コラム

人材開発に役立つライフキャリアレインボーとは?メリット・デメリットとシートの書き方について解説

現代のビジネス環境は急速に変化するなか、企業は社員のキャリアとライフバランスを重視した新たなアプローチが求められています。そこで注目されているのが「ライフキャリアレインボー」です。本記事では、ライフキャリアレインボーが企業にどのように役立つのか、具体的なメリットや導入方法について詳しく解説します。

ライフキャリアレインボーとは?

ドナルド・スーパーが提唱したキャリア発達理論で、人生の異なる時期における個々の役割が重なり合い、虹のように美しい調和をもつべきだとする考え方を示しています。スーパーは、キャリアを単なる職業選択や仕事の積み重ねだけでなく、家庭生活、学業、趣味、地域社会への参加など、多くの側面からなるものとして捉えました。

ライフキャリアレインボーが注目される背景


ライフキャリアレインボーが注目される理由にはなにがあげられるのでしょうか。

多様なキャリアパスの必要性

現在の社会では、「一つの会社で一生働く」という従来のキャリアパスは崩壊しつつあります。グローバル化やテクノロジーの進化に伴い、職業や働き方が多様化しているためです。その結果、個々人が自身のライフステージや価値観に合わせたキャリアパスを選択しやすい環境になりつつあります。ライフキャリアレインボーは、多様なキャリアパスを視覚的に表現するための有効な手段なのです。

ワークライフバランスの重要性

ワークライフバランスがますます重要視される現代において、仕事だけでなく、家庭や趣味、自己成長など、生活のさまざまな側面をバランスよく考えることが求められています。ライフキャリアレインボーは、これらの多様な役割を一つの図にまとめ、それぞれの要素のバランスをわかりやすく示すためのツールとして注目されています。

技術の進化によるキャリアの変化

テクノロジーの進歩により、リモートワークの普及やフリーランスの増加など新しい職業や働き方が次々と登場しています。こうした新しいキャリアの形態に適応するためには、それぞれのライフステージや役割を柔軟に調整することが必要です。柔軟な調整を効果的にサポートできるとして、ライフキャリアレインボーが期待されているのです。

ライフキャリアレインボーの構成要素


ライフキャリアレインボーは、主に以下2つの要素で構成されています。

5つのキャリアライフステージ

・成長(0~14歳)
子供から青年期にかけての成長と発展の段階。価値観や自己概念の形成が進む。
 
・探索(15~24歳)
青年期から成人初期にかけて、キャリアの選択や試行錯誤を行う段階。
 
・確立(25~44歳)
成人期におけるキャリアの確立と成長の段階。職業的な安定を目指す。
 
・維持(45~64歳)
中年期におけるキャリアの維持と発展の段階。成果の保持と自己成長を図る。
 
・解放(65歳以上)
高齢期におけるキャリアの減速と引退の段階。次の世代への移行や新たな役割の模索が行われる。

7つの役割(ライフロール)

・子供(Child):両親や家族との関係性を築く役割。
・学生(Student):学校や大学で学び、知識やスキルを習得する役割。
・余暇人(Leisureite):趣味やレジャー活動を楽しむ役割。
・労働者(Worker):職場で働き、職務を遂行する役割。
・家庭人(Homemaker):家庭を管理し、家族をサポートする役割。
・市民(Citizen):コミュニティや社会に貢献する役割。
・退職者(Pensioner):退職後の生活を送り、自由な時間を過ごす役割。

ライフキャリアレインボーを導入するメリット


ライフキャリアレインボーを導入することで、企業にはどんなメリットがあるのでしょうか。

社員のモチベーション向上

社員が自身のキャリアとプライベートを両立しやすくなると、仕事に対するモチベーションが高まります。その結果、各社員がより積極的に働くようになり、企業全体の生産性向上につながることが期待できるでしょう。

離職率の低下

キャリアと生活のバランスをとれる環境は、社員の満足度を向上させます。満足度が向上することで、ストレスや過労による離職が減少するでしょう。その結果、企業としては人材の定着が進み、採用や育成のコスト削減が期待できます。長期的には、優れた人材を確保し続けることができる点も大きなメリットです。

多様な人材の活用

ライフキャリアレインボーの導入は、多様な働き方を認めることで、多様な背景をもつ人材の採用・活用につながります。育児や介護をしながら働く人、キャリアチェンジを考える人など、さまざまな生活スタイルをもつ人々が働きやすい環境を整えることで、組織の幅を広げることが可能です。

企業イメージの向上

働きやすい環境を提供する企業は、外部から見ても魅力的に映ります。ライフキャリアレインボーを取り入れることで、社員のライフスタイルを尊重する企業としてのイメージを高められるでしょう。求職者からの注目も集めやすくなり、高いブランド価値を築き上げることができます。

パフォーマンスの最適化

適切なキャリア支援を通じて、社員が自身の強みや興味を最大限に活かせる職務を選ぶことができるようになります。結果的に、個々のパフォーマンスが最適化され、チーム全体としてのシナジー効果が生まれやすくなることで、企業全体の競争力を強化することが可能です。

ライフキャリアレインボーを導入するデメリット


一方でいくつかデメリットもあります。具体的にどんなデメリットが発生するのか、見ていきましょう。

コストと時間がかかる

ライフキャリアレインボーを導入するためには、企業内でのトレーニングやシステム構築など、初期導入コストが必要になります。専門的な知識をもったコンサルタントの雇用や、社員全体への啓発プログラムの実施が求められるため、そのための資金と時間が負担となるでしょう。中小企業の場合、特にその負担が大きくなる点が懸念されます。

実行と管理の複雑さ

ライフキャリアレインボーは多面的な視点を持つフレームワークであり、実施と管理には高度なスキルと綿密な計画が求められます。それぞれの社員に適したキャリアプランを設計し、状況に応じて柔軟に対応するためには、管理部門の負担が増大することが避けられません。また、社員のライフステージやキャリアステージを正確に把握し、タイムリーに支援する体制を整えることは容易ではないでしょう。

効果の評価が難しい

ライフキャリアレインボーの導入効果を定量的に評価することは難しいです。社員のモチベーション向上や離職率の低減などの効果が期待できますが、それらの効果を具体的な数値で示すことは困難でしょう。企業としては、導入のメリットを社内外に示すための明確な評価基準の策定が必要ですが、構築自体が大きな課題となる可能性があります。

社員の反発

社員全員がライフキャリアレインボーの導入を歓迎するとは限りません。特に、既存の働き方に満足している社員や、新しいシステムや方針に対する抵抗感をもつ社員がいる場合、導入に対する反発が起こる可能性があります。

長期的な視点が必要

ライフキャリアレインボーの導入は短期的な成果を期待するものではなく、長期的な視点で取り組む必要があります。ライフキャリアレインボーは持続可能なキャリアとライフバランスの実現を目指しているため、真価を発揮するまでには時間が必要です。導入から成果が見えるまでの期間に、企業が継続的に支援し続けられるかが問われます。

ワークシートの書き方


ライフキャリアレインボーのワークシートは、個人が自身のキャリアとライフステージを整理し、バランスのとれた人生設計を行うためのツールです。以下、ワークシートの記入方法について紹介します。

ワークシートを準備しよう

まず、ライフキャリアレインボー用のワークシートを用意しましょう。現在の役割や目標とする役割を記入するためのシンプルな表形式のシートでかまいません。インターネット上で検索すれば、無料でダウンロードできるテンプレートもたくさん見つかりますので、会社のニーズに合ったものを選んでください。

役割を可視化させる

ワークシートの各欄に、社員それぞれが現時点での役割を記入していきます。例えば、現在の職業や家族構成、余暇の過ごし方などです。それぞれの役割について、現在の充実度や今後の希望を書き込むことで、どの役割にどれだけの時間やエネルギーを注いでいるのかを明確にできます。

バランスを見つめ直させる

ワークシートに記入した内容をもとに、ライフキャリアのバランスをチェックさせます。どの役割に重きを置いているか、どの役割が不足しているかを見極めさせるようにしましょう。例えば、仕事に集中しすぎて家庭生活がおろそかになっていないか、余暇を楽しむ時間が確保できているかなどのチェックが必要です。

今後のアクションプランを設定

バランスのとれたライフキャリアを実現するためのアクションプランを設定させます。具体的には、どの役割で何を改善したいのか、どのような目標を設定するのかを書き込ませるようにしましょう。そうすることで、日常生活での具体的な行動計画が明確になり、より充実した人生を送るための道筋が見えてきます。

導入する際のポイント


ライフキャリアレインボーを企業で導入する際、重要なポイントにはなにがあげられるのでしょうか。

経営陣の理解を得る

ライフキャリアレインボーを導入するには、経営陣の理解と協力が不可欠です。経営陣がライフキャリアレインボーについて理解し支持することで、企業全体に文化を根付かせることができます。不安や疑問をもつ経営陣には、ライフキャリアレインボーが企業にとってどれだけ有益であるか、具体的なメリットを説明するようにしましょう。

社員の教育を行う

ライフキャリアレインボーを効果的に活用するためには、社員一人ひとりが概念を理解している必要があります。社員教育プログラムを設け、全社員に対してライフキャリアレインボーの基本的な考え方や具体的な活用方法を学ぶ機会を提供しましょう。その際には、ワークショップやセミナーを活用し、実践的に学べる環境を整えることが大切です。

個別に相談できる環境の整備

ライフキャリアレインボーを活用する上で、社員それぞれが自身のキャリアについて深く考えられる時間や場所が必要です。個別相談できる環境を整え、社員が気軽にキャリアについて専門家と話し合える機会を提供しましょう。キャリアカウンセリングの制度や、メンタリングプログラムを導入することで、社員のキャリア形成をサポートする取り組みを進められます。

柔軟な勤務制度の導入

ライフキャリアレインボーを実現するためには、社員が多様なライフステージに対応できる柔軟な勤務制度があることも求められます。例えば、フレックスタイム制度やリモートワークの導入、育児休暇や介護休暇の取得を推奨するなど、働き方の選択肢を広げることが重要です。

評価基準やキャリアパスへの反映

ライフキャリアレインボーの考え方を評価基準に反映させることも必要です。人事制度や評価基準にライフキャリアレインボーの視点を取り入れることで、社員の多様なキャリアパスが尊重され、より公平な評価が可能になるでしょう。結果的に、社員のエンゲージメントを高めるだけでなく、企業全体の成長にも貢献するはずです。

健全で働きやすい職場環境を実現しよう


ライフキャリアレインボーには、社員一人ひとりのキャリアとライフバランスを視覚化し、仕事だけでなく家庭や趣味、自己成長を含めた全体的な満足度を向上させる力があります。導入によって社員のモチベーションと生産性が向上し、より健全で働きやすい職場環境を築けることでしょう。社員の幸福と企業の成長を両立させるために、ぜひライフキャリアレインボーの導入を検討してください。
 
【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。X(Twitter)
 
\オウンドメディア制作、採用広報に興味をお持ちの方はこちらをクリック!/