コラム

経営者必見!賃上げはどう実現すればいい?重要性と成功事例、課題を徹底解説

近年、日本企業における賃上げが大きな注目を集めています。経済の活性化や従業員のモチベーション向上のために、賃上げは重要な施策として位置づけられています。しかし、実際に賃上げを実現するためには、様々な課題を乗り越える必要があります。本記事では、経営者の方に向けて、賃上げの現状と課題、メリット、実現のための方策、成功事例などを詳しく解説していきます。

賃上げの現状と課題


令和3年中における賃金の改定の実施状況をみると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業割合は80.7%(前年81.5%)、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」は1.0%(同2.1%)、「賃金の改定を実施しない」は10.1%(同9.5%)となっています。産業別にみると、「1人平均賃金を引き上げた・引き上げる」では、「学術研究,専門・技術サービス業」が93.7%(同87.0%)、「1人平均賃金を引き下げた・引き下げる」では「金融業,保険業」が10.6%(同4.1%)、「賃金の改定を実施しない」では「宿泊業,飲食サービス業」が21.5%(同19.5%)となっているようです。
 
賃上げを阻む要因としては、人件費の負担増加や業績の不安定さなどが挙げられます。特に中小企業では、収益性の確保が難しく、賃上げに踏み切れないケースが多いのが現状です。賃上げを実施しない理由として多いものは、「業績が不透明で先行きが見通せない」、「人件費の負担が重い」などが上位に挙げられているようです。
 

賃上げのメリット

賃上げは、従業員のモチベーション向上と定着率アップに直結します。事実、賃上げを実施した企業の従業員満足度は、実施していない企業と比べて高い傾向にあります。また、賃上げを実施した企業の離職率は実施していない企業よりも低くなります。
 
適切な賃金水準を維持することで、優秀な人材の確保と企業イメージの向上も期待できます。経済産業省のある調査では、人材確保に成功している企業の施策として、「賃金の引き上げ」が最も多く挙げられています。賃上げは、企業の魅力を高め、優秀な人材を惹きつける効果があると言えるでしょう。
 
さらに、賃上げは消費の喚起につながり、経済の好循環を生み出す効果もあります。総務省の「家計調査」でもその事実は明らかで、賃上げによる可処分所得の増加が消費の拡大につながったと考えられます。企業の業績向上と社会全体の発展に寄与する、重要な施策と言えるでしょう。
 

賃上げを実現するための方法

賃上げを実現するためには、生産性の向上と業務効率化が不可欠です。無駄な作業を削減し、従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境を整えることが重要です。また、適正な価格設定と販路拡大により、収益性を高めることも求められます。適切な価格設定により利益率を改善し、新たな販路開拓により売上高を増加させることで、賃上げの原資を確保することができます。中小企業庁の「2023年版中小企業白書」では、付加価値の高い製品・サービスの提供や新たな事業展開により、収益力を強化した企業の事例が紹介されています。
 
加えて、政府が提供する支援制度、例えば賃上げに対する助成金などを積極的に活用することも有効な手段の一つです。厚生労働省の「業績改善助成金」や「人材確保等支援助成金」など、賃上げを支援する様々な制度が用意されています。これらの制度を有効に活用することで、賃上げの実現がより容易になるでしょう。
 

賃上げ成功事例


ここでは、賃上げに成功した企業の事例を詳しく見ていきましょう。
 
A社(製造業)は、IoTやAIを活用した生産ラインの自動化により、生産性を大幅に向上させました。その結果、2年連続で5%以上の賃上げを実現。従業員の満足度も高まり、離職率は3年で半減しました。さらに、優秀な人材の採用が進み、新製品の開発にも成功。売上高は3年で30%以上増加しています。
 
B社(情報通信業)は、AIを活用した高付加価値のサービスを開発し、新たな収益源を確保。社員の賃金を3年で10%引き上げることに成功しました。賃上げにより、優秀な人材の採用が進み、離職率も大幅に減少。企業イメージの向上により、大手企業からの受注も増加しています。
 
C社(小売業)は、政府の「業績改善助成金」を活用し、計画的な賃上げを実施。販売スタッフのモチベーションが高まり、接客の質が向上。売上高は3年で20%増加し、賃上げの原資を確保することができました。また、社員の定着率が上がったことで、人材育成コストの削減にもつながっています。
 
D社(建設業)は、3D-CADやドローンを活用した業務効率化により、生産性を大幅に改善。資材の無駄を削減し、工期短縮にも成功しました。その結果、2年連続で3%の賃上げを実現。従業員の満足度が高まり、若手人材の採用が進んでいます。業界内での評判も上昇し、大型案件の受注が増加しています。
 
このように、業種や企業規模に応じた戦略的な取り組みにより、賃上げを実現することが可能です。生産性向上や収益力強化など、自社の状況に合わせた方策を検討することが重要でしょう。
 

賃上げに関するQ&A

ここからは賃上げに関する代表的なQ&Aをご紹介します。
 

Q1. 賃上げの適切な実施時期はいつですか?

A1. 賃上げの実施時期は、業績や財務状況を考慮して決定することが重要です。一般的に、決算期の翌月から新年度にかけて実施するケースが多いようです。人事院勧告に合わせて実施するのも一つの選択肢です。ただし、業績が好調な場合は、年度途中での賃上げも検討に値するでしょう。従業員のモチベーションを高めるためにも、タイムリーな賃上げが望ましいと言えます。

Q2. 賃上げの適切な額の目安はありますか?

A2. 賃上げ額は、企業の業績や業界動向、従業員の職種や役職などを総合的に勘案して決定します。一般的には、1〜5%程度の賃上げが多いようですが、企業の状況によって異なります。業績が好調な企業では、5%を超える賃上げを実施するケースもあります。一方で、業績が厳しい企業では、賃上げ率を抑えたり、一時金での対応を検討したりすることも必要でしょう。従業員のモチベーションと企業の収益性のバランスを考慮し、適切な額を設定することが重要です。

Q3. 賃上げ以外に、従業員のモチベーションを高める方法はありますか?

A3. 賃上げ以外にも、従業員のモチベーションを高める方法はいくつかあります。例えば、教育訓練の充実、福利厚生の拡充、柔軟な働き方の導入などが挙げられます。従業員の個別のニーズを把握し、多様な施策を組み合わせることが効果的です。また、従業員の自律性を尊重し、チャレンジングな仕事を任せることも重要です。経営者と従業員のコミュニケーションを密にし、互いの思いを共有することで、一体感が生まれ、モチベーションの向上につながるでしょう。

Q4. 非正規社員の賃上げについて、どのように考えるべきですか?

A4. 非正規社員の賃上げも、企業にとって重要な課題の一つです。非正規社員の割合が高い企業では、その処遇改善が欠かせません。同一労働同一賃金の原則に基づき、正社員と非正規社員の待遇差を縮小することが求められます。非正規社員の賃上げにより、モチベーションや定着率の向上、人材の質の向上などが期待できます。非正規社員の賃金水準を適正化することで、企業の生産性や競争力の向上にもつながるでしょう。

Q5. 賃上げが難しい場合、どのような対応が考えられますか?

A5. 賃上げが難しい場合でも、従業員のモチベーションを維持・向上させる工夫が必要です。例えば、賞与や一時金での対応、福利厚生の拡充、教育訓練の機会提供などが考えられます。また、賃上げが難しい理由を従業員に丁寧に説明し、理解を得ることも大切です。業績回復に向けた取り組みを示し、将来的な賃上げの可能性を示唆することで、従業員のモチベーションを維持することができるでしょう。
 

賃上げで持続的な事業成長と従業員の幸福を実現しよう


賃上げは、企業の発展と従業員のモチベーション向上に不可欠な施策です。生産性の向上や業務効率化、適正な価格設定などにより、賃上げの原資を確保することが重要です。また、政府の支援制度を有効活用することも賃上げを実現するための有力な手段の一つです。
 
一方で、賃上げが難しい状況もあるでしょう。そのような場合でも、従業員とのコミュニケーションを密にし、理解を得ながら、モチベーションを維持・向上させる工夫が求められます。
 
自社の状況を踏まえつつ、戦略的な賃上げの実施を検討いただければと思います。従業員の満足度が高まり、企業の業績向上につながる好循環を生み出すことができるはずです。賃上げを通じて、企業の持続的な成長と従業員の幸福の実現を目指していきましょう。

 
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