中小企業こそ気にかけよう!離職率を下げるメンタルヘルスケアのポイント
日本の中小企業は、約7割近くが「人手不足」と感じている(出典:日本商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」)ほど、深刻な人材不足に陥っています。そのような状況の中、重要なのはメンタルヘルスケアの行き届いた職場にすること。なぜなら、従業員が心身ともに健やかに働くことができれば従業員の離職率も下がり、求人募集する際もメンタルヘルスケアの手厚い企業として注目を集めることができるからです。
職場でのメンタルヘルスケアを改善することができれば、人材不足を解決できるだけでなく、従業員ひとりひとりも、会社全体も成長することができます。そこで、この記事では実際に中小企業で働いていた筆者の経験を踏まえ、風通しのよい職場を作るポイントについて解説していきます。中小企業の経営者や人事担当者、マネジメント担当者はもちろん、従業員の方にもぜひ参考にして頂ければと思います!
主な離職理由は職場の人間関係やマネジメント不足
厚生労働省の調べによると、自己都合による離職理由として「職場の人間関係がうまくいかなかったから」「能力・実績が正当に評価されないから」「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」といったものが上位にあることがわかります。これらはいずれも、従業員へのメンタルヘルスケアや、キャリアパスを含めたマネジメントを怠っていることから起きる問題です。
特に昨今の若い世代は過酷な労働をしてでも多くの給与を得たいという志向よりも、精神的に満たされた状態で、無理なく働きたいという志向が強い傾向にあります。そういった人たちにとって、職場の人間関係や労働条件は特に重要視する面でしょう。また、自分を適切にマネジメントしてくれる、信頼できる上司がいるかどうかも大きなポイントとなります。
実は筆者も前職は中小規模の企業に勤めていました。職場の人間関係は悪くなかったものの、従業員へのメンタルヘルスケアは不十分で、評価制度も曖昧。当然のことながら離職率は高く、私自身もマネジメント体制が硬直してしまっていることに蟠りを覚え、退職を決断しました。では、このような問題はどのように解決すればよいのでしょうか?
職場のメンタルヘルスを健全に保つ方法
これまで解説してきたような問題を解決するには、職場のメンタルヘルスを健全に保つ事が重要です。ここでは、そのためのポイントと、職場でのメンタルヘルスの向上に役立つサービスを紹介します。
年に一度のストレスチェックで済ませない
2015年12月から、従業員数50名以上の事業所は、年に一度の従業員へのストレスチェックが義務付けられました。これによって、企業は従業員全体のメンタルヘルスを確認することができるようになりました。
しかし、このストレスチェックはあくまで匿名性のもの。だからこそ本音で回答することができる一方、企業は個々の従業員がどのような問題や不満を考えているか理解することができません。また、従業員にとっても、結果が送られてきても、その後の具体的なアクションを起こすための導線ははっきりと示されていないことが多く、結局問題をそのままにしてしまいがちです。
筆者自身、ストレスチェックの結果は毎年あまり良い内容ではなかったものの見過ごしてしまいがちで、実際に心身の状態に異常をきたして休職するまで対処することができませんでした。こういった問題を避けるためには、年に一度の匿名性のストレスチェックのみで済ませるのではなく、月次、週次などで少ない設問数に回答してもらい、リアルタイムで個々の従業員のメンタル状態をチェックする、パルスサーベイを実施することが有効でしょう。
パルスサーベイ実施サービスの一例としては、「ミキワメウェルビーイング」があります。従業員に月に一度、短い設問に答えてもらうことで、それらのデータを元に従業員の性格や志向に合わせて、各従業員に必要なサポートや対策のアドバイスを導き出してくれます。
1on1ミーティングを適切に実施する
1on1ミーティングとは、月次から週次程度の頻度で、上司と部下が1対1で対話する機会を持つことです。部下を評価するための面談とは異なり、部下の心身のコンディションに関する相談や、業務の進捗度合いの確認、目標の相互理解などを目的とした対話の時間です。
上記のパルスサーベイと併せて実施することで、部下のメンタルヘルスの状況を理解したうえで、どのような声掛けや支援が必要か、どのように対話することで部下の心身の状況を向上させ、同じ目標を持てるかどうか理解しやすくなるでしょう。
1on1ミーティングの実施を支援するサービスの一例としては、「1on1クラウドKakeai」があります。部下側から話したいテーマや上司に期待する対応などをリクエストすることができ、上司側にもトークや対応のヒントなどを提案してくれます。そして、それらの蓄積したデータをもとに、AIが課題の改善方法を検討してくれます。
本当の意味で「風通しのよい職場」を目指す
ここまで、職場のメンタルヘルスを向上させる方法を紹介しました。しかし、上記のような方法やサービスを取り入れたからといって、それだけで従業員の精神的な満足度が上がる訳ではありません。むしろ、本当の意味での「風通しのよい職場」を理解していないと、パルスサーベイや1on1ミーティングは従業員のストレスにもなりかねません。ここでは、筆者の考える、風通しのよい職場の本質を解説したいと思います。
「仲がよい」=「風通しがよい」ではない
職場の人間関係は従業員のメンタルヘルスにとって重要な要素です。では、みんな仲がよければ、風通しのよい職場なのでしょうか?そのために休暇を使ってレクリエーションの機会を設けて交流の機会を増やすことが重要なのでしょうか?筆者はそうは思いません。
職場は友達を作る場ではなく、個々が仕事をし、活躍をして利益を上げる場です。重要なのは、自分たちの部署やチームの仕事の仕組みを徹底的に共通理解し、その仕組みの中で、自分はどのように働くと効果を最大限に発揮できるか理解することです。そうすれば、自然とチームワークも生まれます。そのような理解を深めるための対話をまずは心がけましょう。
中途半端に私情ばかりでつながってしまうと、建設的な議論ができなかったり、人間関係が固定化して新しい人が馴染みづらくなってしまう可能性もあります。もちろん、仲がよいことに越したことはありませんが、風通しのよさとは、ビジネスにおいて共通の認識と目的を持って、意見を言い合い、互いをフォローし合えることだと筆者は考えています。
柔軟なマネジメント体制を実現する
上記のようにビジネスにおける共通の認識と目的を持つことができれば、上司と部下の対話もそれに沿った円滑なものとなるでしょう。このような状態になってはじめて、1on1ミーティングも、ただの通り一遍な状況確認ではなく、精神的な満足や向上心の生まれる機会となると思います。
その際、たとえば部下から「このチームのやり方では働きづらい」「自分は別の部署のほうが活躍できるのではないか」という意見があれば、積極的にその意見を検討しましょう。また、つらそうにしている部下がいれば、早めにフォローをし、どうすれば解決できるか対話の中で解決策を探っていきましょう。
大切なのは、トップダウンが全ての硬直したマネジメント体制ではなく、従業員とのコミュニケーションを常に行い、それを元に常に最適な仕組みを選ぶ柔軟なマネジメント体制を実現することです。
中小企業だからこそ従業員との対話を大切にしよう
前職で一番ストレスだったことは、「どのように工夫しても上に意見が届かない」という点でした。その結果、向上心が削がれてしまった部分もあります。中小企業という規模感だからこそ、従業員とビジネスの目的の共通認識を持ち、それをベースに常に対話を繰り返し、柔軟に変化できる仕組みを作ることができると思います。それこそが、メンタルヘルスケアの行き届いた職場づくりであり、離職率の低下や、新たな人材獲得にもつながるでしょう。ビジネスの仲間としての従業員との対話を怠らず、本当の意味で風通しのよい職場を目指しましょう!
【筆者プロフィール】
伊藤鮎
2023年VALUE WORKS入社の編集・ライター。前職は約10年間書籍編集者として勤務。趣味はHIPHOPとメタルコアとKPOPと料理とお酒。最近魚の三枚おろしができるようになりました!
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