとして実績を残した後、新卒事業部の立ち上げに参画。その際にグローバル採用と出会い、以降、複数の人材コンサルティング会社で海外人材を国内の企業へ提案する。2021年1月には、unbound株式会社を創業し代表取締役社長に就任。グローバル採用のマッチングプラットフォームや外国人向け転職サイトの企画・開発などに取り組んでいる。

商材の一つに過ぎなかったグローバル採用

中途採用向けの求人広告の営業時代。トップセールスとして成果をあげていた原だが、変わらない商材を売り続ける日々に違和感を覚える。そこで、「新卒事業部を立ち上げさせて欲しい」と会社に申し出た。
 
結果を出している原の言葉に、内心はともかく会社は首を縦に振らざるを得ない。しかし、中途から新卒に移ったとしても、仕事が劇的に変わるわけではなかった。求人メディアの代理店の営業として、いくらでもある同業他社と競争しながら、同じ広告枠を提案する。
 
そんなとき、原が出会ったのがグローバル採用だ。偶然、韓国の人材関連企業の関係者と知り合い、その存在を知った。当時を原はこう振り返る。
 
「グローバル採用に出会った当初は『なにそれ』という感覚。最初は商材の一つとしてしか考えていませんでした。ただ、これが予想以上の効果を発揮してくれた。当時は珍しいサービスだったので、大手企業のアポが取れるようになったんです」
 
時は2007年。グローバル化という言葉がもてはやされ、時代の流れに敏感な企業は、海外人材の採用に“最先端”のイメージを感じ取ったのだろう。だが、新しい物を取り入れるには準備が必要だ。
 
「そもそもなぜ外国人を採用するのか」その意味を伝えることから始まり、「どうやって外国人を職場に受け入れるのか」「外国人の教育はどうするのか」など、一から企業に啓蒙する必要があった。前例がない分、準備に膨大な工数がかかったのだ。結局、商談機会は増えたものの、大手総合商社への初受注が決まったのは2年後。手法が確立されていて、手軽に掲載ができるうえ、1回に数十万円以上の利益がある求人広告の営業に比べ、効率はあまりにも悪かった。

韓国での体験を機に、グローバル採用の魅力にどっぷりハマる

「いつになったら結果が出るんだ」という上司からの無言のプレッシャーにさらされながら、グローバル採用に取り組んだ原。ようやく受注した契約を成功させるために、韓国へ向かう。そこで、確かな仕事の“手触り感”を感じ、日本人とはタイプの異なる“優秀”な学生たちに出会う。
 
「求人広告の営業は、エントリー数は分かっても、求職者に会わないじゃないですか。だから、思い入れも湧きにくい。でも、韓国に行ったらエントリー受付から学生のアテンド、面接前のサポートまで、全部に携わりました。それが新鮮でしたし、韓国人は日本語も英語も堪能で、面談前の待合室ではみんな勉強している。『これはすごいな』と感じ、グローバル採用の魅力にどっぷりハマりました」
 
そんな原のもとに、当時グローバル採用最大手の企業からオファーが届く。迷わず彼は転職を決意する。不安よりも、グローバル採用にのめり込みたいという想いが強かったそうだ。
 
本人にも、「自分は営業として優れている」という自負があった。だが、それは新しい環境であっさりと打ち砕かれる。「周りには自分より優秀な人はいくらでもいる。これでは井の中の蛙じゃないか」、と。
 
それでも、グローバル採用の魅力はずっと原を捕らえ続けた。それは社内の体制が一新され、転職せざるを得ない状況になっても変わらなかった。以降、2社の人材コンサルティング会社で、グローバル採用部門の立ち上げ、事業責任者を任せられる。当時、グローバル事業の展開を見据え考え参入する人材企業も多かったが、そのほとんどが数年で撤退していく。
 
同じことが繰り返される状況で、原はいよいよ決意する。
 
「僕も甘ちゃんなんです。人様のお金を使って事業部として仕事をしていましたから。覚悟が足りなかったです。だからこれからは自分の責任でやってみようと考えたんです」
 
こうして2021年1月、コロナ禍で世界と日本が断絶する時代に、unboundを創業した。国の垣根のない採用を推進するために。

グローバル採用の仕組みを一新する。新たなマッチングプラットフォームの実現へ


「なぜそこまでグローバル採用にこだわるのか」という質問に、原は笑いながら答えた。
 
「求人広告の営業や人材コンサルは山ほどいるけど、どこも大差はないですよね。その点、2007年からグローバル採用に携わっている人は、ほとんどいません。マーケットは小さいけど、キャリアを考えたときに、独自の立ち位置を作りやすいからですよ。高尚な理由なんてありません」
 
100%の本心ではないだろう。照れ隠しも多分に含まれているはずである。それは、原がunboundで取り組もうとしているのが、グローバル採用への深い知識や関係者への強い愛情、つまりこだわりがなければできないからである。
 
海外のHR企業、大学と日本の企業をダイレクトにつなぐマッチングプラットフォーム。現在、原がリリースを目指しているサービスだ。2007年から13年にわたり両者をつないできた自らの存在の否定が、導き出した答えだった。
 
「グローバル採用が日本で進まない理由を考えたときに、言葉の壁などの問題は山積していますが、仕組みも良くないんじゃないかと思っています。ほとんどの人材会社が現地のパートナーと日本の企業の間に入って、海外人材を紹介してきたが、アレンジしてコストを上乗せしているだけ。『自分たちの存在って意味あるの?』と感じていました。それに、コロナ禍によって日本に行きたい人、人を送りたい現地の企業が困っているという声もすごく届いています。だったら、直接やり取りしてもらえれる仕組みを作れば企業側の採用コストも下げられる。今よりは多少、外国人雇用促進になるんではないかと。案件が増えたら現地でも喜ばれるじゃないですか」
 
サービスは、海外の企業による登録料で運営していくと言う。早期に多額の利益は見込めないため、一定以上の規模がある会社であれば事業化は難しいが、原の他にまだ1名の社員しかいないunboundでなら問題ない。プラットフォームが育てば、グローバル採用に流れは大きく変わり、職場に外国人がいるということが、当たり前の景色となっていくのだ。
 
これまで現地と日本企業の橋渡し役だけで来日後のキャリアについては追ってこなかった。「もっとできることがあったのではないか」という反省のもと、彼は外国人の日本での転職を後押しするサービスのリリースも視野に入れ、これまでの常識を壊したいと考えている。具体的なローンチ時期はどちらも年内を目指しているそうだ。

束縛から解放された場所で、関わる全ての人を幸せにする

会社員生活から解き放たれ、業界の常識を変えるサービスを考えている原。unbound(=束縛を解く、自由)という意味のある社名には、彼の想いが素直に反映されている。
 
「一人ひとりにしっかりと還元できるような会社にしたいです。unboundはジョインしてくれた人、がんばってくれる人に、きちんと応えられる場でありたい。だから社員の規模は最大でも20人くらいを想定しています。少人数のメリットを活かし、ニッチな分野でシェアを広げていきたいと思います」
 
原健樹、42歳。現代の創業者として、決して若い年齢ではない。だが、一つの分野に特化して長くキャリアを歩み、様々な会社を経験してきたからこそ、見えた物がある。目線の先には、常にエンドユーザー、クライアント、共に働く仲間がいた。そして、“彼らのため”という気持ちが、原を突き動かしてきた。蓄積してきた知見は膨大になったが、今もこれからも彼の原動力が変わることはないのだろう。

 

文:石原遼一、取材:田尻亨太

会社名 unbound株式会社
本社所在地 東京都世田谷区玉川3-13-4 玉川134 402
海外拠点所在地 インド:476AA, circular road, Land Mark : Anand nagar, City: Rewari, PIN CODE: 123401, State: Haryana, India
ベトナム:No 62/ 41 Dong Tac street, Kim Lien ward, Dong Da District, Ha Noi, Vietnam.
役員 代表取締役 原 健樹 
社外取締役 松原 良輔
事業内容 海外人材採用支援事業
WEBサービス事業
採用支援事業
資本金 3,500,000円
設立年月 2020年12月
主要取引先 ByteDance株式会社
SoftBank株式会社
株式会社 出雲建設 他
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