コラム

ワークアズライフとはなにか?従業員のエンゲージメントを向上させる新たな視点と戦略

すっかり社会に定着した「ワークライフバランス」という考え方。求人を探せば、今や多くの求人原稿に「ワークライフバランスを大切にできる職場」と殺し文句のように書かれているのを見かける。

かくいうわたし自身もワークライフバランス重視派の人間だ。退勤後には映画をみたり、読書をしたり、ゲームをしたり…。仕事のことを考えず、趣味に没頭する時間を確保することは、わたしにとって欠かせないことだと思っている。しかしながら最近、「プライベート優先!」と声高に主張する人をみると、違和感を感じることが多くなってきた。

違和感を感じるようになったきっかけは、わたしのパートナーが仕事と生活を一体化させる働き方を実現しているから。彼はゲームのコンセプトアーティストの仕事をしており、日々ゲームづくりに熱中をしている。プライベートの時間でも、好みではないジャンルも含めて幅広くプレイ。プレイヤー視点で何がハマる要素で何がつまらないのか。クリエイター視点でどんな意図で設計されているか、どんな技術を用いているかなど。自分が楽しみつつ、得た経験や知識を仕事に活かしている。

このような働き方を「ワークアズライフ」という。彼のようにワークアズライフを実現できれば、従業員の仕事に対するモチベーションも上がり、楽しくスキルを身につけられるのではないか。そこで、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上に悩む経営者や人事担当者に向けて、働き方の新しい視点である「ワークアズライフ」について解説していく。

ワークアズライフとは?実現するためのポイント

従来のライフワークバランスを重視する考え方は、仕事とプライベートの境界を明確に分け、時間的・精神的なバランスをとることを良しとされてきた。
 

しかしながら、上述した「ワークアズライフ」という概念は、仕事と人生を分けるのではなく、仕事自体が人生の一部であるという考え方を指す。つまり、仕事はただの生計を立てる手段ではなく、自己表現、個人的成長、満足感などの源泉となるべきだという考え方だ。そんな働き方を実現するためにはどうすればいいのか。ポイントを紹介しよう。
 

情熱


自分がやりたいこと、好きなこと、興味を持つことを見つけ、それを仕事に結びつけること。情熱があると、仕事は単なる義務ではなくなり、自己表現と成長の一部とすることができる。
 

バランス


仕事が人生の全てになりすぎると、ストレスやバーンアウトのリスクが高まってしまう。そのため、仕事と他の生活の側面(家族、健康、趣味など)とのバランスをとることは欠かせない。
 

持続可能性


長期的に見て、健康的な働き方、適切な報酬、成長と進歩の機会があるかどうか。自分の仕事が持続可能であるかどうかも必要な要素となる。
 

自己啓発


常に新しいスキルを学び、自己を成長させる意欲をもつことも大切だ。これにより、自分のキャリアを自分自身でコントロールし、新たなチャンスをつかむことができる。
 

目的意識


仕事が自分の価値観や目的につながっていると実感をえることも重要だ。そうすることで、仕事に対する満足感と意義を感じることができるようになる。
 

これらの要素は、仕事が人生の一部として機能し、人々がその仕事を通じて成長するようになるために重要なポイントとなる。自分自身のニーズと目標を理解し、それに基づいて仕事と人生を整理していくことが、ワークアズライフの実現へとつながることになる。


ワークアズライフが注目される背景

なぜ今、ワークアズライフが注目されているのか。それには複数の社会的な変化があげられる。
 

テクノロジーの進化


インターネットとデジタル技術の普及、そしてコロナ禍によるリモートワークの推進により、以前よりも場所や時間にとらわれない柔軟な働き方へと変化する企業が増えている。これにより、個々の生活スタイルに合わせて仕事がしやすくなり、仕事とプライベートの境界が曖昧になっている。
 

新世代の価値観


経済的な報酬だけでなく、自己実現や社会貢献といった要素を重視するミレニアル世代やZ世代の誕生も影響を与えている。仕事は生計を立てるだけでなく、自己の価値観を表現する手段として捉えているため、仕事とプライベートを隔てずに調和できる企業や仕事を重宝する傾向が強まっている。
 

社会の複雑化


これまでは1つの職業を追求することが良しとされてきたが、今では複数の職業を経験することが一般的となる。その結果、仕事は単なる「職業」から「ライフスタイル」の一部へとシフトしてきている。
 

ワークライフバランスからワークライフインテグレーションへ


仕事とプライベートをきっちりと分けるという考え方から、両者をうまく融合させるという考え方へと変わりつつある。これは、仕事とプライベートが一体となる「ワークアズライフ」の考え方とも一致している。
 

これらの変化により、ワークアズライフは多くの人々にとって魅力的な選択肢となり、その結果、ますます注目されるようになっている。


ワークアズライフを体現する従業員がもたらす効果


ワークアズライフを体現する従業員は組織へのエンゲージメントも高い。結果的に、組織的には以下のような効果が期待できる。
 

生産性の向上


従業員が自分の仕事に情熱を持つと、その仕事への取り組みが増え、結果として生産性の向上につながることとなる。また、仕事が自分の目的意識や価値観につながっていると感じるとで、従業員はよりモチベーションを高めることができる。
 

自走型の組織づくり


自分の情熱や価値観を仕事に反映させることで、従業員は自己効力感を得ることができる。また、職場での学習や成長の機会が提供されることで、自己の可能性を追求し、新たなスキルや能力を発見する喜びを得ることにもつながる。
 

従業員のストレス軽減


仕事の時間や場所に柔軟性を持つことが可能になると、家庭や個人的な事情とのバランスを取りやすくなり、従業員のストレスが減少する。また、自分のライフスタイルに合わせて働くことができるため、過度の疲労やバーンアウトを防ぐことができる。これにより、従業員はより健康的で、生産性の高い働き方を実現することができる。
 

帰属意識の向上


仕事が人生の一部となると、従業員にとって職場はただの職場ではなく、コミュニティや家族の一部となる。そうした所属感を感じることで、従業員は同僚との関係を単なる業務上の関係ではなく、人間関係として深めるようになる。その結果、従業員が組織内で強いチームワークと協調性を促し、生産性と職場の満足度を向上させる効果を得ることができる。
 

このようにワークアズライフの考え方は、従業員のエンゲージメント向上に影響を与えることができる。


ワークアズライフを実現するための戦略

「ワークアズライフ」を実現するための具体的な手法や戦略はなにか。以下に具体的な提案をいくつか挙げてみる。
 

柔軟な働き方の提供


従業員が自身のライフスタイルに合わせて働けるような柔軟性を提供することは企業として欠かせない。例えば、リモートワーク、フレキシブルな勤務時間、ジョブシェアリングなどの制度を整える必要がある。
 

自己成長とスキル開発の機会の提供


従業員が自己成長を達成できるような環境を提供することも重要だ。例えば、外部の研修プログラムへの参加やメンターシップ、キャリア開発の機会などを設けることが求められる。
 

意味のある仕事の提供


従業員が自分の仕事に意味や価値を見つけられるようにサポートすることも必要だ。そのためには、従業員が自分のスキルや興味を活用できるプロジェクトへの参加や社会貢献活動への参加の機会を提供することが効果的となる。
 

健康と福利厚生の重視


健康的なライフスタイルをサポートする福利厚生を整えておくことも、ワークアズライフを実現するために重要となる。例えば、フィットネスクラブの会員費補助やストレスマネジメントのプログラム、健康食の提供などがあると良いだろう。
 

コミュニティの形成と所属感の強化


職場でのコミュニティ形成と所属感の強化することは、従業員が仕事を生活の一部と捉えるのを助ける。そのようなコミュニティ形成と所属勘の強化するためには、チームビルディングの活動や、開放的で包括的な職場文化の形成などが必要とされる。


ワークアズライフを推進する上での課題と解決策


さいごにワークアズライフを推進する上での課題について紹介し、それらの解決策についても提案していく。
 

バランスの取り方


仕事と生活の境界が曖昧になると、働きすぎによるバーンアウトのリスクが高まる可能性がある。この問題を解決するためには、働き方のガイドラインを明確にし、休息とリカバリーの時間を確保するように指導することが重要だ。
 

個々のニーズへの対応


従業員一人ひとりのライフスタイル、価値観、ニーズは異なるため、一律にアプローチすることは効果的ではない場合がある。個々のニーズに対応するためには、従業員の要望を定期的にヒアリングし、その内容に基づいてポリシーやプログラムを調整していくことが大切だ。
 

組織文化の変革


伝統的な組織文化や働き方をいきなり改革することは困難な場合がある。そうした職場内でワークアズライフを新たに推進するためには、リーダーシップがある従業員を中心に積極的に新しい働き方の模範を示し、その他の従業員にも新しい働き方を奨励すると良いだろう。
 

パフォーマンス評価


フレキシブルな働き方やリモートワークが増えると、パフォーマンスの評価が難しくなることもある。そうした評価に関する問題を解決するためには、パフォーマンスの評価基準を明確にし、結果に基づく評価体制を築いていくことが重要となる。
 

これらの課題は、具体的な戦略や手法を用いて克服することが可能だ。そのためには、組織全体のコミットメントと持続的な努力が必要となる。


ワークアズライフを実現している事例


ワークアズライフ”の考え方を実現している企業の事例としては、以下のようなものがあげられる。
 

Google


Googleは、従業員の健康や幸福を高めるためのさまざまなプログラムや施設を提供している。例えば、オンサイトのフィットネスセンターやカフェテリア、無料の健康診断やカウンセリング、さらには子育て支援や教育支援などだ。また、創造性やイノベーションを刺激するために、20%の時間を自由に使って新しいプロジェクトに取り組むことを奨励する「20%ルール」を導入している。
 

Netflix


Netflixは「自由と責任」を企業文化の核として位置づけており、従業員に対しては大きな自由を与える一方で、高いパフォーマンスを期待する体制を築いている。無制限の有給休暇やフレキシブルな勤務時間を提供することで、従業員が自分の生活に最適な働き方を見つけることを支援している。
 

Slack


Slackは従業員のニーズに応じたフレキシブルな働き方を推進している。リモートワークの推進、フレキシブルな勤務時間、無制限の有給休暇など、従業員が仕事とプライベート生活のバランスを取るための制度を導入することで、従業員のエンゲージメント向上につなげている。
 

これらの企業はワークアズライフの考え方を具現化し、生産性を向上させるためのさまざまな戦略と手法を用いることで、従業員のエンゲージメントと満足度の向上に成功している。


ワークアズライフでストレスフリーな人生の実現へ


これまで述べてきたように、ワークアズライフは仕事を生活の一部と捉え、働き方をより柔軟で充実したものにするための新たなアプローチだ。人生において最も多くの時間を有する仕事だからこそ、単なる収入源や生計を立てる手段としてとらえるのではなく、自己のアイデンティティや価値観の形成、そして自己実現や成長につなげていく。そうした働き方があることを知り、少しでも実現しようと行動することが、ストレスフリーな人生の実現につながってくるはずだ。
 

【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。
 

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