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  • 2022.05.20

目指すのは職人ではなくサービスマン。現場のイメージを変える理論派名工の流儀 | プロタイムズ総合研究所

大手ハウスメーカーからの外注や下請けがほとんどの外装塗装業界。「安く早く仕上げる」ことが元請けに喜ばれるため、質の低い仕事を覚えてしまう職人たちも多い。それが手抜き工事に繋がり、業界全体の信頼度を低下させてしまう。

そんな悪循環を断ち切るべく、業界のゲームチェンジャーとして急成長を続けるのがプロタイムズ総合研究所(以下、総研)だ。外装リフォームサービス『ヤネカベ』を提供し、10年で年商40億円を突破。「仕事は元請けのみ」「施工プロセスの“見える化”」などの取り組みで品質を担保し、施工件数は2万軒を超える。

だが、総研の躍進を支えているのは、優れたサービス内容や事業戦略ではない。その土台には仲間の成長を心の底から喜ぶカルチャーと、業界未経験の若手を一から育て上げる職人・池上政之氏のまっすぐな信念があった。

理論派名工と呼ばれる池上氏は、自ら立ち上げた塗装会社を辞め、なぜ総研で働くことを決意したのか。そのキャリアを紐解きながら、彼もほれ込んだ総研のカルチャーに迫ってみたい。

【プロフィール】
池上政之
株式会社プロタイムズ総合研究所 現場革命部 副部長
2011 年よりプロタイムズ総合研究所の協力会社(ヤネカベから依頼されて塗装作業をする職人)として参画 。「当たり前のことをしない業界※」といわれる中で「職人の質や業界を変えたい」と常に心がけ、施工品質では常にお客様アンケートで高評価を貰う。2013年に独立し、2014年にはアンケート調査で職人部門1位に輝く。2015年にプロタイムズ総合研究所に正社員として入社し、現在は現場革命部(塗装職人が所属する部署)の副部長として、「塗装業界の意識改革」をモットーに社内の人材育成などにも尽力している。これまでに外装リフォームを 5,000 棟以上手掛け、高い専門知識と技術を持つ。※塗装業者には免許が必要なく、誰でも手を挙げれば塗装職人になれるような状況のため、いい加減なサービスを提供するところもあり、不良施工が多い。

いつも楽しそうな職人たちへの憧れ

池上の職人としての原体験は、父親が営んでいた塗装業にある。子どもの頃から建設現場についていき、仲間の職人たちに可愛がられていた。
 

「身内で営んでいた会社なので知り合いが多く、いつも会話が弾んでいました。みんな和気あいあいと仕事に取り組んでいましたね。自分もこんな風に楽しく働けたらいいなと、職人の世界に憧れを抱いていました」
 

父親の塗装業を手伝うようになった池上は、基本技術を身につけ独立した従業員についていくかたちで本格的に職人として働きはじめる。最初は「やってみようかな」という好奇心だったが、次第に仕事の奥深さにのめり込んでいく。
 

「本格的に働き始めるとやっぱりいろいろ感じるもので。疑問を解決したり新しいことに挑戦するなかで、仕事が面白くなっていきました。未熟ながらも『こんなんじゃダメだ』『もっとキレイに塗りたい』と思ったりして、どんどん職人としての“欲”が出るようになりました。自分のスキルを高めるべく、今まで体験したことのない新たな現場や仕事を求めるようになったのです」
 

1社目では主に戸建ての外壁塗装を経験。続く2社目では、小学校や高層ビルの外構を担当。大規模修繕を経験することで、大きな工事で使う材料や工法を習得している。さらに3社目では内装工事について詳しく学び、リフォームや改修工事にも取り組むようになる。
 

「クロスの張り替えなども行っていたので、塗装以外の仕事についても知ることができました。未経験の仕事を通じて、スキルの幅が広がったのは非常に良かったと感じています。いくつかの会社を経験しましたが、どれも自分の糧になる発見ばかりで貴重な財産になっています」
 

順調に職人としてのキャリアを積み重ねた池上は、仲間が立ち上げた施工会社に創立メンバーとして参画。経営について興味がなかったが「これも何かの経験になるだろう」とゼロからの事業運営に尽力している。
 

「私と社長だけの半共同経営なので、やりたいことは何でも実行できました。戸建てから大規模修繕まで、それまでの経験を活かして働いていました。自分で一から仕事をつくることを体感でき、会社を軌道にのせることができたのは何よりの経験です。従業員も増えて経営は安定していましたが、現状に満足することなく職人として新たな挑戦をしたいと思い、独立を決意しました。この業界では独立時に仲違いするケースも多いですが、私の場合は仲間たちに送り出されての円満退社です」
 

塗装の美しさの先にある“安心”を目指す

職人として働きながら、塗装会社を経営するようになった池上。今まで以上に多くの案件を担当するなかで、不良施工が多いことに憤りを感じるようになる。
 

「自分の業界をあまり悪く言いたくないのですが、当時はインターネットでの情報が十分ではなくいい加減な施工が多くありました。というのも外壁塗装や屋根リフォームにおいて、見た目を瞬間的にキレイにするだけならどんな業者にもできるからです。そのときは良くても、手抜きの不良施工は建物全体に深刻な影響を与え、耐久年数を縮めてしまいます」
 

池上が目指しているのは、瞬間的な塗装の美しさではない。顧客が長年安心して建物を使えることを第一に考えている。
 

「建物の外装をメンテナンスする目的は、内部の柱や梁、つまり躯体(建物を支える構造部分)を守ることにあります。そのため本当にうれしいのは、施工から何年か経ったときに建物がまだ平気だと確認できたときです。つまり、本当に良い仕事かどうかわかるまでには一定の期間がかかります。長年にわたって正直に仕事を続けていく必要がありますし、それが信頼に繋がってリピートの依頼をいただくこともあります。その楽しみがあるからこそ、落ち込むことも腐ることもなく、職人を続けていられるのだと思います」
 

池上は業界で当たり前と思われることも、必ずその裏付けをとってから実行する。きめ細やかな仕事ぶりから「理論派名工」と形容されることもある。
 

「私はただ、当たり前のことを追求しているだけです。というのも、この業界では勘や経験に頼っていることが非常に多いのです。塗料一つとってみても、塗りやすくするために基準値を超える希釈をしたり、コストを下げたいから余計に塗り広げたり。私の場合は各材料の使い方一つでも、不明なことは時間を惜しまずメーカーに問い合わせるようにしています。そして、その情報を周囲の職人たちにどんどん発信していきます。そうすると、正しい情報が広まり業界全体の仕事の質が高まっていくのです」
 

外装塗装業界では、池上のように仕事の質を追求する会社よりも、売上のため施工スピードを重視する会社が多いとのこと。それらとは一線を画す会社として、池上が以前から気になっていたのが、プロタイムズ総合研究所(以下、総研)だ。
 

「高品質施工を追求している会社として業界内で評判が高く、当時からたくさんの案件を持っていました。この会社と一緒に仕事をしていれば、一生仕事に困ることはないと感じましたね。それに、会う従業員がみんな元気だったことに驚きました。ベテランや若手を問わず、チームでモチベーション高く取り組む会社には、ほとんど出会ったことがなかったからです。私が幼少期に憧れていた職人たちの楽しそうな働き方にも似ていました」
 

この業界において、職人の意欲を低下させる原因の多くは経営サイドにある。職人のキャリアは起業独立をゴールに設定することが一般的だが、いざ経営を始めると事業拡大や利益を追求するようになる。現場の品質管理が二の次にされ、職人たちのモチベーションが低下してしまうのだ。現場の品質管理がおざなりになると、手抜き工事も起こってしまう。
 

「不透明な部分の多い外装塗装業界において、総研は別格の存在でした。顧客満足度を何よりも重視しており、『いいものを提供したい』『お客様を裏切らない仕事をしたい』という理念に共感する部分が多くありました。現場のみならず経営サイドでも同じ考えを持っていることを知り、一緒に働きたいと思うようになりましたね」
 

総研の想いに共感した池上は、協力会社として2011年より参画。2014年に総研のアンケート調査で職人部門1位に輝き、2015年に正社員として入社している。
 

「入社の経緯として、事業規模も大きく影響しています。私の会社は小規模でやっていたので、どんなに頑張ったとしても月に3、4軒の施主さんを喜ばせることしかできませんでした。しかし、総研なら優秀な職人とのチームワークでもっとたくさんの人に高品質の施工を提供できます。それが結果として、粗悪な施工を減らすことに繋がると思っています。正直、会社を経営していたときの方が収入はかなり多かったですが、それよりも仕事のやりがいを優先しました。奥さんは『バカじゃないの』と呆れていましたが(笑)」
 

幅広い分野の職人たち。自然とスキルが高まる

池上は入社後に、総研のチーム力の高さに驚く。池上が専門とする塗装以外にも、幅広い分野のプロフェッショナルがそろっていたのだ。
 

「外装塗装の会社は、一般的にその社長がやってきた分野の仕事を専門で請け負うことが多いのですが総研は全く違いました。外装リフォームサービス『ヤネカベ』において、外壁・屋根塗装、屋根リフォーム、板金工事、防水工事、増改築など全般的な依頼に対応していたのです。戸建てはもちろん、マンションなど大規模な建物についても高品質なサービスを提供できるのは強みだと思います」
 

さまざまな分野のプロフェッショナルがそろっていることは、従業員にとってもメリットが大きい。共に働くことで、職人としてのスキルが自然と高まっていく。
 

「元々得意としていたのは塗装工事ですが、『ヤネカベ』で働くようになって屋根の工事にもたずさわるようになりました。資格の取得はこれからですが、ある程度の施工内容は理解できています。一緒に働いているだけでいろいろな分野の技術が身につくのは、職人として理想的な環境だと感じています」
 

総研は顧客に対する細かな配慮にもこだわっている。施工完了までの全プロセスを“見える化”して、顧客の不安を取り除いていく。
 

「他社では、工事が始まったけど何も教えてくれない、どこまで進んでいるのかわからない、などの疑問が寄せられることが多くあります。一方、『ヤネカベ』では施工前に映像診断や CAD 図面を作成して、塗料の細かい量まで計算して“見える化”します。さらに施工中には、施主さんと毎日交換日記を行い、当日や明日の作業内容を手書きでお伝えしています。プロセスをすべて把握できるので、施主さんは安心して施工をお任せできるのではないでしょうか」
 

池上自身もコミュニケーションを重視して仕事に取り組んできたため、共感する部分も多いという。
 

「職人に対しては一般的に、『怖そう』『気難しそう』などのイメージがあるかもしれません。それらの印象を変えたいと思いながら、仕事に取り組んできました。元々会話が好きなこともありますが、お客様にはできるだけネガティブな印象を持たれないよう積極的に話しかけています。職人というよりも、サービスマンとして感じてもらえたらいいなと思っています」
 

お客様と現場以外で接するときには、作業着ではなくシャツのこともあるという。そこには、駆け出しのころに体験した苦い経験が影響している。
 

「塗装職人はペンキまみれになることもありますが、できるだけキレイな状態でお客様に接したいと考えています。というのも、まだ若いころに作業着で蕎麦屋に行ったことがあるのですが、座布団に座ろうとしたら新聞紙をサッと差し出されました(笑)。ペンキは乾燥しており店内を汚すことはなかったのですが、不安になるのも当然だと思います。それ以来、外出時に気をつけるだけでなく、現場でも作業着が汚れない正確な仕事を心がけるようになりました。すると塗料をこぼす回数が減り、塗装がどんどん上手くなっていったのです。自分の視野を広げ、お客様がどんな印象を持つのか意識することは大切だと思います」
 

未経験者に寄り添う。仲間の成長を喜ぶカルチャー

社内と顧客からの信頼を積み重ね、塗装職人が所属する現場革命部の副部長に就任した池上。「塗装業界の意識改革」を目指し、社内の人材育成にも取り組んでいる。
 

「仕事の基本的なことは私や部長が教え、業種ごとの専門的な内容については得意な職人が詳しく伝えます。同じ会社なので技術を出し惜しみすることなく何でも学べますし、経験豊富な仲間と一緒に現場に入ることで自然と覚えられることも多いです。かつての私のように協力会社とも仲が良いので、学びの機会が豊富にあります」
 

池上が常に心がけているのは、とにかく自由にやらせること。とはいえ、未経験者は最初の一歩を踏み出すことに勇気が必要なので、適切な距離でサポートするようにしている。
 

「普段の調色作業などを見て『何やっているんですか?』と興味を持っているようなら、触ってみることを勧めたりします。声をかけて一歩引いてしまうようなら無理強いはしないですけど、興味を示してくれたらあと半歩踏み込むなど。失敗しても怒られることはないので、気軽にやってみてほしいと思います」
 

新たな職人の採用については、全社でこだわっていることがある。それは、未経験者しか雇わないということだ。
 

「私のように一部例外はいますが、あえて経験者を雇わず未経験者を正社員として迎えて一から育てるようにしています。今では、国家資格である一級塗装技能士が正社員で18名育ち(2021年4月現在)、その他にも、一級建築士や外装劣化診断士など、さまざまな資格を持つ職人が育ってきました。何もない状態から学んでいくので、間違った仕事のクセがついていないですし、経験者よりも伸びしろがあります。正しい仕事の方法・基準を身につければ、職人として一生の財産になると思います」
 

また、業界全体の課題としてあげられる「離職率の高さ」についても、ルールよりもカルチャーを重視した職場で解決している。
 


目標達成時のビールかけ(2017年実施)。チームワークを高めるため、過去に7回開催。

「コロナの影響で最近はなかなか実行できていませんが、社内のチームづくりの一環として夏にバーベキューや海水浴、さらにはビールかけなど、みんなで楽しめるコミュニケーションの場を設けています。社会状況を見て、今後復活させる予定です。自由参加なので無理に出席する必要はありませんが、“雑談”でお互いを知ることでチームワークが高まっていきます。他にも塗装の技術を競い合う『塗装オリンピック』を社内で開催し、職人たちの交流の場としてみんなで楽しんでいます」
 

会話を重ねることで「この人と一緒だからやりたい」と、親友や家族のような関係性が構築されていく。その明るい社風やカルチャーに惹かれ、付き合いを続ける外部の職人たちも多い。
 

「私が入社前から大好きなのは、職人の表彰制度です。現場の職人たちに光が当たることは滅多にありませんが、当社では社員の表彰に加えて協力会社の表彰までやっています。しかも、半年ごとではなく毎月行っており、営業や管理部門などあらゆる職種のメンバーを表彰します」
 


社内表彰式における胴上げ(2018年実施)

この表彰制度は、一人の頑張りをまわりの仲間や上司が気にかけ、しっかりと評価しているからこそ成り立つ制度である。
 

「自分を評価してほしいと思うよりも、誰かの良いところを見つけて応援する人が多いかもしれません。例えば、以前受賞した職人は『今度はあの子に取ってほしい』『この喜びをあの子にも味わってほしい』と話していました。彼は今でも、その後輩が受賞できるように日々サポートに取り組んでいますね」
 

25年間続けても飽きない仕事

塗装業における仕事の醍醐味は、どんなときに感じられるのだろうか。職人として25年以上のキャリアを持つ池上に聞いてみた。
 

「一番うれしいのは、『ありがとう』と直接言ってもらえることです。普段の生活で心の底からお礼を言われることはあまりないと思いますが、この仕事でお客様にまっすぐ向き合っていれば必ず喜んでもらえます。相手の財産でもある建物を任せてもらい感謝の言葉をいただくことは、他には変えがたい仕事のやりがいに繋がります」
 

顧客とのコミュニケーションにおいて、温もりや人柄も伝える『ヤネカベ』の職人たち。今後はどんなことに注力して取り組んでいくのか。
 

「リフォーム業界全体を良くするために、周囲の会社との繋がりを大事にしていこうと考えています。自分たちの技術を守ろうとするのではなく、他の会社に共有しながら一緒に成長していく。そのために、会社や業種の垣根を超えた集まりを増やし、課題や悩みなどいろいろなことを話せたらと思います」
 

最後に、職人を目指す新たなメンバーに向けて伝えたいことを伺ってみた。
 

「とにかく楽しくやってほしいです。ほとんどの人が未経験からのスタートなので、失敗を不安に感じることがあるかもしれません。でも、最初は上手くできないのが当たり前ですし、総研にはそれをカバーできる職人たちがそろっています。会社には練習できる場所がありますし、やっているうちにどんどんのめり込んでいく人がほとんどです。私も夢中でたくさんの施工にたずさわってきましたが、今も新たな発見があって仕事に飽きることがありません。職人としての楽しさや面白さを、ぜひ味わってほしいと思います」
 

取材・文:平原 健士、撮影:岡田 晃奈

会社名 プロタイムズ総合研究所
(サービス名:ヤネカベ)
本社所在地 東京都府中市緑町3-10-1
代表者 代表取締役 大友 健右
事業内容 外装塗装/屋根塗装/屋根リフォーム
板金工事/防水工事/増改築・総合リフォーム
大規模改修(アパート、マンション、ビル)
不動産コンサルティング業務
資本金 40,050,000円
設立年月 1996年7月18日(現在のサービス開始は2010年)
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