コラム

求人広告の効果が出ない理由は、コピーや採用条件だけではない

【筆者プロフィール】
石原遼一

小学校と同じくらい通った早稲田大学在学中からライターの仕事を始め、卒業後、出版・広告業界で会社員とフリーランスを行き来する生活に。気づいたらHR・求人広告を軸にスポーツ、遊技を含めて雑多なコンテンツをつくる人間になっていた。最近は、クライアントに採用コンサルティングから広告運用まで丸ごと頼まれることも。○○広告大賞に応募するのはめんどくさいから一切しないけど、一緒に仕事をした営業は、広告効果や採用率で表彰されていると報告だけ多々受ける。累計で2000社以上の取材をし、7000本以上の制作を行ってきた。夢は山奥でバーニーズ・マウンテンドッグと大型熱帯魚に囲まれ、仙人のような暮らしを送ること。現実は地方都市での引きこもり、ときどき上京の生活である。

 

7000本以上の原稿を手がけたライターが考える、効果が出る求人広告の秘訣

これまで7000本以上の求人広告を制作してきた経験から、「どうすれば効果が出る求人広告を打てるか」悩む採用担当者の方に向けて、自分なりのポイントをご紹介したいと思う。仕事柄、「求人広告の書き方」、「効果が出るHow to」みたいな記事を知れば、目を通すようにしている。編集のTさんに今回のコラムの依頼をもらったときも、どんなコンテンツがあるのかザっと調べてみた。大体、ターゲット(ペルソナ)を細かく設定して、コピーを工夫しよう的な話がほとんどだ。あとは営業につながっていく話。そのような記事は僕から言わせれば、嘘を書いてはないけど、「1+1=2である!」とドヤ顔で言われているようなものである。

 

求人広告のライターを始めるとき(多分マーケティングなんかでも似た感じだと思う)、1時間目の授業で言われるのが、ターゲットを具体的にイメージして、その人に向けたコピーを書けということだ。2時間目は法律とか媒体規定。どの求人広告メディアでも同じ内容を教わった人が制作しているわけだから、最低限のラインは基本的にクリアされているはずである。でも、つくる人によって採用成功率はまったく違う。そうすると、効果を出すのにターゲットに合わせたコピーラインティングが正解というのは、ちょっと違うんじゃないかなと。だって、みんな同じことをしているはずなんだもの。

 

自慢になるけど、何回も失敗が続いた企業が複数人の採用に成功したとか、応募数を何倍、何十倍にしたとかっていう例は、覚えきれないくらい経験がある。そのときに僕は、ターゲット設定やコピーに大した工夫はしてないと感じている。過去に広告代理店がつくった原稿の改善企画・資料作成や掲載中の原稿(僕ではないライターがつくっている)をなんとかして欲しいという依頼もそこそこある。それを見ているとコピーの問題がゼロではないけど、「そもそもこの導線の設定なら、求人情報がターゲットに届いていない」ということが多い。ターゲットの設定→そこに向けた導線の工夫→コピーのライティング。これが僕の求人広告のつくり方である。今回は、その真ん中の工程が大事だよってお話をする。

 

内部導線が大切な理由

ほぼすべての求人広告媒体は、サイトのトップで職種と勤務地で条件を絞り、求人を探す仕様だ。勤務地は基本的に変更できないので言及しないが、求職者に人気のある職種に導線=職種コードを設定すれば(掲載競合が少なければなお良い)、自社の広告が人の目に触れる機会が各段に高まる。逆にそもそも見られない導線を設定して、ほとんどの人に届かないコピーに必死になっても意味ないでしょって話である。魚のいない釣り場で、餌や竿を工夫してもむなしいだけだ。具体的に誰でも知っている求人メディアで、個人的に調べてみたところ、人気のない掲載件数の多い職種と人気のある掲載件数が少ない職種(なにかは個別にお問合せください)で比べると、検索されている数に10倍以上の開きがあった。つまりそういうことである(同じ掲載サイズで本当に調べた)。

 

導線の代表、職種コードで言えば、基本的に2つ設定できるのもポイントになる。職種検索のときは、営業系・企画系・販サ系・ITエンジニア系とか、まずは大分類があり中分類、小分類と細分化される。このとき、最低でも中分類はずらしたい(できれば、どこかの転職サイトを見ながら読んでください)。わかりやすい販サ系なら、中分類は小売・飲食・アミューズメント・旅行・ブライダルとかになり、小分類の店長か一般スタッフかなどはそこまで絞られない(そもそも店長のみでこだわって探している人に、一般スタッフの求人を発見されても縁がないし)。

 

そこでたとえば、ブライダル系のレストランの求人なら、飲食とブライダルで中分類を分けるのが正解である。「ブライダルに興味がある飲食経験者」がどちらで職種を探しても、自社の求人を見つけられ、それを想定したコピーが応募を後押しする。逆に2つのコードを同じ中分類内の飲食の店長とホールスタッフにしていたら、導線は事実上半減するのだ。ITエンジニアなんかも同じで、Web・オープン系とネットワーク・サーバ系は中分類で別れることがほとんどなので、両方の採用ニーズがあるなら、片方に寄せるべきではない。営業や販サ、建築、エンジニアは競合原稿が非常に多い職種であり、職種コードという導線だけでも、閲覧数が倍あるいは半減する可能性があるのだ。

 

ターゲットの志向に合わせた具体例を2職種ピックアップ

まずは基本知識の共有から

大前提として、転職の基本は横スライドである。広告の効果検証データは腐るほど手元にあるけど、営業の求人を見ているのは6割以上が営業経験者だし、例外は建築設計と公務員系くらいだ(僕も今さら他の仕事はできない)。「未経験大歓迎」みたいな求人は頻繁にあって、未経験で良いという企業も多いが、パイを広げているようで実はマイノリティ向けの広告になっている。というわけで、僕が考える職種コード設定の基本は、マスの経験者(業界未経験者には十分配慮)に向けてつくりつつ、4割も拾って効果を最大化することだ。

 

営業編

営業職の転職理由で多いのが、既製品を売り続けることへのマンネリである。だから、企画寄りの職種に流れる傾向が目立つ(くどいけど、6割以上は横スライド)。たとえば、機械系の部品メーカーであれば、お客さんの依頼に合わせて製品サンプルを考える工程も多分にあるから、そこを打ち出さないのはもったいない。商品企画・ディレクション系のコードを1本立てて、営業経験者でその職種に流れようとする人の志向とマッチさせられる。自分の手でベストだと思う製品をカタチにし、お客さんに喜んでもらえる営業、みたいなイメージである。これは出版・広告系の営業などでも使えるパターンだ。

あとは、上のレイヤーの営業経験者が欲しいけど、管理職として採用するまでは厳しいとき。これは営業戦略の立案にも携わったりするから営業企画の職種コードを立てる。「もうプレイヤーで居続けるのは…」と思っている経験者にマッチする手法である。

 

建築設計編

経験者の横スライドだと母数が少なく、イレギュラーな職種だから挙げてみる。建築設計(土木でも同じ傾向)を閲覧している層で、経験者と同じくらい多いのが施工管理経験者である。つまり「ずっと現場はきついから、スキルを活かしてオフィス寄りのポジションに転職したい」という求職者がいっぱいいるということだ。彼らは、施工管理技士はもちろん、大卒で2級建築士の資格を持っているパターンが珍しくない。施工図面を書いているからCADのスキルもある。設計といっても現場の管理にはそれなりに行くわけだから、経験者の横スライドが給与・仕事内容的に難しい場合、施工管理から引っ張る手法を検討するべきだろう。

 

まとめ

今回は、掲載中の原稿の効果改善を依頼されたとき、「そもそも導線が失敗しているから無理」というパターンが多いので書いてみた。“制作あるある”の一つである。導線といっても職種コードだけではないし、採用ニーズ・条件によって、無数の手段があるから、かなり大まかにまとめている。ただ、採用担当の方でいろんな訴求パターン(働きやすさ推し、やりがい推しとか)で原稿を掲載してみて、応募が伸びない場合は、導線に目を配って欲しい。ターゲットをきちんと意識してコピーを書いているけど、それがターゲットに届かない、届きにくい導線になっている広告は山ほどあるのだ。

結局、求人メディアがどんな仕組みでつくられているか理解して、そこに対してコピーだけでない、総合的な広告設計をしないとダメだよねってこと。「こんなコピーがヒットする」なんていうのは、導線が正解だという前提があってこそだから。求人広告の効果が出せずに悩んでいる方は、採用したい誰かは、どこにいるか考え、適切なレールをつくり、ターゲットにとっての企業の魅力を伝えていくことを検討してほしい。
 
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