オンライン面接(Web面接)のコツは?求める人材をグリップするテクニックを解説
本コラムでは、今後オンライン面接の導入を検討されている採用ご担当者や、導入したもののうまく活用できていないといった課題を抱える採用ご担当者向けに、オンライン面接のメリットや具体的な進め方について解説したい。
オンライン面接が浸透した背景
いまや約8割の企業に導入経験があるとされるオンライン面接。ディップ株式会社の調査(※)によると、「転職活動を行った際、オンライン面接ができることは、求人を応募するきっかけになったか」という質問に対し、転職者の73.1%がオンライン面接を魅力に感じており、そのうち42.8%がオンライン面接であることを応募のきっかけとしていることが明らかになったという。
実際に筆者が相談を受けた転職活動中の20~30代ビジネスパーソンたちからも、「オンライン面接を実施していなければ応募しない」「気になっている会社があっても、対面面接のみであると残念ながら志望度が下がってしまう」といった声が聞かれた。こうした求職者のニーズやコロナ禍の影響でビジネスのあらゆるコミュニケーションがオンラインへと移行した。
同時に、国を挙げてのICT戦略によるビジネスのIT化もオンライン面接増加の理由の一つと考えられるだろう。ビッグデータ活用の側面からも面接をはじめとする採用活動のオンライン化は合理的であるし、何より幼少期からIT教育を受けてきた若年層がビジネス現場に増えてきたことで、Webシステムを用いてコミュニケーションを図るということに対する抵抗が少なくなったと推察される。
オンライン面接のメリット
それでは、企業側から見たオンライン面接のメリットにはどのようなものが挙げられるのだろうか。
①母集団形成に効果がある
求職者にとって、オンライン面接は場所や時間に左右されることなく気軽に受けられるため、応募に対するハードルが下がる。したがって、遠方に住む求職者など、これまでリーチできなかった層も取り込める確率が高まる。
また、在職中の求職者にとって、例えばリモートワークの休憩時間中や終業後すぐなど、移動時間なしで面接ができることはメリットが大きい。家事や育児といったライフとの調整もしやすいため、採用活動におけるダイバーシティ促進の面でも効果がある。
②採用効率化および採用コスト削減を実現できる
企業側も時間のロスを生じることなく多くの応募者に会えるため、採用の効率化に繋がる。また、面接官の交通費や移動時間・待機時間にかかる人件費、会場費などのコストを削減することにもなる。さらに応募書類や評価シートのWeb共有といったシステムをうまく活用することで、ペーパーレス化による資源削減にもなるだろう。
③自社の採用ブランディングに繋がる
先述のとおり、求職者側にとってもオンライン面接の実施は好印象になるという。必然的に自社のブランディングを向上することになり、採用競争力を高めることにも寄与する。
オンライン面接の上手な進め方
ここからはオンライン面接の具体的な進め方についてご紹介するが、その前にまずは採用面接の本質について考えてみたい。
採用面接の基本は「ジャッジ&フォロー」である。面接と言うと、どうしても応募者を「評価する」ことに意識が向いてしまいがちだが、同時にいかに自社の魅力付けを行い、応募者を「惹きつける」ことができるかが重要なポイントとなる。
<面接におけるジャッジのポイント>
・自社の採用基準を明確にしたうえで、応募者のどのような能力を見極めたいかを事前に検討する。
・応募者の表面的な成果ではなく、過去の行動を深掘りしてその再現性を確認する必要がある。有名な手法に「STARフレーム(※)」があるが、応募者の情報を漏れなく引き出すためにも、質問の流れは事前に組み立てておきたい。
※「S(Situation:状況)」「T(Task:課題)」「A(Action:行動)」「R(Result:結果)」の頭文字を取ったもの。応募者の過去の経験に対する、状況・課題・行動・結果を掘り下げて聞くことで、パーソナリティや能力を判断するための手法。
・陥りやすい心理的評価エラーに気を付ける。例えば、「応募者にある優れた能力がある場合、他の評価項目についても高い評価をしてしまう」「応募者との共通の話題により面接官側が親近感を覚え、良い評価をしてしまう」など。
・面接官による評価のバラつきをなくすための対策を行う。評価後のすり合わせも重要であるが、応募書類などから確認したい項目を面接官同士で事前に共有し、共通の目的を持って面接に臨む必要がある。
<面接におけるフォローのポイント>
・引き出せる情報の量や質を高めるため、いかに短時間で応募者との信頼関係を築けるかがポイントとなる。
・面接官の印象(特に第一印象)は会社の印象に直結する要素であり、非常に重要である。オンラインの場合はとりわけ会社の様子や他の社員の雰囲気が分からないため、面接官の印象ですべてが決まると言っても過言ではない。
・自社の魅力をしっかりと整理し、応募者に合わせて伝え分けていく必要がある。その際、相手に伝わりやすい話し方やプレゼンテーションのスキルも併せて磨いていくことが求められる。
<オンライン面接の流れとポイント>
①事前準備
・必ず事前にオンラインミーティングツールの環境設定や動作確認を行う。
・特に周囲の声や環境音は面接進行の妨げとなる可能性が高いため、できればマイク付きイヤホンを用いるようにする。
・面接官の間で役割分担を決め、応募者への質問内容をすり合わせる。
・面接開始10分前にはPCの前で待機する。
・急なシステムトラブルに対応できるよう、応募者の連絡先の確認や他のデバイスの手配といった準備をしておく。
②面接実施
・通常よりもアイスブレイクに時間をかけ、相手との距離を縮めるコミュニケーションを行う。
・アイコンタクトや表情など、印象管理に気を付ける。特にオンラインの場合、カメラの位置で“上から目線”に
映るケースが散見されるため、カメラレンズと目線の高さを合わせるようにする。
・社内の自席やパブリックスペースで面接を行っている(個人情報管理に問題がある)印象を与えかねないため、面接中はマスクを外す。
・うなずきを大きくしたり、あいづちやフィードバックはタイミング良く行ったりと、わかりやすいリアクションを心がける。
・相手に聞き取りやすい声の大きさ、スピード、滑舌を意識する。
③面接終了
・一方的なコミュニケーションを避けるため、応募者からの質問時間をなるべく多く設ける。
・応募者の印象を忘れないうちに、面接官同士で評価のすり合わせを行う。
・懸念事項や判断できなかったポイントについては、次回面接で確認するよう申し送りをする。
<オンライン面接に有効なWeb会議システム>
①Zoom(Zoomビデオコミュニケーションズ社)
アカウント登録の必要なし。企業側で面接日時を指定しURLを発行のうえ、求職者に案内する。無料で利用する場合、40分間の時間制限が設けられており、40分以上連続してミーティングを実施する際はホスト(企業側)がアカウントをプロアカウントにアップグレードする必要がある。
②Google Meet(Google社)
採用担当者と求職者双方のGoogleアカウントが必要。1対1のミーティングは24時間まで、また参加者が3名以上の場合は60分まで無料で利用できる。求職者へのURL送信によりミーティングへの招待が可能となり、URLにアクセスしてもらうことでオンライン面接が開始される
③Teams(マイクロソフト社)
Office365利用者は追加コストなしで利用できる。通常は参加人数を問わず60分間の時間制限があるが、現在はコロナ禍の影響で利用条件が緩和されており、最大24時間まで無料でミーティングを行える。(求職者側の一部ブラウザでは対応していないことがあるため注意が必要)URL発行により面接への招待が可能。
※記載の利用条件はいずれも2022年5月6日現在
オンライン面接の注意点
ここまでオンライン面接のメリットをお伝えしてきたが、最後に注意点とその対策方法についても触れておきたい。
①対応スキルによる質のバラつき
オンラインコミュニケーションに関しては、慣れや得意・不得意によってどうしても対応スキルに差が出てしまう。また、通信環境や実施環境による制約を受けやすく、常に同質のパフォーマンスを発揮するのは難しいと言える。さらに、求職者側のオンライン対応スキルにも影響を受ける部分が大きい。
<対策>
事前に面接官向けに簡単なマニュアルを作成したり、面接官向けトレーニングを実施したりするとよい。また、応募者に対しても事前にツールの使い方を連絡するなど、できるだけ丁寧な案内を心がけたい。
②見抜きにくい可能性がある要素
対面面接と比べ、応募者の雰囲気や醸し出されるオーラ、清潔感といった要素がどうしても見抜きにくくなってしまう点に注意が必要である。対面時の印象や真のコミュニケーション力なども、実際に会ってみたら思っていた様子と違ったというケースもある。
<対策>
「スクリーニングのために一次面接はオンラインで実施する」
「自社と合う人物かを判断するために最終面接は対面で実施する」
など、目的に合わせて手法を組み合わせることをお勧めする。
③伝わりづらい可能性がある要素
オンライン面接の場合、会社全体の雰囲気や働く社員の様子が伝わりづらいというデメリットがある。したがって、自社の魅力を訴求するための手段をしっかりと検討する必要がある。
<対策>
面接中にWebカメラを回して社内の様子を伝えたり、別途会社紹介や社員紹介を行う動画を用意したりといった工夫が有効である。
以上のように、オンライン面接は特に母集団形成への効果が期待できるため、初期段階でスクリーニングを行う際などには非常に有効な武器となる。一方で、オンラインだけでカバーしきれないポイントについては、他の手段も組み合わせながら多角的な視点で解決していく必要があるだろう。企業の採用活動においてもニューノーマルが叫ばれるなかで、自社が欲しい人材をしっかりとグリップしていくために、ぜひオンライン面接にチャレンジしていただければ幸いである。
<参考>
※…ディップ株式会社『コロナ禍の採用活動とコロナ収束後のDX』
<筆者プロフィール>
山中 茉由(やまなか まゆ)
早稲田大学在学中から、大学スポーツ新聞の編集・記者および学生WEBライターとして活動。卒業後は大手人材会社に入社し、企業向け教育研修事業部門の立ち上げに携わる。同事業では企画営業部署の責任者を務めながら、全国の大手~中小企業約300社に教育研修コンテンツを提供。自身も講師として、学生のキャリア支援や就職活動支援を行う。現在はフリーランスライター兼採用/教育コンテンツプランナー。趣味は4歳の息子と、愛する横浜DeNAベイスターズの試合を観戦すること。
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