コラム

デザイン思考とは?プロセスや導入方法、活用のポイントを解説

デザイン思考とはデザイナーが用いる思考法を、ビジネスの問題解決やイノベーション創出に活かすアプローチです。単なるデザインの手法ではなく、ユーザー中心の視点で問題を捉え、創造的かつ協調的に解決策を生み出すための思考法と言えるでしょう。特に、急速な環境変化に適応し、イノベーションを推進していくことが求められる現代の組織において、デザイン思考の重要性は高まっています。本記事ではデザイン思考の基本的なプロセスを解説した上で、組織開発や人材育成にどのように活用できるのか、導入のヒントを探っていきます。

デザイン思考が注目される背景

デザイン思考が注目される背景には、主に以下の3つの要因が考えられます。

イノベーションの重要性が高まっている

近年、あらゆる業界で競争が激化し、イノベーションの重要性が叫ばれています。新たな価値を生み出し続けることが、企業の生き残りには不可欠となったのです。しかし、従来の論理的・分析的な思考法では、既成概念を超えるようなブレークスルーを起こすことは難しい。そこで、創造性を重視するデザイン思考に注目が集まるようになりました。
 
デザイン思考では、ユーザーの潜在ニーズを深く理解することから始めます。そして、多様なアイデアを出し合い、試作と検証を繰り返しながら、革新的な解決策を導き出していくのです。こうしたプロセスを通じて、これまでにない画期的な製品やサービスが生まれる可能性が高まります。イノベーションを求める企業にとって、デザイン思考はまさに待望の思考法だったと言えるでしょう。

顧客中心主義への転換

かつてのビジネスは、「良い製品を作れば売れる」という考え方が主流でした。しかし、モノが溢れ、顧客ニーズが多様化した現在では、そうした製品主義では通用しなくなってきています。求められるのは、顧客の潜在ニーズを掘り起こし、それに応える価値を提供することです。
 
デザイン思考は、まさにそうした顧客中心主義の考え方に立脚しています。徹底的なユーザー観察と共感から始まり、ユーザー目線で問題を定義し、解決策を探っていく。そのプロセス全体が、顧客志向を体現していると言えます。時代の要請に合致したアプローチであることが、デザイン思考の注目度を高めている大きな要因と言えるでしょう。

人材育成の新たな潮流

変化の激しい時代を生き抜くには、型にはまらない創造的な人材が欠かせません。しかし、従来の日本の教育は、正解主義・画一主義に偏りがちでした。そうした中で、創造性の開発や、主体的な課題解決力の育成が大きな課題となっているのです。
 
デザイン思考の実践は、まさにそうした能力開発に直結します。アイデア創出のプロセスを通じて創造力が養われ、問題定義とテストの繰り返しによって課題解決スキルが身につく。チームでの協働作業は、コミュニケーション力の向上にもつながります。こうした気づきから、企業の人材育成にデザイン思考を取り入れる動きが広がっていると言えます。

デザイン思考の基本的なプロセス


デザイン思考のプロセスは、一般的に以下の5つのプロセスで構成されています。

1. 共感(Empathize)

ユーザーの立場に立ち、その needs(要求)、wants(期待)をあくまで受容的に理解します。観察やインタビューを通して、課題の本質に迫ります。

2. 問題定義(Define)

共感の段階で得た情報を整理・分析し、解決すべき問題を明確に定義します。ユーザーの視点で、課題の本質をとらえることが重要です。

3. アイデア創出(Ideate)

問題定義に基づき、可能な限り多くのアイデアを出し合います。批判は禁止し、自由な発想を重視します。量が質を生むという考え方が基本です。

4.試作(Prototype)

出された多数のアイデアの中から、実現可能性の高いものを選び、試作品(プロトタイプ)を作成します。ラフなスケッチやモデルでも構いません。

5. テスト(Test)

プロトタイプをユーザーに使ってもらい、その反応を観察します。改善点を見つけ、必要に応じてプロセスを繰り返します。失敗を恐れずに試行錯誤を重ねることが肝要です。
 
このように、デザイン思考では、ユーザー理解に始まり、多様な観点からアイデアを創出し、試作と検証を繰り返しながら、最適解を導き出していきます。直感的な見方では決して捉えられない創造的な解決策が期待できます。しかも、プロセス全体を通して、チームの協調性やコミュニケーションが自然と促進されるという効用もあるのです。

デザイン思考を組織開発に活かすポイント


それでは、デザイン思考を組織開発に活かすにはどうすればいいのでしょうか。

組織文化の変革

デザイン思考は、ユーザー視点、すなわち「ヒューマンセンタード」であることを重視します。社員一人ひとりのニーズに寄り添い、共感することから始めるのです。そうした意識が組織全体に浸透することで、自然と協調性やチームワークが醸成されていきます。上意下達ではなく、現場の声に耳を傾ける姿勢は、風通しの良い組織文化づくりにつながるでしょう。

イノベーションの促進

デザイン思考では、アイデア創出とプロトタイピングのプロセスを大切にします。多様性を尊重し、型破りなアイデアも歓迎する雰囲気があれば、社員の創造性は大いに刺激されるはずです。アイデアを形にする習慣が根付けば、新たな製品やサービス開発のスピードは格段に上がります。失敗を恐れない文化も、イノベーション創出には不可欠と言えるでしょう。

顧客中心の組織づくり

デザイン思考の出発点は、あくまでユーザー理解です。ユーザーのニーズを深く理解することで、真に価値あるモノやサービスを提供できるようになります。その思考法が組織に浸透すれば、顧客志向は自ずと高まっていくでしょう。また、ユーザー目線に立った社内コミュニケーションにより、部署間の連携も円滑になるはずです。

デザイン思考を人材育成に活かすポイント

次に、デザイン思考を人材育成に活かす方法について見ていきましょう。

創造性の開発

デザイン思考のアイデア創出フェーズでは、ブレインストーミングなどを通して、自由な発想力を養います。枠にとらわれない柔軟な思考は、あらゆるビジネスシーンで求められる資質です。アイデア出しのトレーニングを積むことで、社員の創造性を大きく引き出すことができるでしょう。

課題解決力の強化

デザイン思考の問題定義とテストのプロセスは、まさに課題解決の基本型と言えます。漠然とした問題を整理し、仮説検証を繰り返しながら最適解を導き出す。そうした一連のプロセスを身につけることで、社員の課題解決スキルは飛躍的に向上するはずです。

コミュニケーション能力の向上

デザイン思考では、共感の姿勢を何より大切にします。相手の立場に立って考え、積極的に耳を傾ける。チームでアイデアを出し合い、協力して問題解決に当たる。そうした経験の積み重ねは、社員のコミュニケーション力を確実に高めてくれるでしょう。

デザイン思考導入のヒント


とはいえ、デザイン思考を組織に導入するのは簡単ではありません。その障壁を乗り越えるためのヒントを以下に挙げてみました。

トップのコミットメントと環境整備

デザイン思考の導入には、トップ自らが率先して旗振り役を務めることが欠かせません。失敗を恐れない風土づくりや、縦割り組織の打破など、トップの強いリーダーシップが求められます。

小さく始めて成功体験を積み重ねる

いきなり全社的な取り組みを始めるのではなく、特定の部署やプロジェクトから着手するのが賢明でしょう。小さな成功体験を重ねることで、デザイン思考の有効性を組織内で共有していくことが大切です。

外部リソースの活用

デザイン思考の研修プログラムを提供するコンサルティング会社や、専門家によるワークショップなどを積極的に取り入れることをおすすめします。 外部の知見を借りることで、導入の壁を乗り越えやすくなるはずです。

デザイン思考を根付かせ、問題解決力の高い組織づくりを


デザイン思考はユーザー中心の視点に立ち、創造的かつ協調的に問題解決を図るための「マインドセット」です。組織にデザイン思考を根付かせることで、イノベーションを生み出す風土が醸成されるでしょう。また、デザイン思考の実践は、社員の創造性、課題解決力、コミュニケーション力など、あらゆる面での能力開発につながります。変化の激しい時代を生き抜く人材を育成する上で、これほど有効なアプローチは珍しいと言えるでしょう。
 
もちろん、デザイン思考の導入は簡単ではありません。トップのリーダーシップと、地道な実践の積み重ねが求められます。時には外部リソースを活用しながら、着実にステップを踏んでいくことも肝要です。ユーザー視点に立ち、創造と協調を重んじる。そんな思考法を組織の隅々まで浸透させることが、これからのビジネス成功の鍵を握っているのではないでしょうか。
 
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