コラム

新入社員の早期離職を防ぐ!定着率アップに向けた施策で、働きがいのある職場づくりを

毎年4月になるとSNSのタイムラインには入社式や研修の様子が、次々と流れてくる。多くの経営者や人事担当者は新たな仲間を迎え入れ、期待に胸を膨らませているのではないだろうか。

しかし、フレッシュな人材を採用できたからといって安心はできない。4月からGWを挟んだ5月というのは、離職リスクが高まる時期。1ヶ月気を張って過ごした若手社員がGW期間中に家族や友人に会うことで気が緩んでしまうからだ。実際、休み明けの出社が心の底から辛く、メンタルを病んでしまう新入社員も少なくない。

かくいう私も、7年前の新入社員時代にそのような同期をたくさん見てきた。「あれ?研修頑張ってたし、やる気があったのに」と思えた同期も、気がつけば6月を迎える前に半数ほどになっていた。当時の人事からしてみれば、「涙を流して入社を喜んでいたのに……」と切ない気持ちでいっぱいだっただろう。

しかし、その後求人広告の営業として多くの企業の採用を支援する中で、私が見てきた早期離職の課題は珍しくないことに気づいた。「せっかく費用と時間をかけて採用したのにどうすればよかったのか」そんなことにならないよう、本記事では新入社員の早期離職を防ぐ施策について解説しよう。

 


新入社員の早期離職によるダメージ


早期離職により企業は予期していなかったさまざまな影響をうけることになる。持続的に事業を発展させるためにも、企業としてはできる限り早期離職を防ぐ必要がある。ここでは早期離職によりどんな弊害が発生するのかを改めて明確化していく。
 

採用コストの増大

 
広告費用など、新卒の採用活動には多額の費用がかかる。定着率が低いと、企業によっては離職してしまった社員の枠を埋めるべく、予定していなかった採用活動を再開する必要が生じるため、大きなコスト負担となる。
 

教育・研修コストの無駄

 
せっかく時間とお金をかけて研修・育成しても、早期離職されてしまうと費やした時間と費用は無駄になってしまう。パフォーマンスの高い社員が自分の仕事よりも育成にコミットしていた場合、その損失はさらに大きくなる。
 

社内の士気低下

 
人は身近な人の影響を無意識のうちに受けている。例えば、仲の良かった同期が立て続けに離職すると、「自分も辞めようかな」と特に不満がなくても思ってしまう。何より次々と社員が退職する会社で「頑張ろう」という気持ちにはならないだろう。社内の士気は下がり、業績悪化にもつながってしまう。
 

企業の評判悪化

 
口コミサイトやSNSが普及した昨今、労働環境の評判はすぐに拡散されてしまう。ある程度知名度のある会社の場合、社員による評価サイト『OpenWorks』などを見ると赤裸々に企業の内情が書かれているし、TwitterやYouTubeにも具体的な社名をあげて社内の実態を告発しているアカウントが多数存在している。当然、知名度がない会社も持続的に事業拡大を目指すのであれば、日頃から悪評を立てられないよう気をつけるべきだ。


早期離職の防止を実現する施策


では、新入社員の定着率を向上させる取り組みとは何なのか。新入社員の早期離職を防止し、定着率を向上させるための人事制度に焦点を当てながら、適切な労働環境の整備、教育・研修制度の充実、キャリア支援、コミュニケーションの向上など、企業が取り組むべき施策を紹介していく。
 

オリエンテーションと研修プログラムの充実

 
右も左もわからない状態からいきなり実務を任され、誰にも質問することができず一人で悩んでしまう。こうした新人が多い会社は早期離職率が高い。「育てる時間もお金もない」という中小企業も多いが、それなら新卒を採用するべきではない。
 

新卒社員が安心して慣れていくには企業の歴史や事業内容、組織構造、社風などを紹介するオリエンテーションが欠かせない。また、名刺交換の方法、電話の受け答え方、メールの打ち方、社内ツールの活用方法、業務に必要な専門知識など、実践で即活かせる研修も実施しよう。研修後もチームで上司と一緒に仕事を進められる環境を整えてほしい。その際は、質問しやすい人間関係を構築し、都度アドバイスやフィードバックをすることも忘れてはいけない。
 

このように教育体制を充実させることで、新入社員が早期に仕事に慣れ、自信を持って業務に取り組むことができるようになる。また、企業や仕事に対する理解が深まることで、仕事へのコミットメントや企業への忠誠心も高めることができるだろう。
 

メンター制度の導入

 
メンターとは指導者、相談者、助言者などの意味で、新入社員のサポート役的な存在を意味する。メンターは業務について直接新卒社員に指示や命令を下すわけではなく、対話によって気づきを与えていく存在。そのため、新卒社員も臆することなく、本音で相談できる。
 

またメンターが新卒社員と社内のあらゆるスタッフとの架け橋になることで、新卒社員は早期に職場になれることができ、業務に必要な手助けやアドバイスも得やすくなる。その結果、早期に戦力化し、結果を出すことが自信がつく。定着にもつながっていくはずだ。
 

ストレスチェックの実施

 
ストレスチェックの実施は、新入社員の心身の負担を把握し、適切な対策を講じるために欠かせない。一般的にストレスチェックは年1回程度、アンケートやWebアプリを用いて実施するケースが多い。具体的には以下のような手順で進められる。
 

ステップ1:ストレスチェックの告知と説明

 
新入社員にストレスチェックの目的や手順、実施日程を事前に伝える。
 

ステップ2:アンケート実施

 
ストレスの要因や状況を把握するための質問項目を含むアンケートを配布し、回答させる。アンケートには職場環境、人間関係、業務内容、仕事量、プライベートな悩みなどの項目が含まれると良い。
 

ステップ3:データ分析とフィードバック

 
回答結果を集計・分析し、個人別や部署別のストレス状況を把握する。結果に基づいて、新入社員に対してフィードバックを行い、ストレスの原因や改善策を共有する。
 

ステップ4:支援策の提案

 
新入社員のストレス状況に応じて、適切な支援策を提案する。例えば、業務量の調整、職場環境の改善、メンタルヘルスケアの専門家への相談などがあげられる。
 

ステップ5:フォローアップ

 
支援策の実施後、新入社員のストレス状況が改善されたかを確認し、継続的なケアや改善策の見直しを行う。
 

心理的安全性の確保

 
Googleの研究で明らかになった「心理的安全性の高いメンバーは離職率が低く、パフォーマンスも評価も高い」という事実からわかるように、誰にでも安心して自分の気持ちを発信できる環境づくりは定着率を高める効果がある。
 

ではどうすれば心理的安全性を確保できるのか。例えば、1on1で上司と話す機会を設けたり、部署の垣根を越えたディスカッションの場を設けることは有効な手段になるだろう。他にも、声の大きな人だけではなく、立場的に弱いスタッフにも積極的に話を振り、尊重しながら傾聴するアサーティブ・コミュニケーションも効果的だ。若い人には嫌煙されるかもしれないが、時には飲み会や食事会の場を設けることも悪くない。ただ、これは逆効果になるケースもあるので、相手を見極めた上で実施してほしい。
 

キャリア支援プログラムの提供

 
「◯◯がやりたくて入社したのに、配属された部署は希望と違った……」というケースは新卒あるあるだが、早期離職の原因としては十分だ。こうしたケースを防ぐためにも、日頃から新入社員のスキルや適性、目標、悩みをヒアリングし、キャリアに関するアドバイスをするカウンセリングや面談を実施しよう。面談での対話を通じて「なぜいま自分はこの仕事をしているのか」「将来、どんなキャリアにつながるのか」気づきを与えることもできるし、モチベーションの向上にもつながる。
 

社内制度の周知

 
せっかく魅力的な制度があっても周知されていなければ意味がない。求人広告に記載するためだけに、建前上「◯◯制度」を設けているが、実際に社員が存在を知らない、そもそも活用された実績がない、というケースは多い。もし独自の社内制度を設けるのであれば実際に活用されることを前提に社内に周知しよう。
 

例えば、オリエンテーションや研修で社内制度について詳しく説明し、新入社員に十分に理解させたあと、社内ポータルサイトなど誰でもアクセスできる場所にドキュメントを保管していくなどの方法は有効だ。
 

周知しても制度の活用が進まないのであれば、ワークショップやセミナーを開催し、具体的な利用方法や手続きについても広報しよう。必要に応じて各部署のマネージャーや人事担当者が新入社員との面談で制度の活用を促すことも効果的だ。


魅力的な労働環境の整備


「環境面だけに惹かれてくるような人は採用したくない」が経営者や人事の本音だろうが、もはやそのような考えでは高い定着率は維持できない。「仕事の報酬は仕事」は事実だが、やはり従業員、特に新卒社員は働きやすい環境を求めている。では、どうすれば魅力的な職場環境をつくることができるのか。ポイントを紹介しよう。
 

フレックスタイム制、時差出勤制度の導入

 
ライフワークバランスを大切にする傾向の高まりから、勤務時間の柔軟化を推奨する企業も増えている。従業員のライフスタイルや家庭事情などに合わせて、出勤時間や就業時間を柔軟に調整できるフレックスタイム制や時差出勤制度などを導入することで、ストレスの軽減やプライベートとの両立、生産性の向上などが期待できるだろう。
 

リモートワークの導入

 
昨今、新型コロナウイルスの感染拡大が鎮静化してきたことで、リモートワークを一時的に導入していた企業が再びフル出社にシフトしている傾向にある。
 

しかし、リモートワークによって従業員のワークライフバランスや生産性の向上、交通費や時間の削減など、さまざまな効果が期待できるため、リモートワークの選択肢を残しておくことを推奨したい。もちろん、リモートワークを行う上でのルールやマナー、セキュリティ対策についても明確に定めておくことは欠かせない。
 

オフィスインテリアの工夫

 
定着率の高い企業では、オフィスインテリアの工夫にも力を入れているところが多い。オフィスは社員が長時間過ごす場所であり、快適で魅力的な空間を提供することで、居心地の良さによるストレス低下の効果も期待することができる。オフィスインテリアの工夫には具体的に以下のような取り組みが行われている。
 

自然光が差し込む窓の設置

 
自然光には自律神経を整えるセロトニンを活性化する効果があると言われている。自然光を浴びることで心がポジティブになり、集中力も高まるので、ぜひオフィス内には太陽の光が差し込む大きな窓を設置してほしい。
 

グリーンカーテンの設置

 
植物で壁や窓をおおうグリーンカーテンには空気中の有害物質を吸収して浄化する効果がある。温度の上昇も抑えてくれるので、特に夏場は節電効果も期待できる。また植物の緑はリラックスやストレス解消の効果も期待できるので、癒し空間をつくる上でもグリーンカーテンの設置は効果的だ。
 

カラフルな家具や小物の配置

 
オシャレな家具や小物で空間を彩ることで開放感が生まれ、従業員の活気と創造性引き出すことができる。「オフィス環境が仕事の生産性に大きな影響を与える」という研究結果もあるので、ぜひ快適な空間づくりにも目を向けてほしい。


従業員の定着率を高め、持続的な発展を


新入社員の早期離職は、本人にとっても企業にとってもダメージでしかない。もし早期離職が後を立たないのであれば、しっかりと原因を把握をし、改善することを強くおすすめしたい。
 

本記事で紹介した施策はほんの一例で、定着率向上に正解はない。どんな方法であれ、従業員が成長や働きがいを実感できる組織づくりが、離職率低減につながるはずだ。大切なことは新卒社員を長期的に育成する覚悟と、体制づくりだ。早期離職が後を立たない企業の経営者や人事担当者は、ぜひ本記事で紹介した施策を参考にしながら、従業員が安心して働ける会社づくりを進めてほしい。
 

【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。
 

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