コラム

【例文あり】ダイレクトリクルーティングのプロに聞く、スカウト返信率を高める3つのポイント | 株式会社VOLLECT 代表取締役 中島 大志

“攻めの人材採用”として注目されている「ダイレクトリクルーティング」。求人メディアや人材紹介サービスで求職者の応募を待つのとは違い、自社に最適な人材を企業側が探し出し、直接アプローチできる。

企業側からスカウトメールを送ることで、転職希望の求職者だけではなく、転職を積極的に考えていない潜在層にも働きかけることが可能。しかし、手当たり次第にメールを送っても、採用に至らず担当者の負担を増やすことになりかねない。

そこで今回は、BIZREACH、Wantedly、dodaRecruitersなど数多くのダイレクトリクルーティング媒体で豊富な実績をもつ株式会社VOLLECTの代表・中島大志氏にインタビュー。採用につながるスカウトメールの活用法や、効果的な文面について詳しく伺った。

【プロフィール】
中島 大志
株式会社VOLLECT 代表取締役
立命館大学国際関係学部を卒業後、パーソルキャリア株式会社にてクライアントに対して採用コンサルティングに従事。クライアントの採用課題を解決するべく、採用戦略の立案から、採用体制の構築、採用手法の提案を行う。その後、新規事業部に異動し事業立ち上げに携わる。パーソルキャリア退職後は、人材紹介サービス事業と、大手コンサルティングファームを中心に採用支援を行い、そこでダイレクトリクルーティングの可能性を感じ、株式会社VOLLECTを創業。

ダイレクトリクルーティングなら大手企業に勝てる


「スカウトメールなどのダイレクトリクルーティングを行うメリットは、採用コストの削減ではありません。自社で行う場合、求職者の選定やスカウトが必要になり、担当者の工数が増えるからです。それよりも、自社に合った優秀な人材に直接アプローチして採用できることが最大の強みです。つまり、採用の『量』ではなく『質』を高めることができるのです」
 

ダイレクトリクルーティングは大手企業のみならず、ベンチャー企業などでも活用されている。
 

「当社のお客様でも中途採用で求人広告や人材紹介、リファラル採用などを行ってきたものの十分な採用につながらず、“最後の砦”として、ダイレクトリクルーティングに取り組む会社が増えています。採用候補者の母集団を形成する目的で利用されることも多いですね」
 

応募する求職者は、受け取ったスカウトメールの内容に応じて、選考に参加するかどうかを決定する。その意思決定には、メールを送る企業の知名度が大きな影響を与えるように感じるが、実際のところはどうなのだろうか。
 

「ダイレクトリクルーティングにおいては、大手企業だから有利とは言えません。例えば、国内の大手メーカーがITエンジニアを採用しようとするとき、ベンチャー企業に負けることはよくあります。大手企業は20〜30代で実現できるキャリア・年収に限界があることが多く、それがネガティブに映っていると考えられます。求職者の多くは好きなことを色々やりつつ高年収を得たいと思っているので、大手企業の福利厚生が優位性を発揮できないこともあるということです」
 

求職者の心を掴み、ダイレクトリクルーティングで成果を出すためにはどうすればいいのだろうか。
 

「重要なのは、採用市場を見ながら柔軟に対応していくこと。例えば、求めているエンジニアの質が高すぎて市場にほとんどいないのであれば、採用の要件を緩和することが大切です。年齢でふるいにかけるのではなく、前職で培った経験を重視してアプローチしたり。理想の候補者像に固執せず、柔軟に考えられる会社が採用市場で勝ち残っていけると思います」

スカウトメールでやってはいけない3つの手法


ダイレクトリクルーティングの手法として、一般的なスカウトメール。上手く活用することで求職者の興味関心を高められるが、返信率を高める手法については誤解されている内容も多いという。その一つが「メール文面の長さ」だ。
 

「スカウト文面を考える上では、内容を充実させて長文を送った方がいいと思われるかもしれませんが、文章の長さが返信率に大きな影響を与えることはありません。また、スカウト文面を短くすることで、添付の求人票まで見てもらえる確率は高くなりますが、求人票はありのままを表現するしかないので、返信率の大幅な改善にはつながりません。ただし、短い文面は媒体によっては大きく影響します。『Linkedin』や『EightCareerDesign』などのスカウト媒体では、求職者とカジュアルにやりとりするので、短文にすることで返信率が高まる傾向にあります」
 

また、最近のスカウトメールでは、返信率を高めるためにインセンティブを設定していることも多い。面談に参加した求職者に現金や商品券を配布する手法だが、はたしてその後の採用につながるのだろうか。
 

「インセンティブは、メールの返信率を30〜50%ほど高めることができます。ただお金目的なので、カジュアル面談に参加した後で離脱する求職者がほとんどです。そのため、返信率が高まったとしても実際の採用数にはつながりません。インセンティブや文面をカスタマイズするよりも、どんな求職者が自社のスカウトを求めているのかを考えることが大切です」
 

その他にも、社長や取締役などのボードメンバーをメール文面に入れる方法があるが、効果は限定的とのこと。多忙な経営層の日程調整は難しいことが多く、初回の面談に立ち会えないケースが頻発するからだ。求職者からの信頼を失い、日程調整で離脱されることが増えるため、最初から人事担当者やリクルーターを差出人にするのが無難である。
 

上記の方法に頼ることなく、スカウトメールの開封率・返信率を高めるためには、どうしたらいいのだろうか。そのポイントは、次の3つに集約される。
 

①「ターゲット」…誰にメールを送るのか。
 

②「タイミング」…候補者がどんな状態の時に送るのか(媒体登録時、プロフィール更新時など)
 

③「メッセージ」…どんなメールの文面で送るのか。
 

「ターゲット」を変えることが最も改善のインパクトが大きく、その次に「タイミング」、「メッセージ」の順で続く。
 

「この3要素は恋愛に置き換えるとわかりやすくなります。告白の『タイミング』や告白の『メッセージ』をどんなにブラッシュアップしたとしても、相手とのマッチング(ターゲット選定)が上手くいかない場合、付き合うことができません。絶対に手が届かない人に対して告白を繰り返しても成功が難しいように、採用できない『ターゲット』をスカウトしようとしても成果にはつながらないということです。『メッセージ』が最も簡単に変えられるので、メール文面の改善から取り組む企業が多いですが、インパクトを出したいなら『ターゲット』から見直すことをオススメします」

「ターゲット層」は理想と現実の重なるところ


スカウトメールのターゲット設定で重要なのは、求めている候補者が市場にどれだけいるのかを把握することである。そして、目標の採用人数を達成するためには何人と面接し、その前工程として何人にスカウトメールを送る必要があるのか、それぞれの歩留まりを考える必要がある。
 

「例えば、目標からの逆算で200人にスカウトメールを送る場合、当たり前ですがその候補者が市場に200人いないと成り立ちません。採用したいターゲット層を絞り込みすぎてしまうと、十分な候補者が市場にいないこともあるのです。また、スカウトメールを送るターゲットは、ある程度アクティブに転職活動をしている必要があります。スカウト媒体で半年以上もログインしていない人は転職意欲がかなり低いので、採用に至ることは難しいでしょう」
 

「採用したい層」と「市場にいる求職者層」の重なる部分が、アプローチできる候補者層であり、実際のターゲットになってくる。
 

「先ほどと同じようにわかりやすく恋愛に置き換えた場合、『付き合える可能性が高い層』と『手の届かない層』があると思います。とはいえ、誰でもいいから付き合いたいわけではないので、『付き合える可能性が高い層』と『付き合いたい層』の重なるところが、ターゲット層になってくるということです。つまり、理想が高いほど採用できる層との重なりが小さくなってしまいます。現実をしっかりと見るためには、それぞれのスカウト媒体に登録している求職者のデータベースを確認し、どれくらいターゲット層に人数がいるのか把握することが大切です」
 

採用したいターゲットが市場にほとんどいない場合、対象レイヤーを広げる必要がある。そのときに重要な要素としてまず挙げられるのが、求職者の年齢である。
 

「25〜35歳は競合他社も欲しい層なので、多くのスカウトメールが他社から求職者に送付されている可能性が高いです。そうなると必然的に、自社のメールの開封率や返信率が低くなってしまいます。短期間で成果を出したいときには、候補者の対象年齢を広げていくことが有効です。あとはエンジニアを採用したいときには、国籍(日本人)にこだわらずグローバルな視点で採用を進めていくケースもあります」
 

また、ダイレクトリクルーティングで企業がターゲット選定に携わることは、企業にとって大きなメリットがあるとのこと。求めているターゲットから、どれくらいのリアクションが来るのか肌感覚でわかるため、市場における自社のポジションを確認することができるのだ。
 

「従来の人材紹介では、『こういう人を探してほしい』と丸投げするようなかたちなので、口頭で採用が難しいと言われても、方針を変えないケースが多くあります。そればかりか、採用できない理由をエージェント側に押し付けることも。気持ちはよくわかるのですが、企業側が自分たちの立ち位置を理解し、ターゲットを変えないと成果にはつながりません。スカウトメールでは、実際の文面を確認してターゲットもあらかじめ確認して送付するので、返信が少ない場合は『この層は採用できない』と気付くことができます。自社の立ち位置を認識した上で採用の方向性を変えられるので、企業にとってメリットが大きいと思います」

「タイミング」で必ずチェックするべき4つの指標


スカウトメールにおける「タイミング」とは、候補者がどんな状態の時に送るのか、という意味である。具体的には、候補者が媒体に登録した時や、プロフィール更新時の「タイミング」を指す。
 

「よく勘違いされるのは、スカウトメールを送る時間帯や曜日という意味のタイミングですが、このタイミングはあまり返信率に影響しません。効果を高めるためには、次の4つの指標をチェックするといいでしょう」
 

(1)直近媒体登録
候補者が直近に媒体に登録(アカウント開設)したことを意味する。媒体に登録したばかりなので転職意向が高く、他社からのスカウト受信数が少ない可能性があるので、スカウトの返信率を高められる。
 

(2)直近レジュメ・プロフィール更新
候補者が媒体に登録しているプロフィールを更新したことを意味する。登録してから一定期間経ってから本格的に転職活動を始めるためにプロフィールを更新する人も多い。
 

(3)直近他社応募
候補者が媒体上で他の会社の選考に応募したことを意味する。媒体によって情報開示の内容が異なるが、応募や選考などの進捗状況までは明確にわからない媒体が多い。転職活動が本格化しているシグナルになるが、他社選考の終盤まで進んでいてスカウトしても反応が無いケースもある。
 

(4)直近ログイン
候補者がスカウト媒体にログインしたことを意味する。直近で媒体にログインすらしていない候補者は、その媒体上では転職活動を全く行っていない場合が多い。最終ログイン日の日付が遠い候補者にスカウトしても、リアクションはあまり期待できない。
 

スカウト媒体で候補者を検索したときに『新着登録』や『レジュメ更新』などのタグが付けられている場合が多い。媒体によって情報の開示内容は異なり、4つ全てを開示していることがあれば、1〜2つしか開示していない媒体もあるそうだ。
 

「最終ログイン日1ヶ月以内は、返信率を担保するための必要条件になってきます。1ヶ月を超えている求職者は、そもそもメールを開いてもらえません。また、すぐに転職しないものの『良い案件があれば』と考えている潜在層にアプローチするときは、『直近媒体登録』ではなく、『直近レジュメ・プロフィール更新』をチェックします。登録内容を更新するのは、これから転職活動に本腰を入れようとする意思の表れだからです」

「メッセージ」の文面はマイナス要素を減らす


スカウトメールの文面では、候補者の心を動かそうと内容にこだわるよりも、誤字脱字などのマイナス要素を消すことが重要になってくる。
 

「会社の信頼性を高めるためにも、正しい日本語でわかりやすい文章を作ることが大切です。最近ではスマートフォンで見る人が多いので、スカウトを受ける側の視点に立って文章量を調整した方がいいと思います。また、文面のカスタマイズですが、知名度の高い大手企業に関しては、スカウトメールの内容で企業イメージが大きく変わることは少ないので、個々の求職者に対して内容を大きく変える必要はありません。一方、知名度のない会社の場合は、『どんな会社なのか』候補者に知ってもらう必要があるので、事業の強みなどを説明することが重要です。あまり長くても読まれにくいので、出来るだけ簡潔に業界の将来性や競合優位性を書いた方がいいと思います」
 

効果を高められる文面は、大きく2つのタイプがあげられる。会社のビジョンを強調する「ビジョン型」と、会社や業界の発展を伝えつつ求職者に助けを求める「ヘルプ型」だ。
 

「『ビジョン型』を使いやすい企業は、プロダクトが強い会社だと思います。プロダクトには、会社のビジョンが反映されていることが多いからです。他にも、エクイティで資金調達しているような会社も『ビジョン型』を活用できます。一方、労働集約型の事業を営んでいる場合は、市場や社会を変えるなど壮大なビジョンを打ち出すことが難しいので、社会的意義も伝えられる『ヘルプ型』が共感を得られやすいでしょう」

採用につながるスカウトメール例文

VOLLECT社において、効果の高かったスカウトメールの例文を以下に掲載する。2回目以降に使える例文もあるので、最適なかたちにカスタマイズして使っていただきたい。『ビジョン型』や『ヘルプ型』の文面にする場合は、事業の説明部分で自社のビジョンや事業の発展性を説明するといいだろう。
 

【初回スカウトメールの例文】

はじめまして。
株式会社●● 部長の●●と申します。
 

この度は、様のレジュメからご経歴を拝見し、ぜひ、一度お会いさせていただきたくご連絡しました。
 

弊社は、コロナによりリモート勤務が主流となることを背景に、事業を急拡大させています。●案件に関する即戦力人材を探していたところ、様のご経歴が目に止まりました。
 

●●の経験をお持ちである事はもちろん、●●といった様の志向性が、今回のポジションとの親和性を感じた次第です。
 

弊社は●●(事業の説明)を提供する企業です。弊社の大きな特徴として●●(強みの説明)であり、●●(ポジションの強みの説明)できる機会があります。文面だけではお伝えきれないため、弊社の強みやポジションの詳細などをご説明できる時間をいただけませんでしょうか?もちろん、現時点での転職のご意向は問いません。
 

お忙しいかとは存じますが、ご検討の程、何卒よろしくお願い致します。ご返信、心よりお待ち致しております。

 

【2回目のときのスカウトメール例文】
文面の導入部分で「度々のご連絡、失礼いたします」など、2回目のスカウトメールに触れることがポイント。その後、「ご検討はいかがでしょうか」などスカウトに対しての反応を聞いてみる。更新された最新資料などがあれば、記載すると効果が高まりやすい。
 

◯◯様
度々のご連絡、失礼致します。◯◯株式会社の◯◯でございます。
 

先日、弊社の◯◯ポジションのスカウトメールを送らせて頂きましたが、その後ご検討はいかがでしょうか。また最新の採用関連資料もこちらのアップロードしております。
 

https://…..
是非ともお話がしたいと思っておりますので、◯◯様からのご返信を、心からお待ちしております。不明点等ございましたら、遠慮なくご連絡下さい。どうぞ宜しくお願いいたします。

 

最後に、スカウトメールを活用する上で一番大切なことはどんなことなのか、中島氏に聞いてみた。
 

「どんなに戦略を練っても、十分な結果につながらないこともあります。一度でめげることなく、改善のPDCAを回し続けることが重要です。結果を確認・分析し、ターゲットやメッセージを変えながら、何度でもチャレンジしていきます。自社で運用している企業様もありますが、他の業務との兼ね合いでどうしても改善スピードが遅くなってしまいます。そのときには、私たちのような外部企業を利用することをオススメします。高速で改善のPDCAを回せますし、広い視野で意見をお伝えできます。社内から出てこないような新たな改善策も提案できるので、ぜひ有効に活用していただければと思います」
 

取材・文:平原 健士
 

会社名:株式会社VOLLECT
本社所在地 :東京都品川区西五反田一丁目26番2号 五反田サンハイツ911
役員:代表取締役 中島大志
事業内容:スカウト支援/代行サービス【PRO SCOUT】の提供
ダイレクトリクルーティング特化型メディア【HRpedia】の運営
資本金:1,000,000円
設立年月:2018年6月

 
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