コラム

SNS採用ってどうなの?ソーシャルリクルーティングのメリット・デメリット・導入のポイント

近年、企業の採用活動において、SNSが果たす役割はますます大きくなっている。特に若手ほどSNSで情報を収集する傾向にあり、SNSを活用した採用活動、いわゆるソーシャルリクルーティングに注力する企業も増えている。しかし、採用にSNSを活用するといっても、何から手をつければいいのかわからないというのが本音ではないだろうか。今回は、そんな悩みを抱える人事・採用担当者に向けてソーシャルメディアを活用した採用活動を成功させるためのヒントを紹介していく。

目次

ソーシャルリクルーティングのメリット


「そもそもSNSを活用してどんなメリットがあるのだろうか」そんな疑問を持つ採用担当者も多いかもしれない。しかし、実際に運用して見ると、意外にもその効果は大きい。まず、SNSを採用活動のツールとして活用することでどんなメリットがあるか紹介していこう。

若手にリーチしやすくなる

特にZ世代やミレニアル世代はSNSで情報収集することが多い。若手層が集まりやすいチャネルで発信することで、若い世代に自社で働く魅力をアピールすることができる。フォロワーが多ければ拡散力を活かして、求人情報を広く届けることができる。

コスト削減やミスマッチの低減につながる

SNSを使って採用活動をすることで、求人広告や人材紹介会社など、従来の採用手法に関連するコストをおさえることができる。一般的に求人広告や人材紹介を活用すると数十万円から数百万円の費用がかかるが、SNS経由で採用ができればコストは0になる。しかも、自社に興味を持った方からの応募が集まりやすくなるので、ミスマッチの低減にもつながる。

採用担当者と応募者の距離が近くなる

等身大の発信をすることで企業の価値観、カルチャーが可視化され、応募者の距離が必然的に近くなる。SNS上で気軽にDMやリプライなどの交流もできるため、応募者が企業の雰囲気や採用担当者の人柄をより知ることができ、応募や入社の意欲が高まる動機付けにもつながる。

ブランドイメージ向上

特にZ世代やミレニアル世代はSNS上でのフォロワー数に影響を受けやすい。SNS上での影響力を高めることは、企業のブランドイメージ向上にも直結する。その結果、自社の採用情報や取り組みに関する発信を効率的に広めることができる。

ソーシャルリクルーティングのデメリット

その手軽さと広範囲なリーチから多くの企業が利用しているソーシャルリクルーティングだが、もちろんデメリットも存在する。

手間と時間がかかる

ソーシャルリクルーティングを効果的に運用するためにはそれなりのリソースを割く必要がある。結果にコミットするのであれば、定期的なソーシャルメディアの更新、応募者とのコミュニケーション、適合する候補者の選別など、思いのほかやるべきことは多い。

応募者の質にバラつきが発生する

SNSによって幅広い候補者にリーチできる反面、応募者の質にバラつきが生じる可能性がある。応募フォームに必要事項を入力する必要もなく、DM機能で気軽に応募できてしまうゆえに、一般的な求人広告に比べて求めるスキルや経験を有する人材を見つけ出すのは困難になることも多い。

プライバシー問題と誤解のリスク

ソーシャルメディアを通じて求職者の情報を調査すると、プライバシー侵害や誤解を招く可能性がある。企業のSNS運用担当も自身の情報を公開するため、同様に注意が必要だ。発信の内容によっては誤情報が流布するリスクもある。

炎上により、ブランドイメージが損なわれるリスク

求職者を見下すようなコメントや自分本位の配慮を欠いた発信で炎上する人事アカウントは後を立たない。その根底にあるものは「自分たちは求職者を選ぶ立場にある」という心理だ。氷河期で就職難だった以前ならまだしも、売り手市場の昨今、求職者も企業を選べる立場にある。特に知名度の高い企業のアカウントほど発信に誠意を欠くと、炎上するリスクが高い。結果的にブランドイメージは損なわれ、採用にも悪影響をおよぼしてしまう。

SNS運用に向けて事前に準備しておくべきこと


SNSを運用することで自社の採用を有利に進めることができることはお分かりいただけただろうか。ここからはSNSを採用活動のツールとして活用することになった場合、事前に準備しておくべきことを紹介しよう。

SNS運用方針の策定

SNSで採用活動を行う際は、どのような方針で何をゴールに運用していくか明確に定める必要がある。具体的には、SNSの使い方や投稿の頻度、コンテンツの種類、定量的な目標を示すKPI、定性的な目標を示すKGI、コメントへの対応方針などを策定し、社内で共有することで効果的なSNS運用が可能になる。

ターゲット層の把握

次に、どのようなターゲット層にアプローチするかを明確にしよう。年齢、性別、職種、スキル、経験、趣味、関心事など細かくペルソナを設定し、「誰に」情報を届けるのかあらかじめ想定しておくと良い。

コンテンツの企画

ターゲットを設定したら、今後は発信の方針を定めよう。情報が受け取った人がどんな状態になって欲しいのかまで想像することはもちろん、競合と差別化された自社の魅力や特徴を訴求するコンテンツを発信のたびに企画するとなお良い。写真や動画、記事、インフォグラフィックなどを制作できるのであれば、訴求力はさらに高くなる。

投稿スケジュールの作成

投稿スケジュールを決めておくことも大切だ。どのようなタイミングで、どのようなコンテンツを投稿するかを決めておき、スケジュール通りに投稿することで、ターゲット層に訴求する効果を高めることにつながる。

コミュニケーションツールの導入

コメントへの対応や応募者情報の管理などを行うためのコミュニケーションツールの導入も検討しておく必要がある。具体的には、SNS管理ツールやCRMツールを導入することで、運用効率を向上させることができる。

適切なSNSの見極め方


採用活動を成功させるためにSNSを活用するための第一歩は、適切なSNSを見極めることだ。SNSにはさまざまな種類があり、闇雲に全てのチャネルで発信すればいいというものでもない。それぞれに特徴があるので、どのSNSがターゲットにしている層にリーチできるのかをしっかりと判断したい。ここでいくつか実際に採用活動に用いられている主なSNSとそれらの特徴的な機能について紹介しよう。

LinkedIn(リンクトイン)

ビジネス向けのプロフィール

ビジネス向けのSNSであり、求職者のプロフィールには職歴やスキルなどの情報を詳細に記載することができる。そのため、採用担当者は求職者のスキルや経験、業界知識などをより詳しく知ることができる。

求人広告やブログの掲載

企業が求人広告を掲載することができる。この求人広告は、職種や業界、地域などに合わせてターゲティングができるため、求人に関心のある人に積極的にアプローチすることができる。またブログや記事を投稿することができるため、採用活動では、自社の取り組みや社員の声などを発信するコンテンツマーケティングもできる。

リクルーター機能

求人に関心がある求職者や、求人にマッチするスキルや経験を持つ人を探すことができる「リクルーター」機能が活用できる。採用担当者はこの機能を利用することで、自社に興味のある人を効率的に探すことができる。

Facebook(フェイスブック)

大規模なユーザー数

世界中に約29億人のユーザーがいる大規模なSNSであり、その中には求職者も多数含まれている。そのため、企業が求人情報を投稿することで、多くの人にアプローチすることができる。

広告ターゲティング機能

広告ターゲティング機能があり、年齢、性別、地域、職業などの情報を利用して、求職者を狙ったターゲティングができる。また、Facebook Pixelを利用することで、企業のWebサイトを訪れた人に対して、求人広告を配信することも可能だ。

グループ機能の活用

グループ機能を使い、特定のテーマに関心を持つ人が集まることができる。採用活動では、求職者が集まるグループに参加し、求人情報をシェアすることで、多くの人にアプローチする。

Twitter(ツイッター)

リアルタイム性

リアルタイムな情報発信が可能であり、企業が求人情報をツイートすることで、求職者に早くアプローチすることができる。また、求職者が質問や応募に関するメッセージを送信することもでき、迅速な対応が可能だ。

ハッシュタグ機能

ハッシュタグを活用することで、特定のキーワードやテーマに関心を持つ人にアプローチすることができる。採用活動では、求人情報に適したハッシュタグを付けることで、より多くの人にアプローチしていく。

拡散力やフォロワーの参加促進

企業が求人情報をツイートした際、フォロワーにリツイートやいいねを促すことができる。フォロワーが求人情報をシェアしたり、求職者が企業のツイートをリツイートすることでも、より多くの人にアプローチすることができる。

Wantedly(ウォンテッドリー)

カルチャーマッチング

企業のカルチャーに合わせた求人情報を掲載することができる。また、求職者も自分の志向に合った企業を検索し、興味のある企業にアプローチすることができる。これにより、企業と求職者とのカルチャーマッチングが促進され、採用の成功率が高くなる。

プロフィール機能

企業だけでなく求職者もプロフィールを作成することが可能。求職者のプロフィールには、学歴や職務経歴だけでなく、趣味や興味関心などの個人情報も掲載できる。企業は求職者のプロフィールを見て、自社のカルチャーに合いそうな人材を採用することができる。

コミュニケーション機能

求職者と企業のコミュニケーションがスムーズに行える。求職者は求人情報にコメントを残すことができ、企業はそのコメントに返信が可能。また、求職者から直接メッセージを受け取ることもできる。これにより、企業と求職者とのコミュニケーションが円滑になり、採用の成功率が高くなる。

note(ノート)

ブログ機能

企業がブログを書くことができる。自社の魅力や採用情報をブログに掲載することで、求職者の興味を引くことにつながる。また、ブログへのコメント機能もあるので、企業と求職者間でコミュニケーションを図ることができる。

タグ検索機能

タグ検索機能があるので、求職者も企業も気になるターゲットに向けたタグをブログにつけることで、見つけてもらいやすくなる。その結果、精度の高いマッチングが実現することもある。

コミュニティ機能

企業がコミュニティを作成することが可能。コミュニティには、求職者が参加することができ、企業と求職者との交流がスムーズに行える。また、コミュニティには、求職者同士が交流することもでき、採用につながる可能性を高められる。

Instagram(インスタグラム)

ビジュアルコンテンツの活用

写真や動画を中心としたSNSであり、ビジュアルコンテンツを活用して自社の魅力や社員の姿を写真や動画で紹介することで、求職者の興味を惹くことができる。

インフルエンサーとのコラボレーション

インフルエンサーとのコラボレーションも可能。自社の魅力や採用情報をインフルエンサーが紹介することで、転職ニーズをもつ潜在層にもアプローチすることができる。

ストーリーズ機能の活用

ストーリーズ機能を使って、自社の採用情報を短時間でアピールすることができる。また、ストーリーズ機能には、質問機能や投票機能もあり、求職者とのスムーズなコミュニケーションにもつながる。

TikTok(ティックトック)

クリエイティブなコンテンツを作成できる

TikTokは、短い動画コンテンツを中心にしたSNSのため、独自のクリエイティブなコンテンツを作成することができる。

ターゲティング広告の活用

ターゲティング広告機能もあり、求職者のターゲットに合わせたアプローチが可能。例えば、特定の地域や年齢層に対して、採用情報を配信することができる。

ライブ配信の活用

ライブ配信を通じて、自社の魅力や採用情報を求職者にアピールすることができる。また、ライブ配信には、コメント機能もあり、求職者との交流の場を設けることにもつながる。

効果的なリクルーティングにつながるテクニック


採用活動に適したSNSを特定したら、実際に運用していこう。ここからはより高い効果を生み出すためにテクニックを紹介したいと思う。

プロフィールを定期的に更新し、アクティブに保つ

プロフィールも含めて運用するアカウントは常にアクティブな状態に保っておかなければならない。アクティブな状態を保つことは、SNS上で人々とつながりを持ち、コミュニケーションを図るために必要だからだ。投稿が古くなっていたり、プロフィールがアップデートされていないと、他者がつながりを持つことを躊躇する恐れがある。より多くの人に閲覧される機会を増やし、SNS上での存在感を高めるためにも、プロフィールの更新は適宜行った方が良いだろう。また、SNS上でのプロフィールをアップデートすることで、自己表現やアイデンティティの表出に役立つこともある。自分や会社のことを知ってもらい、価値観を共有する人々と出会うきっかけになるメリットにもつながる。

定期的に自社企画のコンテンツを提供し、潜在的な候補者にリーチ

会社のビジネスやブランドに関連するコンテンツや自社企画のコンテンツを共有することで、フォロワーや業界人に自社について知ってもらうことにつながる。その際は、採用情報の発信だけではなく、企業の魅力や強みをより伝えられるコンテンツを提供することが大切だ。SNSをみたターゲットにとって応募の動機形成にもつながる可能性があるため、発信する内容についてはよく吟味しよう。

業界に関する会話をモニター

業界に関する会話をモニタリングすることで、競合他社が採用についてどのような戦略を取っているのか、どのようなマーケティング活動をしているのかをいち早く把握することができる。これにより、自社の戦略や採用活動を改善するためのヒントを得ることにもつながる。また、求職者が業界に対してどんなイメージを抱いているのかも把握できる。採用ターゲットとなる層がどんな思いや不安を抱え、何に関心をもっているのかを的確に知ることで、より訴求力のある自社アピールにもつながるだろう。

ガイドラインを作成し、炎上リスクを回避する

SNSの運用には炎上リスクが伴う。「炎上マーケティング」という手法もあるが、それでアクセスを稼いだところで企業イメージは大きく損なわれてしまうので、デメリットの方が大きい。特に知名度が高い企業ほど、配慮を欠いた発信で燃える可能性が高まるので、あらかじめガイドラインを作成し炎上リスクを最小限におさえたい。性別、人種、年齢、職業、家族構成、信条、宗教、哲学…さまざまな価値観や立場のユーザーがSNSを利用していることを忘れず、企業の顔としてモラルのある発信をしてほしい。

求人の問い合わせに迅速に対応

求人の問い合わせに迅速に対応することで、応募者に対する企業の誠実さや迅速な対応力を印象付けることができる。このような印象が残ることで、他の競合他社よりも優れた印象を与え、採用の優先度を高めることにもつながる。また、迅速な対応は、求職者の興味を維持するためにも必要なことだ。求人情報は多数の企業から提供されており、迅速に対応しない場合、求職者が他社に転職を決めてしまうケースもある。求人の問い合わせに迅速に対応することは、競合他社との差別化や求職者からの興味維持、人材の流出を防ぐなど、さまざまなメリットがあるため、採用活動において重要なポイントの1つとして認識し、取り組むことをオススメする。

アクセス解析ツールを使用してデータを分析


SNS運用で得られたデータの分析は非常に重要となる。各SNSには解析ツールも無料で使用できるので、どのようなコンテンツが効果的か、どのターゲット層に訴求するか、どの時間帯に投稿すると反応があるかなど、数字から読み取れるデータ分析にも挑戦してみよう。具体的には次のような情報を収集することができる。

フォロワーの属性や興味

SNS上で企業をフォローしているユーザーの属性や興味を分析することで、自社のターゲット層を把握することができる。

投稿の反応

投稿の反応やエンゲージメント率を分析することで、どのようなコンテンツがフォロワーに受け入れられているかを把握することができる。

リーチと影響力

SNS上での影響力やリーチを分析することで、自社の知名度やフォロワーの拡大に寄与する投稿を特定することができる。

キャンペーンの効果

SNS上で行うキャンペーンの効果を分析することで、どのようなキャンペーンが効果的であるかを把握することができる。
 
これらの情報を収集することで、SNS運用においてより効果的な戦略を策定につなげることができる。また、得られたデータを元に、SNS運用の改善点を見つけ、コンテンツの最適化や投稿のタイミングの調整など、効果的な施策を講じることも可能になる。

SNSを活用して採用を最適化しよう


紹介してきたようにSNSを有効に活用すれば、自社の採用活動をコストをかけずに最適化することができる。「SNSを使った採用活動に挑戦したいけど、何から手をつけていいのかわからない」そんな経営者や人事担当者の方は、ぜひ本記事で紹介したノウハウを参考に採用活動を加速してほしい。
 
【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。
 
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