コラム

Indeedは闇バイトも掲載できる!?“無法地帯”に企業が求人を掲載するリスクとは?

メルカリの出品者と購入者のトラブル、LUUPの運転者による交通ルール違反、タイミーでの闇バイト募集など。最近、プラットフォームのユーザーによるトラブルがニュースになることが多く、同時にプラットフォーム提供企業の対応も問題視されている。

では、私の主戦場である人材業界最大のプラットフォーム=Indeedはどうなのか。実はすでに昨年の段階で警察庁から闇バイトの求人に利用されていると指摘が入り、再発防止を進めると回答をしている(参考:読売新聞 闇バイト、インディード・エンゲージ・ジモティーなど大手サイトに求人広告)。

しかし、その後に具体的な対応策について発表したリリースは見当たらず、Indeed PLUSの開始によって拡散力はますます高まった。この記事では、そのような状況下でユーザー(求職者および企業)はどんなリスクを負うのか、考えていきたい。

Indeedで闇バイトは募集できる

私が仮に闇バイト業者だったとして、Indeedはバイトを募集するための一つの選択肢になる。企業で登録する場合は法人番号が必要になるが、今どきは休眠会社がいくらでもあり、なおかつ個人としてでも募集は可能である。あとは、しょせん闇バイトであるため、架空の求人・待遇をつくり上げて人を集めれば良いだけで、連絡先などはいくらでも名義貸しなどで対応できてしまう。Indeedは“使える”と考えるだろう。
 
なお、前述の警察庁の発表で同様に名前が挙がっているエンゲージについては、募集企業の登録時に身分証の提出などが必要で、一定の障壁は設けられている。つまり、Indeedには現在も闇バイトの募集が掲載されている可能性は十分にあると考えられ、求職者は待遇などに惑わされず、求人内容を判断する必要があるだろう。

Indeedに掲載されている違法求人例


闇バイトに限らず、Indeedには現在、多数の違法求人が掲載されている。“一部”でも、“少なからず”でもなく、“多数”掲載されている。下記に具体例を紹介しよう。
 

明るい人、元気な人、体力に自信がある人

職業安定法違反になるため記載ができない。人種や性格、身体機能といった個人で変えることのできない特性で、差別をしてはいけないという法律である。もしIndeedで表記する場合は、「明るく元気な対応ができる方」など性格に触れないよう記載する必要がある。
 

女性歓迎、カメラマン

男女雇用機会均等法違反になるので記載ができない。一部の例外規定はあるものの、性別で差別を行ってはいけない。もし記載したい場合は、「女性活躍中」「フォトグラファー」など性別に触れないように記載する必要がある。
 

○○歳以下で○○の経験がある方

雇用対策法違反になるため記載はできない。年齢制限を行う場合の例外規定としてよく使われるものに、3号のイが挙げられるが、それは経験を一切問わない場合にしか使えない。例えば40歳以下の経験者を募集したい場合は、「20代、30代が活躍中!」「○○の経験がある方」など、年齢を応募資格として問わない表記にする必要がある。
 
紹介したNG例は、求人業界に入ると真っ先に教えられるもので、算数で例えれば「1+1」は言い過ぎかもしれないが、「九九」くらいのレベルである。その対策すらできていないのがIndeedの現状であり、闇バイトの募集を防ぐことができるとは考えづらいだろう。
 
読者の方は試しにIndeed内で「明るい人」や「女性歓迎」でキーワード検索してみて欲しい。なお、私は定期的に怪しいキーワードで検索をかけるのを趣味にしているが、最近のヒット求人表記は「明るく元気で体力のある人」。一文で3つの違法表現を組み合わせているのは、なかなかやるなと感心したのである。

Indeedに企業自身が求人掲載を行うリスク


ここまで書いてきた通り、少し乱暴にまとめてしまえば、Indeedは“誰でも”、“どんな内容でも”掲載できてしまう求人プラットフォームである(一部業種・職種などの審査がないわけではない)。
 
リクルートをはじめとした代理店やIndeedを経由して申込・求人票作成をすることもできるが、企業の人事担当などが自分ですべて行い、無料掲載を行うこともできる。そして、審査が非常に緩いため、実際に掲載され世の中に発信されてしまう。ここに企業側の大きなリスクがあるのである。
 
ブラック企業の問題などで、批判を受けることもあったリクナビNEXTやdoda、マイナビ転職といった旧来の求人サイトは、掲載するための企業審査、求人情報の表記審査が存在する。Indeedが算数の「九九」もできていないと書いたが、これらのサイトは「数学」くらいの審査はしている(リクナビNEXTは現在、Indeed PLUSに実質的に吸収されたためIndeedと同レベル)。
 
外から見ていると分かりづらいだろうが、求人広告は男女雇用機会均等法や職業安定法、雇用対策法といった関連法規をクリアにしたうえで、世の中に出されていた。企業自身で申込・作成してIndeedに掲載すると、制作担当や審査部門のフィルターを通過しないこととなり、気づかぬうちに法律を犯してしまう恐れがある。というか、実際にすでに違法求人が大量掲載されているのは前述した通りだ。
 
“良心的な”求職者がそれを見てIndeed側に指摘すれば、最悪の場合は将来を含めた掲載停止になる可能性がある。さらに違法求人をきっかけに入社直前まで進んだ場合、法律違反の求人広告をもとに訴えられるリスクも考えられるかもしれない。たとえば、月給に含まれる固定残業代や一律手当の明示は法律上義務付けられているが、それを記載し忘れていると思われる企業の内定を獲得し、雇用契約書の提示段階(実は月給に固定残業代や一律手当が含まれていると分かったタイミング)で虚偽広告で訴えるということは、理論上できるのである。

“緩い時代”だからこそ、リスクを避けるためにプロを頼るべき


Indeedを求人サイトと呼ばず、プラットフォームと表記してきたのには理由がある。もともと登場時には“求人業界のGoogle”と言われ、サイトではなく検索エンジン扱いされてきたからだ。あくまでもIndeed自体で求人票を作成するのがメインではなく、各サイト・企業の採用ホームページなどの求人情報を一括検索できるものだと見られていた。求人広告の適法性は各求人サイトに委ねており、だからこそ求人サイトと同様の扱いをされるようになった現在でもその感覚が消えず、審査が緩い一因だと想像できる。
 
「プラットフォームがあり、問題が発生するかはユーザーの使い方次第」。これは、冒頭に書いたメルカリやLUUP、タイミーなどと根本的な発想は同じだろう。ユーザーである求人企業が無自覚にミスを犯しても、Indeedは助けてくれない。では、どうするべきか。コストをかけられないのであれば、関連法規や求人票の作成方法、マーケティング知識を採用担当が学ぶしかないが、手っ取り早いのは外部に委託するという手段である。
 
さらに、できれば制作に力を入れている採用代行会社などを選ぶべきだろう。最近では、Indeed PLUSが期待ほど売上が伸びていないという話もあるせいか、営業・アルバイトが制作を行っている代理店が増えている。しかし、営業の関連法規の知識や成果を残すための知見は、繰り返し同じ例えを使うと「九九」レベルだ。商談時に、経験値の高い専門の制作が就くのかどうかは確認しておくべきで、それがリスク回避や効果の向上につながってくる。
 
※最後に宣伝を一言。Indeedや採用全般にお悩みがございましたら、それなりに実績のある弊社にお気軽にご相談ください。
 
【筆者プロフィール】
石原遼一
小学校と同じくらい通った早稲田大学在学中からライターの仕事を始め、卒業後、出版・広告業界で会社員とフリーランスを行き来する生活に。気づいたらHR・求人広告を軸にスポーツ、遊技を含めて雑多なコンテンツをつくる人間になっていた。最近は、クライアントに採用コンサルティングから広告運用まで丸ごと頼まれることも。ありがたいことに営業やお客様からの指名で、月間100~200件ほどの求人広告を制作してきたため、おそらく取材社数は数千、制作実績は万を超えるはず。最近、少し田舎に家を購入。世界一かわいいバーニーズ・マウンテンドック2頭と大型熱帯魚に囲まれ、適度に仕事をしたいと思っている。39歳、独身(絶賛婚活中)。一応、株式会社石原制作所の代表でもある
 
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