コラム

マミートラックとは?生じる背景や企業への弊害、対応策について解説

「マミートラック」とは働くママたちがキャリアの停滞を経験する現象を指します。多くの女性にとって、仕事と育児の両立は重要な課題です。女性進出が進む昨今、企業にはワーキングマザーが働きやすい職場環境を整えることが求められています。本記事では、マミートラックが生じる背景や対応策についても詳しく解説します。ライフステージの変化にも対応できる職場づくりを目指す企業の経営者や人事担当の方は、ぜひご覧ください。

マミートラックとは?

子育てをしながら働く女性が仕事と育児の両立はできるものの、昇進や昇格の機会が遠のいてしまうキャリアパスのことです。特に、男女平等や育児支援が十分でない企業では、子育てをしている女性が補助的な職種や部門に配置されることが多く、問題視されています。

マミートラックが生じる背景


マミートラックが生じる背景には、なにがあるのでしょうか。

伝統的なジェンダーロール

日本社会には根強い伝統的なジェンダーロールが存在します。女性が家庭で育児を担うべきであるという固定観念が、働く女性にとって大きな負担となることは少なくありません。このような背景から、出産後に職場に復帰する際にキャリアの停滞を余儀なくされるマミートラックが生じやすくなります。

不十分な育児休業制度

育児休業制度が整っていない企業や職場もまだまだ多数存在します。法的には育児休業が認められているものの、現実的には制度を利用することが困難な環境が多いのが現状です。例えば、育児休業から復帰した女性が重要なプロジェクトから外されるケースや、休業中に昇進のチャンスを逃してしまうケースが多くみられます。

長時間労働の一般化

日本の労働環境において、長時間労働が一般化していることもマミートラックを引き起こす要因のひとつです。長時間労働が前提となると、育児と仕事を両立することが難しくなり、結果として女性はパートタイムや非正規雇用に転じることが多くなります。

保育施設の不足

保育施設の不足もマミートラックを生じさせる大きな要因といえるでしょう。待機児童の問題が解消されない限り、育児と仕事を両立させることは困難です。保育施設が見つからなければ、女性は仕事を辞めるか、キャリアを中断するしかありません。結果として、職場復帰後も以前のようなキャリアパスを歩むことが難しくなります。

評価制度が未熟

育児休業後の評価制度が未熟で女性が正当に評価されないことも多いです。例えば、育児休業中の業績が評価の対象とならず、元の職場に復帰しても昇進や昇給が難しくなるケースが見受けられます。

コミュニケーション不足

上司と従業員のコミュニケーションが不足している場合、マミートラックが発生するリスクが高まります。信頼関係が十分に築かれていなければ、女性従業員は自分の本音を伝えにくいです。特に、会社側が善意で業務負担を軽減したり、高負荷のポジションへの昇進を避けたりしている場合、従業員は反対の意見を伝えるのが難しくなります。

マミートラックによる会社への弊害


マミートラックが発生すると、企業にとっても以下のような弊害が生じます。

生産性の低下

育児中の女性社員がキャリアアップの機会を逸し、補助的な職種に追いやられることで、彼女たちのもつ専門知識やスキルは十分に活用されません。その結果、企業全体の創造性や効率性の低下を招き、長期的な成長を阻害するリスクを高めます。

人材の流出

マミートラックによりキャリアの成長が見込めず、仕事に対する強いモチベーションが失われることがあります。優秀な人材がより良い環境を求めて他の企業へと流出してしまうケースも少なくありません。特に人材不足が叫ばれる今日において、この損失はとても大きな問題です。

企業イメージの悪化

育児と仕事を両立するための環境が整っていない会社としてのイメージが広まると、企業のブランド価値が低下し、新たな人材の確保が難しくなる可能性があります。このような企業イメージの悪化は、業績に直接的な影響を及ぼすことがあるため、無視できない重要な問題です。

イノベーションの減少

マミートラックによって任される仕事が限られると、挑戦的なプロジェクトに取り組んだり、新しいアイデアを提案する機会が制約されてしまいます。多様性が欠如することで、組織全体のイノベーションが低下する可能性が高まることになるでしょう。イノベーションは企業の成長を支える重要な要素であるため、競争力の低下を招くきっかけになりかねません。

従業員のモチベーション低下

自身のキャリアパスが望めないことで、当然ながら従業員のモチベーションも低下します。自己啓発やスキルの向上に意欲を持って取り組むことが難しくなるため、仕事の質も低下していくことが考えられるでしょう。モチベーションが低下することで、離職率も高くなるはずです。

マミートラックを防ぐ対策


マミートラックを引き起こさないためには、企業はどんな対策をしたら良いのでしょうか。

柔軟な働き方の仕組みを整える

働きながら育児をするためには、柔軟な働き方が欠かせません。フレックスタイム制やテレワークの導入は、働くママたちにとって大きな支えになります。子供が急に体調を崩したり、育児に突発的な問題が起きた場合でも、場所や時間にとらわれずに働ける環境があることで、働くママが仕事と家庭のバランスを取れるようになります。

育休制度の見直し

育休制度の見直しも、マミートラックを引き起こさないために重要です。現行の育休制度が不十分であったり、利用しづらい環境であると、育児をする女性がキャリアから離れざるを得ない状況が生まれます。育休制度を見直し、男女問わず利用しやすくすることで、育児と仕事の両立が可能となり、女性がキャリアを中断することなく継続できる環境を整えることができるのです。

育児支援を充実させる

企業内での育児支援が充実しているかどうかもマミートラックを防ぐ大きなポイントです。例えば、企業内保育所や育児支援金の支給など、育児をサポートする制度を設けることで、働くママたちの安心感を高めることができるでしょう。また、上司や同僚からの理解とサポートがある環境づくりも重要です。育児支援を充実させることで、社員が育児と仕事を両立しやすい職場になります。

評価制度の仕組みを見直す

評価制度の見直しは、マミートラックを防ぐために不可欠です。現行の評価制度が、育児休業や短時間勤務を取る社員に不利に働く場合、女性はキャリアアップの機会を失いやすくなり、結果としてマミートラックに陥るリスクが高まります。そのため、評価制度を見直し、育児中の社員も公平に評価される仕組みを整えることが重要です。

定期的に面談を行う

定期的な面談は、働くママたちの状況把握とサポートに欠かせません。上司とのコミュニケーションを密にすることで、仕事や育児の問題点を早期に発見し、解決策を共に考えることができます。面談を通じて、働くママたちのキャリア目標や職場での困りごとを共有し、最適なサポートを提供することができるでしょう。

社内の意識を変革し、ママが活躍できる職場づくりを


社内でマミートラックが発生すると、女性社員のモチベーション低下や管理職登用の遅れなど、多くの問題が生じます。以前と同じように働きたいという女性社員の気持ちが尊重されず、企業にとっても大きな損失となりかねません。しかし、社内全体の意識改革とサポート体制の再構築によって、優秀なワーキングマザーたちがキャリアと育児を両立できる環境を整えることが可能です。制度やサポート体制がまだ整備されていない企業は、本記事を参考に見直しを検討してみてください。
 

【筆者プロフィール】
西山 侑里
1993年群馬県高崎市生まれ。空っ風に鍛えられながら、小中高とバスケットボールを追い続ける部活生活を経て、2012年の大学入学を機に上京。大学卒業後、2016年にリクルートの求人広告代理店に新卒入社。売れない営業時代を乗り越え、営業リーダーを任せられるまでに成長。新規部署の立ち上げメンバーとしてIndeedの運用にも携わる。2022年に夢だったライター職に転職。人材業界での経験を活かして求人原稿の制作から、最近ではコラム記事の制作に挑戦中。X(Twitter)
 

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