【中小企業向け】離職率が高い原因と対策、定着率向上にむけた施策を解説
だからこそ顧客満足度はもちろん、定着率を向上させる取り組みが欠かせない。ただ、「何から取り組めば良いのか」と頭を悩ませている経営者や人事担当者も多いのではないだろうか。そこで本記事では離職を防ぎ、定着率を高めるためのポイントを詳しく紹介する。
離職率が高くなってしまう原因
モチベーションの源泉は人それぞれゆえ、離職率が高くなってしまう原因は多岐にわたる。その中でも代表的な原因を紹介しよう。
相場より給与が低い
相場より給与が低い場合や福利厚生が不十分な場合は、離職の原因につながりやすい。特に成果を出しているエース社員ほど、他社からの引き抜きやオファーの話が舞い込んできやすいため、注意が必要だ。
キャリアアップを実感できない
「成長を実感できない」「キャリアアップできない」「キャリアパスを描けない」そんな職場も要注意だ。特に若手社員の場合、ベテラン社員の姿を未来の自分に重ねてしまう。「10年後、ああはなりたくない」と思われてしまうと、離職されてしまう恐れがある。
コミュニケーション不足
同僚や上司とのコミュニケーション不足も離職の原因になりやすい。コミュニケーションが活発でない職場は雰囲気が悪く、相談もしにくい。ミスも報告しづらく、居心地の悪さから退職者が増えるリスクがある。
労働時間が長い
残業が常態化していて、休日出勤も当たり前。さらに残業手当も休日出勤手当も出ない。違法ではあるが、そんな企業は多い。当然のことながら長時間労働、過重労働は離職の原因になりうる。
職場の安全面が確保されていない
危険を伴う職場も注意が必要だ。労災があるとはいえ安全面が確保されていない職場で働きたい人はほとんどいない。また、職場環境が不快で、衛生管理されていない場合も同様に離職率が高くなる。
ハラスメントが常態化している
上司からのパワハラ、セクハラなどのハラスメントが常態化している職場も当然ながら離職率が高い。また的確な指示を出さない、適切な評価指標がないなど、マネジメントが不適切な場合や評価・報酬制度がない場合も、従業員のモチベーション低下につながる。
カルチャーマッチしない
組織が大きくなると、企業の雰囲気、文化、ビジョンなどに合わない従業員も一定数生まれてくる。当然カルチャーマッチできない従業員は離職リスクが高くなる。
高い離職率によって引き起こされる問題
特に中小企業にとって従業員離職の影響は大きい。多くの企業がギリギリの人数で業務を回しているため、一人ひとりが担う役割と責任が大きいからだ。ここでは中小企業における従業員離職によってどんな問題が発生するのか詳しく紹介しよう。
人材不足による費用負担
従業員の離職に伴い、退職手当や未払い残業代、有給休暇などの支払いが発生する。また、中小企業は大企業と比較して従業員数が少ないため、欠員補充も急務になる。しかし、採用と育成に時間とコストがかかるため、その間人材不足で事業運営に支障をきたす恐れがある。
既存社員の負担増加
仮に新しい人材を採用できたとしても、育成や立ち上がりに一定の時間を要するため、既存社員に過度な負荷がかかる。また、離職した社員のポジションの業務が属人化していた場合、穴埋めできず顧客を失うリスクもある。さらに、離職した社員が競合に転職してしまった場合は、ノウハウが流出して競合での優位性を失う可能性も否めない。
雰囲気の悪化
従業員が離職することで、残留する従業員のモチベーションが低下し、雰囲気の悪化につながる場合もある。特に離職の理由が人間関係だった場合、職場の雰囲気や風土に悪影響をおよぼす危険がある。
定着率向上につなげる施策
では従業員満足度を高め、離職を防止するにはどうすればいいのだろうか。ここからは定着率を高める具体的な方法を紹介しよう。
適切な報酬を与える
成果や努力を正当に評価する報酬は従業員のモチベーションアップにつながる。「業務量は増えたのに給与が変わらないなんて」「こんなに成果を出したのに、頑張っていない社員と同じ評価なんて不公平だ」と思われないためにも、業界平均や市場価値に基づいた報酬体系を導入し、公正な評価方法を確立することが求められる。
また、従業員に対しその評価制度が「透明」であることも大切だ。どんな観点で何を達成すれば評価につながるのか。当たり前のことだが、明確な評価制度が整備されていない中小企業は多い。評価制度の策定には時間も労力もかかるが、明確な目標や軸があることで従業員のスキルアップやキャリアアップへのモチベーションアップにつながるので、取り組まない手はない。
キャリアアップの機会を増やす
業界水準以上の給与と正当な評価制度があったとしても、成長を実感できなければ従業員のモチベーション低下につながる恐れがある。従業員がスキルアップを実感し、高いモチベーションとパフォーマンスを維持できるよう、社内教育や研修制度、昇進制度などを整えることも欠かせない。ここからは、人材業界内でギリギリ若手の分類に入る筆者(29歳)が「キャリアアップのためにあったらいいな」と考えた4つの施策を紹介しよう。
語学学習を支援する
大手企業と比較して人数が少ない中小企業では、1人がこなす業務や役割が多く、終業後にスクールへ通うのは至難の業だ。そこで、社内でスクールを開設することで、余計な移動の負担がなく、英語や中国語などの語学を学ぶことができる支援制度だ。企業側からしても従業員の語学力をあげることで、グローバルに活躍できる人材の育成にも役立てることができる。また、複数の従業員が一緒に受講することで社内コミュニケーションの活性化にもつなげることができる。
資格取得支援制度をオープンにする
今や多くの企業で導入されている資格取得支援制度だが、制度として存在はしているもののオープンにされていない企業も多い。中には従業員から「この資格を取得したいので補助してほしい」と相談を受けて、はじめて支援を検討するケースもある。
その場合「言ったもの勝ち」状態になり、資格取得に興味や意欲はあるものの制度の存在を知らなかった従業員が損してしまう。不公平にならないためにも、きちんと制度として誰もが利用できる状態にしておくことが必須だ。
筆者の体験談でいくと、特別に上司から資格取得支援を許可された従業員が周囲にうっかり「会社から◯◯の受験費用を補助してもらった」と漏らしてしまい、制度を利用できなかった従業員と許可した上司が揉めたこともあった。
マネーリテラシーを高める教育機会を設ける
「老後に2000万円不足する問題」などの背景から昨今政府は「貯蓄から投資へ」を掲げ、金融教育を義務教育で必修科目にした。これまで、投資については「富裕層が手を出すもの」という認識で、筆者自身も特に知識なく安易に手をだすと「借金まみれで人生終了」という恐ろしいイメージがあった。
しかしこれからは違う。社会人にとって投資は資産形成における重要な手段となり、誰もがその知識を身につける必要がある。そこで、そうした資産形成や暮らしに使える補助金に関する教育機会を従業員に提供するのはどうだろうか。本来個人で学ぶべきことではあるが、そこまで手厚い教育機会を提供する企業はまだ決して多くないため、従業員の企業に対する信頼感や愛社精神につながる気がしている。
副業の推奨
昨今は副業を解禁している企業も増えてきたが、世に出ている求人をみると、圧倒的に副業NGの企業が多い。おそらく「本業がおろそかになる」という役員の意向が影響しているのだろう。筆者の前職でもそうだった。副社長に直接「なぜ副業がNGなのか」聞いたところ、「うちは終身雇用制だから」と謎の回答を得たことを思い出す。
正直、副業解禁にはメリットしかないと筆者は思う。企業での給与がそこまで上げられなくても従業員は収入を増やすことができるし、副業によって得た知識やスキルを本業に活かすこともできると思うからだ。またコロナ禍を経験して私たちは、疫病や災害によって収入が得られなくなることも学んだ。そうした時のリスク分散の観点からも、複数の収入源を持つことは企業にとってもメリットが大きい。
ワークライフバランスの確保
もはや耳慣れた話ではあるが、従業員が仕事とプライベートの両立を図るためのワークライフバランスの確保は非常に重要である。ワークライフバランスの確保なくしては、従業員の定着はないと言っても良い。従業員一人ひとりに自分の時間や家族などのプライベートがある。柔軟な勤務時間やテレワークの導入、有給休暇の積極的な取得促進は当たり前とし、ワークライフバランスを大切にするための施策はすぐにでも実行すべきだ。
福利厚生の充実
従業員が安心して働くためには、福利厚生の充実も見過ごせないポイントだ。長年人材業界に携わってきた筆者はよく、福利厚生は社会保険完備のみという企業にも出会ってきた。しかし、言わせてもらえば社会保険完備などは法律によって定められている企業の義務。それ以外に特筆できる福利厚生がないのであれば、「仕事の報酬は仕事です」と公言しているようなものだ。
従業員から求められていることを把握し、持続的に誰もが使える制度を整える。その結果、従業員からの評価にもつながると思う。では、具体的にどのような福利厚生を用意すればいいのだろうか。ここからは筆者が各企業の福利厚生を調べている中で、「これはいい!」と思った事例をいくつか紹介しよう。
ゴーホーム制度(Chatwork株式会社)
実家に帰省する費用を負担するという制度。1回につき1万4,000円が支給され、配偶者がいる場合にはさらに1万4000円が支給される。
給食費補助制度(株式会社中西製作所)
小学生の子どもを持つ社員に対し、給食費補助として子ども1人につき年5万円を上限として給食費の実費を支給する制度。
シエスタ制度(GMOインターネット株式会社)
15分~30分程度の昼寝を認めてくれる制度。「パワーナップ制度」ともいい、就業中に仮眠をとることで作業効率をあげる効果がある。
推しメン休暇(株式会社ジークレスト)
1年に1度、アニメやマンガ、ゲームのキャラクター、タレントや声優など、自分のイチ推しメンバーの記念日(誕生日やライブ開催日など)に休暇を取得できる。また活動費として、上限5000円までを支給する。
最近では電気料金の高騰化などもあるため、テレワークを導入している企業では、「在宅手当」や「住宅手当」などの支給があると、従業員の生活を直接的に支える制度があるとして、企業への評価も高まることだろう。
定着率を高めて、強い組織をつくろう
紹介した施策はあくまで例であり、「これをやれば定着率が高まる」という答えはない。企業の規模、業種、フィーズ、従業員の属性などによって、求められる対応は変わってくるだろう。大切なことは、従業員とコミュニケーションを図ること。そして、従業員が本音を言える「心理的安全性」のある組織づくりだ。そこから従業員のニーズを引き出し、組織づくりに反映することが、従業員満足度につながると思う。本記事を参考に、ポジティブな企業文化を醸成し、50年、100年と続く企業を目指してほしい。
【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。
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