コラム

アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)とは?概念や注目される背景、導入ステップまで解説

アプリシエイティブ・インクワイアリー(Appreciative Inquiry、以下AI)は、組織開発や変革のためのアプローチです。AIは問題解決よりも可能性に焦点を当て、組織の強みや成功体験から学ぶことを重視します。本記事ではAIの基本概念や注目を集める背景、メリット、導入ステップ、ファシリテーションのポイントなどを詳しく解説。組織開発に興味がある方はぜひご覧ください。

アプリシエイティブ・インクワイアリーとは?

従来の組織変革のアプローチが問題分析や課題抽出から始めるのに対し、AIは「うまくいっていることは何か」「組織の強みは何か」といったポジティブな問いかけから始める組織開発のためのアプローチです。問題ではなく理想の未来像から逆算して現状を見つめ直すことで、組織に変革をもたらすことを目的とします。
 
AIの基本的な原則は以下の通りです。
 
– ポジティブな側面に注目する
– 対話と協働を重視する
– 全員の価値ある経験を引き出す
– 未来志向で可能性を探る
– 継続的な変革のサイクルを回す

AIが注目を集める背景


グローバル化やデジタル化の進展により、企業は絶え間ない変革を迫られている昨今。従来の問題解決型アプローチでは、変化のスピードについていけなっています。そこで脚光を浴びているのが、組織の強みや可能性に着目するAIです。AIを実施することでポジティブな対話を通じて、組織変革の原動力を引き出すことができます。
 
実際、海外での導入事例が増え、変革のスピードと質の向上が報告されています。日本企業も、イノベーションや人材活性化の切り札として、AIに注目し始めています。ピンチをチャンスに変える新しい組織開発ツールとして、AIへの期待が高まっているのです。

AIの4Dサイクル

AIの中核となるプロセスが「4Dサイクル」です。「発見(Discovery)」「夢(Dream)」「設計(Design)」「実現(Destiny)」の4つのフェーズを循環的に進めていきます。
 
「発見」フェーズでは、組織の強みや価値ある経験、ベストプラクティスを見つけます。「夢」フェーズでは、組織の理想の姿を描き、望ましい未来像を共有します。「設計」フェーズでは、理想の実現に向けた具体的な計画を立てます。「実現」フェーズでは、アクションを起こし、変化を生み出していきます。
 
各フェーズで大切なのは、ポジティブな質問を投げかけ、対話を通じて新しい気づきや可能性を引き出すことです。組織メンバー一人ひとりの声に耳を傾け、多様な視点を活かしながら、共に理想の姿を作り上げていくのがAIの特徴です。

AIを実践するメリット


実際をAIを通じて、組織にはどのような変化が起こるのでしょうか。メリットについて詳しく見ていきましょう。

組織文化のポジティブシフト

問題志向から可能性志向へ、個人の力から協働の力へと、組織の文化や価値観がシフトしていきます。ネガティブな会話や非建設的な議論が減り、前向きで創造的な対話が増えていくでしょう。

エンゲージメントと協働が促進される

AIのプロセスを通じて、メンバーは互いの強みや価値を認め合い、信頼関係を深めていきます。自分たちで理想の未来を描き、その実現に向けて自発的にアクションを起こすようになります。部署や立場を超えた協力体制が生まれ、組織としての一体感が高まります。

イノベーションの創出や継続的な改善

AIは、既存の枠組みにとらわれない発想を生み出し、新しい可能性を切り拓きます。失敗を恐れず、小さな成功を積み重ねながら、変革を続けていく組織の基盤ができあがります。

AIを導入するステップ


それでは、AIを自社に導入するには何から始めればよいのでしょうか。以下、導入ステップについて解説します。

目的と対象を明確にする

導入の目的と対象を明確にすることが重要です。AIを通じて実現したいことは何か、どの部門やチームから始めるのかを検討します。最初は課題意識の高い部署から始め、徐々に全社に広げていくのが得策です。

上司は経営層を巻き込む

次に上司や経営層を巻き込み、サポートを得られるよう働きかけます。経営層にAIの意義を理解してもらい、変革の旗振り役になってもらう必要があります。トップのコミットメントがあれば、現場の取り組みもスムーズに進みます。

実行役を育成し、体制をつくる

続いて、AIを実行するスタッフの育成と体制づくりです。外部講師を招くだけでなく、自社でAIを推進できる人材を計画的に育成しましょう。研修を実施し、ファシリテーションスキルを身につけてもらうことが一つの方法です。

PDCAを回す

AIの実行がスタートしたら、PDCAを回していきましょう。ポイントは最初から完璧を目指すのではなく、まずは気軽に始められる取り組みから着手すること。AIを活用した会議やワークショップを重ね、手応えを感じながら徐々に範囲を広げていくのが賢明です。

ファシリテーションを実践するポイント


AIを効果的に進めるには参加者の対話を促進し、ポジティブな雰囲気を作り出す役割を担うファシリテーターの存在が欠かせません。ここからはファシリテーションのポイントについて解説します。

未来志向の質問を投げかける

まず大切なことは、質問の仕方です。「あなたが最もやりがいを感じた仕事経験は何ですか」「あなたが目指す組織の姿を描くとしたら、どのようなものですか」など、ポジティブで未来志向の質問を投げかけます。質問は開かれたものにし、相手の話を引き出すことを心がけます。

安心して本音を話せる雰囲気をつくる

対話を深めるためには、傾聴とフィードバックのスキルが欠かせません。相手の話に耳を傾け、共感的に理解することで、安心して本音を語り合える場を作ります。参加者同士が建設的にフィードバックし合える環境を整えることも重要です。

サポート役に徹する

参加者の主体性を引き出すために、進行役に徹することも大切です。ファシリテーターは、議論の方向性を決めるのではなく、参加者が自ら気づき、アイデアを出し合えるようにサポートします。時にはユーモアを交えながら、リラックスした雰囲気の中で創造的な対話が生まれるよう工夫します。

アプリシエイティブ・インクワイアリーで組織変革への一歩を!


AIはポジティブな対話と協働の文化を育む強力なアプローチです。組織の強みを引き出し、メンバーの可能性を最大限に発揮させる。理想の未来を共に描き、その実現に向けて力を合わせる。そうした組織文化を根付かせるためにAIは大いに役立つでしょう。
 
とはいえ、AIはすぐに成果の出る魔法の杖ではありません。導入には一定の時間と労力がかかります。リーダーシップと現場の協力、外部人材のサポートを得ながら、地道に取り組みを積み重ねることが求められます。
 
しかし、その努力は必ず報われるはずです。AIを通じて、組織は新たな活力と創造性を得ることができる。ピンチをチャンスに変え、困難を乗り越えていく原動力を手にできる。変化の激しい時代を生き抜く「レジリエンス(回復力)」を身につけられるのです。
 
今こそ、AIを活用した組織変革への一歩を踏み出すとき。ポジティブな未来を信じ、対話と協働の輪を広げていく。その先に、きっと理想の組織の姿が待っているはずです。
 
\オウンドメディア制作、採用広報に興味をお持ちの方はこちらをクリック!/