コラム

組織開発(OD)とは?基礎知識と実践方法、組織力強化のためのポイント

近年、急速に変化する経営環境の中で、組織の力を最大限に引き出し、持続的な成長を実現することが企業にとって重要な課題となっています。そのための有効なアプローチの一つが「組織開発」です。本記事では組織開発の基礎知識から実践方法まで、組織力強化のためのポイントを解説します。

組織開発とは

組織開発(Organization Development:OD)とは、組織の効果性を高め、変化に適応し、自ら学習し成長していく力を育てるための計画的な介入プロセスです。その目的は、組織のパフォーマンスを向上させ、従業員のエンゲージメントを高めること。そして、組織全体の力を強化することにあります。
 
組織開発は1940年代にアメリカで生まれ、1950年代から1960年代にかけて発展しました。当初は感受性訓練などの人間関係論的アプローチが中心でしたが、その後、行動科学の知見を取り入れながら、より組織全体に焦点を当てた取り組みへと進化しています。

組織開発と人材開発の違い


組織開発と人材開発ともに企業の競争力強化を目的とした取り組みですが、その焦点は異なります。
 
組織開発は組織全体のパフォーマンス向上に焦点を当てます。組織の構造や文化、プロセスなどに働きかけ、組織の問題解決能力や変革力を高めていくことを目指します。チームビルディングや組織文化の変革、組織学習の促進などが含まれます。
 
一方、人材開発は個人の能力開発に重点を置きます。従業員一人ひとりの知識やスキル、モチベーションを高め、個人のパフォーマンスを向上させることが目的です。研修や教育、OJT、キャリア開発支援などが人材開発の主な施策となります。
 
組織開発と人材開発は密接に関連していますが、組織開発はより全体最適の視点から、人材開発は個人に焦点を当てたアプローチと言えるでしょう。

組織開発の主なアプローチ

組織開発では組織の課題や目的に応じて、さまざまなアプローチが用いられます。代表的なものは以下の通りです。

チームビルディング

チームワークを向上させ、メンバー間の協力関係を強化するためのアプローチです。チーム内のコミュニケーションを改善し、一体感を高めることで、パフォーマンスの向上を目指します。具体的な手法としてはチームの合宿研修、ワークショップ、ロールプレイングなどがあります。

リーダーシップ開発

リーダーの能力を高め、組織の方向性を示し、メンバーを動機づける力を養成するためのアプローチです。リーダーシップ研修、コーチング、メンタリング、360度評価などの手法を用いて、変革を推進できるリーダーを育成します。

コミュニケーション改善

組織内のコミュニケーションを円滑にし、情報共有や相互理解を促進するためのアプローチです。対話の場づくり、傾聴スキル研修、アサーティブネス・トレーニングなどの手法を通じて、風通しの良い組織風土を醸成します。

組織文化の変革

組織のパフォーマンスを阻害する文化的要因を特定し、望ましい文化へと変革するためのアプローチです。組織文化診断や価値観の共有、シンボリックな行動の奨励などを通じて、組織の基盤となる文化を再構築します。

組織開発の代表的な手法

組織開発では、前述のチームビルディングやリーダーシップ開発、コミュニケーション改善などの手法に加えて、以下のような手法が活用されています。

アクションラーニング

実際の職場の課題に取り組むことを通じて、問題解決力やリーダーシップを育成する手法です。少人数のチームで現実の問題に取り組み、行動と振り返りを繰り返すことで、実践的な学びを得ることができます。アクションラーニングは個人の能力開発だけでなく、組織の問題解決や変革の推進にも効果的です。

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)

組織の強みや可能性に焦点を当てた対話と探究のプロセスです。問題志向ではなくポジティブな側面に着目することで組織のエネルギーを引き出し、変革への意欲を高めることを目指します。AIでは「発見」「夢」「設計」「実行」の4つのステップを通じて、組織の望ましい未来像を共創していきます。

フューチャーサーチ

組織の多様なステークホルダーが一堂に会し、未来志向の対話を行う大規模な会議体です。過去の振り返りから始まり、現在の課題を共有し望ましい未来像を描くことで、組織の方向性を見出していきます。フューチャーサーチは組織の垣根を越えた協働を促進し、変革への共通理解とコミットメントを生み出すことに役立ちます。

オープン・スペース・テクノロジー(OST)

参加者主導の会議運営手法です。テーマを設定した上で参加者が自由に議題を提案し、関心のあるセッションに参加します。参加者の自発性と創造性を引き出すことで、新たなアイデアや協働を生み出すことを目指します。OSTは、変化の激しい環境下で、柔軟かつ機動的な組織運営を可能にする手法と言えるでしょう。
 
これらの手法は組織開発の多様なアプローチを示すものであり、組織の特性や課題に応じて、適切に選択・組み合わせることが求められます。手法の背後にある原理や考え方を理解し、組織の文脈に合わせて柔軟に適用することが、組織開発の効果を高める鍵となるでしょう。

組織開発の導入プロセスと進め方


組織開発を効果的に進めるためには、以下のようなプロセスを踏むことが重要です。

現状分析と目標設定

まずは組織の現状を多面的に分析し、強みや弱み、改善すべき点を明らかにします。その上で、到達すべき目標を明確に設定します。

支援計画と実行

目標達成に向けて、適切なサポートを計画し、実行します。その際、組織のニーズや特性に合わせて、複数の手法を組み合わせることが有効です。

効果測定とフィードバック

サポートの効果を定期的に測定し、結果をフィードバックすることで、取り組みの改善や調整を図ります。アンケートやインタビュー、業績データの分析などを活用します。

組織開発における留意点

組織開発を進める上では、トップのコミットメント、従業員の主体的な参画、外部専門家の活用、長期的な視点でのPDCAサイクルの回しなどが重要なポイントとなります。

組織開発の課題と対応策


組織開発の取り組みにおいては、以下のような課題に直面することがあります。
 
・トップの理解と支援が得られない
・従業員の抵抗や無関心
・日常業務との両立の難しさ
・効果の測定や可視化が困難
・一時的な取り組みに終わる
 
こうした課題に対応するためには、組織開発の意義や期待される効果を丁寧に説明し、トップや従業員の理解を得ることが不可欠です。また、現場の声を反映しながら、無理のない計画を立て、小さな成功体験を積み重ねていくことも重要です。外部の専門家と連携し、客観的な視点とスキルを取り入れることも有効な方法の一つと言えるでしょう。

組織開発を通じて、強いチームをつくろう


組織開発は組織の力を引き出し、強化するための有効なアプローチです。その実践には組織の特性に合わせた手法の選択、段階的なプロセスの実施、課題への適切な対応が求められます。
 
組織開発に取り組むことで、チームワークの向上、リーダーシップの強化、コミュニケーションの活性化、組織文化の変革など、さまざまな側面での組織力の強化が期待できます。一朝一夕では成果は得られませんがトップと従業員が一丸となり、外部の力も借りながら、粘り強く取り組むことが大切です。
 
組織の未来像を見据え組織開発の第一歩を踏み出すことで、組織の力は着実に高まっていくでしょう。組織開発に取り組む意義を再認識し、実践へとつなげていただければ幸いです。
 
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