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  • 2022.05.20

「クリエイターの力で社会を変える」国内最大級の映像制作プラットフォーマーが描く未来 | 株式会社Vook

近年、急激な市場拡大を続けている映像産業。特にインターネット動画広告市場は、2021 年の 3,889 億円から 2024 年には6,856 億円まで伸びると予測されている。VRなどの技術進展に伴いメタバースが注目を浴び、3DCGに対するニーズも右肩上がりに上昇。市場が大きくなれば制作量が増え、制作を担う映像クリエイターの需要も増えていく。

映像クリエイターのサポートをビジネスチャンスとして捉え、飛躍的な成長を遂げる企業も出てきている。国内最大級の映像制作プラットフォーム『Vook』を手がける株式会社Vookもその一つだ。映像制作者のための人材サービス『Vookキャリア』と実践型スクール『Vook School』、映像クリエイターのためのアイテムストア『Vook Store』を創設し、映像クリエイターの学び・仕事・繋がりをサポートしている。

しかしながら、Vookの事業は昨今のニーズに合わせて構築されたものではない。その背景には、映像の力で社会を変えようとする代表・岡本俊太郎の熱い想いと、10年以上前に“新時代”を予測する優れた先見性があった。

「私たちは、日本の映像クリエイターが世界で活躍できる環境をつくっていく」──揺るぎない信念で業界の壁を次々と乗り越えていく岡本氏のビジョンに迫ってみたい。

【プロフィール】
岡本俊太郎
株式会社Vook 代表取締役CEO
大学在学中に学生団体を立ち上げ、映像コンテスト『学生CM 甲子園』を主宰。2012年に株式会社Adoir(現Vook)創業。2014年にCM制作で訪れたハリウッドの映像制作環境に刺激を受け、2016 年に映像制作 Tips サイト『Vook』を立ち上げる。「映像クリエイターを無敵に。」のビジョンを叶えるべく、映像クリエイターの学び・仕事・繋がりを支援するサービスを展開。

CMと出会い、クリエイターの“新時代”を確信

岡本が映像の世界にのめり込んだきっかけは、20歳のときに見た『iPod touch』のCMである。元々はイギリスの19歳の学生がYouTubeにアップロードした動画であり、後にApple社が公式にCM化している。
 

「自分と同世代の学生が、信じられないほど高いクオリティの動画を作っていることに驚きました。しかも、YouTubeというプラットフォームを通じて、その学生と企業が繋がり、CMとして全世界に発信される。映像の急速な広がりで、クリエイターがさらに求められる“新時代”が来ることを確信しました」
 

映像に大いなる可能性を感じ、起業を考えるようになった岡本。大学在学中に学生のためのCM(動画)コンテストを立ち上げている。
 

「若手の映像制作者が活躍できる環境をつくるためにスタートしました。昔はTVのCMがメインで、大規模な予算がないとPR映像が作れませんでしたが、その頃には低予算で本格的な動画作品をつくれるようになったのです」
 

社会問題や日本の魅力など、さまざまなテーマで学生・社会人が動画を制作。最終的には全国から毎年200作品以上が集まる映像コンペティション『my Japan Award』へと成長させている。
 

「ビジュアルやクリエイティブにもこだわってWebページを作りこんだ結果、日本最高峰のクリエイターが審査員を務めてくださいました。映像制作者たちがどんなことを表現しようと思っているのか、考え抜いた成果だと感じています」
 

アワードの成功を経て、2012年に創設したのが映像制作会社Adoir(現Vook)だ。創業当初は事業運営に苦しむものの、当時まだ新しかった一眼レフを使ったハイクオリティな映像制作を強みに、大手企業や地方自治体など次々とクライアントを獲得していく。
 

「映像を使ってどんなメッセージを社会に発信していくのか。そこにフォーカスして取り組んできました。映像で魅力をしっかり伝えれば、予想以上に地方や人々が変わることもあります。映像には社会を変える力があると思います」
 

日本とハリウッドの決定的な差は「制作環境」

岡本の事業運営は、2014年に訪れたハリウッドでの動画制作をきっかけに加速していく。
 

「当時まだ20代でしたが、ハリウッドにいた同年代のクリエイターたちがつくる映像作品を見て、日本とは比べものにならないほど全体的なレベルが高いと感じました。日本には世界に誇るカメラ会社があり、数多くのCMを制作しているにもかかわらず、この決定的な差は何なのか。いろいろと考えた結果、その答えはデジタルツールの普及率にありました」
 

日本でも動画制作のデジタル化が進み、低予算・少人数で制作できるようになったものの、デジタル機器の活用方法を正しく教えているところが少なかったのだ。
 

「アメリカには映像撮影、脚本、照明、音声まで一通りの技術を学べるフィルムスクールが数多く存在します。最先端の技術を教えていることはもちろん、内容の基礎レベルも高い。しかし、日本で映像を学ぼうとすると、TV業界や映画業界に入ることを目的にしているスクールが多く、そこで学べないことがたくさんあるのです。当時、私たちがデジタル動画の撮影技術を詳しく知るには、英語で書かれた海外サイトを見るしかありませんでした。映像制作環境に大きな差があったため、その状況を何とか変えたいと思ったのです」
 

映像クリエイターのために、映像制作のナレッジを共有できるプラットフォームをつくりたい——。映像制作に関わる人と情報が集まる場所を目指し、2016年に創設したのが映像制作Tipsサイト『Vook(ヴック)』だ。後に社名にもなったVookは、「ビデオブック」に由来しており、映像制作に関わる人・情報が本のように集まってくる場所にしたいと考えている。
 

「正直、立ち上げにはかなり苦労しました。映像制作のノウハウを記事コンテンツで発信しようとしましたが、クリエイターたちに文章を書く習慣がなく、技術の言語化がなかなか進まなかったのです。間違ってはいけないことも多いので、情報の整合性を取ることが非常に難しかったですね」
 

最初は言語化に苦戦しながらも、現場ですぐに使える映像技術のノウハウを積極的に発信。プロのクリエイターが見ても良質な情報が詰まっているサイトとして、PV数は右肩上がりで増加してきた。
 

「現状に満足せず、コンテンツの磨き込みを常に進めています。例えば、近年ニーズが高まっているのは、VR技術の進展に伴う3DCGの領域です。2022年1月にCG&映像に特化した専門媒体『CGWORLD + digital video』の元編集長が『Vook』の編集長としてジョインしたので、今後はメタバースの実践的な情報なども発信していきます」
 

映像業界の多様なキャリアパスを実現

『Vook』を立ち上げてから数多く寄せられるようになったのが、映像業界における人材不足の悩みだ。企業はもちろんのこと、CMプロダクション、TV番組の映像制作会社、YouTuber事務所など、多方面から問い合わせが来るという。
 

「ここ数年で映像・動画のニーズが一層高まり、映像制作者が絶対的に不足しています。ときには優秀なクリエイターを奪い合うこともあります。創り手によって映像の質が大きく変わるので、その気持ちはよくわかりますし、クリエイターの力は非常に重要だと実感しています」
 

映像クリエイターと各企業のマッチングを円滑にするため、2021年に映像制作者の人材紹介サービス『Vook キャリア』をスタート。今までにないキャリアパスを創出することにも寄与している。
 

「一昔前であれば『TVのCM監督になったら成功』など共通の価値観がありましたが、近年その意識が変わってきています。TV業界からWebの世界へ転向する人材も多く、今までにないほど流動性があります。『Vook』も活用しながら、新たなキャリアをつくれるようにサポートしていきたいと思ったのです」 

映像クリエイターたちの悩みとして、まずあげられるのは過酷な労働環境のつらさだ。「帰れない」「休めない」など、映像業界の悪しき伝統を変えていくことにもVookは取り組んでいる。
 

「細かなデスクワークや雑務、調整業務など、クリエイティブとは直接関係のない業務で苦労していることもあります。『Vook キャリア』でクリエイターの環境を変えることで、映像制作者としての能力をもっと伸び伸びと発揮できるのではないかと考えています。他にも、映像編集やアシスタント業務からのキャリアアップを望む声も寄せられますが、各企業とのマッチングで実現できると思います」
 

クリエイターが活躍する環境も、一昔前とは変わってきている。今まではTV局や映像制作会社で働くことが多かったが、現在は一般的な事業会社でも動画制作者が求められている。
 

「制作会社に外部発注せず、インハウスで動画をつくろうとする企業が年々増えています。企業によっては、動画が必要な部署がたくさんあるので、内製化して業務効率化を図ろうとしています。求められるスキルは放送局や制作会社と大きく変わりませんが、社内の価値観や映像リテラシーに合わせて円滑に進めていく必要があります。業務の難易度は案件によって異なりますが、クリエイターが今までの経験やスキルを活かして活躍できるシーンが、どんどん増えていると感じています」
 

未来を担うクリエイターに「学び」を提供

Vookは映像制作者との繋がりのみならず「学び」にも力を入れている。2021年に映像スクール『Vook School』を創立。トップクリエイターが構築した体系的なカリキュラムで、プロレベルの技術を身につけられる。
 

「映像技術は体系化されていない領域が多く、ノウハウを提供する上で課題を感じていました。映像で求められる知識は広く、音や光など全く別ジャンルの知識も必要になってくるからです。また、専門学校などで2〜4年もの歳月をかけて学ぶことも、日本の現在のスタイルに合っていないと感じています。映像制作を学ぼうとする人のなかには、大学生や会社員など普段忙しい方が多いからです。プログラミングの短期講習のように、最短3か月など短期間で集中して学べるスクールを目指しています」
 

最近多いのはYouTubeで映像制作を始めたものの、スキル面でその後のキャリア形成が上手くいかないようなケース。そういった場合でも、日々のプログラムで豊富な知識を習得し、よりハイレベルな仕事を獲得することができるという。
 

「カリキュラムでこだわっているのは、最終的に映像制作の仕事に繋げることです。『Vook キャリア』と同時期に立ち上げた理由は、そこにあります。単純な動画編集は、YouTubeや『Vook』を見ればある程度わかりますが、仕事にするためには仕事の方法を学び、たくさん創作する必要があります。そのため、『Vook School』は、授業形式ではなく自分でどんどん進められるカリキュラムで、課題に取り組みながら常に創作していきます。『Vook キャリア』も積極的に活用しながら、映像業界で活躍できる人材になってほしいと思います」
 

『Vook School』で学んでいるのは、アマチュアの映像制作者だけではない。既に映像制作の仕事をしているクリエイターも通っており、制作現場で起こった課題や問題を講師に相談することも多い。ときには、見積もりに関する質問も寄せられるそうだ。
 

「毎回のカリキュラムや課題の講評は、第一線で活躍するプロのクリエイターが担当しており、現場目線で直接フィードバックするようにしています。コースもいろいろ用意しており、撮影から編集までの『ビデオグラファーコース』、アニメーションのことが学べる『モーションコース』(2022年7月〜)、今後は『CGコース』も立ち上げる予定です。いろいろなジャンルの撮影〜編集を短期間で学び、プロとして独立していく。映像業界の発展にも貢献できるスクールにしていきたいと考えています」
 

創造性を刺激する、家より快適なオフィス

Vookは2022年4月に本社オフィスを移転。家より快適でクリエイティビティを刺激するオフィスを目指し、渋谷PARCOに隣接したビルのワンフロアをフルリノベーションしている。
 

「こだわったのは、自宅よりも快適な環境です。感染症対策に配慮しながら、コミュニケーションを誘発するオフィスデザインと空間設計に取り組みました。執務スペースには多様なスペースを設けており、可動式の間仕切りや防音カーテンブースなども。オフィスの照明環境にも配慮し、オンライン会議や撮影にも適した環境を実現しています」
 

エントランスホールには、クリエイティビティを刺激する本が並んだライブラリースペースも。ミーティングにおけるアイデア出しに役立っている。
 

最後に、今後のビジョンについて岡本に聞いてみた。
 

「Vookが目指しているのは、映像で社会を変えていくことです。社会的な流れとして、政策発信やNPOの寄付金募集など、幅広い場面で動画が活用されるようになりました。Vookは政治活動のデジタル化の支援も行っています。そのときに重要なのは、どんな映像を発信し、どのように社会を変えていくのか。社会にできるだけポジティブな影響を与えられるように、クリエイター側を支援しながら、映像を使う側も変えていきたいと考えています。私たちのビジョンを実現するためにも、『映像で社会を変えたい』などアグレッシブなマインドを持った方に、ジョインしていただけるとうれしいです」
 

取材・文:平原 健士、撮影:岡田 晃奈

会社名 株式会社Vook(ヴック)
本社所在地 東京都渋谷区宇田川町14-13 宇田川町ビルディング4F
役員 代表取締役 CEO : 岡本 俊太郎
取締役 COO   : 阿部 剛平  曽根 隼人
事業内容 国内最大級の映像クリエイター向け Tips サイト『Vook
映像制作者に特化した人材紹介サービス『Vookキャリア
プロの映像制作者を育てる実践型スクール『Vook School
映像クリエイターのためのアイテムストア『Vook Store
資本金 53,000,000円(資本準備金含む)
設立年月 2012年1月
公式サイト https://vook.co.jp/
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